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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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ガルシアがキレた!

前回、ヴァナルカンドからシリウスの手紙を受け取ったガルシア。

フランシスの説得で、しぶしぶレクター不在の城に足を運ぶのだがーーーー

「なんだこれは?」


 私はシリウス。本日ガルシア様がバルカの宮殿に来るので、慌ただしく準備をしている男だ。


 テセウス様が珍しく着替えて出てきて、女中が運んでいる食事を見つめている。普段は滅多に地下室から出ず、腹が減ったら起きてきて。テセウス様はまるで引きこもりの息子である。


 全く‥‥‥。マクシミリアン公ももっと息子殿に気を配ればいいものを。マクシミリアン公もガルシア様も息子に任せて自分はお遊びに興じるのですかそうですか。


「これは白ブーダン(合挽き肉の詰め物)ですよ。今日は先王ガルシア様が来る【予定】なので少しばかりお食事しながらうわぁ!」


 バッサバッサと羽音を立てて二人の前に鳳凰が現れた。


「シェストラ・アーラ!」


 フランシスが何やら呪文を唱えると、半透明の鳳凰は消えていった。


 鳳凰から降りたガルシアが口を開いた。


「君がシリウス君かね? そして君が、影武者のテセウスか。なるほど確かにレクターに似ているな」


 それまで白ブーダンを見つめていたテセウス様が、先王様に気付いて軽く会釈をする。


「ガルシア様、お久しぶりです」


「ハハハ、そうだな君に会ったのはレクターが四歳ごろの時だったな! 確か王侯貴族の集まりの前で、劇を披露した時かな?」


 ガルシアは己の記憶を辿るように顎に手をかけ、目を上に上げる。


「せせせせ先王様!! 急に目の前に現れるから吃驚(びっくり)しましたよ」


「そうか? それは失礼したな。シリウスのところへ真っ直ぐ向かうようにとフランシスが鳳凰に命令したからな!ハッハッハ! いやフランシスを責めないでやってくれ! 君のところへ行こうと言ってくれたのはフランシスなんだ」


 そう言ってガルシア様はフランシスと呼ばれる方の肩をガッと抱く。


「ガルシア、やめてくれよ」


 私はフランシスと呼ばれた男性の顔を見る。ん? このお顔どこかで‥‥‥


「ユーリ‥‥‥」


「あれ? どうして僕の息子の名前を知っているの? ひょっとして知り合いかい?」


「‥‥‥ッ!!」


 そんな、まさか。


「なんだよ照れんなよー!!」


 ガルシアがフランシスの頭をぐりぐりする。


 まさか‥‥‥。ガルシア様と仲良さそうにしているこのお方が平民のユーリのお父上だとは?!


 一体いつ知り合ったのだ??


「あの、お二人はどういったご関係で?」


「ああ、シリウス君に会わせるのは初めてだったか。彼はフランシス。俺の親友、心の友! 魔法学校で知り合ったのだ!」


 なーフランシス! と言いながらガルシア様はフランシスと呼ばれた男の肩をまた抱く。


(ガルシア様は、この平民‥‥‥。フランシス。が大好きなのだな)


「ヴァナルカンドから聞いたよ。何か悩みがあるのだろう? 確かガルシアの息子、レクターの事だったか?」


 こ、この私が、よりにもよってこのフランシスとかいう平民に!


「感謝しろよシリウス君。フランシスがいなければ私は君の元へ来なかったのだからな! ハッハッハ」


 感謝を、しなければ、ならないとは‥‥‥


「貴方のような平民には関係ない事だ」


 自分でも驚くほど低い声が出た。


「えっ」


「何故貴方のような平民に私が感謝をしなければならないのだ!?」


 先王様の前であるのに大きな声が出た。テセウス様が珍しく狼狽えているのが気配でわかる。


 仕方がなかろう!? ご兄弟二人には振り回されて、影武者のテセウス様は滅多に地下室から出てこない! 一体このシリウスに安穏の時はいつ訪れるのだ!? おまけに平民のフランシスとかいう男に心配されないといけないとは‥‥‥


「シリウス君、君は今一体何を言った?」


 ガルシアの発した言葉でその場の空気が変わる。


 ゾクッ


 冷たいものが背中を伝うのがわかった。これはレクター様の殺気を受けた時と同じ感覚だ。


「ガルシア、やめろ! 僕は平気だから!!」


「黙れ。お前を馬鹿にした罪を、それがどんな意味をもたらすかを、このシリウスとかいう男に味わわせてやる」


 ガルシアの周りを赤いオーラが取り巻く。


「‥‥‥ッ!」


 声が出てこない!! レクター様、もしかしたらそれ以上の殺気と邪気を感じる! これは、このままでは殺される? でも手も足もまるで縫い付けられたように動かないのだ!


「ガルシア、やめろ」


 フランシスがポンとガルシアの肩を叩く。


「いいんだ僕は。それに、今から君が使おうとしている魔法、それを使うと僕も巻き添えになるよ? いいの?」


 フランシスの指先がガルシアの肩に食い込む。


「ばーーーー!!!! わかったよ!! でもお前を馬鹿にするのは許さねぇ!! コントゥラクト!」


 ガルシア様はそう何やら唱えた後フランシスの腕を払い除ける。


 ガルシア様の殺気が消えた?? フランシス‥‥‥。何者なのだ? こいつは一体‥‥‥


 ガルシア様が呪文を唱えると紙とペンが浮遊してきた。


「おお〜魔法だ。初めて見た」


 テセウス様は呑気に感動している。てかテセウス様はあのガルシア様の殺気を目の当たりにして何とも思わなかったのか? 鈍すぎる!!


「いいから書けよフランシス」


「いいよ僕は。今更称号なんて、それに僕はもう死んでるんだよ?」


「いいの! 前国王の命令だぞ!!」


「ハハハ、参ったな。名前を書けばいいんだな? わかったわかった。書くよ、ここだな?」


 二人が何かのやりとりをしているようだが、私は顔が挙げられない。


「ほらよ、これで満足か?」


 そう言われてガルシア様が私の前に差し出してきたのは‥‥‥


【フランシス・ジャンカエフに侯爵の爵位を与え、領地を与える。ガルシア=ザルバトール・バアル・ド・バルカ】


 それを見て私は今度は別の意味で声を失った!!


 ガルシア様は呆れたように私の方を見て口を開いた。


「私は、君はレクターの側近だから、てっきり爵位など気にしない男だと思っていたがどうやら違ったようだな! だがもう君とフランシスはこれで対等だ! 好きなだけ話を聞こうではないか!」


「ハハハ、ガルシア‥‥‥。ここまでしなくても良かったんじゃないか? シリウス君が固まってしまったじゃないか」


「俺はお前を馬鹿にする輩は大嫌いなんだ!!」


 そう言ってガルシアは頬を上気させる。


 あ、終わった‥‥‥。私は直感的にそう思った。


「そう落ち込むなよ、俺も一緒に居てやるから」


 テセウス様が俺の肩にポンと手を乗せて微笑む。


 いや、違う、そうじゃない。


「元々は貴方達のせいですよねぇ!!!?!!?」


 私はそう叫び、号泣した!もうマジでゲッソリするほど泣いた!!



シリウス可哀想でワロタ。


ガルシア様はフランシスの為にならなんでもするんです!あれ?これって魔法に全振りというよりフランシスに全振りなんじゃ‥‥‥


ここまでお読みくださってありがとうございます。




あなたはシリウスが好きですか?好きだと思う方は広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!ガルシアが極端すぎると思った方は☆を真っ黒にして行ってくださいね。


ご拝読ありがとうございました。また読んで下さい。

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