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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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ドゥルジの呪い

領主は獅子の頭をしていた。

その姿にレクターは驚くが、ヴァレリアは可愛いと言いながらガロに抱きつくのだった‥‥

 

「ハァ‥‥‥。それでどうしてまたそんな体に?」


 俺はヴァレリアを肩に抱きながらガロに質問する。


 ヴァレリアは俺にガッツリと肩を抱かれているからか、ふくれっ面で俺の顔から目を逸らしている。


 こうしておかないと、ヴァレリアがまたガロに抱きつきかねんからな。


「それがわからないんです。朝起きたらこうなっていて」


「まぁ! 私とヴァレリア様みたいですわね! 私も朝起きたらヴァレリア様になっていて」


「ヴァレリア。今はガロが話す時だから」


 ヴァレリアが嬉々として話し出すのを制し、ガロの話を促す。


「うーむ、心当たりがあるとしたらあの事くらいかなぁ」


「あの事?」


 ーーーーあれは、私がマリーと一緒に街に買い物に行った時でした。


 この街には珍しい、大きな女性がいました。

 女性は大きいだけではなく浅黒い肌にブリュネット色のウェーブがかった髪、紫の瞳。でかいおっぱ‥‥‥。コホン! 獣のような耳が生えて、尻にはふさふさの尻尾が生えていて、最初はサーカスの団員のコスプレかな?と思ったんですがどうも違う。


 尻尾は揺れているし、頭に生えた耳もピクピク動いている。


 まぁケルベロスがいるような街だし、色んな見た目の人間がいてもおかしくないな、と私が一人納得して歩き出した時‥‥‥


 その大きな女性が、尻尾に付けているアクセサリーのようなものを落としたんです。私は何気なく声をかけました。


「落としましたよ、レディ」


 女性が振り返った時、私は思わず息を呑んだ。そのあまりの美しさに!


「あっ、あの! これを落としましたので‥‥‥」


 女性の吸い込まれそうな紫の瞳にもう私はクラクラしていました! なんと不思議な色の瞳だろう! 肉体も魂も引き込まれてしまいそうだ。


「‥‥‥。あっ、ありがとう。レディなんて呼ばれたのは初めてだわ、私はドゥルジよ。これ、拾ってくれてありがとう」


 ドゥルジは顔を赤らめ、私と同じく照れているようでした。


「ちょっと待て? すでにその女性といい感じだったのではないか? マリー以外の女性と触れ合う機会などなかったと聞いたが?」


「まぁまぁレクター、領主様の話を最後まで聞きましょうよ、ね?」


 ヴァレリアは上目遣いでそう言って俺の袖口を引っ張る。わざとかこいつ‥‥‥。あざとい女性のテンプレみたいな事しやがって。いや可愛いから許すけど!!


「そのあとドゥルジにデートに誘われたんですが、うまくエスコートできなくて、なんせマリー以外の女性と(ろく)に会話していなかったものだから」


 てっきり呆れられると思ったのですが。ドゥルジはそんな私を可愛いと言ってくれたんです‥‥‥


「で、間を持たせるためと。もっとドゥルジと一緒にいたいという思いから、普段は飲まない酒をしこたま飲んだのです」


 酒?オシリスの店か?


「私は酔い潰れ、ドゥルジに介抱され。気付いた時にはドゥルジと一緒に寝ていたのです」


 うーむ、それは当然の流れだなぁ。

 酔い潰れたガロ、介抱するドゥルジ。

 行き着く先はどこか休憩できる場所。


「で、これはしまったと思い、ドゥルジに土下座をして謝ったんです! ただ道端で出会っただけの女性とそういう事になろうとは、露ほども思っておらず」


 それは酒場に誘われた時点で察しろよ。


 俺は無意識にフッと笑いを漏らしていた。


「何がおかしいんですの!?(怒) 先程からレクターは領主様に対して失礼ですよ!」


「ははは、すまんすまん。ガロ。続けてくれ」


 ガロは困ったようにまたマズルとウィスカーパッドの間を掻き始めた。俺はまたガロに抱きつきそうになるヴァレリアを抱く腕に力を込めた。


「もう! いいじゃないですか少しくらい!」


「いいやダメだ。ヴァレリアの全てを誰にも触らせてなるものか」


 俺は大真面目な顔で答えた。俺はヴァレリアの事になるといつでも真面目だからな。


「バッ! バッカじゃないの? ですわ!」


 ヴァレリアは頬を真っ赤にして俺から目を逸らす。耳まで真っ赤になっている。俺は気にせず(可愛いなと思いながら)ガロに先を促す。


「それがよくなかったようで、ドゥルジの怒りを買ってしまって」


(貴方は私に恥をかかせるおつもりですか?!)


 と大変怒って部屋を出ていき、私はトボトボと歩いて城に戻ったのです。


 その夜は酷く(うな)され、悪夢を見ました。

 昨日会ったドゥルジがこちらを見下ろして。

 あのキラキラした吸い込まれるような紫の瞳で。

 果実のように甘くていい匂いのする手を

 私の耳元に置いて囁くのです。


(これから先、お前が20歳になる時までその姿で過ごせ)


 という悪夢をーーーー


「で、翌朝起きたらこんな風になっていたんです」


「‥‥‥。うん、それは呪いというより完全にアレではないか? 自業自得!」


 何が「マリー以外の女性に触れたことがなくて」だ! ガッツリやってんじゃないか!!


 ガロは首を捻る。


「じ、自業自得なんですかね!? 私の?」


「それはそうだろう。一緒に寝た相手に対して土下座するなど最悪手だ、しかもお互いに好意を持っていたのに‥‥‥」


 俺は呆れたようにため息を吐く。とはいえ、ガロのこの様子を見るに、本気で何が悪かったのか分からなかったようだ。


「はわわわ、私は一体どうしたら」


 ガロが涙目になって狼狽える。


「でも20歳になれば呪いは解けるのだろう? お前はとっくに20歳になっているはず‥‥‥」


「それは今年のことです!まだ私は19歳で、明日20歳になります‥‥‥」


「なるほど」


 俺はヴァレリアを横抱きにして、そのままぐったりと長椅子に沈みこんだ。


「なっ、なんですのいきなり! 吃驚(びっくり)したじゃないですか!!」


「いや失礼、ずっと同じ体制で疲れたのでな」


「疲れるなら私を離せば良いだけでは??」


「ハァ、わかってないなヴァレリア‥‥‥。俺が手を離すとお前はガロに抱きついてしまうだろう? それを見るのが嫌なんだよ。俺は」


 俺はヴァレリアのサラサラの緋色の髪を指で()きながら言う。


「レクター‥‥‥。私の心はいつでも貴方に寄り添っていますのに、とてもやきもち妬きなのですね」


「うん、とてもやきもち妬きなんだ俺は」


 ヴァレリアは言いながら俺の頬を撫でる。俺はその手に自分の手を重ねて答えた。


(シリウスの奴適当な事言いやがって‥‥‥。気が緩んでいるんじゃないか?)


 ガロはこちらを時々チラチラと見て、マズルを掻き、落ち着かない様子で部屋中をぐるぐる回っている。


「では、私が20歳になると元に戻れると‥‥‥。ただ、それだけでは済まないような気がするんですが‥‥‥」


 ガロの言葉を受け、俺は口を開く。


「ではこのまま待っていよう、今宵の12時に何が起こるか」



イチャイチャを見せつけられるガロ‥‥‥

ヴァレリア様は女子に嫌われるタイプの女子ですね(確信)


シリウスは全く悪くないです(笑)


ここまでお読みくださってありがとうございます!



あなたはこんなあざとい女性を地で行くヴァレリア様は好きですよね?好きだと思った方は広告の下にある☆に点をつけていって下さいね!ヴァレリア様より自サバ女子の方が嫌だと思った方は☆にZEROを付けて行ってくださいね!


ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね。

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