表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
133/269

第一章完結・ヴァレリア

前回ヴァレリア様とレクターの絆をまざまざと見せつけられ、自分は本気でヴァレリア様の事を好きだったと知り、絶望のままにテラスを去ったシリウス。


ヴァレリアは何を思うのか?

 しばらくすると、レクターが装備を整えてやってきた。


「待ったか? ヴァーリャ」


「私も今来たところですわ、レクター」


 俺はヴァレリアの剥き出しになっている首元を見た。


「ヴァーリャ、これを」


 そう言ってレクターがヴァレリアの首に巻いたのは赤いマフラー。


(首飾りが見えなくなるのは寂しいが)


「俺はこれを羽織るから」 


「あ、それ‥‥‥」


 オシリスさんの家に置きっぱなしにしていた私のマント‥‥‥


「俺はこれがちょうどいい。小さいが、ヴァーリャの匂いがするし、外に出ても魔剣のおかげであまり寒さを感じないしな」


「も、もう//匂いとか、変態っぽいからやめてくださいよ、一応一国の王子なのですよ??」


 ヴァレリアは顔を真っ赤にして照れている。可愛いなぁ。


「ははっ、ヴァーリャの前では俺は変態になってしまうらしい」


「あっ、変態と言えば、先程シリウスに会いましたわ」


「なんだと!?」


 一気に殺気が込み上げてきた! あの野郎、昨日スズメバチになって転がってたくせにもう立ち直ったのかよ、てか立ち直り早!


「わわ、抑えて抑えて! シリウスは私とニーズヘッグにお礼を言いに来たのですわ」


 俺の殺気に気付いたヴァレリアが慌てて殺気を抑えるように言う。


「お礼? 昨日のか」


「そう、お礼を言ったかと思うと、泣きながら去っていったわ。その、シリウスは‥‥‥。私に」


『本気で恋してたみたいだぜ。ずっと見ていたがヴァーリャに手は出さなかったぞ。生意気なあいつにしては英断だ』


 テーブルに並べられた菓子をほとんど食い尽くしたニーズが言う。


「私以外にも素敵な方はたくさんいらっしゃるのに、意外と一途だったのですね。立ち直ってくれるといいんですが」


「お前あんな奴の心配をしているのか? 何回も怖い目に遭わされているのに」


「でもその度にレクターが助けてくれるじゃないですか」


「そ、それはそうだが//」


 ヴァレリアは少し考えて口を開いた。


「ねぇレクター、私考えてしまったの。レクターには婚約者候補が沢山いたでしょう? もしレクターが、その人のうちの誰かと婚約したらどうしようって」


「俺はお前以外とは結婚しないぞ」


 婚約したばっかりで何を言ってるんだ。ヴァレリアは。


「例えば、の話ですよ! もし、もし、そ、そんな事になって、いたと考えると、」


 そう言ったかと思うと、ヴァレリアの瞳から涙がポロポロ溢れてきた。


「お、おい!」


【私は、きっと最初から、誰かを好きになってはいけなかったのですわ】


 そう思っていた時もあったけれど、今はもう‥‥‥


「‥‥‥。耐えられそうに、ないですわ」


 シリウスもきっと、こんな気持ちだったのだと思うと‥‥‥


「私なら、耐えられない」


「ヴァレリア‥‥‥」


 ば、馬鹿だなぁ〜ヴァレリアは! 例え話を自分から持ち出しといて勝手に想像して泣くなんて!! もう本当馬鹿!// 本当可愛い!//


 でも、嬉しい‥‥‥


 ヴァレリアが泣くほど、俺のことが好きだなんて。


「おいでヴァーリャ」


 そう言うと、俺はヴァレリアを抱きしめる。少し戸惑いながらも、素直に俺の腕の中に入ってくるヴァレリア。か、可愛い//


「俺がお前以外を選ぶわけないだろ」


 以前の俺だったらそれこそ適当に選んでいたかもしれないが‥‥‥。見た目と地位だけで、いずれ国王となるに相応しい、適当な女を。


 俺が考えを巡らせていると、ヴァレリアは顔を真っ赤にして俯いていた。今は俺の腕の中でソワソワして落ち着かない様子だ。シリウスの件がよほどショックだったのか? と思ったら俺から体を離し、顔を上げ、(まく)し立ててた。


「そう、それでなんですけど! シリウスにも素敵な方を紹介していただけないかしら!? ほら、失恋を忘れるには、新たな恋をするに限るって、何かの本に書いてありましたわ!」


 良い事を思い付いたかのようにヴァレリアがキラキラした純粋な瞳を俺に向けた。


「えっ? それって俺がシリウスにお膳立てしてやるって事?」


 俺はあからさまに嫌な顔をした。


「ぶはっ、なんですかその顔は!?」


 コロコロと笑うヴァレリア。


 こいつは本当にわかっていない。危機感が圧倒的に足りない。その情けを見せた瞬間に、足元を(すく)われるとは考えないのか? シリウスは今回は諦めたようだが。またヴァレリアが情けをかけているんだと知れると、勘違いされるかも、とは考えないのか?


 俺の視線に気付いたヴァレリアが微笑む。


「私は平気ですよ、レクターがいるから」


 そう言うとヴァレリアは赤い顔はそのままにニッコリと、いたずらっぽく微笑んだ。


 こっ、コイツ! 昨日の夜の俺の葛藤を無にする気か?


「はぁ〜、わざとじゃないのがタチ悪いよなぁ」


 俺は首元を参ったという感じで掻きながら口を開いた。


「私もそう思いますわ。シリウスももっと考えて行動すれば、あんな風に傷付く事もなかったのに」


『多分王子はヴァーリャの事を言ってるんだと思うぜ』


「えっ」


「全く‥‥‥」


 最後の菓子を食べ終えたニーズヘッグがふぁぁ、と欠伸(あくび)をし、ヴァレリアの胸に戻っていった。




シリウスがどうたら言いながら結局はイチャイチャしてただけの回でしたね。すみませんちょっと短めでした!


一応ここで第一章は完結です。長かった〜。すみません本当は王子と婚約したところで一区切りにしたかったんですが、ヴァレリアとアナスタシアの会話を入れてから終わりにしよう!と思い変更しました。

お城に来る事ももう相当後になりますしね!色んな人、もの、そして城とのお別れを済ませて、心機一転冒険に移ろうと思いましてな!


次回はいよいよ冒険再開です。


※エリーは馬に鞍つけたりしてました。


ここまでお読みくださってありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ