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天使とすごした10月4日  作者: 直木 新
3/28

3話

 それから、僕たちはあっというまに仲良くなった。

 ずっと二人で話をした。

 今までの空白を埋め合わせようと頑張ったのかもしれない。


 ただ、楽しかった。

 人とこんなに長く一緒にいたことは無かったし、話し続けたことも無かった。樹里と話すことが、僕はとても楽しかった。


 僕は好きな小説の話をして、樹里は好きな映画やマンガや音楽の話をしてくれた。

 趣味は違っても、お互い真剣に話を聞いた。知らない世界の作品の話は僕にとって新鮮だった。


 樹里はずっと僕と一緒に居たという。学校から帰ると、ずっと僕の看病をしていた。

 本に夢中な僕の邪魔をしないように。


 胸が痛くなる。申し訳なくて。

 そして嬉しかった。僕は一人じゃなかったんだってわかって。

 しかし樹里はなんて忍耐強いし、優しいのだろうか。


「帰っても家に誰も居ないから、有希君の顔を見てるほうが楽しかったんだ」


 はにかむような笑顔で答えた。

 その答えが気恥ずかしくて、目線をそらしてしまう。

 樹里は妹だって教えてもらったのに、ドキドキする。


 お父さんとお母さんは、仕事で普段から家に居ない。

 僕が病院で寂しかったように、樹里も同じように寂しかったんだ。


 僕が樹里を認識できてたら、きっとその寂しさも和らいでいたのに。

 そう思うと、後悔で目に涙がにじんできた。


「ただ、お父さんとお母さんは責めないで」

「わかってるよ。だって、僕のためにお金が必要で、お仕事が大変だから、ここに来れないんだから」

「わたしたちのために、だよ」

 樹里は僕の言葉を訂正した。


「わたしも体が弱くて、この病院に通っているの」

「どんな病気なの」

「・・・体中が痛くなる病気」

「痛いんだ。僕と逆だね、僕は全然痛くない。ただ、あまり体が動かないんだ。」

「うん、お互い大変だよね」


 痛みなんか感じさせないニコッとした笑顔で、樹里は言った。

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