レクターとガルシア
平和堂で一旦別れたヴァレリアとレクター。
ヴァレリアはアナスタシアの部屋へ。
一方レクターはガルシアに会いに行っていた
※今回会話文多目でやや読みにくいかもしれません
一方その頃レクターはガルシアの元を訪れていた。
ガルシアの部屋だ。玉座の間ほどではないが、天井が高く、ガルシアが統治していた時代の肖像画がデカデカと置いてあった。
髪はレクターと同じ栗色だが、やや赤みが強く、肌はレクターと同じ褐色。レクターと同じ澄んだ青色の瞳がこちらを静かに見据えている。
「ふむ、今もそうだがこの時も俺ってなかなかの美形だなぁ。そう思わんか? フランシス」
「フランシスじゃなくてすまん親父、レクターだ」
ガルシアが振り向いた先にはフランシスではなくレクターがいた。
フランシスはレクターの後ろで背を正していた。
「わぁレレレレクター?? なんだお前ヴァレリアと一緒にまた旅に行ったんじゃないのか?」
「そのつもりだよ。その前に親父に話があってな、どうして政務を担当する気になったんだ? 親父は嫌いだったろ、そういうの。まぁ、俺も嫌いだけどさ」
ガルシアは一瞬ポカンとしたが、ああ、と言った感じで口を開いた。
「ああ、その事か、実はシリウス君がーーーー」
ガルシアは自分が政務を執り行うに至った経緯を話した。
「まぁそういうわけで、シリウス君によるとテセウスは役不足らしいから、私がやる事になったのだよ! 条件付きで! フランシスを相談役に付けるという条件をね!」
そう言ってガルシアはフランシスの肩を抱く。
「‥‥‥。あー、もしかして親父がやる気になったのって、別にテセウスがどうとかではなくフランシスが側にいるからか?」
レクターがそう言うと、ガルシアとフランシスがしばらくお互いの顔を見つめ合う。
「ワハハハハ! そうかもしれんな! 確かに、フランシスがいなければ私はあのまま庭師の真似事をして余生を過ごしていたのかもしれん!」
ガルシアが豪快に笑うのを見て、レクターは小さなため息を吐いた。
「だったら親父はヴァレリアにうんと感謝しとけよ。元々はヴァレリアがユーリを勧誘したんだからな」
レクターがそう言うと、ガルシアは笑うのをやめて急に真剣な表情になった。
「そうだった。ヴァレリアは不思議な女性だ。何か運命的な導きを感じるな、ユーリと言い、お前の事といい‥‥‥」
お前は変わったよ。バルカにいた時よりずいぶんと表情も変わり、明るくなった。
前は、周りの大人たちよりもずっと大人びていて。いつも貼り付けたような笑顔で、その上仕事ができるから、どんどん自己中で我儘で傲慢になっていって云々‥‥‥
ベラベラと話すガルシアを見て、コイツ本当によく話すな、とレクターが思っていると、フランシスと目が合った。
「挨拶が遅れたな、ユーリのお父上。フランシス」
レクターはそう言うとサッと右手を差し出した。
慌ててフランシスがその手を握って握手をする。
「名前を呼んでいただいて光栄です。レクター王子、ユーリがお世話になっていたみたいで」
「ははは、フランシス! レクターの前でそんな堅苦しい挨拶はしない方がいいぞ! コイツはそういう城のしきたりやルールが昔から嫌いなんだよ。まぁ俺もそうだけど」
「そうみたいだね、二人とも似たもの親子だね」
それを聞いてレクターは不満気に口を開く。
「俺は親父みたいに適当じゃないぞ! めんどくさがって政務を途中で自分の息子に丸投げしたりはしない」
「それはすまん、つまらんもんはつまらんかったのだ」
ガルシアは何故か偉そうに踏ん反りかえって言う。
「ガルシア、それは大人気ないよ。撤回する、君たちは似たもの親子などではない。ガルシアが適当すぎる」
「へぁ!? なんだよそれ!? フランシスは俺の味方じゃなかったのか!?」
「いやだからね? そういうところだよガルシア」
フランシスは苦笑しながらガルシアを宥める。その様子を見てレクターは思わず吹き出してしまった。
フランシス。面白い男だ。親父は本当にフランシスが大好きで、心から信用しているのだな‥‥‥。このバルカの宮殿で、そんな相手を見つけられるのは奇跡と言っても過言ではない。バルカ城は伏魔殿、たとえ表向きは笑っていても、腹の中では媚びを売り、地位や名誉を得る事に必死な輩ばかりだ。
親父は本当にいい友達を持ったな。この調子なら、バルカを親父に任せても大丈夫かな‥‥‥。えっ?でも元々はユーリじゃなかったっけ? その辺は大丈夫なのか? フランシスは。よくわかんねぇな。
「ところでガルシア。前から疑問だったんだけど、君はどうしてレクター王子がバルカのしきたりが嫌いな事とか、仕事ができるとか、我儘な事を知っているの? レクター王子が4歳か5歳になる頃にはもう引退していたんだろう?」
「ん? ああ、それは‥‥‥。なんかわかるっていうか、なぁレクター?」
うまく説明できないガルシアの代わりにレクターが答える。ガルシアはよく喋る割にこういう時の説明は得意ではないのだ。
「王家に代々伝わる魔剣のおかげだ。魔剣は7本あって、王になる者は魔剣が選ぶんだが、親父も一応魔剣の持ち主だ。魔剣を持つ者。王家の者ならば、魔剣を通してなんでもお見通しというわけだ」
「一応ってなんだよ一応って! やっぱお前可愛くないぞ! 息子のくせに!」
「ガルシア落ち着け落ち着け!」
フランシスとガルシアのやり取りを見て、レクターがボソリと呟く。
「‥‥‥。まぁ、魔剣を通さないと逆にこっちの様子は探りようがないんだけどな‥‥‥」
つまり‥‥‥。ガルシアは自分の息子が気になってしょっちゅう魔剣を通してレクター王子の様子を見ていたと‥‥‥
「へぇ! なんだかんだ言って、やっぱり自分の息子の事を気にかけてたんだな! ガルシアは本当、変なところで意地っ張りだなぁ」
「はぁ!?//ぜぜぜ、全然気になってねーし! レクターが生意気だから、大人の反感を買っていないか心配だったの!」
「やっぱり心配していたんじゃないか! ガルシアは本当素直じゃないなぁ」
「だから違うってーの!!//」
レクターはガルシアとフランシスからは隠れて、その顔を綻ばせていた。
父親に気にされていた事が、素直に嬉しかったのだ。
ガルシアお父さん自分の息子に嫉妬して可愛い。
なんだかんだ言いながら心配してるのも萌えポインツ爆上がり。
それにガルシアにはフランシスという心強い味方がいて羨ましいなオイ!
途中で王子が言ってたけど、ガルシアはユーリの体って事忘れてないですかねこれは。(苦笑)色々と大丈夫か?
ところでシリウス君はどこに行ったんですかね?
ここまでお読みくださってありがとうございます。