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NO LIFE KING  作者: ねる
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6.勇者とチートと閣僚会議

 ギルドでカードを受け取った時に、チヒロにもう一つの能力がある事が分かった。

「オールマイター?」

 チヒロは聞きなれない言葉に素っ頓狂な声を出した。

「はい。非常に珍しいスキルで、王国の歴史上5人しか確認されていません」


 スキルとは、一人につき一つ、生まれ持っている技能のことである。


「はえぇ。で、どんな能力なんです? それ」

「武器など、初めて触ったり使うものでもまるで手練れの様に、一流に使いこなす事が出来るスキルです」

「何それ怖い……」






 そんなこんなで数日後、リンレットとチヒロはとある武器屋に来ていた。


「意外と軽いんですね、コレ」

 チヒロは青みがかった銀色の直剣を持って言った。

「まぁね。そいつは世にも珍しいドラゴンの鱗から削り出して作ったんだ。ミスリルやアダマンタイトに比べたら耐久性は劣るが、鉄なんかに比べられないほどには硬いよ」


 チヒロは剣に映り込んだ自分の顔をじっと見つめた。


 なぜ、私は生きているのか?


 なぜ、勇者なんかに選ばれたのか?


 なぜ、こんな私が?


「気に入ったかい。嬢ちゃん」

「え、あ、はい」

 不意に声を掛けられ、彼女は少し戸惑ってしまった。

「もし良かったら試し切り。やってみるかい?」

 彼女は首をコクリと縦に振った。






 店の裏は砂地になっていて、いくつかの標的が置いてあった。

 店主はそのうちの一つ、竹に藁を巻いた的の前に立った。

「コイツで試し切りをしてみな」


 チヒロが近づいてみると、的の高さは彼女の背丈より少し高いくらいだった。

 彼女は鞘から剣を取り出し、下段に構えた。刀身が日光を反射し、キラリと輝く。


「たあッ!」

 その掛け声と共に彼女は剣を二度、目にも止まらぬ速さで振るった。空を裂き、刃先からビュッと音が鳴る。


 それはまさしく電光の如く。


 それはまさしく石火の如く。


 そして少し遅れて的は三つに分かれて崩れ落ちた。

 彼女はクルクルと剣を回し、鞘に仕舞った。


「ははっ。これはこれは」

 店主は禿げかけた頭をポリポリと掻きながら言った。

「これが彼女の(チート)か……」

 リンレットも目を見開き、驚いたような表情で呟いた。


 しかし、一番驚いているのはーー

「うわッ! めっちゃ切れる! え!? 私が!?」

 チヒロ本人だった。

 地面に転がっている的の成れの果てと鞘に仕舞われた剣を交互に見て、イマイチ状況が飲み込めずあたふたしていた。

「……嬢ちゃん、大丈夫なのか?」

「……俺も心配になってきた」

 店主とリンレットは顔を見合わせ、クスクスと笑い合った。






 石造りの豪勢な建物の廊下を一人の男が足音を響かせて歩いていた。

 ここは王都の城、グレートオードナンスキャッスル。王族が住まうとても大きな城で、何百年も前に建てられたものらしい。


 歩いていた男はとある大きなドアの前で立ち止まり、ミリタリージャケットの襟を正した。

 彼の服装は、この様な場に望ましくないものではあったが、それは彼なりの正装でもあった。


 彼は王立ギルドの(マスター)のガーランディア。突然王国政府からの招集があって来たのだが何の用事なのかは全く知らされていない。

 ガーランディアは一度咳払いをすると「失礼します」と、(しわが)れた言って扉を開けた。


「おうおう、【雷神】どの。久しぶりだな」

 中に入って早々に声を掛けてきたのは国防長官のトーマスだ。彼も昔名を馳せた優秀な冒険者でもあり、ガーランディアが属していたパーティのリーダーでもあった。

 因みに【雷神】とはまだガーランディアが冒険者だった頃の二つ名だ。


「トミー、そんな名前はもう昔の物だ。今はもうそんな気力も残っていない、ただのジジイだ」

 そんな事を言いながら椅子に腰掛けると、目の前の青年が口を開いた。

「またまたご謙遜を。まだまだ貴方は十分強いではないですか。それにあの規模の組織を一人で束ねているのは中々の腕前だと思いますよ」


 青年の名はバズカルス。

 民営ギルド【グリーズ】の長で、魔法に特化したSS(ダブルエス)ランクの冒険者だ。

 見回すと他にも国務大臣や魔法学校の校長、はたまた公爵子爵など、名だたる有名人が顔を揃えていた。

「ふん。今はもうお主と互角に戦う力も残っておらん。それに一人では……」


 すると部屋の上座にある扉が開いた。

 ガーランディア達は反射的に椅子から立ち上がり、入ってきた女性に敬礼をした。


 その女性は飾り気のない──しかしそれでもって高級感のあるドレスに身を包み、歳を重ねて出来上がった白髪の頭に王冠を乗せていた。

 彼女の顔に刻まれた(しわ)がその歳を物語っていた。

 彼女の名はキンバー女王。名実共にこの国のトップに君臨している女性だ。


 彼女は微笑みながら「座ってください」と言い、長卓の上座に腰掛けた。

一度全員席に着いたが、少し間を置いてトーマスが立ち上がり胸ポケットから一つの封筒を取り出した。そして咳払いを一つすると話を始めた。

「つい先日、この封筒を伝書梟(フクロウ)が運んできました。内容はこうあります。『こちらマサバ砦。我、魔族との交戦状態に入る。敵総数推定約一万。以上。』と」


 その言葉を聞いた瞬間、メンバーの間にざわめきが起きた。当然それはガーランディアも例外では無かった。

 だがキンバー女王は眉一つ動かさず、質問を返した。

「それで? 被害状況は?」

「はっ、未だ砦とは連絡がとれておらず……占拠されたと考えるのが妥当でしょうな」

「やはり450年もの間音沙汰無かったのはこちらに攻め込む為か……」

 そうガーランディアが呟いたその時、長卓の端に座っていた太った男が立ち上がり、声を荒らげた。


「何が占拠されただろうだ! そうなったのは全て君に責任があろう!」

「おやおやマカロフ公爵、そんなに声を荒らげると高血圧で血管が切れてしまいますよ」

 そうトーマスに煽られた彼──マカロフは攻め込まれたマサバ砦のある地方を治めている権力者だった。

 元々冒険者出のトーマスやガーランディア達は貴族達から煙たがられており、トーマスはよく喧嘩を起こしていたのだ。

 トーマスに煽られた彼はますます顔を赤くし、早口でまくし立てた。

「黙れ! 卑しい冒険者出の癖に生まれながらの貴族である私に逆らうとはどういう神経をしているんだ! その気になれば貴様など直ぐにクビにできるのだぞ!」


 見かねたガーランディアは少し深呼吸をし、口を開いた。

「お前たち、ここは女王陛下の御前だぞ。醜い争いはよせ」

 するとトーマスは「失礼しました」と頭を下げ、席に座った。

 マカロフの方は相変わらずであったが。

「でだ。問題はこれからだ。奴ら(魔族供)はどれくらいでここまで攻めてこれる」

 ガーランディアがそう問うと、トーマスは

「奴らはまだ動き出してないようだが、早ければ一月経たずにここに攻めてこれるだろう。要所要所で防衛ラインを張ってはいるがいつまで持ち堪えられるかも分からん」


その後数十分会議は続いたが結論は出ず、最終的には

「取り敢えず、現状のまま相手の出方を見ましょう。次の会議の時は例の【勇者】さんにも出てきてもらいましょう」

というキンバーの鶴の一声で散会となった。

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