そういえば婚約者でしたね
ニーズヘッグと同化して飛行したヴァレリア。
その視線の先に見えたのは、かつて自身が身を置いていたバルカ城があった。
※視点がウロウロします
少し読みにくいかもしれません
しばらく飛行していると、バルカ城が見えた。
今となっては懐かしい‥‥‥。王子の婚約者になるために、貴族の娘は全員入学するようにと決められた学園に通っていたけれど。今の私は。
悪魔ニーズヘッグと共に生きることを選んだ、ただのヴァレリア。背中には本来あるはずのないドラゴンの羽根。瞳は紫、悪魔の色。
(あと‥‥‥。私はレクターの事が好きで)
このままでいいのかしら? ヴァレリア様の記憶にはアイシャが処刑されてから、お父様もお母様の記憶もない。
「ヴァレリア様のご両親は、ヴァレリア様とニーズヘッグを怖がってる気がするのよね。どう思う? ニーズヘッグ?」
『どうって‥‥‥。そりゃ悪魔として閉じ込めていたやつが解放されちまったら、そりゃ普通の人間は嫌がるんじゃないの?毎日送ってこられる金も、俺様やヴァレリアが何かしに来た時の牽制みたいなもんだろ』
「何かって?? 何をするの?」
『そんなの決まってる。復讐だよ、ヴァレリアのお気に入りだったアイシャを処刑しただろう? その復讐が来ないかどうかビクビクしてやがるのさ、まぁ俺様はそんな馬鹿な事はしないけど。ヴァレリアの両親に何かあったら代替わりして俺様達一文無しで追いだされるよ。お前の両親は俺様を閉じ込めたけど、城下町の奴らにとってはなかなか良い領主だったからな。つまりヴァレリアの両親はいないとダメ、ムカつくけど』
なるほど‥‥‥。ニーズヘッグも色々と考えているのね。
「はぁ‥‥‥。でも一度は挨拶に行ってみたいわ。こんなお金だけ送ってもらって、悪いですし‥‥‥」
『やめとけやめとけ! ろくな事にならない! ヴァレリアは大人しく俺様と王子に守られてるのがいいの! なんで自ら見えてる地雷に飛び込もうとするかね?』
「なななななんでそこで王子が出てくるの!?//」
『なんでってお前は王子の』
「婚約者だろ、俺の‥‥‥」
声のした方を振り向くと、レクターが羽根を羽ばたかせていた。月の光を反射してなんて神々しいの??
私は思わずポカンと口を開けたまま佇んでいた。
「婚約者?あ、ああ‥‥‥」
そういえば今まで「好き同士」にはなっていたけど、婚約とかどうとかいう建設的な話には繋がっていなかったわ。
元々は私も王子の婚約者で‥‥‥。でもそれは実質破棄されていて。ヴァレリア様のお父様には、破棄された事は伝わっているのかしら?
「レクターと私は、まだ婚約者なのですか? お父様には伝えていないのですか?」
「うん、伝えてない。なぁヴァレリア、もうその話はやめないか? ヴァレリアは、俺の婚約者なのには変わらないのだから」
私は顎に手を置いてしばらく考えた。
「レクター? ずっと気になってたんですが、まさかレクターが一緒についてきたのって、私がいきなり婚約破棄しに直談判しに行ったから、気になっちゃったとかそれ系ですか? 俺のものだったのに〜! とか? だとしたらそれってすごく我儘な行動だと思いますよ! シリウスもさぞ苦労してッ‥‥‥。あっ」
レクターがいきなり私を抱きしめる。
「お前‥‥‥。俺の前でその名前を言うな‥‥‥。大体その男に先程何をやられたか分かっているのか??」
レクターの指が肩に食い込んでる。怒ってる‥‥‥
「ごっ、ごめんなさい‥‥‥。でもレクターが助けてくれるって信じてたから」
「‥‥‥。俺がお前を一度でも、助けなかった事があるか?」
ギリギリ、レクターの指が、食い込んで痛い!ごめん。
「な、な‥‥‥。い‥‥‥」
レクター、肩が痛いよ。
「レ、レクター、肩が」
レクターは私の言葉を遮り、抱きしめていた体をばっと放し、目を合わせる。
さっきまで青かったレクターの瞳が金色に変わり、ギラギラと光っていた。まるで炎を宿すようにギラギラと光るその目に私は釘付けになる。
「んっ!」
レクターの瞳に見惚れていたらいきなり唇を奪われた! ちょっと!(怒)私は足でゲシゲシと蹴りを入れる!
「んぅ〜っ//」
口付けが深く、長くなり、頭がぼーっとしてきた。いつもと違う? レクターが怒ってるのが伝わってくる‥‥‥。俺のものってマーキングされてるみたいな激しくて、でも優しくて。キスってこんな‥‥‥。頭がくらくらして、こ、腰から、なにか込み上げてくるような。今までしてきたどんなキスとも違う‥‥‥
「ふぁっ‥‥‥」
レクターの独占欲?? みたいなのが伝わってくる。
私はいつのまにか腰砕けになっていて、レクターに身を任せて、足を蹴るのも止めていた。
「はぁ‥‥‥ヴァレリア、もうおかしな事言うなよ。お前のせいで俺は振り回されっぱなしなんだ」
私の肩に顔を埋めてレクターが言う。今度は肩に指は食い込んではいない。
「うん、ごめんなさい‥‥‥//」
「‥‥‥。まだ時期ではないと思っていたが、決めた! 俺はバルカに戻り、ヴァレリアを正式な婚約者として迎える!」
「へっ?」
唐突なレクターの宣言に、間抜けな声が出た。
『ちょっと待てよ、それはヴァレリアをもう一度城に括り付けておくって事か? ヴァレリアはそんな生き方が嫌で、健康な身体を手に入れた事で城を出たんだが』
私の代わりにニーズヘッグが答える。
「むっ‥‥‥。そ、それはそうなんだが、俺はこれ以上ヴァレリアがいちいち男の目に晒されて、その度に一喜一憂するのは嫌なんだ! ヴァレリアだってそうだろ? 俺以外の男に触られるのは、気持ち悪いって思っていただろう」
【ゾゾゾゾ〜ッと背筋が凍る! 気持ち悪い、レクター以外に触れられることがこんなに気持ち悪いなんて!】
私はシリウスに触られた時の事を思い出していた。
確かに。何故かレクターは平気なのに、レクター以外の男性に触れられるのはすごく気持ちが悪かったですわ。
アルトアも、シリウスにしても、レクター以外には触られたくない! 私はアルトアが近付けた顔の悍ましさを思い出し、思わず身震いをした。
ぎゅっとレクターの手を握ってしまう。
「私、レクター以外に触られるのは嫌ですわ。でもレクターを一喜一憂させてしまうのはもっと嫌ですわ」
それを聞いてレクターの顔がパッと明るくなった。
「という事はもういいよな! 婚約を公にしよう。これで国中にヴァレリアとの婚約が伝わる」
「でも私とニーズヘッグはもっと冒険したいんだが? 公にされてはもう冒険が出来ない!」
ヴァレリア、言葉遣いがニーズヘッグと混同してる。俺はそれに少し笑ってしまった。本当にヴァレリアは退屈させないな。
「わかったわかった! まずはバルカに戻ろう。そこでひとまず婚約発表をしたい。その後結婚するまでは好きにしたらいい、ただしその時には俺も連れて行くことを約束してくれ」
「お、おう。私はそれでいいぜ//まだまだ知りたい事や見たいものがあるからな!」
「ハハッ、そうだな! 俺もだ」
最初はヴァレリアの言う通り、急に婚約破棄を言ってきたヴァレリアが気になって、無理矢理ついていく形で外の世界に出てきたけれど‥‥‥。俺ももっと見たいものや知りたい事が増えた!
何より、俺はヴァレリアが大好きだからな。ヴァレリアと一緒に見る景色や、経験は何物にも変えられない!
「ヴァレリア、愛してる」
「バッ、バッカじゃねぇの!?//」
俺はヴァレリアにマフラーを巻いた。
「そろそろ降りようヴァレリア、寒いだろ」
私はコクン、と静かに頷いた。肌が熱くなるのをマフラーで誤魔化した。
そう!私が引っかかっていたのはそこだ!
この二人って好き同士なのに婚約者とかそういう事は完全に抜けてましたよね二人とも(笑)可愛いからいいけど。
まあ許しましょう!(誰目線?)
そろそろ第一章完結です!
ここまでお読みくださってありがとうございました。
ヴァレリア様懲りないな?鬼メンタルだなと思った方は広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!結局王子我儘じゃないかい!と思った方、私もそう思います。
ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね!