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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
123/269

アイシャ

翌日、婚約したのはいいものの、まだ悩んでいる様子のヴァレリア様。

そこへエリーが朝食の準備ができた事を知らせにやってくるのだった。

 翌日、オシリスの家にて。


 化粧を落としたヴァレリアは、ドレッサーの前でシトリンの髪飾りとレクターがくれたアメジストのネックレスを身につけていた。


(ふふっ、レクターからの贈り物)


「ていうか勢いで言われたけど婚約かぁ〜」


 私はヴァレリア(中身はアナスタシアだけどもう戻らない)。昨日の夜、レクター王子から婚約を受けた。んだけど‥‥‥


「ぬぅあああ〜!! でもでも! やっぱりモヤモヤしますわ。婚約者って、婚約者じゃないですか?? レクターは結婚するまでは自由にしていいって言ってくれたけど、所詮は口頭だし‥‥‥」


 私がそうして一人でジタバタしていたその時、ノックの音と共にエリーの声が聞こえてきた。


「何を騒いでいますの?」


 エリー‥‥‥


「お食事ができたので、呼びに来たんですが。まだ早かったですか?」


「エリー!! どうしましょう! 私、私‥‥‥」


 ドアをバーンと開けて、私はエリーに抱きつきながら泣く。


* * *


「という事があったのですわ!」


 私はエリーに会わなかった時の事を色々と説明した。高級娼館(ラ・パイヴェ)での事、シリウスの事、パーティーの後の事、そしてレクターとの婚約の事‥‥‥


「お付き合いするのは私もレクターがすすすす好き、ですから一向に構わないのですけど‥‥‥。婚約者となると、今までのように好き勝手できないのではと思って‥‥‥。全国民に披露するわけですから‥‥‥」


 私は朝食を摂りながらエリーに話す。エリーは私にお茶を淹れながらふんふんと聞いている。


「つまりお嬢様は婚約した後もこういう冒険を続けたいのですね? でも王子の婚約者となると、それも自由にできない事を危惧(きぐ)してらっしゃると」


 (そう!それ!)


 私はパンをもぐもぐしながらエリーに「その通り」のジェスチャーを送る。


「では、婚約を決めるにあたって王子に何か書面で約束事を決めていただくのはどうですか? この事を了承していただかないと婚約しません。というような」


 大丈夫、今の王子でしたら快諾(かいだく)してくださいますよ?


(王子はきっとシリウスを始め色んな男性から粉をかけられるのを見て、それで婚約を焦ったのだわ)


「そ、それなら良いのだけど‥‥‥」


 あ、でも‥‥‥


「もし王子がその条件とやらを受け入れてくれて、私たちが婚約する事になったら、お城に行かなければならないですよね」


 そうなると‥‥‥。アナスタシア様は?


【元に戻りたかったら、貴女が死ぬ以外方法はないわ!】


 アナスタシア様‥‥‥。あの時から会ってはいない! いいのかしら。このままアナスタシア様と理解し合えないままレクターと婚約しても‥‥‥


【どうして貴女は私のないものを全て持っているのよ!! 貴女は全てを持ち、私には何もない!!】


 私は最後にアナスタシア様と会った時の、アナスタシア様の悲痛な叫びを思い出して思わず目を閉じる!


「ヴァレリア様、悲しい人‥‥‥。どんなに人を妬んでも、(うらや)んでも、幸せを感じることができない」


「えっ? 今何か仰いました?」


 お茶のおかわりを淹れてこようとしていたエリーが振り向いて言った。


「あっ! えっ! 何でもないの!」


(いけないいけない! エリーは入れ替わりの事を知らなかったのだわ)


 どうしたらヴァレリア様の心を開く事ができるのかしら? 私はいつのまにかレクターとの婚約の事より、その事で頭がいっぱいになっていた。


(やはりアイシャを直接ではなくとも、自分が死に追いやった事が、傷になっているのかしら? でもヴァレリア様は少しも悪くないですのに)


 ヴァレリア様は、ずっとアイシャの事で心を痛めていた。それは今でもずっと‥‥‥。アイシャがヴァレリア様の心の中にいる限り、ずっとヴァレリア様は自分で自分を傷付ける事をやめない!


「アイシャ‥‥‥」


 私はポツリと呟いた。


「あら、宮廷女官だったアイシャをご存知なんですか? お嬢様」


 再びお茶を淹れてきたエリーが口を開く。


「えっ」


 エリーの言葉に、私は耳を疑った。だって、アイシャは、ヴァレリア様の侍女は‥‥‥


「あら? ご存知なかったのですか? アイシャ、本名アイシャ・アブスブール・ド・マンシーニは、元はお嬢様の女中をしていたのだけど、その美しさを認められてバルカ城の宮廷女官となったのです。たちまち宮殿の男達の視線を独り占めしたアイシャは、あれよあれよという間にガルシア様の寵愛を受け、ハンニバル様をお産みになり、第二夫人の座を手に入れたのですわ。当時はその話題で持ちきりでしたわ! 私達の仲間から、まさかそんなシンデレラストーリーが生まれるとはねって! 幼い頃から女中をしていた私にも噂が届くほどでした」


 なっ、何ですって‥‥‥?


「えっ?? では、では! ハンニバル様のお母様は、アイシャ?」


「そうですよ。お嬢様本当にご存知ないのですね。幼い頃だから忘れてしまったのですか? まぁお母様と言っても、まだずっとお若いですけどね! 早くにハンニバル様を授かったものですからね。まだ30代くらいではないでしょうか? でも何故かこの話は女中しか知らない事なのです。ガルシア様に箝口令(かんこうれい)を敷かれてしまっていて」


 あの頃は丁度、ガルシア様が幼いレクター様にバトンタッチして、引退する、しないで揉めていて、ガルシア様もピリピリしていたので、私達は従うしかなかったのですわ。

 何しろピリピリしているガルシア様は恐ろしくて恐ろしくて、箝口令を破ったら何をされるか、わからなくて私達はただ口を(つぐ)んで震えるしかなかったのです。


「まぁ、ガルシア様も引退して長いですし、アイシャも宮殿とは離れている場所にいますし、私はもう話してもいいと思うんですけどね」


 アイシャ‥‥‥。まさかアイシャが生きていて、ガルシア様の第二夫人でハンニバル様のお母様??


 えっ? えっ? じゃあ何故ヴァレリア様のお父様達はあんな嘘を?? アイシャは処刑したなどと‥‥‥


 その時にはすでに「箝口令」が敷かれていた??


「お嬢様?? お嬢様どうなさったんです??」


 もしアイシャがハンニバル様のお母様なら、ヴァレリア様が学園に入学した時に、何故ひと言も声をお掛けにならなかったのかしら?!


 一体何故?!


「うう〜ん」


 ドサッ!!


「キャー! お嬢様しっかりしてくださいませ!!」


「へ、ヒェリー(エリー)、もう私訳がわかりませんわ」


 私は頭が混乱して、視界がぐるぐるになってその場に倒れてしまった!



あべべべべ

そ、そんな事あります?!


第一章完結と言いながらなかなか終わりそうにないですね

すみません( ;∀;)


ここまでお読みくださってありがとうございます。

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