彼女のスキル
結局自分の自宅兼店まで連れてきてしまった。
今日は定休日だからこそ連れてこれたというのもある。もし人が来ていたら大惨事だっただろう。
現地で観察した通り、見た目は人間だが仕草や耳などのパーツは人間とは違う。と考えるとハーフと考えるのが妥当だと思うが、どういう関係でハーフになったのかは全くわからない。
なら、なぜ連れてきたのか。
K かわいい
M めずらしい
A あざとい
故に、自分の欲望が10割占めた状態で連れてきてしまったため、もはや拉致である。
「...まぁあの状態でほっとくのもなぁ...」
良心と言えるかどうかすら怪しい一つの結論は全く危険を考慮していないものだった。
彼女は相変わらず「にゃ」というだけで言葉は通じないように感じるが、一つ知っておきたいものがあった。
「お前、スキルは使えるか?」
「にゃ?」
スキルというものはMP(精神力)を消費して放つ術である。この世界の大半はこれを応用したものを使っていて、モンスターでさえ持っていない者はいないという話があるがどうなのかは実際にはわからない。
スキルには大きくわけて、攻撃、防御、生活、覚醒、固有、常時の6種類であり、攻撃スキルの中だけでも数十種類、生活スキルで数百種類はあるのではないかとされている。
これらは自分達が生きていくために必須だが、使う度に精神を削る。少なくなっていくと疲れていき、その状態で更に使い続けると、やがては人ではなくなる可能性がある。勿論、MPの残量はスキルやアイテムを使わない限り可視化されないが、上級者は感覚で判断する。
ちなみに常時スキルはなにもしていなくても常に発動しているスキルのことで、これを上手く利用することでより快適に暮らせるようになるのだが以下略。
つまり、急展開でなにがなんだか追いついていない彼女はあたふたとスキルを展開するハメになり、同時に自分は無意識にこいつを仲間にしようとしている事に今更気づいて罪悪感と責任感に押しつぶされそうになっていた。
「にゃぁ!」
とスキルを展開し、直後彼女の体に光が集まり、そして光の球ができたと思ったら弾けるように消えてしまった。
その瞬間、
「...こ、これで...いい...?」
―――世界が固まったように思えた。
理由:冬だから。