その頃バルカ城では
王子が冒険に行ってしまってすっかり忘れ去られたバルカ城。
各々何をしているのか少し見てみましょう。
その頃バルカ城では、優秀なテセウスがレクター王子の代わりに政務をこなしてバリバリ働いていたーーーー
そんなわけはなかった。
「ガルシア様へ。
貴方の息子様が城を出てもう幾月の時が過ぎました。
影武者のテセウス様は、王子が人前に出なければならない時にならなければ出てこないし。それ以外は地下室で怪しい研究をしながら引きこもる毎日。
助けてください。もう私は限界です。シリウス」
「なんだこの手紙は?ヴァナルカンド」
『さぁ、散歩してたら白髪の今にも死にそうな男がその手紙を持って、「これをガルシア様に」とフラフラしてたから、哀れに思って届けに来た。同じ白い毛だしな、シンパシーを感じてな』
ヴァナルカンドはそう言って後ろ足で耳の辺りをガガガガと掻き始めた。たちまち辺りがもふもふだらけになる。
「ヴァナルカンド、お前換毛期なんじゃないのか? マジで知らんけど」
ガルシアは顔をもふもふだらけにしたまま話す。
その様子を見てフランシスが大笑いする。
* * *
ガルシアとフランシスは広い庭でだべっていた。時々魔法学校での話をしながら。
「お前覚えているか? あのノッポのかっこつけで嫌な男を。名前はアンソニー! いちいち『アンソニーじゃない! アントニオだ!』て訂正して来やがったアイツ! 意地でもアントニオとは呼んでやらんかったけどな!」
「ははは、覚えてるよ。物理(攻撃)魔法がすごく弱かったイメージがあるな」
「へへ、俺は物理魔法は得意だったからな! あいつに嫌がらせされる度に懲らしめてやったよ」
「アンソニーがガルシアに嫌がらせしてたのって、君がいずれ国王になるって分かった時からだっけ?」
「そうだよ! あいつも自分の故郷に帰る予定があったから、俺が国王になろうがなるまいが関係なかったのにな! それを勝手に妬みやがって。失敗した物理魔法を俺の魔術書にわざわざ書いて、俺がその間違えた魔法を発動したら虫がわんさか出てキモいの恥ずかしいのなんの! あの時もお前が助けてくれたんだよな〜」
ガルシアが忌々(いまいま)しそうに言う。
「ははは! 懐かしいな。あの頃は直接の原因が君のせいじゃなくても、何故か君がトラブルメーカーになりがちだったよな。国王になるっていうのも辛いな」
ふとフランシスは考えた。
「君もあの頃とは違って成長したんだろ? シリウスっていう子を助けてやってもいいんじゃないか?」
「えーめんどくさい、元々国王になんてなりたくなかったのに」
魔剣に選ばれたから仕方なくなっただけなのに。
ガルシアはブツクサ言いながら唇を尖らす。
「僕は魔法学校にいた時によく君を助けていただろう? お返しにシリウスを助けるというのは駄目かな?」
ガルシアはびっくりしてフランシスを見た。
「えっ? 何それ意味分からん! それだったら俺はフランシスを助けたいよ!」
「ははは、僕はもう充分助けられたよガルシア。まぁどのように困っているのか、一度シリウス君のところに寄ってみよう。君の息子のことでもあるのだし」
フランシスに指摘されてガルシアはあっと声を漏らした。
「あーそっか‥‥‥。レクターは我が息子だったわ。ヴァレリアと一緒に冒険中だった」
『お前、自分の息子を忘れるなよ』
ヴァナルカンドにも指摘されて呆れられるガルシア。
「ははは、冗談だ。しかし事実、あいつは俺と違って何もかもできるし、本当に俺の息子かっていう位器用なんだよな。俺とは全然真逆の存在で。俺よりも高位の魔剣があいつを選んだのも頷けるよ。だから俺はレクターが5歳くらいの時に摂政に政務任せっきりにして、とっとと退いたんだ。レクターは凄いよ。レクターは誇り高き我が息子だ」
それを聞いてフランシスは呆れたようにため息を吐いた。
「ガルシア‥‥‥。君はそういう事はレクター君には言っていないのだろう? 肝心な事を言わないからいつもトラブルに巻き込まれるのだよ。全く、君のそういう損な性格は直ってないんだなぁ。とにかくシリウス君のところに行こう」
『イェクトーラ・アーラ!』
そう言って立ち上がり、杖を振り翳したフランシスが詠唱したのは召喚魔法だった。そこに現れたのは半透明の鳳凰だった!
「おお! これは不死鳥と言われている鳳凰じゃないか!! やはりフランシスはすごいな」
召喚の魔法で何を召喚されるのかは、召喚する者のレベルで決まるのだが、神獣を召喚できる事のできるフランシスは魔法使いとしてかなり優秀だといえる。もう教授レベルだ!
「いや、やはりうまくはいかなかったみたいだ。その証拠に半透明だ! 僕は一応死んでいるからね、ははは」
フランシスが照れ臭そうに笑う。
「それでもすごいよ! それで‥‥‥。この鳳凰に乗ってシリウスに会いに行けってか??」
「うん、僕が召喚したら、君も乗らざるを得ないだろう?」
そう言いながらニコリと微笑むフランシス。
その笑顔に圧を感じる。
「うー‥‥‥分かったよ! 何も告げず息子をほったらかしにしていた責任が、俺にもあるからな!」
ガリガリと首の後ろを掻きながらガルシアは仕方なく鳳凰に乗る。
「ヴァナルカンドー! お前は女中の到着を待て! とびきり上手い奴に毛を刈らせてやるからな!」
ガルシアにそう言われて、ヴァナルカンドはその場にその大きな体を横たえた。
ガルシアとフランシスは鳳凰に乗ってシリウスのいる場所に向かった。
ヴァナルカンドのもふもふ可愛い。
ガルシアー!それじゃあ分からんぞ。ちゃんと言葉にしないと!
すみません少し短かったですね( ;∀;)
フランシスとガルシア好きなんだよなぁ
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