表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使とすごした10月4日  作者: 直木 新
2/28

2話

 視神経の移植手術から一週間が経った。


 お医者さんは成功したと言った。ずっと包帯を両目に巻いていたため、本当に見えるようになっているのか不安だった。


 包帯を取ってもらうと、光に目がくらむ。

 しばらくして眩しさになれると、目の前には、お医者さんと看護師さんがいた。 

「見えるかい?」

「はい、見えます」


 お医者さんが立てている指の数を当てたあと、視力がちゃんとあるか、本格的な検査を始めた。



 僕は、部屋の隅に、見知らぬ同じ歳くらいの女の子が座っていたことに気づいた。


「あの子は、誰?」


 そう僕が言うと、女の子はガタッという音をたてて席を立つ。

 そしてハッとして口を手で抑えた。だんだん目には涙が滲んでくる。


 何か僕は、この子を悲しませることを言ってしまったらしい。誰かわからないけど、女の子を泣かせたのなら謝るしかない。


「えっと、ごめんね。」

「ううん、大丈夫だよ」


 彼女は、僕が今まで見たことのない、とても素敵な笑顔をみせた。なのに涙をポロポロこぼしている。


どういうことなのだろうか、困惑するしか無い。ただその表情を見せられて、今すごくドキドキしている。


「やっと気づいてくれたんだ。」

 女の子は言った。


「あぁ、ようやく見えるようになったんだねぇ。」

 つぶやいた、看護師さんの方を見る。


「誰なんですか、この子?」

「有希君の妹だよ、双子の。」


 何を言われているのか、全然意味がわからない。僕はずっと一人っ子だ。


「良かったねぇ、樹里ちゃん。じゃあ、有希くん、話すよ」

 激しく当惑する僕に、看護師さんは説明を始めた。


「なんでかな、有希くんは、妹の樹里ちゃんが今まで見えなかったの。」


「視神経を移植したら見えるようになるとはね。脳の問題だと思っていたんだけど。」

 お医者さんはそう言った。


「有希くんは、樹里ちゃんに触られても気づかないし、話しかけても返事をしない。誰かが樹里ちゃんの話しをしても無視をする。」

 看護師さんは言った。

「何故か樹里ちゃんという存在を、認識出来なかったんだよね」

 お医者さんは言う。


「有希くんが気に病むことじゃないよ。精神的な症状だってお医者さんは言ってるし」

 看護師さんが言う。

「それが、ようやく見えるようになったんだね。」

 お医者さんが言った。


 樹里、と呼ばれる、僕の双子の妹だという女の子が、僕の目の前に立って、笑って話しかけてきた。

「はじめまして、有希くん」

「ほら、お返事」

 看護師さんに促されて、僕も答えた。

「はじめまして。・・・樹里ちゃん」

 とてもこそばゆい感じがした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ