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蔵品大樹のショートショートもあるオムニバス

死運蚊

作者: 蔵品大樹
掲載日:2021/03/06

奇妙な物語へ…

 俺は尾塚弘也。ただのサラリーマンだ。

 俺は夏が、大嫌いだ。なぜなら、『蚊』というウザい存在だ。いつもアイツは耳元で、『プ〜ン』という音を出し、手で叩くときはすばしっこく捉えづらい。更に血も吸い、その場所が痒くなる。俺はこの為に、色んな殺虫剤を買った。それでやっと蚊が死ぬ。これで、スッキリしたと思ったら、また別の蚊が現れ…と、いつも夏はこれの繰り返し。俺はイライラしてならなかった。

 そしてある夏の事、それは起きた。夏休みで、会社も無く、家で昼寝をしていたときの事。完全に熟睡していたとき、耳元に『プ〜ン』という音が聞こえ『奴』が来たのに気づいた。そう、蚊だ。俺はまず体の周りを払うと奴は一旦退いていった。 

 しかし、それも一時的で奴はまた来た。先程と同じ方法を試したが、退いては行かなかった。そして俺は起き、どこにいるのか分からないのに適当な方向へ叫んだ。

 「クソッ!糞蚊がよぉ!なんか俺に親を殺されたのかよ!どっかいけよ!復讐はなんの為にもならないぞ!」

 やけになり感情に身を任せた行動をし、少し恥ずかしくなったがやっと蚊がいなくなりスッキリした。

 しかし、その日の夜、奴はまた現れた。しかも寝ているときに。俺はこんな事によりその日は寝れることは無かった。

 次の日、俺はある者に出会った。(カフェで)それは、俺の友であり、虫に詳しい男、徳村武史である。

 「久しぶりだな徳村!」

 「あぁ、高校ぶりだな」

 なぜ俺が、徳村にあったのか?それは言うまでもなく蚊の為だ。

 「まず、蚊は普段、花の蜜しか吸わない。血を吸うのは、動物の血液の栄養分が欠かせないからだ」

 「ん、じゃあアイツが血を吸わなかったのは…」

 「あぁ、オスだな」

 「チッ、血を吸わないんだったらなんでくるんだよ…」

 「じゃああれだな…実は思い当たる節がある」

 「え?なんだよそれ」

 すると徳村は持ってきたバックからなにかをを出した。それはグラフか何かが書かれている紙だった。

 「おい…なんだよそれ…」

 「これは、5年前から現在までの夏の自殺の数だ」

 徳村は淡々とした口調で話し続けた。

 「そして5年前から自殺者が増えている」

 「オイオイ、それが蚊と何が関係してるんだよ」

 「特に今年、自殺者は十万人…その大半の自殺理由が…」

 「ま、まさか…」

 「あぁ、君が嫌っている『蚊』だ」

 「えっ!な、何故蚊で!」

 「そんな自殺を引き起こす蚊、色んな二つ名がついているんだ」

 「オイオイ、その蚊二つ名がつくまでやっちまったのかよ…」

 「例えば、『死神』『殺人蚊』『蚊に転生した迷惑なヤツ』等、色んな二つ名があるが一番有名なのが『死運蚊』だ」

 「えっ、それってどうゆう事…」

 「死を運ぶ蚊、略して『死運蚊』君はそれに取り憑かれているのかもしれない」

 「じゃあ、その死運蚊って言う奴がどうやって俺に取り憑いたんだよ」

 「奴は夜の道、特に夏に取り憑く。取り憑く場所は決まっていていつも頭。こうして奴は取り憑くという訳だ」

 「じゃあ、密室(家)にいたときに潰せばいいだろ」

 「いや、それも出来ない。奴は謎の幸運に包まれていると噂されていて、たとえ殺虫剤を撒いても死なないだそうだ」

 「オイオイ、マジかよ…」

 「いや、対処法が1つだけある」

 「え、なんだよ!教えてくれよ!」

 「それは取り憑いた時に、潰すだけ」

 「えっ!なんだと、もう、間に合わないじゃないか」

 「あと、奴は取り憑いた主の家からはいつまでも離れない」

 「チクショー…」

 俺は、その場を後にし、行きたくないと分かっても行かなくてはならない家に帰った。

 家では蚊がここの王だと言わんばかりに居座っていた。

 「糞がぁ!テメェどんな方法でもぶっ殺してやるぅ…」

 俺のイライラは頂点に達していた。徳村に言われた通り、奴は圧倒的な運で死なない。しかし俺はその事を忘れるほど怒っていた。俺はキッチンから何故か包丁を出し蚊のいる部屋へと向かった。蚊は、俺が包丁を振り回すや否やずっと避ける。そして、数十分もの攻防戦が続き、そして、事は起こった。そう、蚊が自分の体についた事だ。俺は、チャンスだと思い包丁を自分の体に刺した。 

 「やった、やった、やった、やっった!アハハハハハハハハハアッハハハハハハハハハハハハ」

 俺は、嬉しさや興奮で踊り狂い、そのまま倒れた。

 しかし、俺は死んだ。何故なら体を刺した後に血が沢山に出た事に気付かず、狂乱していた。しかし、蚊も殺せた。蚊が殺せたなら俺は、死んでも良かった…………

 しかし、この話には続きがあり、なんと蚊は生きていた。言うまでも無い。運で生き残った。その後、包丁から間一髪避けた蚊は、開いていた窓から出て、そのままぶらついていた。そして数時間後、夜の8時、奴はまた獲物を見つけた。それはちょっと酔っている老人だった。奴は老人に近づき、頭にくっついた瞬間、蚊に謎の痛みが走った。そう…それは、老人が蚊を潰した事だ。そして老人は落ちて死にかけの蚊を何も思わずに靴ですり潰した。呆気なく蚊は死んだ。

 「全く、バカ蚊め、わしを殺すなんて数百年早いわ」

 老人はそうポツリと呟くとその場を後にした。

 その後…夏の自殺者が各段に減ったのは言うまでもない。

読んで頂きありがとうございました…

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