昔話①
昔々ある所に、1人の少女とその家族がいました。
この周り一帯は戦争していて、貧乏でした。
「おかーさん、いつせんそーはおわるの?」
「きっともう直ぐ終わるわよ」
しかし、少女は不満そうに、
「それ、もーききあきた。ほんとーに、いつおわるの?」
「...」
答えが見つかりませんでした。戦争というものは始まってしまったらいつ終わるかわかりません。少なくとも、どちらか決着がつくまでです。戦争開始から40年が経とうとしてる今、『未来予知』の魔法を持つ母親でさえもどうしようもない状況です。
突然、グシャッという音と轟音が同時に遠くで聞こえました。
「あぁ、また死んでしまった...」
母親は独り言のように呟きながら、テントの中に入っていきました。
―――ドォォォォン
人は逃げる。自分は?
―――グシャッ
猫のような耳は、人の悲鳴を繊細に捉える。
―――バキバキ
いつか...いつか...
そう考えた矢先、父親が戻ってきます。
全身が血まみれになっても堂々と歩いてくるその姿は、少女の憧れでした。
しかし、今日はいつもと違い、しっかりした歩きではなく少しよろよろとした歩きでした。
それに気づいた母親はすぐ父親のところに行き、なにかを話始めました。
少女の耳はその話をうまく聞き取れませんでしたが、
「いつか人類種とビースト種が共存して暮らせる世界が―――」
と、微かに聞こえました。
その時少女は何かに反応したかのように目を見開き、後ろにある小さな森の中へ駆け抜けていきました。