ボーイズトーク??
ガルシアがレクターの尻拭いをしに城へ向かっている頃、レクター達は呑気にお茶をしていた(笑)
レクターとヴァレリアとケルベロスは、オシリスの家でティータイムを楽しんでいた(笑)。ケルベロスはヴァレリアの足元におり、今は全部の頭が眠っている。
「そういえばこの街の領主様はどうされているのでしょう? 一度も挨拶に行っていないけど、酒場に踊り子さん達のスペースを勝手に確保しても良いのかしら?」
私はフレーバーティーを飲みながら聞く。
「領主? ああ、ここの領主の事か‥‥‥。狩りや遊びに熱中しすぎて婚期を逃し、後継ぎがおらず嘆いていると聞いたな」
「へぁ?? どうしてそんな事をご存知なのですか?!」
レクターは首の後ろを掻きながら答える。
「‥‥‥。一応王子だからな。全ての領主の情報の把握は無理だが、今は俺も世話になってる街だから、調べたんだ」
「あ、そうか」
しばらくの沈黙の後、私達は顔を見合わせて笑った。
そうだった! レクターは王子でしたわ! 冒険者の装備があまりに似合ってたので、すっかり忘れていましたわ。あ、ついでに私も一応侯爵家のお嬢様ですわ!
ヴァレリア様のお父様お元気かしら? 毎日お金を送ってくれるから元気ではあるんでしょうけど‥‥‥。一度ご挨拶に行かないといけませんわね。
ヴァレリア様の記憶では、ニーズヘッグのせいであまり歓迎されそうにはないんですけどね。うーむ、よし! ヴァレリア様のご家族に挨拶するのは、もう少し先にしましょう。
「私今度領主様に会いに行きたいですわ」
「そうだな、俺も一度挨拶に行こうと思っていたところだ」
名前は確か。
【ガロ・ラストゥール・ド・クレソン】
「名前だけは一人前だな? この男に後継ぎがいないのか?」
レクターは時々変な事を言う。名前だけは一人前ってどういう事?
「でもこの街のみんなは明るいし楽しく働いているみたいですし、顔色も良いし、言うほど遊び回っていたというわけではないのでしょうね」
「だろうな」
たしかに街は潤っているな‥‥‥。露店の店主も生き生きしていたし、それぞれのコミュニティが充実してるからだろうな。それでもスラムのような場所はあるにはある。
「ハァ‥‥‥」
「レクター? どうしたんですか?」
レクターは私の顔をまじまじと眺め、ため息を吐きながら言った。
「ヴァレリア。やはりガロと会うのはやめてくれないか? 挨拶だけだったら俺だけ行けば済む事だし」
「えっ? なんで?」
私はレクターと一緒に行きたいのに。
「‥‥‥。やきもちを、妬きそうだからかな。今の美しくなったお前を他の男に見せたくない」
ええっ!
「もう、レクターったら何を言っているのですか?? 私が先程やきもちを妬いたから移ってしまいましたか?」
ヴァレリアは時々変な事を言う。やきもちが移るって何だ?
「調べたがガロは20歳らしい。本人は嘆いているが貴族同士の集まりなどを開いたらその歳なら簡単に相手は見つかる筈だ。でもそれをしていない。という事は」
「という事は??」
「ガロがワンチャン(俺の)ヴァレリアに惚れてしまうかもしれないじゃないか!!」
なっ、何を言っているんですの?
「ハァ!? そ、そんな事あるわけないじゃないですか?! 大体私は‥‥‥レクターしか、好きじゃないのに」
「ヴァレリア‥‥‥」
「レクター‥‥‥」
レクターが私を抱きしめようとした時、私の胸からニーズヘッグがボヨンと出てきた。
『ブッブー! ハズレ! 俺様がいる限りイチャイチャ禁止! 大体お前ら何やってんだよ見ててすげぇ恥ずかしかったぞ! 恋愛初心者か? 王子も最初の頃の勢いはどうしたよ! まるでチェリーボグフッ!』
「ハハハハハニーズには本当参ったな! ヴァレリア少し待っててくれ話を付けてくるから」
レクターはそう言って何かを言いかけたニーズの口を塞ぎ、急いで別室に行き鍵をかけた。
「ハァ‥‥‥。ニーズヘッグあんな事をヴァレリアの前で言うのはやめろ。ヴァレリアはまだ何も知らないんだ! 汚れを知らないんだよ!」
『えっ? 俺様が一体何を言ったって? チェリーボーイのことか?』
「それだよそれ! ヴァレリアの事だ。きっと「チェリーボーイって何ですか〜?」とか聞いてくる筈だ」
そのあとの事を想像すると非常に面倒くさい!
『それ聞かれて困る事か? 俺様は王子がヴァレリアと共に行動をし始めた頃と比べて積極性が無くなった事を心配しているのだ! 王子はもっとガンガン行くタイプだったろ?!
キスとかも最初の頃はヴァレリアの許可無しにしていたし、ヴァレリアを他の男に取られたくないならさっさとーーーー」
「ニーズヘッグ、やめろ」
確かにニーズヘッグの言う通り、俺は城では我儘放題遊び放題だった。他人の気持ちも考えようともしなかった。当然、夜伽相手もいた。でも何故か心の中はいつも空っぽだった。どんな女を抱いても満たされない‥‥‥。でも、ヴァレリアは!
『‥‥‥。なんでダメなんだよ、俺様もその時には協力してやろうと思ってるのに』
「確かに俺はヴァレリアに会うまでは好き勝手にやっていたよ。だが、ヴァレリアを好きになってから変わったんだ。前までは、ヴァレリアには何の感情も抱いていなかったのにな」
むしろ、嫌いだった。
ヴァレリアのあのアナスタシアへの憎しみを込めた眼差し。アナスタシアがいなくても、いつもイライラしていて。婚約者の披露宴でも、ヴァレリアだけ下品な踊りを踊っていた。
でも今は、そのヴァレリアが何より愛おしい。
たとえ中身はアナスタシアだとしても、それも含めて全部ヴァレリアだ。今まで嫌いだったヴァレリアのあの緋色の髪も、何よりあの忌々しかった紫の瞳も。ヴァレリアを形成する全てが美しい! 愛おしい!
特に最近は、髪を切ってからのヴァレリアは一層磨きがかかって、あまりの美しさに目が眩みそうだ。気付かなかった。あんなに美しい女性がすぐそばにいたのに。
でも性格が以前のあの性格のままだったら好きにはならなかったと思う。
『ふーん? で? なんでそれがお前がヴァレリアに手を出さない理由になるの? 王子だって我慢の限界じゃないのか? ほらなんか色々と我慢してるじゃん?』
ニーズヘッグは今までのあれやこれやを思い出しながら言った。
確かに俺も色々と我慢の限界が来ている。だが。
「ヴァレリアを、他の女と一緒にしたくないんだ‥‥‥。大事にしたい、ヴァレリアは俺にとって特別だから、それにヴァレリアはまだ何も知らないから安易な行動をして傷付けたくない。ヴァレリアには笑っていてほしい! 少しずつ、一緒に成長したいんだ。一方的でなく、ヴァレリアの歩みに合わせて行きたい。もし今のヴァレリアをガロに会わせたら、また俺の一方的なエゴが爆発しそうで怖いんだ」
『ほぇ〜変わっちまったな王子。別人みたいだ。他人のためにそこまでするとはな! 悪魔の俺様にはわからない感情だぜ』
呆れたように言い放つニーズに思わず吹き出す。
「よく言うよ! お前だってヴァレリアのために俺に泣いて頼んできたくせに」
【こ、これはお、れさまの、個人的な意見だけどさ。王子‥‥‥。ヴァレリアを救ってくれよ、グスン。普通の人間なら何もできないだろうけど、でも王子なら、王子だったらできるだろ!! うぅ。可哀想な、ヴァレリア‥‥‥】
『ヴォエッ!! そっ、それは! 俺様も辛かったからだ!ヴァレリアの感情が俺様にも移ってきて悲しかったからだ! それに‥‥‥。俺様も、王子ほどではないけどヴァレリアが好きだからな!』
感情が移った?? ああ、ヴァレリアが先程言っていたのはこういう事か。
でも俺はニーズヘッグのようにヴァレリアに取り憑いてはいないからな。
思い出して吹き出してしまう。ヴァレリアは本当に面白いことを言う。魔剣と仲良くなれないのか?とか‥‥‥
面白くて、喜怒哀楽が激しくて、泣いたと思ったら次は笑って、コロコロ表情の変わる、美しいヴァレリア。
俺の空っぽだった心の隙間を埋めてくれる。
ニーズヘッグの頭をぐりぐりしながら口を開く。
「ハハハ、俺もお前も結局ヴァレリアが大好きなんだよな」
むー? 二人で何を話しているのかしら? このドアは鍵がかかっているし、入る隙もないし‥‥‥
ヴァレリアは二人の会話を盗み聞きしようとしていた。
『ほっときんさい、どうせくだらん事じゃあ』
「ケルベロス‥‥‥」
ケルベロスが一つの頭をもたげて私にそう一言言い、また眠ってしまった。
しばらくこういうスローライフな話が書きたいんです。バトルとかはもう少し先でいいかなと‥‥‥
ていうか元々この話って恋愛冒険物なんだから無理にバトラせる必要(以下略)
レクターとニーズヘッグなんだかんだ仲良しでワロタ。
殊更ヴァレリア様は美しいを連呼しているのは私の趣味でございます!
中世の女性たちみんな美しいからこっちが眩みそうなので美しいを連呼しました!意味がわかりませんね?
私が一番好きな画家は人物だとヴィジェ・ルブランです!肌の色の出し方天才すぎ(オタク特有の早口)
ここまでお読みくださってありがとうございます。
このボーイズトークが可愛いと思った方は広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!ぜ、全然可愛いくねーし!と思った方は☆にZEROを付けて行ってくださいね。
ご拝読ありがとうございました。また読んでください。