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シロ

今日は子供の日、ママ達は、朝から柏餅を作っている。

昨日から餡子を作っていたから、結構大変なのだ。

餡を練るのは、熱くて、餡が跳ねたりと、なかなか

危険だ、ママも苦戦していた。


「柏餅って、上新粉で作るんですね。こねて、一口大に

ちぎって蒸し器で、蒸して、まとめて、伸ばして、

餡を包む。大変ですね。」

相変わらず、不器用なママだが、最近は大分慣れたようだ。

「慣れれば、簡単よ!奥さんも手つき良くなってきたわよ。」

おばあちゃんも、ちょっと褒めた。

横でお政さん達も一緒に作っている。

見えないお手伝いさんは、皆手つきが良かった。

皆楽しそうに柏餅を作っている。

「クロちゃん、柏餅できたから、皆に持って行って。」

ママが言った。

「はーい。」


クロちゃんは、お盆に柏餅を乗せて、庭に行った。

カッパ池では、子ガッパが6匹生まれて、チャプチャプ

泳いでいた。

「キュー、キュー」となかなか可愛いv

「皆!柏餅よ!」

「あ、クロちゃんありがとう」

カッパ達は、柏餅を取ってパクついた。

「美味しいわね、ママもおばあちゃんも料理が上手で、

毎日楽しみね。」

お富は、嬉しそうに言った。

「うん、言っとくね。」

クロちゃんは、カッパ達におやつをくばり、おばあちゃ

ン家へ向かった。


渡り廊下を渡ると、みっちゃんが見えた。

「あ、クロちゃん!今から『ありがとうクロちゃん』が

始まるよ!早く!早く!」

『ありがとうクロちゃん』の再放送の日か、何で皆

あの番組が好きなんだろう?


部屋に入ると、親方、又べえ、歳さん、ゴンベエが仕事を

ほっぽり出してテレビを見ていた。


『ありがとうクロちゃん』それは、万福商店街に出没する

不思議な少年で、不思議な力で人々を幸せにするという

物語だ。

クロちゃん役の少年は、クロちゃんより可愛いし、CGの

妖怪も何か違うと思うのだが、皆喜んで見ている。

二日前、『不思議な少年クロちゃん』が、

放送されると、最近の万福商店街ブームもあって、30%

の高視聴率だったらしい。

第一話は、例の鶴屋千年堂のお菓子に青虫を乗せて、動画

サイトに投稿した事件だ。

吉川は、ま、あんなもんだが、鶴ちゃんも亀ちゃんも、

あんなに怖くないし、愛嬌もあって、優しいんだけど。

カダ兄ちゃん役の少年は美形だが、カダ兄ちゃんは、

あんなシリアスキャラじゃないけど。

「なかなか面白かったぞ!面白いお仕置きだ!」

親方達は、面白がっている。

「でも、これみっちゃんが出てない!」

みっちゃんはカットされて不満顔だ。

「来週の『あの子はクロちゃん、神様のお使い』に

出てるといいな。」

いつの間にか、大黒のおっちゃんが横で柏餅を食べている。

チョコ兄ちゃんと、セヒ兄ちゃんも出てて、学校で自慢

したと言ってた。

でも、自分の方がうんと可愛いと、チョコ兄ちゃんは、

不服だ。

「今度は、儂らも出してくれるのか?」

親方が、聞いた。

「さあ、どうかしら。」

クロちゃんが言うと、

「今度は、みっちゃんも出すようテレビ局の人に言って

ね。」

みっちゃんが言った。

「クロちゃんに言われても・・・。」

「クロちゃんが、言えば出してくれる!」

みっちゃんは、ひかない!

「みっちゃん、そんなに出たいの?クロちゃんテレビ

局の人知らないんだけど。

ママが、テレビ局から電話があった時、深く考えずに

了承したの、クロちゃんは、権限ないわ。」

クロちゃんが言うと、みっちゃんは、ガッカリした。

気の毒に思ったクロちゃんは、

「みっちゃん、万福商店街に行かない?夜店出てい

るよ。行かない?」

と、誘うと、

「行く!」

みっちゃんが返事した。


万福商店は、沢山の人で賑わっていた。

端午の節句草が大評判なのと、『ありがとうクロちゃん』

の影響もあるようだ。

おばあちゃんに、「端午の節句草は売らなくていいの?」

と、聞いたら、

「万福商店街の客寄せに、なっているから売らない方が

いいと思うのよ。」

と言われた。

「櫻子ちゃんは、万福商店街の半分以上の大家さん

だから、万福商店が儲かった方がいいの。

だから、みっちゃんも、お家と、万福商店街を行き来きす

るの。」

みっちゃんが言った。

おばあちゃん、お金持ちなのね。クロちゃんは思った。

お店をのぞきながら、何しょうか?と、2人は、どんどん

歩いて行った。

すると、万福商店街の端に、新しい神社が見えた。

「この間から神社の建設をしていたけど、できたのね。」

クロちゃんが言うと、

「どんな神社か見に行こうか。」

二人は、新しい神社を見にいった。

まだ新しい木の匂いがする。赤い鳥居の文字を見て、

クロちゃんは、目を疑った!?

「クロちゃん神社」・・・いつの間に、何でこんな

おかしな物が出来たのだろう??クロちゃんは、眩暈が

した。

「すごいね、『クロちゃん神社』だって!クロちゃん

神様みたい!中入って見よう!」

みっちゃんが嬉しそうに、言った。

「うん、どうなってるんだろう?」

クロちゃんは、複雑な気持ちで中に入っていった。

中には、お社があって、販売所と住居のような

建物が見えた。

お社の前で、万福商店街の町内会長が、神主さんと

話していた。

「今日は、町内会長さん。これ何?」

クロちゃんは、町内会長さんに話しかけた。

「あ、クロちゃん!丁度良かった!神社完成したよ

。クロちゃんのお蔭で万福商店街は、活性化して

大繁盛だ!感謝して、皆でお金を集めて『クロちゃん神社』

を作ったよ。」

感謝の方向が違う気がするが、

「こちら神主さん!だよ。神主さん、クロちゃんだよ。

色々面倒をみてやって下さい。」

神主さんにクロちゃんを紹介すると、

まだ20代のイケメンの神主さんは、

「君がクロちゃんかい!宜しく頼むね!案内してあげよ

う。」

神主さんは、クロちゃんを連れてお社の方へ行った。

神主さんは、お社の裏に行くとドアを開けた。

中は、子供部屋みたいだった。

スヌーピーのソファーベッドやら、オモチャ、おやつ

入れには、お菓子が沢山入っていて、エアコン、トイレ、

冷蔵庫付き、冷蔵庫には、アイスクリーム、ジュース

、プリン、ゼリー等が入っていた。

「いつでもここで遊んだり、休んだりしたらいいよ。

クロちゃんが御神体だかね!」

・・・何か引っかかるが、秘密基地が出来たと思えば

いいか。

「クロちゃん!ふかふか!」

みっちゃんは、ソファーベッドに座ってご満悦だ。

「いつでも来ていいよ、ドアはオートロックで、

眼球で識別できるようになってるんだよ。

丁度いいから登録していくといいよ。」


登録した後、神社を出ると、何かが、クロちゃんに

飛びかかってきた!

「きゃー!」

「クロちゃん!」

バッコン!

みっちゃんは大槌で、ぶっ叩いた!

見ると、大きな白い犬が倒れていた。

「狂犬病かしら?」

恐る恐る近づくと、犬は

「ウ~」と唸って逃げて行った。

「何だったのかな?」

クロちゃんが言うと、

「あれ犬神だよ、使役されてる。」

みっちゃんが言った。

「クロちゃん、人に恨まれる覚えはないわ。」

クロちゃんが言うと、

「知らないうちに妬まれる事もあるよ。

用心した方がいい。」

みっちゃんが言った。

誰が、クロちゃんを恨んでいるのかな?

「帰ろうか?」

みっちゃんが、尋ねた。

「そうね、ごめんね。」

クロちゃんがあやまった。

「ううん、あんなワンコは、みっちゃんが、

いくらでも追っ払ってあげるよ。

でも、そんな気分じゃないよね。」

みっちゃんが心配そうに、言った。

みっちゃんの言葉に甘えて帰る事にした。

なんなのかな。


「ただいま~!」

家に帰ると、クロちゃんは、道々お店の人に

渡された、両手一杯のお土産をテーブルに

置いた。

「まあ、クロちゃん今日も色々貰ってきたのね。」

ママがテーブルを見て行った。

「クロちゃん、大人気ね。」

おばあちゃんが、笑って箱を開け始めた。

「まあ、美味しそうだ事!」

「あ、松坂牛ね、こっちは、ヒラメのお刺身と、切り身

だわ。苺カステラ、どら焼き、クリームパン、マドレーヌ

、クッキー、ドーナツ、苺、メロン、レタス、トマト、

こんなに貰っていいのかしら。」

ママが嬉しそうに言った。

「大丈夫よ!みんな儲かって、お金出しあって神社建

てちゃうくらいだし。」

おばあちゃんが言うと、

「おばあちゃん、知っていたの!」

「勿論!土地を提供したの私だもの。」

おばあちゃんは、言った。

「・・・クロちゃん知らなかったから、ビックリした

の。」

「あら、残念ビックリさせようと思ったのに。」

おあばあちゃんは、残念そうに言った。

・・・あ、そう・・・ま、いっか。

「皆に配ってくるね。」

クロちゃんと、みっちゃんは、お菓子を一杯お盆に乗

せて、庭に行った。


「みんな、お菓子貰ったわよ!」

カッパ池のカッパ達が寄って来た。

「美味しいね、そうかクロちゃん神社か。

ここ、子供も生まれたし、俺そっち行こうかな。

いいかい?クロちゃん。」

吾作が聞くと、

「え、いいけど。あの近くでクロちゃん犬神に

襲われたわ。」

クロちゃんがそう言うと、カッパ達が驚いた!

「犬神に襲われた!そいつは白い犬だったかい?」

与作が聞くと、

「白い犬神だった、知っているの?」

みっちゃんが聞くと、

「そいつは、ガマ吉の女房雪乃の使い魔だ。」

吾作が言うと、いきなりクロちゃんに、

犬神が襲ってきた!

「わっ!」

バコッ!!クロちゃんは、いつの間にか出した、

打ち出の小槌で殴っていた。

犬神は、地面に叩きつけられた!

う~ワン!ワワン!!」

激しく吠えた!

すると、クロちゃんと、みっちゃん、カッパが固

まった。あれ~動かない!

すると、茂みの陰から真っ白な大きなガマガエルの

妖怪が姿を現した。

「お前が、クロちゃんか、ブサイクなガキだね!

よくも、家の財産を盗っていたったね!盗っ人!

亭主の妖力も取り上げて!おかげで私は、館から

神様に追い出されたよ!」

雪乃は、怒鳴り付けた!

「お前らが、非義非道をつくしたからバチあたったんだ!

散々俺達色々収めて、長年仕えたのに、お富を丸焼きに

しょうと、したくせに!」

与作が怒鳴った!

「他の仲間も、お前らが気に入らなって、丸焼きにして

喰ったな!散々こき使って!」

吾作が怒鳴った!

喰った、妖怪の世界エグい。クロちゃんは思った。

「この卑怯者!今頃出てくるって事は、あの時隠れてい

たね!」

お富が怒鳴ると、

「何とでもお言い!流石の私も神様相手には、勝てない

からね!」

雪乃が怒鳴ると!

「クロちゃん、どうした~。」

向こうから又べえがやって来た。

「助けて、又べえ!動かないの!」

クロちゃんが、叫ぶと!

「待ってろ!今、助けてやる!又べえ~ジャンプ!

又べえキック!」

バキ!

又べえは、雪乃にキックをかました!

が、きかない!あ~あ~弱い!

せめて来たのが、親方か、歳さんか、ゴンベエなら

よかったのに、と皆思った。

「何だい!この間抜けなヤツは!」

雪乃に蹴り飛ばされてしまった!

「さ、お前ら覚悟は、いいね!」

又べえは、あたたと、起き上がった。

丁度、犬神の後ろで、犬神の尻の所に、何やら

赤い物が見えた。

「さあ、シロ!あいつらをズタズタにするんだよ!」

雪乃が怒鳴ると、犬神は、クロちゃん達に

襲いかかろうとした。

「させるか!」

その時、又べえは犬神にしがみ付いた!

そして、ジタバタしている内に、犬神の尻に

ついていた、赤い物がポロッととれた。

「何やってるんだ!早くやるんだよ!」

雪乃が怒鳴ると、犬神は雪乃に襲いかかった!

「え?どうなっているの?あ、動ける!」

クロちゃん達は、動けるようになった!

「よくも、騙して散々こき使ってくれたな!」

シロは、雪乃に噛みついた!

「痛い!何で封印が、とけたんだい!」

雪乃は、騒いだ!

「何だコレ?」

又べえが不思議そうに、さっきの赤い物を拾った。

「あ~お前よくも封印といたね!」

「封印だったのか、コレ。」

又べえが珍しげに眺めた。

バッコン!!バッコン!!クロちゃんと、みっちゃんが

参戦して、雪乃をぶっ叩いた!

クロちゃんは、ばっこん!ばっこん!叩いた!

雪乃は、段々小さくなり、小さなカエルになった!

「潰されたくなかったら・・・」

と、言いかけたら、犬神がパックンと食べてしまった。

え!食べちゃった!

「俺は、シロ!こいつに騙され、操られていた。

助けてくれて、ありがとう。」

シロは、又べえにお礼を言った。

「ああ、いいって事よ!」

又べえは、自慢気だ。

「封印えらく簡単に解けたね。」

クロちゃんは、不思議に思った。

すると、みっちゃんが、

「又べえ、ポケットに何か入れてる?」

又べえに尋ねた。

又べえは、ポケットから唐草模様の綺麗な小箱を

取り出した。

「コレだ。」

「それだよ!大桜の大老様に頂いた小箱の

力だよ。それがあたって、封印が解けたんだ。

でしょう?大黒様。」

みっちゃんが言った。

「そうだ、それは、大桜の大老の加護が付いて

いる。又べえ、どさくさ紛れに良い物貰ったな。」

大黒のおっちゃんが出てきた。

「見てたなら、早く助けてくれればいいのに!」

みっちゃんが膨れた!

「面白そうなんで、様子を見ていたが、一番弱い奴が

頑張ったな、又べえ。偉いぞ。」

大黒のおっちゃんに誉められ、又べえは、大喜びだ。

「シロ、しばらく見ないと、思っていたが、あんなの

に捕まっていたのか。」

「面目ありません。」

シロは、小さくなった。

「おっちゃん、その犬知ってるの?」

クロちゃんが聞くと、

「おっちゃんのペットだ。」

あ、そうなんだ。そういえば毛並みも綺麗ね。

その後、ママがやってきた。

「クロちゃん、どうしたの、その犬?」

ママが聞くと、

「あ、ママ!この犬ね・・・」

クロちゃんが言いかけると、

「飼うのは、ダメ!ママそんな大きな犬怖いわ。

それに、家には、ひよこも、金魚も、カッパも

又べえもいるでしょう?」

ママが言った。

「カッパと、又べえはペットじゃないわ!」

「とにかく、ダメ!」

ママは、よほど大きな犬が嫌いらしい。

カッパと、又べえは苦笑いをしている。

「クロちゃん神社で飼えば?」

みっちゃんが囁いた。

あ、なる。


万福商店街の端に、『クロちゃん神社』に

一夜にして、カッパ池ができて、奇跡の池と評判にな

った。

『クロちゃん神社』の周りには、親方と、又べえが

端午の節句草が植えてくれた。

もちろん盗もうとする連中が出て来たが、

「ワン!」

シロに見つかり、変なカッコで固まってしまうのが

風物詩になった。

後でお巡りさんが回収しに来るので、それまで

晒しものである。

SNSに写真をアップする者もいた。


「シロ、動けなくする力があるんだ。凄いね。」

クロちゃんが聞くと、

「あれは、元々は雪乃の能力だが、喰ったから

俺の能力になった。ガマ吉も喰いたかったな。」

え、妖怪ってエグイ・・・。

「あ、じゃガマ吉の能力はどうなったの?」

クロちゃんが尋ねると、

「打出の小槌が吸いとった、打出の小槌で使える

ぞ。」

シロは、答えた。

「そうなの?どうやって使うのかしら?」

クロちゃんが聞くと、

「ま、おいおい解るよ。」

シロは、言った。

そうなの、へ〜。

「シロは、皆に見えるのね。」

クロちゃんが聞くと、

「俺くらい力が強いと、見せようと思えば見せらる

んだ。強い奴は、皆そうだよ。」

そうなんだ。

・・・にしても世の中こんなに盗人が多いなんて!

お巡りさんも大忙しだ。

ちょっとあきれるクロちゃんだった。





























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