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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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シリウスのカタオモイ

アナスタシアに真実を告げて別れたヴァレリア

テラスにてレクターを待つのだった。


そこには先客がいて‥‥‥

 私はテラスでレクターを待つ事にした。


 テラスには先客がいた。


「ん? シリウス?」


 シリウスは私に気付くと目を輝かせてお礼を言った。


「ヴァレリア様、ヴァレリア様が助けてくださったと聞いて私は感謝しています! どうか今までの無礼をお許しください!」


 えっ? シリウス? 昨日までスズメバチだったよね? もう立ち直ったの? 早!


 私は椅子に腰掛けて、シリウスにも座るよう促す。


「おはようシリウス。確かに私が助けたけど、たまたまですよ? 私というかニーズヘッグが毒の悪魔だったし。解毒しただけですから」


「ニーズヘッグ?」


 シリウスは何故か私の隣に腰掛けて話す。


「うん。私はニーズヘッグというドラゴンを支配しているの。元は取り憑かれていたんだけど、私が支配されるのは性に合わなかったから、逆に支配しちゃった! でも今ではすっかり友達よ」


 私がそう言うと、胸元からボヨンとニーズヘッグが顔を出した。


『へっ、俺様は本当はお前なんぞを助けたくなかったんだがな。ヴァーリャが言うから仕方なく助けてやったって感じ〜』


「シリウスを助けたのは実質このニーズヘッグよ。だからお礼をするなら私じゃなくてニーズヘッグに」


「なっ、お前が?」


 シリウスはそう言うと高級娼館(ラ・パイヴェ)での出来事を思い出していた。


「お、お前は、私がキスしたドラゴンじゃないか!!」


『あー、そんな事もあったな。てか気持ち悪いからそんな事思い出させんな』


 ニーズは胸元からボヨンと出て、テーブルに置いてあるお茶とお菓子をつまむ。


「シリウス? 大丈夫?」


 シリウスは固まっていた。


 なんということだ‥‥‥。この私が、あ、悪魔に借りを作ってしまうなど。バディエール家の長男として、なんと恥ずべきことを!


『そんな落ち込むなって。大体お前、俺様に助けられる前から色々やらかしてんだろうが』


 ニーズヘッグ? という小さなドラゴンが菓子に(かじ)り付きながら言う。


 確かに、私は(主にヴァレリア様関係で)何かとトラブルを起こしてきた気がする! あの時とかあの時とかあの時とか!


 私はヴァレリア様を見つめる。


 ドレスの代わりに革鎧を見に(まと)い、娼館の時とは違い化粧もしていない! のに! 匂い立つような色気は健在。そして紫色のキラキラした輝く瞳!


 はっきり言ってこれはこれでアリだな‥‥‥。飾りっ気のないヴァレリア様もめっちゃいい//


 いや、でもヴァレリア様は昨日王子と婚約してしまわれたのだ。


 ちょっと待てよ‥‥‥


 そもそもの発端は、ヴァレリア様がいきなり王子の執務室に来て、一方的に婚約破棄を申し出て、冒険者のような格好をして出て行ったと思ったら、王子まで冒険について行くと言い出して、久しぶりにお城に戻ってきたヴァレリア様は見違えるほどお美しくなっていて‥‥‥


 私のように心乱される男がいても、何らおかしな話ではない!


 この時私は気付いた。


 全ては、ヴァレリア様から始まったのだ!


 ヴァレリア様の紫のキラキラした瞳を見る! この瞳‥‥‥。この瞳が私を惑わす、王子も。ガルシア様も。この不思議な瞳に見つめられては‥‥‥。抗えない。


 でも、ヴァレリア様は、王子の婚約者で‥‥‥


「シリウス? 本当に大丈夫なの?」


 私が考え込んでいるのを見て、ヴァレリア様が心配そうに私の顔を覗き込む。


 ヴァレリア様の首筋、柔らかそうな唇。紫の輝く瞳!


 その全てが目の前にあるのに、手を伸ばせば触る事ができるのに、ヴァレリア様が婚約なさった今は、私は触れる事もできない‥‥‥


 その時キラリと光るものが私の目に映った。


「ヴァレリア様、その指輪は?」


「あっ、これ? レクターの瞳と同じ色の石を見つけて指輪にしてもらったの! レクターの瞳はいつもは青だけど時々金色になる事があるじゃない? その色なの」


 まぁ、少々派手ですが(汗)


「私はこの指輪を付けている事で、いつでもレクターを感じる事ができるのですわ」


「‥‥‥ッ!!」


 その時、私の胸がぽっかり空いて、何かが崩れていく音を聞いた。


 なんて、強い絆‥‥‥


「ヴァレリア様、私は」


「え‥‥‥」


 私の目からは、滝のように涙が次々と溢れていた。私はヴァレリア様の事が本気で好きだったのだ‥‥‥。止めようとしても止められない、涙!


「シ、シリウス‥‥‥」


 ああ、そんな目で見ないでください! ヴァレリア様はお優しいから、勘違いしてしまう。


「ヴァレリア様、もう、お会いすることはないです‥‥‥」


 違う、本当はヴァレリア様に会いたくない! 会いたくない!


「ヴァレリア様の、顔を見るのが、辛い‥‥‥」


 さすがの鈍ちんヴァレリア様にも、このシリウスの心が崩れる音には気付いたらしい。


「‥‥‥。シリウス、何を情け無いことを言っているのです? 何も女性は私一人じゃないのですよ? 貴方はまだ若いわ、きっと私以上の素敵な女性が‥‥‥」


「ヴァレリア様よりも、美しくて聡明な女性などいない!」


 びええ〜ん! と言ってシリウスはどこかへ立ち去ってしまった。


『ふーん、ヴァレリアの事、本気だったんだな。アイツ』


 ニーズヘッグがおやつを頬張りながら言った。


『あいつ生意気だけど、結構苦労してるんだよな。生意気だけど、ちょっとばかり可哀想だな。貧乏くじばっかり引いて』


「‥‥‥」


【ヴァレリア様よりも、美しくて聡明な女性などいない!】


 シリウス‥‥‥


「大丈夫よ、シリウスは案外図太いところがありますから! じゃないとあの我儘王子のお世話も務まらないし、スズメバチにされたのに、何もなかったようにできないわ」


『それもそうか』


 ヴァレリアはシリウスの去った方をしばらく見ていた。


【ヴァレリアの事、本気だったんだな】


 先程のニーズヘッグの言葉を思い出しながら‥‥‥



シリウス、婚約前は結構やらかしてたけど婚約したからには手を出さないって、めちゃめちゃ男らしいというか、大人だなって思うのは気のせいかな?

惚れ直しましたよ私は!


しばらくは立ち直れないよね、わかる!


でもなんとなくだけど、今回もヴァレリア様が何とかしてくれるんじゃないかな?知らんけど。


※本当はシリウス闇堕ちとかいうパターンも考えてたんだけど可哀想すぎるのと笑えないのとで没になりました。


ここまでお読みくださってありがとうございます!



シリウスわかる〜!失恋ってちょっとやそっとじゃ立ち直れないよね!て思った方は広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!シリウス昨日スズメバチになってたのに立ち直り早すぎてワロタと思った方は私も同じ事思いました。


ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね!

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