3話
それから、僕たちはあっというまに仲良くなった。
ずっと二人で話をした。
今までの空白を埋め合わせようと頑張ったのかもしれない。
ただ、楽しかった。
人とこんなに長く一緒にいたことは無かったし、話し続けたことも無かった。樹里と話すことが、僕はとても楽しかった。
僕は好きな小説の話をして、樹里は好きな映画やマンガや音楽の話をしてくれた。
趣味は違っても、お互い真剣に話を聞いた。知らない世界の作品の話は僕にとって新鮮だった。
樹里はずっと僕と一緒に居たという。学校から帰ると、ずっと僕の看病をしていた。
本に夢中な僕の邪魔をしないように。
胸が痛くなる。申し訳なくて。
そして嬉しかった。僕は一人じゃなかったんだってわかって。
しかし樹里はなんて忍耐強いし、優しいのだろうか。
「帰っても家に誰も居ないから、有希君の顔を見てるほうが楽しかったんだ」
はにかむような笑顔で答えた。
その答えが気恥ずかしくて、目線をそらしてしまう。
樹里は妹だって教えてもらったのに、ドキドキする。
お父さんとお母さんは、仕事で普段から家に居ない。
僕が病院で寂しかったように、樹里も同じように寂しかったんだ。
僕が樹里を認識できてたら、きっとその寂しさも和らいでいたのに。
そう思うと、後悔で目に涙がにじんできた。
「ただ、お父さんとお母さんは責めないで」
「わかってるよ。だって、僕のためにお金が必要で、お仕事が大変だから、ここに来れないんだから」
「わたしたちのために、だよ」
樹里は僕の言葉を訂正した。
「わたしも体が弱くて、この病院に通っているの」
「どんな病気なの」
「・・・体中が痛くなる病気」
「痛いんだ。僕と逆だね、僕は全然痛くない。ただ、あまり体が動かないんだ。」
「うん、お互い大変だよね」
痛みなんか感じさせないニコッとした笑顔で、樹里は言った。