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エピローグ?:今日も事務所は賑やかです

 その後、古田の狐は御稲荷様の元で修行をすることになったらしい。

 なぜか、弄りたおされている姿が目に浮かぶ。

 気になったのでさっしーさんに尋ねてみたところ、

「修行……。うん、まぁ、精神を鍛える修行、なんだろうな、あれは」

 と、遠い目で呟いていたので、お察しくださいということかもしれない。

 

 それはさておき概ね平和な日々が過ぎた頃。

「おはようござ、しろさん?!」

 いつも通りにレイさんの事務所に出勤すると、二階の玄関を開けた途端に、手元の鍵にマスコットとして憑いているしろさんが応接の中へと飛び込んで行った。

「レイさん、何かあるんですか?」

 危険があるならレイさんが何か言ってくれるし、何より二階の扉が開かないはず。

 来客の様子はないし、門番である衝立の龍ものんびりしている。御稲荷様ならしろさんがあんな勢いで飛び出さない。何事だろう。

 あわてて靴を履きかえて衝立を回り込むと。


 てしっ

 ぽふっ

 

 ……もふもふのバトルが勃発していた。

 とはいえ、お馴染みの小型犬サイズなので、一見するとじゃれているようで微笑ましい。

 体当たりやキックはわかるけど、そのしっぽぽふぽふアタックはダメージが与えられるのでしょうか。むしろ気持ちよさそう。

 さて、しろさんが前肢で踏みつけて後ろ足でげしげししているその毛玉。少しきれいになったけれど、しろさんよりかなり細くてぼさぼさの白い二又しっぽと凶悪な面構えには見覚えが。

「古田の狐?」

『来たか、小娘! コヤツをなんとかしやがれ!』

 踏みつけられた古狐は、じたばたしながら相変わらず耳障りな声で喚いている。

「御稲荷様のところで修行中じゃなかったんですか?」

『ふんっ。修行なんぞオレサマが本気になれば簡単に終わ、イテェェ!』

 この狐は一人称オレサマなのか。

 と思うのも束の間。しろさんにがじがじと噛みつかれて、古狐は悲鳴をあげた。

 ああ、しろさんが暴力的になってしまうっ。

「しろさん、そんなもの食べたらダメです! 『ぺっ』てして! 『ぺっ』て!!」

 思わず止めに入ると、しろさんは古狐の顔を四本の足でしっかりと踏みつけながら、きゅるきゅるうるうるした黒い目で見上げて小首を傾げた。

 

 ぼく、なにかした?

 

 とでも言いたげな姿。自分がかわいいことをを理解したあざとさ。でもかわいいので許します。かわいいは正義です。

「降りてあげましょうね」

 促すと、しろさんは古田の古狐の顔を思い切り踏み切って私の手元に飛び上がり、しゅるんと元のマスコットに戻った。

 ……しろさんもあの御稲荷様の眷属だけあって、性格はちょっとアレなのかもしれない。

 あ。しろさんが私を守るために古狐に攻撃したのなら、解放させたのはダメだったのでは!

 今さらに我に返って古狐を見ると、この部屋の住人たちにぐるりと囲まれていた。

 お馴染みの天狗さんをはじめ動くのをあまり見かけないモノまで、身体が大きいモノが多い。端から見てもすごい圧。部屋が狭く感じる。小型犬視点ならなおさらだろう。

『なんだキサマラー!』

『あまり騒ぐとここの主がな』

『ふん、あの大年増、ぐぉあ!』

 書斎の方からなにかが飛んできて、古狐に直撃した。なお、囲みになっていたモノたちはきれいに避けていた。素晴らしい連携プレー。

 狐の姿が搔き消え、床にころりと残されたのは。

 

 赤と白に半分ずつ分かれた球体。

 カプセルトイ、いわゆるガチャガチャの容器だ。


「まったく、うるさくて仕方がないわ」

 不機嫌さも露に応接にでてきたレイさんは、カプセルを拾い上げて、お馴染みの封印をぺたりと貼る。

 これは「ゲットだぜー!」というアレでしょうか。どうせなら黒テープも巻きたいです。

「出勤早々揉めてごめんなさいね」

 それ自体はよくあることなので今さらですよね。

「その古狐は、御稲荷様のところで修行するのではなかったのですか?」

「あまりの喧しさに近隣の古いモノ達がこぞって見物にやってくるものだから、落ち着かないと言って返品されたの」

 返品って。いや、古いモノが見物に来るって。なんですかそれ。

「仕方がないから、事務所で私の実験に付き合わせることにしたのよ。今の状態なら喧しくて鬱陶しい以上の害はないし、しろやここの住人達で対処できるから、危険はないわ」

 安心できる要素がいまいちなのですが……。

「レイさんの実験といいますと?」

「封印の効力の調査ね。新調した機械が色々できるみたいだから」

 何度も言いますが、あれはラベルシール印刷機であって、お札を作る機械ではありません。


 そう。

 先日、こけし座敷わらしに壊されたラベルシール印刷機を新調する際にカタログを見ていたら、上位機種の存在や通常のラベルシール以外が作成できることに気づいてしまわれたのです。とはいえ、あくまでアレに拘る理由は不明。

 使いこなせなかったら早瀬の事務所に譲ればいいし、ということでご購入。文字の内容や書体、入力した人や出力した人で効力が変わるのか、そのあたりを検証中なのです。

 現状、まずはしろさんの封印が「封」文字プリントのリボンに変わっている。紐で首吊りから首にリボンになって見た目が大分マシになった。まぁ、封印リポンをほどいてあげなくても、用があれば勝手に動くんですけどね。

「ん?」

 ふと、足元にもふもふした物を感じて見ると、三毛猫又と黒シバがもの言いたげに見上げてきた。

「どうかしましたか?」

『遊ぶのにゃ!』

『わん』

 聞くと、なんだかキラキラした目でレイさんの手元を見ている。

 レイさんもそれに気が付いたようで、犬と猫さん、狐入りカプセルを見比べると。

「好きになさい」

 カプセルを床に転がした。

『にゃーっ!』

『わんっ!』

 ボール、もといカプセルを追いかけ、転がしまくる二匹。これは素直に微笑ましい。

 微かにくぐもった絶叫が聞こえた気がするけれど、気のせいということにしておこう。うん。さあ仕事仕事。

「レイさん、今日は何かありますか?」

「早瀬に渡す資料があるから、まとめてもらえるかしら」

「はい」

『犬、そっちに転がすにゃー!』

『わんわん!』

『ぐえぇぇ……酔う……吐く……』

 レイ・コンサルタントは本日も賑やかです。

 

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