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死の境界  作者: 野寺 いぶき
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第24話 創世滅亡魔法

  目が覚めると俺は動くことなく部屋の天井を眺めた。


  「あぁ、これがハーレムというやつか…」


  昨日泊まるのに選んだ宿は1部屋だけとても豪華な部屋があった。VIPルームというものだろうか、大きな室内にはキングサイズの大きなベット、充実した家具の数々に高そうな絵も飾ってあった。もちろん、誰もがこの部屋で寝たいと言った。その結果、4人で一緒に寝ることになったのだ。

 

  女3人男1人という状況でどうやって部屋に入れて貰えたかって?昨日は色々な出来事が会ったからな、みんなヘトヘトですんなり許可してくれたんだ。

  というのは建前で、本当は魔法の道具を使ったのだ。夜の街で偶然見つけたのだが、効果は覿面だった。道具の効果は『酔い』だ。フーシャには効いていないように見えたが、テンタとアイサは明らかに様子が変わった。顔を少し赤らめると、呂律が悪くなり文法も無茶苦茶だった。そんな状況の中、俺は起きた時に報復を受けないように誓約書を3人に書かせ、晴れて気持ちよく就寝に着くことが出来たのだ。


  そんな訳で、俺は今可愛い女の子3人に囲まれて寝ているわけです。そしてこの格好じゃないと寝れないと、テンタはランジェリー姿で寝ています。対抗心を燃やすフーシャは自分のバックから赤のランジェリーを取り出し着替え始め、それに巻き込まれたアイサもランジェリーで寝ることになった。ひらひらのついたランジェリーはとても魅力的で、胸や腰、尻などのラインもしっかりと強調していた。目の保養になる服を着た3人の美女に囲まれながら、しっかり眠りにつけるか心配だったが、疲れが勝りすぐに寝てしまった。


  俺は充実感と達成感に浸っていると、テンタが最初に起きた。


  「もう朝か…」


  起き上がって背筋を伸ばすテンタは俺の方を見て目を大きく開いた。俺は気付かないふりをして薄目を開けていた。


  「なんで駆琉がいるの?」


  自分の姿を確認すると胸元を隠しながら赤くなるテンタ。オドオドしながらも物凄いスピードでいつもの服に着替えた。着替え終わって部屋に戻ってくると俺は何食わぬ顔で起きた真似をした。

 

  「あら、おはよう」


  テンタは何事も無かったようにあいさつをしてきた。俺も何も見なかったことにしておはようと返した。起き上がってテンタが座っている椅子の近くに座った。


  「ん〜、もう朝なの?」


  次いでフーシャが目を覚ました。フーシャは俺の顔を見ても動じることなく、寧ろ私の服装どう?と言わんばかりにポーズを取っているように見えた。


  「フーシャ…その、駆琉もいるのでその格好は如何なものかと…」

  「同じ格好で私の駆琉を誘惑してた割に随分な言い方ね」

  「わ、私は…」

  「それと…アイサさん?いつまで寝てるふりしてるのかしら?」

  「え!?気付いてたの?」

  「そんな器用に胸を隠すようなポーズ取ってたらすぐに分かるわよ」

  「だ、誰か私の服を…」

 

  酔いと疲れが取れて頭が回り出すと、自分の格好の恥ずかしさが込み上げてきたようだ。布団に蹲るアイサは出てくる様子がなかった。


  「大丈夫よ。私だって駆琉に見られているのだから」


  フーシャは恥ずかしげもなくフォローになっていないフォローをしていた。


  「そうだぞアイサ!フーシャもテンタのも見たんだから、お前のも見せてくれよ!」

  「駆琉くん?確か私の方が先に起きたと思ったんだけど…」


  しまった!余計なことを言って…と思った時には既におそかった。

  テンタは俺の肩に手をかけた。恐る恐るテンタの方を見ると、顔を真っ赤にして手を上げていた。そのまま垂直に下ろされる手が俺の頬に直撃することは考えるまでもなく分かったので、俺は立ち上がりテンタの手を引っ張った。抱き合うような形になった俺とテンタ。


  「安心しな。お前のランジェリー、最高だったよ」


  俺はいつもより低い声で、ここぞとばかりにテンタを褒めた。


  これでテンタも落ち着くだろう。


  そう思って安心した俺の腹に拳が入った。


  「この…ばか!」


  倒れ込む俺を置いていくかのようにテンタはアイサを横の部屋に連れていった。フーシャは俺に手を差し伸べてくれた。


  「あ、ありがとう…」

  「駆琉…私というものがありながら」


  フーシャは立ち上がった俺の目を凝視すると、ごっそりと魔力を抜き取っていった。


  「ごちそうさま」


  そう言うと、フーシャも隣の部屋へ着替えに行った。体から力が抜けた俺は折角起こしてくれたにも関わらず、また倒れてしまった。意識が無くなるほどでは無かったが、数分動くことが出来なかった。少し力が戻ると、俺は立ち上がりのんひりと身支度を整えた。昨日新調した装備を付けて鏡の前でポーズを取っていると3人が戻ってきた。


  「何やってのよ」


  テンタが冷たい目線でこちらを見た。アイサとフーシャは後ろで笑いを堪えているようだった。


  「さぁ、行くか」


  俺は話を断ち切り、出発を促した。


  「そうね、スケルトンの大群も近づいてることだし、出発しますか」


  宿を出ると、俺達は街の様子を確認した。スケルトンはまだ街には着いていないようだ。人っ子一人居ない街は、静けさが際立っていた。俺達はスケルトンがどこまで進行しているか確認する為、街の周りを探索し始めた。


  「そういえば大陸からの援軍はいつ到着するのかな?」

  「準備とか編成とかあるだろうし、早くても夕方になるのじゃないかな」

  「まぁ、5人ほど駆けつけてくれれば上出来だわ」

  「え!5人で足りるのか?スケルトンって大量に居るんだよな…」

  「そりゃ、まだ被害も目撃情報もないからね。それらが確認されたら大規模の討伐隊が編成される感じなのよ」

  「それじゃ、俺たちは10人程度の人数で持ちこたえないと駄目なのか…」

  「大丈夫よ。私とテンタがいれば2000体ほどは軽くあしらうわ」

  「見つけたわよ!スケルトンの集団!」


  敵感知を行いながら先行していたアイサがスケルトンの集団を見つけた。


  「これは…」


  スケルトンの大群は街に攻め込む様子はなく、隊列を組んで並んでいた。


  「どう?アイサ。相手の規模は分かりそう?」

  「なんて数なの…」


  アイサの敵感知で大凡の数を把握すると、5000は優に超えるスケルトンが森全体に密集しているようだ。中には魔力を持つスケルトン(キャスター)や強い反応を示すスケルトン(ロード)など色んな種類のスケルトンを感知した。


  「大陸に報告だ!」


  テンタはアイサに指示を出すと作戦を練り始める。


  「どうやら相手を甘く見ていたようだ。いくら私とフーシャが戦い慣れているからといっても…」

  「ここは駆琉の出番ね」

  「え!俺…」

  「いきなりは無理だと思うけど、徐々に慣れればいいよ。とりあえず籠城作戦ね、城はないけど」

  「私が大魔法を1発打ち込むから、生き残りをテンタと駆琉のバイコーンで討ち取るって感じで行くわよ」


  街には立派とは言えないが、魔物よけの外壁は立っている。正面入口の外壁を少し壊して、スケルトンが入ってくる入口を作ることにした。外壁も壊されるのは時間の問題だがそうなったらその時だ。まずは正門に集中をする。街の中の回復薬や能力向上のスクロールなどありったけの物を1箇所の拠点に集中させると、俺はサモペから魔物を召喚した。ウルフ、リザードマン、ゴーレムなど俺よりも明らかに強そうな魔物たちが正門を守る。


  「これで準備万端ね!」


  アイサも大陸に方向を終えて合流した。攻撃よりも援護に特化しているアイサは全員のサポートに入るようだ。時刻は朝の10時を回ったところだ。全員準備を済ませると戦闘態勢に入った。


  「それじゃ、1発かましてくるわ」


  フーシャは森全体を見渡せる、外壁に設置してある監視塔らしき所に乗ると、詠唱を始めた。俺達も近くでフーシャを見守る。規模の大きい大魔法はさすがのフーシャでも詠唱が必要なようだ。通常よりも明らかに大きい魔法陣を展開すると、同じ魔法陣がなんと森の上空に展開され、森一帯を包んだ。


  「3人とも、今から使う魔法は他言無用で頼むわね」


  フーシャは魔法を発動する前に俺たちに口止めした。何かを察したのかテンタとアイサは無言で頷くと、俺もつられて頷いた。フーシャは俺の顔を見て微笑むと魔法を発動する。


  「創世滅亡魔法 ディノ・グラディウス!!」


  フーシャの声とともに森を包む巨大な魔法陣から風が吹き降ろされた。風は魔法陣から地面に向かって強く吹き付ける。スケルトンだけではなく木々や岩までもが風の力によって押しつぶされている。まるで上空から大きなハンマーでも落ちてきてたかのような光景だ。魔法陣が広がる範囲にあるものが、大小剛柔関わらず地面に押し付けられる。森にあるものが全て潰れ、一面スケルトンの死体だらけになると、次は魔法陣から雨が降り出した。遠目から見ている分には普通の雨にしか見えないが、地面に落ちると触れたものを溶かしていった。緑とスケルトンの死体で生い茂っていた森は僅か数分で土だけになってしまった。少し膨らんでいた地形の森は目で見ても分かるぐらい沈んでいた。


  「な、なんなんだこの魔法は…」


  俺は動揺を隠せなかった。今まで見てきた魔法とは根本から違う気がした。それ以外この魔法について語ることは出来なかった。それはテンタとアイサも同じようだった。2人ものただただ無に帰す大地を目視していた。


  「駆琉…」


  魔法を使い終えたフーシャは俺の方に持たれるように倒れた。


  「大丈夫か!?」

  「そんなわけないでしょ!本来あの規模の魔法は熟練魔術師が数百人単位で使う物なのよ!アイサ!ポーション!!」


  テンタは気を失っているフーシャに無理やりポーションを飲ませた。少しずつ回復しているようだが、量が足りない。アイサが魔力感知の魔法で確認すると、残量は2.3%程と言った。街にある最高級のポーションを100本程浴びせるように飲ませたが、残量は3%にも満たなかった。


  「どんだけ、馬鹿みたいな魔力量なのよ!」


  0%になるとすぐに死ぬ訳では無いが、致死率の高い魔力欠乏症に陥る。また足りない魔力で魔法を使って暴走すると、体が耐えきれずに原型を止めれなくなるそうだ。テンタとアイサは必死にポーションの飲ませた。

(このままじゃ駄目だ。ポーションも残り少なくなっている…あれを、やるしかないのか)


  俺はフーシャに出会った時を思い出した。あの時に使った魔法では目を覚ます程度の魔力しか与えれなかったけど、その後キスをしたら何事も無かったかのように起き上がってきた。動揺もあったけどあの時動けなかったのはキスで魔力を吸われたからなのか。当時魔力について全然分かっていなかった俺なら理解出来てなくても当然だ。今ははっきりわかる、フーシャは目を見て魔力を奪うことも出来るがキスでも魔力の補給が出来るのだ。それなら俺のやることは決まっている。


  「最近特殊能力使っていないけど消えたりしてないよな?大丈夫だよな?吸われすぎて俺が死ぬってことないよな…」

  (迷ってる場合じゃない!今はフーシャを助けることが最優先だ!!)


  決心の着いた俺はポーションを与えるテンタを止めた。


  「何するのよ!今のフーシャは危険な状態なのよ!」

  「大丈夫だ、わかってる。後は俺に任せろ」


  テンタを退けると、俺はフーシャの体を持ち上げた。


  「これが、俺のファーストキスだけど、フーシャを助けれるのなら本望だ!頼む!帰ってきてくれ!!」


  俺は勢いよくフーシャの唇を奪った。その瞬間、体の力が全て抜けていくのがわかった。ストローで一気に吸われたかのように、一瞬で残すことなく吸われると、俺は意識を失った。

 

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