死運蚊
奇妙な物語へ…
俺は尾塚弘也。ただのサラリーマンだ。
俺は夏が、大嫌いだ。なぜなら、『蚊』というウザい存在だ。いつもアイツは耳元で、『プ〜ン』という音を出し、手で叩くときはすばしっこく捉えづらい。更に血も吸い、その場所が痒くなる。俺はこの為に、色んな殺虫剤を買った。それでやっと蚊が死ぬ。これで、スッキリしたと思ったら、また別の蚊が現れ…と、いつも夏はこれの繰り返し。俺はイライラしてならなかった。
そしてある夏の事、それは起きた。夏休みで、会社も無く、家で昼寝をしていたときの事。完全に熟睡していたとき、耳元に『プ〜ン』という音が聞こえ『奴』が来たのに気づいた。そう、蚊だ。俺はまず体の周りを払うと奴は一旦退いていった。
しかし、それも一時的で奴はまた来た。先程と同じ方法を試したが、退いては行かなかった。そして俺は起き、どこにいるのか分からないのに適当な方向へ叫んだ。
「クソッ!糞蚊がよぉ!なんか俺に親を殺されたのかよ!どっかいけよ!復讐はなんの為にもならないぞ!」
やけになり感情に身を任せた行動をし、少し恥ずかしくなったがやっと蚊がいなくなりスッキリした。
しかし、その日の夜、奴はまた現れた。しかも寝ているときに。俺はこんな事によりその日は寝れることは無かった。
次の日、俺はある者に出会った。(カフェで)それは、俺の友であり、虫に詳しい男、徳村武史である。
「久しぶりだな徳村!」
「あぁ、高校ぶりだな」
なぜ俺が、徳村にあったのか?それは言うまでもなく蚊の為だ。
「まず、蚊は普段、花の蜜しか吸わない。血を吸うのは、動物の血液の栄養分が欠かせないからだ」
「ん、じゃあアイツが血を吸わなかったのは…」
「あぁ、オスだな」
「チッ、血を吸わないんだったらなんでくるんだよ…」
「じゃああれだな…実は思い当たる節がある」
「え?なんだよそれ」
すると徳村は持ってきたバックからなにかをを出した。それはグラフか何かが書かれている紙だった。
「おい…なんだよそれ…」
「これは、5年前から現在までの夏の自殺の数だ」
徳村は淡々とした口調で話し続けた。
「そして5年前から自殺者が増えている」
「オイオイ、それが蚊と何が関係してるんだよ」
「特に今年、自殺者は十万人…その大半の自殺理由が…」
「ま、まさか…」
「あぁ、君が嫌っている『蚊』だ」
「えっ!な、何故蚊で!」
「そんな自殺を引き起こす蚊、色んな二つ名がついているんだ」
「オイオイ、その蚊二つ名がつくまでやっちまったのかよ…」
「例えば、『死神』『殺人蚊』『蚊に転生した迷惑なヤツ』等、色んな二つ名があるが一番有名なのが『死運蚊』だ」
「えっ、それってどうゆう事…」
「死を運ぶ蚊、略して『死運蚊』君はそれに取り憑かれているのかもしれない」
「じゃあ、その死運蚊って言う奴がどうやって俺に取り憑いたんだよ」
「奴は夜の道、特に夏に取り憑く。取り憑く場所は決まっていていつも頭。こうして奴は取り憑くという訳だ」
「じゃあ、密室(家)にいたときに潰せばいいだろ」
「いや、それも出来ない。奴は謎の幸運に包まれていると噂されていて、たとえ殺虫剤を撒いても死なないだそうだ」
「オイオイ、マジかよ…」
「いや、対処法が1つだけある」
「え、なんだよ!教えてくれよ!」
「それは取り憑いた時に、潰すだけ」
「えっ!なんだと、もう、間に合わないじゃないか」
「あと、奴は取り憑いた主の家からはいつまでも離れない」
「チクショー…」
俺は、その場を後にし、行きたくないと分かっても行かなくてはならない家に帰った。
家では蚊がここの王だと言わんばかりに居座っていた。
「糞がぁ!テメェどんな方法でもぶっ殺してやるぅ…」
俺のイライラは頂点に達していた。徳村に言われた通り、奴は圧倒的な運で死なない。しかし俺はその事を忘れるほど怒っていた。俺はキッチンから何故か包丁を出し蚊のいる部屋へと向かった。蚊は、俺が包丁を振り回すや否やずっと避ける。そして、数十分もの攻防戦が続き、そして、事は起こった。そう、蚊が自分の体についた事だ。俺は、チャンスだと思い包丁を自分の体に刺した。
「やった、やった、やった、やっった!アハハハハハハハハハアッハハハハハハハハハハハハ」
俺は、嬉しさや興奮で踊り狂い、そのまま倒れた。
しかし、俺は死んだ。何故なら体を刺した後に血が沢山に出た事に気付かず、狂乱していた。しかし、蚊も殺せた。蚊が殺せたなら俺は、死んでも良かった…………
しかし、この話には続きがあり、なんと蚊は生きていた。言うまでも無い。運で生き残った。その後、包丁から間一髪避けた蚊は、開いていた窓から出て、そのままぶらついていた。そして数時間後、夜の8時、奴はまた獲物を見つけた。それはちょっと酔っている老人だった。奴は老人に近づき、頭にくっついた瞬間、蚊に謎の痛みが走った。そう…それは、老人が蚊を潰した事だ。そして老人は落ちて死にかけの蚊を何も思わずに靴ですり潰した。呆気なく蚊は死んだ。
「全く、バカ蚊め、わしを殺すなんて数百年早いわ」
老人はそうポツリと呟くとその場を後にした。
その後…夏の自殺者が各段に減ったのは言うまでもない。
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