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通学1


第一章.VRMMORPGのテスターに選ばれたって? 003.通学


俺の通ってる大学は世にも珍しいビルそのものが学校と言うものだ。

ターミナルの中央にあり、一階と地下一階と二階はまるまるが駅である。

そのため通勤手段は実に様々。

バス、自家用車、自転車、徒歩とわりと普通のものから

東鉄、モノレール、地下鉄、空送バス、果てはフェリーまで


そんな中、俺が使っているのは最寄りの駅から乗る地下鉄だ。


しかし、さすが東京だけあって朝の混みようは半端ではない。

右を向いても左を向いても人、人、人、人

一寸先も人である。


「ユー鬱だ」


引きこもりってわけじゃないんだが、ここまで多いとさすがに疲れる。

それが毎日ともなれば拷問と同じだ。

いや、人間なんて社会と言う主人に飼いならされた奴隷か。


――――――丁度、電車が来た。


すでに、めい一杯人が乗っている。

そんなの知らんとばかりに何人もの人が押し入る。

俺も体格を駆使して、その人ごみにのしりと入った。


―――――――マジで、混んでるわー


いつもの事だが、この混み方はどうにかならんのか。

肩があたるのは当たり前、少し揺れれば背中や胸にだって他人がぶつかる。

痴漢するおじさんサラリーマンの気持ちも分かると言うものだ。


―――――――痴漢しても誰がやったかなんて分かんないだろ?


もちろん、本気でやる訳じゃ無い。

痴漢騒ぎになって真っ先に疑われるのは俺みたいな男だからな。

だから、俺は電車に乗る時はいつも右手を上にあげ掴み棒を掴み、左手には鞄を持っている。

こうしていれば仮に嫌疑を掛けられても、すぐに疑いが晴れるからな。


「―――相変わらず悲しい程に自己評価が出来てるわね?真君」


唐突に声が掛けられた。


凛とした涼やかな声だ。

優しさは一切なく、気の強さだけが伝わる。


俺はこの声を知っていた。

そもそも俺の事を下の名前で呼ぶ女子何て一人しかいない。


「――――橘か」


「ご名答」


左を向くと、予想通りの顔があった。


橘 メイ。 橘グループのお嬢様だ。


吸い込まれる様な漆黒の長髪に、冷徹なまでの鋭い瞳。身長は俺と同じくらいの長身で、立ち居振る舞いとスレンダーな体格は彼女の品の良さを引き立てている。


しかし、その雰囲気はどこまでも冷徹。

モデル顔負けの体型に美しい容姿だが、多くの男は「これは無理」と匙を投げるだろう。


―――――――こんなんじゃぁ、クラスで浮きまくるだろ


と言う、俺の心配そのままに、橘はクラスで浮いている。

入学して一年以上となるのに俺以外の友達もおらず、親しくしている先輩や後輩もいない。

こいつの場合、友達を作れないんじゃなくて、作る気がないというのがさらに悪いのだが、


「なぁ、お前。女友達の一人くらい作った方がいいんじゃないか?」


無駄だと思うが、老婆心で言ってみた。


「私は自分の認めた人と以外話したくないの。低俗な人間と話しえるとそれでけで自分の品位を下げるわ」


だからあなたも気よ付けなさい、と橘は続ける。


このストレートな毒舌が橘をボッチにしている大きい理由なのだが、それを指摘したところで無意味だろう。

それよりも俺は立花の今の言葉に驚いた。

今の言いようだと俺に価値を見出してるって聞こえる。


「話をするくらいには俺を認めてるってことでいいのか?」


「少なくとも一面的な意味においては認めているわ。貴方のあの才能は希少だからね…………。」


何だか照れる。


「もっとも、それ以外の全てにおいては常人を遥かに下回る底辺を歩いているわ。特にその卑屈な根性と惰性的な体。見ているだけで不快になるわ。」


そう言うと橘は俺の体を上から下まで見上げ、


「――――――――今日までに痩せてくるように言ったはずなんだけど?貴方約束も守れないの?橘ポイント減点ね」


「た、橘ポイント?!何だよそれ…………。てか、約束なんてしてねえぞ」


一方的に言われた記憶はあるが…………


橘は俺のそんな様子に、肩に掛けた鞄を掛け直し、


「私の独断と偏見により付けられる点数よ。これが高いと将来いいことがあるから、せいぜいポイントゲットに努めなさい」


「俺は時々お前の事が本気で分からなくなる」


「当然ね。常人に天才の考えが理解できるわけがないでしょ。でも、分かろうとするその姿勢は評価に値するわ。橘ポイント+3点」


「ちなみに今、俺の点数ってドンぐらい?」


「9点…………。今ので12点になったわ?」


「テストなら赤点だな」


高いのか低いのか実際分からないが、深く考えたら負けな気がする。

取り敢えず、聞き流して心の平穏を選んだ。


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