妹
第一章.VRMMORPGのテスターに選ばれたって? 002.妹
7時半。
妹は依然、洗面所に居た。
あれから一時間半も経つが終わる気配がない。
朝シャワー、朝シャンプー、朝リンスを終え、さらに無数の化粧を使い分けるのだからホントに中学生かと心配になる。
――――――――はぁ。なんかへこむはー。
対する大学生の彼は、腹を掻きながら、ポテチを一箱食いつぶしたところだ。
それでも空腹を謡える彼の腹はブラックホールでも搭載されてるのかもしれない。
――――――――仕方ない、朝食でも作るか…………。
彼はゆっくりと腰を上げ、
「妹よ、今日の朝食は何にする?」
「別に何でもいいわよ! てか、今集中してんの! 話しかけないで!」
「すんまそん」
妹はメイク中に話しかけると大変怒る。
毎日朝早く起きて、二時間半以上も鏡と睨めっこするのだ。
もともと可愛いんだから、そこまで頑張らなくてもいいだろ?と昔聞いたら、
「顔捨てたあんたには分かんないわよ!」
と、辛辣な言葉を貰った。
流石に、この評価には一言申したいものがあったが、妹の見目に掛ける執念を知るだけに、何も言えない。
メイクも香水も、小学生のころからであり、母親に毎日のように習っていたのだ。
――――――――あのころはまだ可愛げもあったんだが…………。
今となっては只々生意気な美少女だ。
「目玉焼きと、お手製サラダにするぞ」
「…………。」
取り敢えず、宣言だけして、キッチンに急行。そろそろ俺の腹が限界だ。
「よっし!」
使うのはフライパン二個と卵6個。塩コショウ。レタス一個に、トマト二袋、それとカボチャだ。
この5/6は俺が食う。
それから7分ほどで料理を完成させ、妹に先んじて朝食を食べる。五人前をぺろりと完食、後かたずけを終え、さらに10分後、席に着いた妹から、
「ナニコレ! 冷めてんじゃない!」
と言う言葉を貰い、7時50分。家を出た。
「鍵しっかりかけて出ろよ!」
「分かってるって。 馬鹿にしないでよ! それより、何時も言ってるけど外であっても話しかけないでよ、恥ずかしいから!」
「分かってるわ。たっく。 じゃあ、行ってくるわ」
俺は家を出た。