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死の境界  作者: 野寺 いぶき
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第26話 専用武器

「バイコーンの背中は乗り心地が良いなぁ〜」


 バイコーンの速さは時速30km程だろうか。風を感じながら血気溢れる戦場でそんな事を思っている俺は、スケルトンの群れを退治するテンタの元にたどり着いた。


「テンタ〜援護に来たぞぉ〜」


 呑気に話しかける俺とは裏腹にテンタは物凄い勢いでスケルトンをなぎ倒している。無駄のない洗礼された剣筋は一振する度にスケルトンを3体以上葬っていた。


「ありがとう駆琉。ここは私が抑えるから出来れば奥のキャスターを何とかしてくれないかな」


 剣と盾を持つ大量のスケルトンの奥には、杖を持ったスケルトンがテンタと街の外壁に魔法を放っていた。テンタに向けて放たれる魔法は、何事も無かったかのように綺麗に捌かれているので問題ないが、固定大砲の如く次々と外壁に魔法を放つスケルトンは少しずつ街を壊していた。


「やめろぉー!」


 スケルトンの放つ魔法がアイサに当たってないか心配になった俺は、バイコーンに命令をしてスケルトンの集団へ突っ込んだ俺は針の穴を通すようにくぐり抜けた。外壁を攻撃するスケルトンの前に出ると、バイコーンから飛び降り新調したピカピカの剣を振りかざす。俺の攻撃に対応しきれないスケルトンは為す術なく崩れていく。


「これならいける!」


 意外にも簡単に倒せたスケルトン。調子に乗った俺は次々とスケルトンを倒していった。しかし、倒す度に感じ取れる戦闘経験の少なさがイライラを積もらせる。


「効率が悪い!!テンタは一振で3体は倒していたのに…なんで俺は1体倒すのに2、3発も攻撃してるんだ?そんなステータスじゃ無かったよな?」


 スケルトンを倒しながら呟いていると、次第に周りのスケルトンが俺を標的に魔法を打ち始めた。もちろん躱す術も受けきる術も知らない俺は魔法の直撃をうける。


「熱い!!冷たい!!」


 新調した防具のおかげでダメージはほとんど無いが、攻撃を受けた衝撃、微かな痛みに高揚感を隠せなかった。


「これがダメージか!!」


 この世界に来て初めて受けたダメージが俺の脳を活性化させた。アドレナリンが溢れ出ていた俺は、魔法を受けていたが特に気にすること無く、1人でブツブツ作戦会議をしながらスケルトンを倒していた。前しか見ずに戦っていた俺は後ろに大型のスケルトンロードが立っていることなど気付くはずが無かった。俺が奴の存在に気付いたのはスケルトンキャスターの動きがピタリと止まり、周りの景色が灰色になってからだった。


「かーけーるー!!」


 何処からか可愛い女の子の声がした。


「はっ!何が起こったんだ!?」

「後ろを見なさい!あなた死ぬところだったんだよ!!」


 我に返った俺は後ろを振り向くと、2mは優に超えるの大きなスケルトンの剣が首元まできていた。


「うおぉぉぉ!」


 俺は驚きの余り飛び跳ねてしまった。


「はぁ…初めての経験で興奮したのは分かるけど、戦闘中によそ見は良くないわね」

「仰る通りです」

「とりあえず、あなたの死の運命は変更するけど、他に欲しいものはあるの?」

「武器が欲しいです!」

「今持ってるのでは不満なの?」

「そうじゃないけど、もっとオリジナルの武器が欲しいなぁ〜と…」

「まぁ、それでもいいか。それでどんなのがご所望なの?」

「剣と銃をくっ付けたやつって作れるの?」

「なんでも可能よ。言葉で説明するのは難しいと思うから、頭の中で想像するといいわ」


 見た目は…狙撃銃でいこう!なるべく魔物には近付きたくないし…弾丸は魔力で属性も込めれる感じで。ボタン式で剣に切り替わるとかっこいいかな?狙撃銃だから大剣だよな〜、銃全体を覆うように刀身が出てきて、剣先から銃弾が出ると最高だな!

 そんな事を考えていた俺の思考は筒抜けのようで、彼女はため息をついた。


「はぁ〜、中々注文が多いな……これでいいか?」


 灰色の世界に一際目立つエメラルドグリーンの綺麗な狙撃銃が俺の手元に降り注ぐ。見た目はただの狙撃銃だが、引き金とストックの間に引き金がもう一個あり、それを引くと狙撃銃は形を変えて大剣になった。ストックの部分がグリップに変わり引き金が付いていた。


  …意外と軽いな


「その剣は、光剣よ。フォトンソードとも言うけど、あなたの武器は魔力が銃を覆い剣になってるから、マジックソードとも言うわね。込める魔力によって剣身の色と効果も変わってくるわ。銃弾は剣身を貫通して打ち出されるから気にする必要はないわ」

「おぉ、完璧じゃないですか!!」


 専用の武器が出来た俺は、はやく戦いたい欲望をむき出しにしていた。


「しかし、一つだけ致命的な弱点があってな。弾も剣も魔力で出来てるから魔力を吸収する相手には全く効果を発揮しないんだ。くれぐれも気をつけるのだぞ」

「りょーかい!!」


 早く戦いたい俺は、彼女の助言など耳に入らなかった。


「……そういえば、名前……なんて呼べばいい?」

「私はお前の能力だ。好きに決めるといいわよ」

「それじゃ、リテ!ありがとな、そしてこれからもよろしく!」

「えぇ、これからもあなたの活躍を楽しみにしているわ」


 声が消えると、俺はスケルトンロードの剣が届かないところまで距離を取り構えると時が再び動き出した。スケルトンロードは勢いよく空振りをすると、隙を見て俺は銃口を突きつけた。


「まだまだだなスケルトンロードよ!これが俺の力だ!!」


 銃弾に魔力を込め引き金を引くと、スケルトンロードの体を綺麗にすり抜けていった。


「………あれ?思っとったのと違うぞ」


 確かに魔力のこもった銃弾はスケルトンロードに向かって放たれた。しかし、鎧や兜をつけてない所は骨がむき出しのスケルトンには銃弾は相性が悪かった。命中性能が高いのならまだしも、初めて引き金を引く俺が簡単に当てれるわけがなかった。銃弾は綺麗にスケルトンロードの骨を通り抜けると遥か彼方へ飛んで行った。


「あはは、今のはなしってことで…」


 そんなことはお構い無しにスケルトンロードは再び剣を振りかざした。上空から振り下ろされる剣は俺の肩まで届く距離だろうか?どの道致命傷にならない攻撃では時が止まらない。鎧の上から魔法を食らう時とは違って無防備に近い腕や手を斬りつけられると思うと背筋が凍りついた。

 やばい!と思うだけで足が動かない俺を後ろからバイコーンが引っ張ってくれた。鎧の端を上手に咥え後ろに引っ張ったお陰でスケルトンロードの攻撃を躱し、体勢を立て直すことが出来た俺は、武器を剣に切り替えて構えた。


「サンキュー相棒!」


 俺はバイコーンに礼を言うと、スケルトンロードに斬りかかった。左肩から腰の辺りまで何の抵抗も受けずに剣は振り下ろすことができた。何も考えず魔力を込めた白い剣身はスケルトンロードの体をいとも容易く真っ二つに切り裂くと、そのまま黒い煙となり消えていった。

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