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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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極秘の依頼

ヴァレリアたちは領主ガロにも会ったことだし、ライヒの街に戻ってきた。

酒場に行くとオシリスが依頼書と睨めっこをしていた。

 領主様にも御目通り叶って、ひとまず私たちは街に戻る事になった。酒場にいるであろうエリーとセトの方へ行くと、何やら交渉の最中だった。


 オシリスの元に極秘の依頼が来ていたようだ。なんでも貴族の息子が領地を抜け出してこの街に住み、高級娼館(ラ・パイヴェ)に通い詰めている事を聞き確かめて欲しいという。


「貴族の方、あら私が知っている方かしら?」


「ふむ、見せてみろ」


 レクターが私が見ていた依頼書を奪ってジロジロ見る。


「おやー、こいつは女たらしで有名なアルマンド子爵じゃないか。一時期は何故かバルカにも来ていたけどシリウスにバルカの秩序が乱れると言われて出禁になっていたな。確か領地と言っても小さな物だった気がするがな。こいつの息子が娼館に通っているのか? ははは。シリウスが嫌がるわけだ」


「まぁレクター、まだわかりませんわ! そうでしょう?」


 オシリスは食器を磨きながら口を開く。


「そうだな。極秘で潜入し、確かめて欲しいという事だ。子爵とはいえ、一応貴族様だからな。自分の息子が正妻にもならない女を買っているとなると、穏やかではいられないんだろうよ。自分も散々遊んできた事は棚上げで笑えるよ。そこでその店に潜入し、確かめて欲しいらしい。ただ極秘だけあって、報酬は弾むそうだ、その報酬とヴァレリアの金と合わせてこの店を大規模に改装する」


 オシリスは食器を磨いていた手を止めて、ネフティスに視線を()る。


「その潜入調査には、ネフティスにお願いしたいんだ。ネフティス、良いだろ? 娼館のマダムには言っておくからさ。大丈夫だ、お前は実際買われる事はないよ」


 そう言ってオシリスはネフティスにウインクをした。


「〜〜〜〜////」


 オシリスに惚れているネフティスは顔を真っ赤にしてコクリと頷く。


 娼館‥‥‥どんなところなんだろう。


「私もやりたいですわ!」


 私がそう言うとほとんど食い気味に


「ダメだ!」レクターが言い

「ダメですわ!」エリーが叫び

「俺様も反対だ!」ニーズがどなり

「ワォォーン!!」ケルベロスが吠えた


「そ、そんなに反対しなくても‥‥‥。私も体験してみたいです。滅多に体験できないし」


「ははは、面白いお嬢様だな! 自ら娼館に行きたいとは」


 セトが豪快に笑う。セトだけは冗談で言っていると思っていたのだ。


「ダメだヴァレリア! お前の品位を下げる」


「あら、これはこれで立派な仕事ですわ。それにネフティスさんだけでは心配でしょ?」


 ヴァレリアの紫の瞳がギラギラ光っている。もうこうなっては誰にも止められない‥‥‥


「はー仕方ない‥‥‥。ではせめて俺の目の届く範囲にいること、お前には既に俺という恋人がいる事を事前に伝えておく、マダムにも事前に金は払う。これが()めなければ行ってはならない。オシリスそれで良いだろ」


「ああ、マダムは金を入れてくれるなら喜んで了承するだろう」


「まぁレクター! そこまでしなくても大丈夫ですのに!! 国庫のお金を使うのですか?」


「いや、俺のポケットマネーから払う」


「ははは、王子様は庶民に優しいな」


 オシリスのその言葉にレクターは素早く反応する。


「お前の店のために金は払わんぞ」


「王子の財布の紐が緩むのはヴァレリア様が絡んだ時だけですよね」


 エリーが呆れたように言う。


「まぁレクター、私のためにそこまで‥‥‥。感動しましたわ」


 そう言ってヴァレリアは王子の手を取る。


「あーはいはい、イチャイチャは他所でやってください。話が進みませんわ」


 ウンザリとしたようなエリーの言葉にセトがまた豪快に笑ってみせた。


 娼館のマダムはオシリスの言う通り話を聞いていたようで、ネフティスとヴァレリアを見ると何も言わず奥に連れていき、それぞれに娼館で働いている女性に化粧をさせ衣装を着替えさせた。


「潜入捜査ですって? ワクワクするわねぇ」 


 娼婦の一人が、ヴァレリアに化粧を施しながら言う。あ、そうでしたわ、という感じで思い出したようにヴァレリアは言う。


「この方をここで見ませんでしたか?」


 ヴァレリアは子爵の息子の似顔絵を見せる。


「あら、その方ならこのお店のお得意様よ。いつも娼館の女性が揃った時間に来るから、それまで待っているといいわ。多分今日も来るわよ。まぁ嫌な男だけど、金払いはいいから」


「そうなんですね‥‥‥」


 残念ながら子爵様の話は本当だったわ。しかもこのお方のお話を聞く限り、ほぼ毎日通っているようだわ。


 確か子爵様の話では、息子がいるのを見つけたら上手いこと誘って店外に連れ出して欲しいという事だったわね。


 などと考えを巡らせていると、私は鏡に映る自分の髪と顔を見て驚いた! 髪は短いのにピンか何かを使ってアップにされてシトリンで作られた羽根の髪飾りが付いている。


 真っ赤な頬紅と口紅はヴァレリアの匂い立つような色気をぐんと引き立てている。


「わぁ!? すごいわ、貴女お化粧が上手ねぇ!」


「そう? 貴女は元がいいから特にすることなかったわよ。頬紅と口紅くらいしかすることなかったわ、彼女もね」


 ネフティスの方を見ると、彼女もやや派手な顔になっていた。


「それからここで働く時は、貴女は「ガブリエル」貴女は「マルティーヌ」と名乗ってもらうわ」


 私は「ガブリエル」という源氏名を名乗る事になった。き、緊張しますわ‥‥‥


「さぁ、そろそろ時間よ。表に出て、接客をしなくてはね。

 あ、ガブリエルとマルティーヌは捜査に集中していていいからね。その辺はフォローするわよ。特にガブリエル、貴女は立っているだけで目立つから隅っこにいて大人しくしててね」


 私が緊張しているとネフティスさんが話しかけてきた。


「ねぇあんた、ゴホン。ガブリエル大丈夫なの?? 私はこういうのには慣れてるけど、ガブリエルはこういう所は初めてでしょ? 今からでもやめる?」


「いえ、やってみせますわ、何事も経験ですもの!」


「ハァ〜、あんたも相当変わり者だねぇ。こんな事わざわざ経験するような事でもないと思うけど‥‥‥。ま、行きましょうか! 実際買われるわけではないからね!」


「頼りになりますわ、マルティーヌ」


「ははは‥‥‥。頼りにされても困るけど‥‥‥。なんか嬉しいわ」


 私たち二人は客から見えやすいように玄関ホールに(つど)った娼婦に混じり、出来るだけ隅で子爵様の息子の到着を待つ。


 やがて客が入ってきて、マダムと交渉して、買われた娼婦は次々と部屋に入って行ったり娼館を出て行ったりする。


「ほぁー、結構身なりのいい方も来るんですのね」


「一応高級娼館だからね‥‥‥貴族階級しか入れないはずよ」


 私たちは目立たないところに立ちながらコソコソ話していた。


「あら、アルトア様。本日もいらしてくださったんですのね。嬉しいわ」


 あっ、あの方! 子爵様の息子だわ! 私はネフティスさんの方に目をやる。ネフティスさんは(わかっている)と言うように静かに頷く。


「今日はどうされますか?」


 アルトアという男は値踏みする様に娼館中の女を見回し、やがて目を止めた。


 私のところに真っ直ぐ来たアルトアは、「今日はお前にする」と言った。


「えっ!? 私!!」


 ヴァレリア、ここではガブリエルは、素晴らしいデコルテラインを強調したすみれ色のドレスを着ており、姿勢はスッと伸び、大きく開いた背中は柔らかそうで。いい匂いを振り撒き、明らかに他の娼婦と違うオーラを放っていた。


 だから()えて目立たないところに立っていたのだが、ついに見つけられてしまった。それもニヤニヤした、歯並びの悪いいかにも下品な男に。


(こ、この方が本当に子爵様の息子? たしかに身なりは他の人よりもいいけど、何か‥‥‥。嫌な感じのする男だわ)


「ホホホ、アルトア様相変わらずお目が高い、でも残念ですわ。ガブリエルには既に相方(あいかた)がいるんです。他にも女の子はたくさんいますから」


 他の娼婦が慌ててドレスの裾を伸ばして私を隠すように立ちはだかる。それを無遠慮に振り払い、アルトアは私の方へズカズカと向かってくる。


「そうかお前はガブリエルというのか、新人か? 美しい、今まで会って来たどの女性よりも美しい、何?相方?だがガブリエルはここにいるじゃないか! 俺はお前に決めたぞガブリエル。金はいつもより倍払う。それで良いだろう? 相方と言ってもどうせ大した奴じゃないだろ。ここにお前を置き去りにするような男なんて」


 そう言いながらアルトアは私の手を引く。ゾオオオ〜ッと鳥肌が立つ! レクター以外に触れられることがこんなに気持ち悪い! 少し汗ばんでいるし、笑った時に見える歯並びの悪いこと!


「ちょっとアンタ、話を聞いてなかったのかい? ガブリエルには相方。既に決まった相手がいるんだよ、諦めな」


 ネフティスがすかさずアルトアの手を止めるが、アルトアが邪魔そうにその手を振り払おうとした時ーーーー


 何者かがアルトアの手を掴む。ーーーーその人は。


「あっ、レクター」


 アルトアの手をガッチリ掴むのは、レクターだった。


(レクター、目が‥‥‥目が金色になっているわ)


「何すんだお前! ガブリエルは俺とーーーー」


 アルトアはレクターを睨んだ!


「お前、(俺の)ヴァレリアに何をした?? まさかその汚らわしい手で触らなかっただろうなぁ?」


 アルトアは先程の威勢はどこへやら、レクターの金色の瞳を見た途端腰を抜かした。


 なんだコイツは!!

 視線だけで殺される!!

 嫌な汗がダラダラと出てくる!


 直感的にやばいと思ったアルトアは


「ヒェェ! お許しください!」


 とその場で土下座した。


この話はヴァレリア様の娼婦姿が書きたかっただけの私の自己満足です。煩悩爆発ですみません。


※当時の子爵様は領地を持つ人もいたようですけど、持たない人もいたらしいです

この小説での子爵の地位はすごく低いです。


ここまでお読みくださってありがとうございます。



アルトアちょっと傲慢じゃない?と思った方は広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!ヴァレリア様危機感なさすぎて草と思った方は☆に点を付けて下さいね!


ご拝読ありがとうございました。また読んで下さい。

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