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7話
「あなたが歌ってた夏のあの歌の、名前をついに知れないまま」
「あなたの鼻歌だけを頼りにし、思い出の雲間を流れるのです」
「それはもう今では恥ずかしいほどに、誰の目にもあなた色してた」
「私の身体は懐かしき彼方、今はもうちがう匂いがする」
「ハローハローハローハロー」
「理由ばっかり尋ねる世界で、理由など一つもなく恋をした」
「正しい夢の終わり方なんて、この世で私、私だけが知ってる」
やめてくれ、それ以上歌わないでほしい。
「あなたをちゃんと、思い出に出来たよ」
「あなたが見つけ出してくれたこの心を、あなたなしでも私は離さない」
「どんな昨日より明日が好きだと、少しの背伸びと本音で今は言えるよ」
「初めましてさようなら」
「最初で最後のさようなら」
「初めましてさようなら」
「最初で最後のさようなら」
「あなたが歌ってた夏のあの歌の名前は知らないままでいるね」
泣き虫の樹里は真顔で歌い上げていた、少し憂いげにしながら。
逆に僕が、ポロポロ涙を流していた。
「最後にひとこといわせて」
「誰かが悪いわけじゃない。だから世界を憎まないで」