ヴァーリャ
前回、毒虫に変身してしまったシリウスを無償の愛で助けたヴァレリア。
何事もなかったかのように(笑)レクターと二人で平和堂に向かうのだった。
なんだかんだ言いながら平和堂に着いた二人。ヴァレリアはエリーを呼び、コルセットを緩めてもらい、ついでに着替えを手伝ってもらっていた。
王子は別室でくつろいでいた。なんせ平和堂は広いので幾つもの部屋があり、その一つ一つにくつろぐ為のベッドが用意されているのだ。
「お嬢様婚約式の日に大変な目に遭いましたね! お体は大丈夫ですか? ニーズが憑依したと聞きましたが?」
コルセットを外しながらエリーが口を開く。
「ええ、平気よありがとう! ニーズは私を手伝ってくれたのよ。シリウスのことだから、また何かやらかすと思っていたけど、まさか毒虫に変身するとはね。ほほほ」
「ほほほ、じゃないのですわお嬢様! もしシリウスが毒虫じゃない他の物に変身してたらどうする気だったんですか? 例えばセトの背丈を優に超えるトロールみたいな化け物とか!」
「その時にはレクターがなんとかしてくれるでしょう? 私を助けてくれるのはいつもレクターなのですから」
エリーはハァ、とため息を吐いた。
「はいはい、ごちそうさまです」
* * *
「ヘクショッ!!」
あいつら何を話してるんだ??
レクターはベッドに横になり、煌びやかな天井を見ながら考えていた。
(俺婚約‥‥‥。したんだよな、ヴァレリアと)
俺はふと指輪を見る。指輪には金と紫を合わせたような石が光っていた。思わず顔がにやけてしまう。
「ははは」
もう、何にも誰にも遠慮する事は無くなったのだ。ヴァレリアは、俺と婚約したのだから!
シリウスの毒虫騒ぎで忘れていたが今さら実感が湧いてきた! 喜びも、嬉しさも! 何もかも全て! しかも婚約したからといって城には留まらず、またヴァレリアと冒険ができる!
ああ、なんと素晴らしいことか。
(少しだけ)気がかりだった政務は、何故か親父がやってくれるというし。
あとは‥‥‥。ヴァレリア、と、いつかはむむむ、結ばれたいな‥‥‥。なんて。夜伽用の女なんぞにこんなトキメキは覚えなかったが‥‥‥。今はヴァレリアとそんな事になると考えただけで胸が高鳴る。
【そうすればどこにいても、レクターを感じる事ができますわ。私はそれだけでいいのです】
可愛い〜!! なんであんな可愛い事言えるかねヴァレリアは!!
「俺もそう思うよ、ヴァレリア」
『何ニヤついてんだ、このスケベ』
いつのまに来たのだろう、ニーズヘッグが目の前にいた。
『ヴァーリャはやらんぞ、いくら婚約したとしてもだ』
「ヴァーリャ?」
『ヴァレリアの事! 愛称だよ愛称!』
「んー? お前ヴァレリアと俺を一時期さっさとくっつけたがってなかったか??」
【俺様は王子が最初と比べて積極性が無くなった事を心配しているのだ! 王子はもっとガンガン行くタイプだったろ?! キスとかも最初の頃はヴァレリアの許可無しにしていたし、ヴァレリアを他の男に取られたくないならさっさとーーーー】
「などと言っていたような気がするのだが?」
俺は顎を撫でながら思い出しながら言った。
『あの時はお前の雄が枯れてないかマジで心配だったから言ったんだよ!』
「ニーズヘッグ! お前俺のことを心配してくれてたのか! はは、これは可愛いな!」
ニーズを抱きしめようと伸ばした手をべっと尻尾で叩かれる。全然痛くないけど。
『べべべ、別に!//お前の事なんか心配してねーし! ヴァーリャの将来の伴侶だからちょっと気になったんだよ!』
「はいはい、お前もヴァレリアに似て素直じゃないなぁ。てかヴァーリャって‥‥‥。その愛称で呼ぶ事ヴァレリアは嫌がっていないのか?」
『えっ? だって普通に可愛いじゃんヴァーリャ。ヴァレリアもきっと喜んでくれると思うぜ』
ニーズヘッグはそう言うとさっさとヴァレリアのところへ行ってしまった。
「ヴァーリャ、か」
確かに可愛いな//あとで俺も呼んでみようかな‥‥‥
てかこの部屋、広い割にでかいベッドが一つしか無いんだよな。
※〜以下、レクターの妄想〜
「こっちへおいで、ヴァーリャ」
「ええ、レクター」
コルセットを外したヴァレリアはほとんど下着姿で部屋に来ていた。
「ヴァーリャ、俺にもっと可愛いその姿を見せてくれ」
「はい//レクターになら、私、私‥‥‥。全てを任せても良いですわ」
〜妄想終了〜
「なんて事になったら嬉しいなぁ、基本的に婚前交渉はタブーだけど、据え膳食わぬは男の恥と‥‥‥」
俺がニヤつきながら考えを巡らせていると、ヴァレリアが入ってきた。
そこにはコルセットを取り払って、コルセットの代わりに軽めの革製の鎧と軽めの短剣を支えるベルトを纏い、革製のズボンに編み上げの皮のブーツ! いつでも冒険に行けるように新たな装備を着用したヴァレリアがいた。
「どうですこの装備! お世話になった道具屋さんから取り寄せましたの!」
そう言ってヴァレリアはくるりと俺の前で回ってみせる。
うん、俺が間違ってた! ヴァレリアが下着姿で入ってくるなどと期待した俺が馬鹿だった!
「うん、似合うよ。ヴァレリア」
俺は仕方なくそう呟くしかなかった。
ヴァレリアの胸の谷間からピョコ、と顔を出し、ザマァ〜という感じでニーズヘッグが舌を出していた。
てかお前またその場所が定位置なのかよ!!羨まし‥‥‥。まぁヴァレリアがいいなら良いか。
(あ、指輪)
ヴァレリアの指には先程贈った俺の指輪が光っていた。もちろん、街の商店街で買ったネックレスも。
【そうすればどこにいても、レクターを感じる事ができますわ。私はそれだけでいいのです】
俺は先日のヴァレリアの言葉を思い出していた。
「俺もそう思うよ、ヴァーリャ」
「ななな、なんですのいきなり//」
「ははは、なんでもないよ!」
俺は何とも言えない気持ちで胸がいっぱいで思わずヴァレリアを抱きしめていた。
愛しいヴァレリアを感じることができる、それはこれ以上無い幸せじゃないかと!
イチャイチャを見せつけられる私‥‥
うおおお羨ましいぞ二人とも!( ;∀;)
ここまでお読みくださってありがとうございます!
もうニーズヘッグヴァレリア様の事好きすぎるやんけ!と思った方は広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!王子、紳士だねぇ〜と思ってしみじみした私は、私と仲良くなりましょう!(?)
ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね!