番外編・私はシリウス
※こちらは番外編となっております
シリウスがスズメバチになってヴァレリア様にガチ恋していたと気付いたその後の話です。
私はシリウス。
先程、心を打ちのめされた哀れな男だ。
私の恋は儚い‥‥‥。こんなに苦労しているのに報われない。
「あらシリウス様、お珍しい。いつもは執務室に篭りきりなのに」
フラフラとした足取りで城内を歩いていると、とある女性に声をかけられた。
ガルシア様の異父弟ヴィクトル公爵様の愛妾のブランシュ様だ。この方は元々高級娼婦だったのだが、その素晴らしいダンスでヴィクトル様を魅了し、ヴィクトル様のお心を掴んだという話だ。
私とは面識はあるとはいえ、顔見知り程度だ。
そのブランシュ様が私に声をおかけになるとは、珍しい。
「ふふ。そんなに身構えなくても、とって食いはしないわ。ところで貴方、先日、高級娼館に寄ったそうね」
う‥‥‥。この手の噂はすぐに広まるな。まぁあの高級娼館からは何人か公爵や伯爵などの愛妾が出ているから当然といえば当然か‥‥‥
「はい、確かに行きましたが‥‥‥。それが何か」
私がそう言うと、ブランシュ様はそっと手招きをし、私に耳打ちした。
私がブランシュ様から聞いた話はこうだ。
ーーーーブランシュ様の妹が以前から高級娼館で働いているのだが、最近嫌な男(伯爵、名前はエドワード)に付き纏われているらしい。
どの辺が嫌かと言うと、ブランシュ様の妹がお休みの日にも関わらず、お休みをいただいていると予め告げていても伯爵は毎日のように来て、元々体の弱いブランシュ様の妹は体を酷使され、更に弱ってしまった。
ほとほと相手をするのに疲れ、マダムに相談して高級娼館を辞めたという事にして欲しいと告げた。
マダムはこのうら若き女性を哀れに思い快諾した。
流石にもう来ないと思って安心した妹は、調子の良い日にその男(伯爵)以外の男の相手をした。
だが、何故か妹がまだ働いている事が伯爵に知れてしまい、妹が相手をした男が半殺しに遭い。下半身が使い物にならなくなったと聞いた。
ブランシュ様の妹は怖くなり、このままでは心身共に弱って死んでしまうかもしれないのに。伯爵は何事も無かったかのように、以前と同じように妹を指名した。
伯爵で金払いもいい事から邪険にも扱えず、どうしていいかわからないという事だ。
そこで、侯爵である私に恋人のふりをしてほしいとブランシュ様は頼んできたのだ。その男は貴族階級には弱いので、私と恋人同士だと知れば、諦めてくれるのでは? というブランシュ様の算段だ。
それならば公爵様の愛妾であるブランシュ様が直接交渉すれば良いと思ったのだが、どうやらその男が言うことを聞くのは、貴族階級の男限定らしい。
(なるほど、面倒な男だな)
恐らくブランシュ様が私に恋人役を、と打診してきたのは、私がそう言う職(娼婦)など、自分の体を売ってお金を稼ぐような女性を、密かに見下していると分かった上での行動だろう。
自分が心の底で見下しているような職に就いている女に、私が本気にならないと思っての行動だ。さすが、公爵様の愛妾を務めるお方だ。
私のことなど、お見通しだと。私のように娼婦を嫌がる男に屈辱、娼婦の恋人という屈辱を味わわせて、楽しんでいるのだ!
女を舐めるんじゃないと‥‥‥
「ハァ、気が乗らないが、余計な噂がこれ以上広がるよりマシだろう」
私がブランシュ様の妹の恋人役をしてくれたら、城で蔓延しつつある『シリウスは娼婦を見下しているのに娼館に通うクズ男』という噂を帳消しにして下さると約束してくれた。
てか何だその噂、最近私の扱い酷くないか? スズメバチになったり、ヴァレリア様には情け無いところを見られ、その上振られるし。あの我儘クソ王子となんだかんだ言いながら結局ご婚約するし‥‥‥
「思い出したら腹が立ってきた」
ビキビキと額に青筋を浮かべる。いかんいかん、冷静にならなければ! 私はシリウス。シリウス・ド・バディエール。表向きは紳士で、あの我儘王子二人の相手は、私ではないと務まらないと思われているのだから! そんな噂を流されたら立つ背がないだろう!
「ええと、確かブランシュ様の妹の名前は」
はは、こんな偶然があるとはな‥‥‥
「ブランシュ様の妹の源氏名は、マルグリット、本名は‥‥‥」
【ヴァレリア・ヴィルジニア‥‥‥】
シリウスが可哀想すぎてついついいじめちゃうの( ;∀;)ごめんねシリウス君!
本当はシリウスはすごいんだって事をただの自己満足で書きました。ただの自己満足です。
ここまでお読みくださってありがとうございます!
こいつ(私)めっちゃシリウス好きじゃん!と思った方は広告の下にある☆に点を付けてくださいね。この偽恋人との行方も気になる〜と思った私は、楽しみにしていてください!
ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね。