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NO LIFE KING  作者: ねる
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13.Alchemist②

 レイはこくりと頷くと、カウンターから出、ドアの横に取り付けられている機械の前に立った。

 金のメッキが施されたそれは数本のレバーが伸びており、真ん中には何らかのインジゲーターの様な、文字盤の様な物が取り付けられていた。

 レイはレバーのいくつかを倒したり、起こしたり、タイプライターの様な文字盤を叩いたりしてその機械を操作した。

 そしてその機械の横から鍵を取り出し、ドアノブに差し込み回した。すると。

「おわっ!何だこれ!」

 突然部屋全体がガタリと、まるで高いところから落ちたかの様に揺れ、チヒロはバランスを崩して地面に尻餅をついた。

 そしてレイが入ってきた時と同じようにベルがチンという小気味の良い音を響かせた。


「ささ、行きましょか」

 そう言ってレイがドアを開けるとそこは先程の路地裏ではなく、平原のど真ん中にポツンと建つ小屋だった。






 緑、緑、緑。見渡す限り一面の緑。

 チヒロはドアの外に出るとしゃがみ込み、地面を撫でた。手に草のふさふさとした感触が伝わる。


 彼女は少し駆け、寝転び、目を閉じた。

 爽やかな風が草木を、チヒロの顔を撫でて行く。

「凄い……どうなっているんだ……」

「これが彼女の(チート)だ。元々は王国の魔道士が彼女の為に組んだ術式だったんだが……勝手にドアに紐付けしてこんな機械を作っていた」

 チヒロが見上げると、リンレットはふと笑った。

「あ、笑いましたね。リンレットさん」

「つくづく法外だなと思ったのさ」

 そう言うリンレットを見、チヒロも少し口角を緩めた。






 レイに連れられ出てきた小屋の裏手に出ると、そこには道路標識を小さくしたような的がいくつか刺さっていた。

「一応言っておくとアレの素材は鉄。厚さは10ミリ。普通の拳銃弾なら(はじ)くくらいの強度は持ってるけど……」

 そう言いつつ、彼女は手に持った木箱を開け、

「コイツはそんなにヤワじゃない。試してみな」


 リンレットはその銀に輝く拳銃を手にし、レイから手渡されたマガジンを込めて遊底を引いた。

「ゼロインは?」

「済ませてあるよ。リンちゃんの腕ならアレくらいなら当てられるから安心しな」

 彼はその呼び名に苦い顔をしつつも、昂ぶる心を、心臓の鼓動を感じながら手に持った銃を構え、照星と照門を的に向け重ね合わせた。


Going hot(ブッパなす)

Yeah(やってみな)


 直後、轟音と閃光が周囲を包む。薬室内から放たれた高圧の圧縮魔力は自身を青白く発光させながら的に向かって一直線に飛んでいく。

 そして的に当たった瞬間、耳を(つんざ)く、まるで金属と金属を思い切りぶつけた様な──いやそれとはまた違う、聞いたことのない不快感溢れる高音が辺りを駆け巡った。

 あまりの衝撃にチヒロは耳を塞ぎしゃがみこみ、レイは咥えていた煙草をポロリと落とし、リンレットは

──笑っていた。






「凄いな……」

 リンレットがそう呟いた目の前に先ほど撃った的が置かれていた。中心からちょっとずれた所に直径5cmくらいの穴が空いていて、それを中心に大きくひしゃげていた。

「私も驚いてるよ。私も撃ったけどこんな威力出なかったもん。やっぱりリンちゃんの魔力が異常(チート)って事か」

 レイは薬莢をじっと見ながら呟いた。突き出た魔晶石が太陽の光をプリズムのように乱反射させる。

「改良の余地アリ、かぁ……」


「あのぉ……これだけの威力が出るなら新型弾薬?もこれでいいんじゃないですかね……?」

 そうおどおどと口を開いたチヒロにレイは目だけで彼女の方を向く。

「それは無理だねちーちゃん。国が使う武器ってのは大量生産が前提なんだわ。この弾、一発幾らか分かる?」

 うーん……と考え込むチヒロに彼女は続ける。

「大体魔晶石の値段とか加工費とか考えて銀貨2枚。それだけあればこの元の弾丸は30発も買えちゃうんよね」

 言い終わると彼女は新しい煙草を咥え、小屋に備え付けられた納屋に入っていった。


「さてと、ちーちゃん。君に面白いものを見せてあげよう」

 出てきた彼女の手に握られていたのは白銀に輝く一枚の金属板だった。

「コイツはミスリル鋼。魔力を込めながら精錬した銀で魔力伝導性、耐久力に優れている……リンちゃん、ちょい(それ)貸して」

 彼女はリンレットから銃を受け取ると弾倉を込め、グッとスライドを引いた。

「見てな」

 そう言うとミスリル鋼板をフリスビーの様に投げ、素早く銃を構えてそれに向かって狙い撃った。

 放たれた魔法弾は山なりに飛んで行くミスリル鋼板に対してショートカットするように真っ直ぐ飛んで行き、遂に命中──


 と、その時。不思議なことが起きた。

 魔法弾が当たったミスリル鋼にバチッと電流の様な、稲妻の様なものが走ったと思うとまるで花火の様に弾けた。

 赤、青、黄色。様々な色の火花が辺りに散らされる。

「ね!ちーちゃん!凄いでしょ!」

 二ヒヒと笑うレイとは対照的にチヒロは驚きを隠せないでいた。

「凄い……ただの金属板なのに……何故?」

「ミスリルは魔力伝導性が高い割にその保有上限が低いんね。魔法弾を当てるのはデカイ魔力の塊を一気にぶつけるのと同じ事なわけ。んで、魔力保有量の上限以上の魔力をぶち当てたミスリルは風船みたいに破裂しちゃうのよ。それがアレ」

 そんな説明を聞き、チヒロはよく分かってないと言った表情を浮かべた。

「うーん……」

「あ、難しかった?」

 そんな2人を尻目にリンレットは煙草を捨て、足で踏んで火を消した。

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