通学3
第一章.VRMMORPGのテスターに選ばれたって? 003.通学3
俺はあの後、延々と西園寺のドM話を聞かされていた。
どのプレーが良かったとか、あの鞭捌きは堪らんとか、まだ尻が痛いとか、
心底どうでもいい。
俺は話半分に聞き流しながら、アナウンスを聞く。
『次は御倉谷。次は御倉谷です。御降りの方は混雑防止のため電車の乗車口付近でお待ちください…………。』
御倉谷駅は終点―――俺たちが降りる駅の三駅前の駅だ。
ここまで来ると車内もかなり空いて、学生や教師など大学関係者が目立つようになる。
その内ほとんどが座席に座り、立っている人間の方が珍しい。
俺達も三人並んで、椅子に座っている。
「――――でよー、その女教師が言うんだ。『宿題を忘れた?お仕置きが必要だな?」って!」
「そう」
顔をキラキラさせて何言ってるんだ…………。
てか、まだこの話続いてたんだな。
お前のエロトークのおかげで、俺達の周りだけ人口密度が異常に低い。
遠巻きに女生徒がひそひそと顔を引きつらせている。
わりとマジな感じで…………。
俺は小さくため息を吐いた。
西園寺自体は悪い奴ではない。クラスの女子からも男子からも好かれている(性癖を除いて)。橘みたいにボッチでもないし、むしろ友達は多い方だ。
いわゆるAクラスって奴だな。
そんな奴がどうして俺なんかと一緒にいるかと言うと、
「ずいぶん物憂げな溜め息じゃねえか! 安心しろって! 今晩一緒にやらせてやるからよ!」
俺の事を同士だと勘違いしてるのだ。
甚だ迷惑な話だ。
俺はどっちかって言うとSだぞ!
俺はやんわりと西園寺の誘いを断る。今俺がやりたいゲームは『乙女フロンティア』だけだ。
しかし、尚も進めてくる西園寺に俺が困っていると、
「西園寺君。少し静かにしてもらえないかしら。耳障りで仕方ないのだけど?」
橘がそんな助け舟を出した。
俺は驚く。
橘は基本人に無関心だ。特に、自分が認めない人間とは口すら利かない。
西園寺に文句や批判を言うときでも、何時もは俺を通して言うのだ。
「これは別に特定の誰かを指して言う訳では無いのだけど、…………真君、どう思う?」
とか、
西園寺に直接話すの何て初めてじゃないだろうか?
不思議に思い、左を向くとその意図が分かった。
橘は本を読んでいた。それも、今橘がスゲーハマってる本。
きっとホントにうるさかっただけなのだろう。別に俺を助けたとか言う訳じゃ無くて、
「やっぱ橘は橘だな。うん」
「何その眼? あなただって迷惑してたでしょ?」
「いや、べつに、そういうわけじゃ…………。」
俺は思わず、否定の言葉を口にしていた。橘は心底軽蔑したように目を細めると、
「はあ…………。貴方のそう言うところとても嫌いよ」
「う…………。(何だ?ぐさっと来たぞ今の言葉。)」
久々に嫌い発言を貰った俺はたじろぐ。
橘の言葉はホントに胸に刺さるのだ。悪気が無いだけに。
俺は何だか泣きたい気分になった。
右を向くと西園寺が羨ましそうに俺を見ていた
ムカついたので、顔面を殴って置いた。