鯉のぼり
五月晴れの空に鯉のぼりが悠々と舞い踊るこのごろ
神社では、子供の日を迎えていた。
すると、クロちゃん神社の空に、大きな気球の様な
物が、ゆっくり飛んでいた。
「あれ何かしら?」
クロちゃんが、不思議そうに見ていると、龍の戦車が
やって来て、ぷすっ!と、穴をあけて回収して、行った。
「最近、世界中に出没する中国の気球だよ。」
星明が、言った。
「気球で、何しているの?」
「色々と、情報を収集しているらしいよ。
回収して、色々調べるよ。」
星明が言うと、いきなり天鯉50号が部屋に入って来て、
「失礼します!ロシア妖怪の下っ端が、万福商店街に、
隠れていて、連れて来たらウクライナ妖怪と、
殺し合いを始めました!」
「え!えええええ!大変!急いで止めないと。」
クロちゃん達は、クロちゃんビルの広間に、向かった。
クロちゃんビルの広間では、殺し合いをしていた
ウクライナ妖怪と、ロシア妖怪が、天鯉部隊に、
取り押さえられていた。
周りは、滅茶苦茶である。
「あ~酷いな!気持ちは、わかるが、親切にしてやった
我らに、申し訳ないと思わないのか?」
天鯉1号は、言った。
「お前らウクライナばかり味方するが、こいつらは、
汚職大国だ!
アメリカや西側諸国が、支援した物資や、武器は、中東テロや、
ロシアに、横流ししてるんだぞ!」
ロシア妖怪が、叫ぶと、
「確かに、汚職するような輩もいるが、ほとんどの人が、
困って、辛い思いをしている。
他人の国で、破壊と、略奪と、暴力と、殺戮を尽くして
る輩に、非難される覚えは、ない!」
ウクライナ妖怪が、怒鳴った!
すると、
「殺し合いをしたくば、お前らの国で、やれ!迷惑だ!
ガタガタ言うなら海に、捨ててきてやる!」
アマビエが、怒鳴った。
ロシア妖怪と、ウクライナ妖怪は、アマビエの迫力に、
ビビりあがった。
「国に帰すまで、こいつらは、離していろ。」
アマビエは、指示した。
「流石、アマビエ様、みんな大人しくなったわね。」
クロちゃんが、感心すると、
「そうだ、クロちゃん、水神池で鯉のぼりを上げる
から水神池に、行かないか?」
ふいに、アマビエが、言った。
「水神池でも鯉のぼりを上げるのね、どんな鯉のぼりを上げる
のかしら。」
「クロちゃんに、見せてやりたな一緒に行こうな。」
アマビエは、笑った。
「楽しみね。」
クロちゃんが、言った。
こうして、クロちゃんは、水神池へ、鯉のぼりを
見に行く事に、なった。
「・・・何で、水神池の鯉の養殖池に、いるの?」
クロちゃんが、不思議そうに尋ねた。
「水神池の鯉は、選ばれた鯉だけが、栄えある
鯉のぼりに、なれる。」
「そうなの?」
「鯉のぼりに、選ばれた鯉を献上した者は、ご褒美を
貰える!クロちゃん、選んでくれ。」
「え!えええええ!
何で、そんな気の重い事をさせるの!?」
「もちろん、クロちゃんのラッキーポイントが、
滅茶高いからだ。」
アマビエが、言った。
「でも、ここの鯉は、みんなピンとこないわ。」
クロちゃんが、困ったように言った。
「ここには、いない?」
アマビエは、考え込んだ。
「大体、何で、水神池の鯉の養殖池で鯉をスカウトするの?」
「ここの鯉は、我ら神に10回食べられたら妖怪に、転生して
水神様に、お仕えできる。」
「10回も食べられるの?苦しくて、痛そう。」
「しかし、外の鯉は、妖怪になるチャンスも殆どないぞ。
どっちがいい?」
「え・・・でも、やっぱり痛いのは。」
クロちゃんは、考え込んでしまった。
「ま、ここの鯉じゃ駄目なんだな。
・・・どこの鯉ならいいのかな。」
アマビエは、考えこんだ。
「アチコチ探してみるか、とりあえず、我の領地を
捜してみるか。」
クロちゃんは、ビエ一族の領地へ向かった。
アマビエの屋敷では、ツキビエ達が、出迎えてくれた。
「今、帰ったぞ~!」
「おかえり、何かあったか?」
ツキビエが、素っ気なく言った。
「水神池の鯉のぼりの鯉を捜しに来た。
クロちゃんが、水神池には、いないと言うからな。」
「じゃ、クロちゃんと、領地内の川を捜してみるといい、
クロちゃんが、疲れているだろうから一息していけ。」
ツキビエが、沢山の美味しいお菓子と、果物を用意して
くれた。
お茶をしながらアマビエは、クロちゃんの世界の事を
面白可笑しく話した。
「・・・と、いう訳で、クロちゃんは、牡丹マンになって、
バビューンと、飛んでいって、瞬く間に、ロシア妖怪を
倒したんだ!我も牡丹スーツ欲しいな。
あれをくれるなら我は、富貴王様の愛人になってもいいのに。」
アマビエが、言うと、クロちゃん達は、ブーッ!と、お茶を
吐いた。
・・・だ、旦那さんの前で、そんな事・・・。
「・・・お前、あの花神一の美貌を誇る富貴王様に、対して
かなり厚かましいぞ。
向こうには、鼻にも引っかてないぞ。」
ツキビエは、呆れて言った。
・・・冷めた反応。
すると、ドアが開いて、タイ・ヨウビエが、やって来た。
「まあ、アマビエ帰っていたの?」
「あ、母上いらっしゃったのですか。
・・・そうだ、水神池の鯉のぼりの鯉は、どこに行けば、
見つかるか占ってください。」
アマビエが、頼むと、
「わかりました、占ってあげましょう。」
タイ・ヨウビエは、綺麗な大きなダイヤを取り出し、
じっと見つめた。
「・・・この近くでは、あるようですが、解り難い
・・・しかし、クロちゃんになら見つけられると、
出ました。」
「おお!クロちゃんになら見つけられるそうだ!
我の見立てに間違いは、なかった。」
「そんな事いっても・・・無理だわ。」
クロちゃんは、困ってしまった。
「何だかんだで、アマビエ様の期待に、答えているからね。」
みっちゃんは、笑った。
「よし!まず、裏の川の探索だ!」
アマビエは、楽しそうに叫んだ。
お茶の後、アマビエは、クロちゃん達を連れて、
裏の川へ行った。
「クロちゃん、ここは、いそうか?」
アマビエが、聞くと、
「・・・よくわからないわ。」
クロちゃんは、困ったように言った。
「・・・片っ端から捕まえるか。
クロちゃん、今から我の神通力で、鯉を川から出すから
選んでくれ。
鯉レンジャーは、却下された鯉を片っ端から川に、戻せ!」
アマビエは、命令した。
「ラジャー!」
鯉レンジャーは、元気に返事をした。
アマビエが、呪文を唱えると、鯉だけポ~ン!と、
川の中から飛び出して来た。
「さあ、クロちゃん選んでくれ。」
アマビエが言った。
「あ、早くしないと、鯉死んじゃうよ。」
みっちゃんが、せかした。
「あ、そうね。」
クロちゃんは、あわてて選別に、とりかかった。
「違う、これも違う、これも違う・・・・。」
夕方まで、鯉を出しては、選別したが、みんな違った。
「間に合わないで、死んだ鯉もいるわね。」
クロちゃんが、悲しそうに、言うと。
「あ、死んだのは回収して、晩御飯のおかずに、
するから気にするな。」
アマビエが、笑った。
「おかずって・・・。」
ご飯に、鯉の料理が出たら気の毒で、食べれない・・・。
クロちゃんは、微妙な気持ちになった。
するちと、
「アマビエ、こんなところで、鯉のぼりの鯉探しか?」
向こうからリクビエが、やって来た。
「お前には、関係ない。
・・・お前、鯉のぼりの鯉を捜しにきたのか?
ここに?」
アマビエが、言うと、
「ま、そんなところだ。
いいのは、いたか?」
リクビエが、言うと、
「ここは、駄目だな。」
「そうか、他を捜すか。」
そう言って、リクビエは、向こうへ行った。
「アイツ、何で、我らの探す所を捜している?」
アマビエは、不信に、思った。
アマビエ家の夕飯には、鯉のお刺身、鯉こく、鯉の甘煮、
鯉の香味焼き、鯉の竜田揚げ、鯉の丸揚げと、
鯉料理が、ズラリと、並んだ。
「申し訳なくって、食べれない・・・。」
クロちゃんは、悲しそうに、呟いた。
すると、クロちゃんの前に、ハンバーグと、クラムチャウダー
が、並んだ。
「エビのすり身のハンバーグと、エビと貝のクラムチャウダーだ。
クロちゃんが、鯉を食べたくなさそうなんで、
我が、特別に、作った。」
アマビエが、言った。
「ありがとう、アマビエ様。」
クロちゃんは、ハンバーグを食べた、エビがプリプリして
美味しい。
クラムチャウダーも魚介の出汁が、利いてて美味しかった。
「美味しいわ!」
「当たり前だ、おばあちゃん直伝だぞ。」
アマビエは、笑った。
「クロちゃんは、ナイーブだな。
鯉レンジャーは、気にせず、鯉を食べてるぞ。」
見ると、鯉レンジャーは、パクパク鯉料理を食べて
いる。
「共食いなんじゃ・・・。」
「いいえ、元々水神池の養殖池の鯉と、野外の鯉は、
ランクが違う上に、我らは、妖怪になりました。
もう、別の生き物です。」
随分割り切っていて、驚いた。
「そんなもんなんだ。」
クロちゃんは、微妙な気持ちに、なった。
「それより、リクビエのスパイが、我が家に、居そうだ。
クロちゃんが、鯉のぼりを見つける事が、できると
知っていたからな。」
アマビエは、言った。
「スパイ?この家に?」
クロちゃんが、聞くと、
「シッ!聞こえるといけないからな。」
アマビエが、ツキビエを見ると、
「おい、お前、目星つけてるのか?」
「・・・昨日、母上がリクビエと、お茶されていたから
母上が、おっしゃったんじゃないか?」
「・・・母上か・・・。」
アマビエは、ちょっと、気が抜けた。
「クロちゃんが、見つけるという予言なら
リクビエには、どうしょうもなんじゃないか?」
ツキビエは、言った。
「そうだな・・・。」
アマビエは、考え込んだ。
「それより食事の後、領地内の決算の書類を
確認してくれ、お前は、長だろう。」
ツキビエは、不機嫌そうに、言った。
「・・・長補佐のお前に、全部まかせるから
後は、適当にしていいぞ。」
「・・・お前、何の為に長になった!
殆ど留守して!決算くらい確認しろ!
終わるまで、寝かさんぞ!」
「え、エエエエ!」
アマビエは、悲鳴を上げた。
アマビエは、ツキビエと、夜通し領地内の決算を確認
させられた。
「お~はよう~。」
アマビエは、眠そうに、言った。
「おはようございます。あれ?ツキビエさんは?」
クロちゃんが、聞くと、
「仕事に行った・・・タフな奴だ。」
アマビエは、ダルそうに、言った。
「あんまり寝てないんでしょう?大変ね。」
クロちゃんが、言うと、
「『竜虹湾』で、農民と、漁民が、揉めて
いるんで、仲裁しに行ったんだ。」
アマビエが、言うと、
「どんなもめ事?」
「竜虹湾は、水害が多くて、高潮・洪水が起きやすかったんで、
干拓して、広い水田にして、水害は減ったが、
水門を閉めた為に、海が浄化されなくなって、美味しい魚や貝が、
死滅したり、海苔や海藻の質が落ちて、漁獲量が、減って
漁民から苦情が出たんだ。」
アマビエが、言うと、
「どっちの言い分を聞いていいのかわからないわね。」
クロちゃんが、言うと、
「いいや、そうでもない。
鯉探しの前に、竜虹湾へ行って、もめ事を解決する。」
アマビエは、言った。
竜虹湾は、綺麗な青い海が、広がっていた。
「綺麗ね。」
クロちゃんは、馬鯉に跨り、海を眺めてしみじみと、言った。
「クロちゃんが、昨日食べた、エビのハンバーグと、
クラムチャウダーもここの魚介で、作ったんだ。
とても良い漁場だったが、叔父上が、業者と、結託して、
干拓を推進して、利権をむさぼったから
ややこしい事になった。」
アマビエは、言った。
「でも水害が、減ったからよかったんじゃないの?」
「米なんて、あそこでなくてもいいだろう?
あの美味しい魚介類の方が、貴重だ。
それに、平常時なら問題ないが、大きな自然災害が、
あった時、大災害に、なる。
自然っていうのは、元の姿に戻ろうとするもんだ。
長い目で見たらあそこは、水田にはしない方が、いい。」
「じゃ、お百姓さんに、諦めて貰うしかないわね。」
クロちゃんが、言うと、
「農民も折角手に入れた土地で、思い入れもある。
それに、叔父上が、関わってるから怒鳴り込んで来てるんだ。
散々利権をむさぼっているからな。
叩けばホコリが出てきそうだが・・・。」
アマビエが、イライラした顔で、言った。
浜辺で、沢山の妖怪達が、揉めていた。
スナビエが、ツキビエに、喰ってかかっている。
「何勝手な事をしている!ここは、ビエ一族の長である
儂が、直々に、勧めた事業だ!勝手な事は、許さん!」
「スナビエ殿、今のビエ一族の長は、アマビエです。
この件は、アマビエが、決める事です。
それに、貴方は、この間、私腹を肥やしていた証拠が、
出てきたので、取り調べが済むまで、謹慎処分でしょう。
勝手に、ウロウロするなら牢に、閉じ込めますが、
いかがしますか?」
ツキビエは、冷静に、冷ややかに言った。
「何を下賤な生まれのクセに!儂は、本家の出だぞ!」
「私は、確かに、下賤な生まれですが、自力で出世して、
長のアマビエの夫で、長補佐で、事実上、ビエ一族の
実権を握る程、成り上がってます。
そして、今の貴方は、長でもなく罪人で、今取り調べ中です。
口の利き方に、気を付けて下さい。」
ツキビエは、氷の様に冷たく言った。
「む、むむ!」
スナビエは、怯んだ。
「お~い!ツキビエ!」
アマビエが、やって来た。
「おや、叔父上、取り調べが終わるまで、謹慎中でしょう。
自宅で、大人しくして、下さい。
ここは、我に、任せて下さい。」
アマビエは、ニッコリ笑った。
「アマビエ!ここをどうする気だ!」
「水門を開けて、もちろん、水田を無くしますよ。
母上にも占ってもらいましが、大きな災害が、
あった時、甚大な被害が出る!と、
農民には、もっと、水田に適した土地に、移ってもらう。」
「そんな事が、許されると、思っているのか!」
「我が、長です!従ってもらいます。」
「海神様が、許してくださるものか!」
「え!海神様も叔父上と、私腹を肥やしていたのですか!?」
アマビエが、ワザとらしく尋ねると、
「道理が、通らん事を言うな!と言う事だ。」
スナビエが、言った。
「なんだ、そういう事ですか、驚いた。」
アマビエは、わざとらしく言った。
「おい、アマビエ、我らと、お前、どっちが、
正しいか、試してみないか?」
スナビエが、言った。
「試すと、いいますと?」
「『虹鯉の審判』を行う。」
スナビエが、言うと、
「いいだろう、我が行く!」
アマビエが、答えた。
「駄目だ、この審判を問う者は、男だけだ。
代々、ビエ一族の決まりだ。
代表者の男を明日、連れて来い!わかったな。」
スナビエは、そう言い残して、去って行った。
「何を企んでいる?」
アマビエは、呟いた。
家に帰ると、ツキビエと、相談し始めた。
「ここは、通常ならツキビエが、適任だと、思うが、
・・・。」
アマビエが、言った。
「私か、アメビエかだが、企んでいるなら・・・。
クロちゃんとか言いそうだな。」
ツキビエが、考え込んだ。
「クロちゃんか、叔父上達は、クロちゃんをナメてるからな。」
アマビエが、考え込んでいると、
「あの~アマビエ様、クロちゃん、ソロソロ
帰りたいんだけど。」
クロちゃんが、言った。
「え!鯉もまだ、選んでないのに、もう一日だけ
駄目か?」
「ゴールデンウィークだから来てるけど、宿題が、
まだ、終わってないの。
学校をサボるわけにもいかないし。」
クロちゃんが、言いにくそうに、言うと、
「大丈夫、明日、鯉選びが終わったら帰ろうな。
宿題は、手伝ってやるから。」
アマビエが、言うと、
「なるべく早く帰れるように、してね。」
クロちゃんは、ため息をついた。
翌日、竜虹湾で、スナビエ達が、待っていた。
「待ち待ちかねたぞ、アマビエ!」
スナビエが、言うと、
「叔父上、謹慎中に、ウロついたら駄目でしょう。
それに、父上と、母上も連れて来ました。
母上達に、聞きましたが、『虹鯉の審判』は、
男だけしか受けれないという事は、ないそうですね!
嘘バッカつきやがって!このくそ爺!」
アマビエが、言うと、
「スナビエ、嘘は、いけません。
『虹鯉の審判』は、試される方、それぞれから
虹鯉に、選ばれるのです!」
タイ・ヨウビエが、言うと、ピカッと虹鯉の祠の扉が、
開いた。
そうして、二筋の光が出て、一つは、リクビエの息子、
ジャリビエに、もう一つは、クロちゃんに、かかった。
「選ばれましたね、双方から一番、心が清い者が選ばれます。」
タイヨウ・ヨウビエが、言った。
「あ~叔父上や、リクビエに、比べたらクソガキのジャリビエが、
若干、ましか。」
アマビエは、言った。
「双方、気を付けて、虹鯉を捜して来てください。」
タイ・ヨウビエは、言った。
「無理!無理!無理!無理!無理!無理!」
クロちゃんは、解らないわ!」
クロちゃんは、全力で、嫌がったが、
「クロちゃん、虹鯉を捜して来てくれたらすぐ、帰ろうな。
宿題もしないといけないし、頼んだぞ。」
アマビエが、言うと、
「そんな~。」
「あ、次の休みには、ディズニーランドに、連れててやる!
欲しい物あったら買ってやるぞ。」
アマビエは、にっこり笑った。
クロちゃんは、渋々『虹鯉の審判』を受ける事になった。
虹鯉の祠の扉へ、入ろうとすると、頭の中から
たっちゃんと、天ちゃんが、ふわっと浮いて、離されて
しまった。
「守護獣は、連れていけないのです。」
タイ・ヨウビエが、言った。
「そんな~。」
たっちゃんと、天ちゃんまで、離されて、クロちゃんは、
すっかり心細くなった。
すると、
「僕は、ジャリビエ、リクビエの息子だよ。
よろしくね。」
ジャリビエが、声をかけた。
「あ、クロちゃんと、いいます、よろしくね。」
クロちゃんも挨拶した。
・・・良かった、優しそう。
「アマビエ叔母さんもひどいな小さい子連れて来たら
その子が、選ばれるのに。」
「え?何で?」
「心清らかな者が、選ばれるんだよ。」
「あ、そうなんだ。」
「でも、大丈夫、一緒に探そう。
僕は、お小遣いもらって、来ただけだから見つからなくても
いんだよ。」
ジャリビエは、笑った。
「そうなの?よかった、クロちゃんもアマビエ様の
押しの強さに、負けちゃっただけなの。
見つかる気がしないわ。」
クロちゃんは、ジャリビエと、すっかり仲良くなった。
虹鯉の祠の中は、明るく、水の中にいるように、ふわふわして、
不思議な感じがした。
「不思議な所ね。」
クロちゃんが、言うと。
「竜虹湾は、干拓される前は、虹鯉っていう、川と、海を
行き来する鯉が、沢山いたんだよ。
とても美味しい鯉で、アマビエ叔母さんの大好物だったんで、
余計、怒りをかってるらしいんだよ。」
ジャリビエが、言った。
「親戚なのに、仲悪いのね。」
「タイヨウ・ビエ様は、スナビエお爺様の姉なんだ。
タイヨウ・ビエ様は、優秀な方で、スナビエお爺様を
見下している上に、アマビエ叔母さんは、更に、優秀で、
気が強いだろう、父上なんて、屁とも思ってないからね。
お爺様も父上も男の意地があるからね、
色々と、何かにつけて揉めてるんだよ。」
ジャリビエが、ため息をついた。
「大変ね。」
綺麗な木や草花が生い茂り、魚とも、鳥とも言えない
不思議な生き物が、何種類もいる。
「ここには、虹龍様が、住んでらして、色々な審判を
下すらしいんだよ。」
「正しい者を見抜くの?」
「らしいね、でも姿は、なかなか現さないから
本当に、いらっしゃるんだか・・・。」
「でも、選ばれるんでしょう?」
「う~ん、よくわからないんだよね。」
ジャリビエは、言った。
話している内に、大きな池が、見えて、七色に輝く
鯉が沢山泳いでいた。
「あっさり、見つかったわね。」
クロちゃんが、嬉しそうに、言った。
「う~ん、これじゃ審判に、ならないよね。
何かあるんじゃないかな?」
そう言いながらジャリビエは、鯉を捕まえた。
すると、鯉は、輝かなった。
「やっぱり、多くの鯉は、ダミーだ。
この沢山の鯉の中から本物をみつけないといけないんだ。」
「え!えええええ!この沢山の鯉の中から探すの!?
無理よね・・・。」
クロちゃんが、心細そうに、言った。
「そうだ、あの崖から湖を見て、目星をつけよう。」
ジャリビエが、崖の方を指刺した。
「わかるかしら?」
「とにかく全体を眺めてみよう。」
ジャリビエは、言った。
二人は、崖に登り、湖を見渡した。
「あ、なんか大きな虹色の塊が、近づいてくる!?」
クロちゃんが、言うと、ザバ~ッと、水面が、上がり、
巨大な虹鯉が姿を現した。
「大きい!?」
二人は、その場に、固まった。
「クロちゃん、あれが、そうかい?」
「あれ、みたい・・・。」
とても持ち帰る大きさでは、ない。
「おい!お前達、『虹鯉の審判』を受けに来たのか?」
虹鯉が、尋ねた。
「そうだ。」
ジャリビエが、言った。
「じゃあ、どっちかは俺に食わせろ!残った方に、付いて
行くと、しょう。」
虹鯉が言うと、
「とんでもない!もう、いいわよ。
ね、帰って、アマビエ様達に、謝れば済む事だし・・・!え!」
クロちゃんが、ジャリビエを振りえると、
「クロちゃん、ごめんね。」
ジャリビエは、クロちゃんを突き飛ばした!
クロちゃんは、真っ逆さまに落ちた!
「きゃ~!!!!」
そして、虹鯉は、大きな口で、クロちゃんをパックンと、
食べた。
「じゃ、僕について来てね。」
ジャリビエは、笑った。
そして、虹鯉を連れて、出口に、急いだ。
扉を開けると、アマビエ達が、待っていた。
「おお!ジャリビエ!よくやった!見事虹鯉を連れて
来たな!
我らが、正しい!水門を開ける話は、無しだ。」
スナビエが、嬉しそうに、言った。
すると、アマビエは、怪訝そうな顔をして、
「クロちゃんは、どうした?」
「あ、ごめん、途中ではぐれちゃったんだ。
そのうち戻ってくるんじゃない?」
ジャリビエは、すました顔をして、言った。
「おい!お前、戻って、虹鯉を連れて来い!」
「え?ほら見て、ここに連れて来てるじゃない。」
「お前!どう見てもこれは、モンスターだろう!」
アマビエは、怒鳴った!
「虹鯉は、こんなモンスターでは、ないでしょう?」
タイ・ヨウビエも言った。
「え?違うの?」
ジャリビエが、言った。
「昔、『虹鯉の審判』に、立ち合った時は、虹鯉は、
こんなモンスターでは、ありませんでした。」
タイ・ヨウビエは、険しい顔で、言った。
「おい!お前モンスターだな!」
アマビエは、スラリと、刀を抜いて、構えた。
「アマビエ様・・・。」
すると、巨大な虹鯉は、顔の部分が、クロちゃんに、
なって、そう言った。
「クロちゃん!どうした!?」
アマビエが、叫ぶと、
「ジャリビエと、虹鯉を捜していたら虹鯉が、沢山いる湖を
見つけたの。
でも、ダミーが多くて、崖に上って、虹鯉を捜していたら
大きな虹鯉が、出てきて、
『じゃあ、どっちかは俺に食わせろ!残った方に、付いて
行くと、しょう。』
て、言ったらジャリビエが、クロちゃんを突き落として、
虹鯉が、パックンって食べて、気が付いたらこうなって
たわ。」
クロちゃんは、泣きそうに言った。
「ジャリビエ!貴様!クロちゃんをこのモンスターに、
食わせたな!
殺人未遂だ!クロちゃんは、水神様のお気に入りだ!
厳罰を覚悟しろ!」
アマビエが、凄い剣幕で怒鳴った!
「そんな~。」
ジャリビエは、力なく、へたり込んだ。
「しかし、クロちゃんをどうしたら元の姿に、戻せるか?
う~ん・・・。」
アマビエが、考え込んでると、
「お~い!アマビエ!リクビエの私腹を肥やしていた証拠を
見つけたぞ!」
ツキビエが、部下と、やって来て、スナビエと、リクビエを
取り押さえた。
「裏の川の辺りの養殖場で、虹鯉を養殖して、法外な値段で、
売っている連中が、いたんで色々調べていたんだ。
リクビエが、ウロウロしていたと、いう情報で、部下に、
徹底的に、調べさせたらリクビエが、関わってる証拠も
出て来た。」
ツキビエが、言った。
「つまり、竜虹湾の虹鯉が、絶滅した方が、暴利を
むさぼれたと、いう訳か。」
アマビエが、言うと、
「おのれ!我らが『虹鯉の審判』に、行ってるスキに、
卑怯な!」
スナビエが、叫ぶと、
「兄上、もう観念してください。」
ホシビエが、言うと、
「お前なんぞ、継母の連れ子で、本家筋でもないくせに!
偉そうに、言うな!」
スナビエが、怒鳴ると、
「でも、一族で、長より崇められている巫女の私の夫です。
順序で、言うならお前の義兄でもあるのですよ。」
タイ・ヨウビエは、言った。
・・・なんかややこしい関係だが・・・
「・・・クロちゃん、どうしたらいいの?」
クロちゃんが、悲しそうに、言った。
「よし、クロちゃん、ジャリビエを飲み込め!」
アマビエが、言った。
「え!何で?!」
クロちゃんが、驚くと、
「思うに、クロちゃんを飲み込んだモンスターより
クロちゃんの力が、強くて、クロちゃんが、モンスターを
乗っ取ったんだ。
ジャリビエを飲み込んだら、ジャリビエが、虹鯉になるかも
しれん。
どうせコイツは、殺人未遂で、重罪だ!
構わん、飲み込め!」
「そ、そんな~。」
ジャリビエは、力なく言った。
「あの~もし、ジャリビエを飲み込んで、元に、
戻らなかったら?」
クロちゃんが、尋ねると、
「その時は、こいつも神の端くれだ、ジャリビエの力が
クロちゃんの物になる!失敗してもOKだ!」
「そんな後味の悪い・・・・。」
クロちゃんは、悲しそうに、言った。
・・・そうでなくてもモンスターを乗っ取ったなんて、
段々人間から離れていく・・・。
クロちゃんは、悲しくなった。
すると、
「クロちゃん、水神様に、相談しては、どうかしら?」
タイ・ヨウビエは、言った。
「よし、そうしょう!水神様ならなんとかしてくれる!」
アマビエは、言った。
「それからここは、水門を開く!農民は、もっと、水田に、
適した土地に、移動してもらう。
その為の補填も十分に、してやる!
土地を離れたくないヤツは、猟師に、なるか、水産加工の
仕事をしろ!以上だ!」
アマビエが、叫ぶと、
「そんな金は、どこから出す気だ!」
スナビエが、叫ぶと、
「叔父上が、しこたまため込んだ私腹が、たんとあります
ので、それで、補填します。」
アマビエは、ニタリと、ドヤ顔で、笑った。
竜宮城の広間で、クロちゃんは、水神様に、元の姿に戻して
くれるよう頼んだ。
「う~ん、元の姿に、戻せん事は、ないが、
クロちゃんは、鯉になっても可愛いのう~
折角だから今年の鯉のぼりは、クロちゃんにしょう!」
水神様は、嬉しそうに、言った。
「そんな~。」
クロちゃんが、悲しそうに、言うと、
「ご褒美貰えるから頑張れ!」
アマビエは、笑った。
渋々クロちゃんは、水神池の鯉のぼりを引き受けた。
クロちゃんが、やる気なく空を泳いでいると、
虹色の美しい龍が飛んで来た。
「やあ、クロちゃん、噂に違わず、可愛いね。
私は、虹龍だ。」
虹龍様は、言った。
「あ、初めましてクロちゃんです。
虹龍様は、こちらにいたの?じゃあ『虹鯉の審判』は、
誰が?」
クロちゃんが、尋ねると、
「私が、不在の時を狙って、スナビエ達は、不正を働く気
だったんだ。」
「じゃあこのクロちゃんが、憑りついている大きな虹鯉は?」
「これは、スナビエが、飼っていた虹鯉を霊力で、巨大化
させたモンスターで、グルだったんだよ。」
「本当に、最低ね、スナビエ達!」
クロちゃんは、わが身を見ながらそう言った。
「クロちゃ~ん!写真撮ろうよ!」
みっちゃん達が、馬鯉に、乗ってやって来た。
そして、クロちゃんの背に乗り、皆楽しそうに、スマホで、
写真を撮ったり、動画を撮ったりした。
それをクロちゃんは、恨めし気に見ていた。
「お~い!ご苦労様!クロちゃん!おかげで、今年の
端午の節句は、盛り上がったぞい!」
水神様が、楽しそうに言った。
「クロちゃん!見てくれ!鯉のぼりを捜したご褒美に、
水神様から見事な刀を賜ったぞ!
見てみろ!何で綺麗な波紋だ、これで、モンスターや
妖怪をバッサ!バッサと切るぞ!」
アマビエが、嬉しそうに、刀を見せびらかした。
「良かったわね。」
「クロちゃんにもご褒美やるぞ。」
水神様がそう言うと、クロちゃんは、体が縮んで、元の姿に
戻った。
「良かった・・・!?」
そして、鏡に映った自分を見て、仰天した!?
「何コレ!」
そこには、牡丹マンの姿に、おでこに龍の頭が、追加されていた。
「牡丹マンに、儂の力を追加したぞ~い!」
・・・益々妙な姿に・・・。
クロちゃんが、微妙な気持ちになっていると、
ぱあっと、虹色の光が、クロちゃんを包んで、牡丹マンに、
全身虹色の鱗が追加された。
「私も端午の節句を盛り上げてくれたお礼に、クロちゃんに
プレゼントだ、牡丹マンの強度が、アップされたぞ。」
虹龍は、笑った。
「クロちゃん、良かったなあ!牡丹マンは、益々強くなった!
いいなあ!我も欲しい!」
アマビエは、羨ましそうに、クロちゃんを見回した。
「コレのどこが羨しいの?」
クロちゃんは、呟いた。
「アマビエは、自分が、もっと強かったらどうにかなったのに、
と、思う事が、何度もあったからだよ。」
と、ツキビエは、言った。
「クロちゃんも、そう思う時が、くるかもしれない。
神様からの賜り物だ、ありがたく貰っておきなさい。」
ツキビエは、言い諭すように言うと、クロちゃんの
頭を撫でた。
「あ、ツキビエさん、竜虹湾のお百姓さん達は、納得
したの?」
クロちゃんが、尋ねると、
「納得は、しないが従ってもらう。
スナビエ殿の息がかかっている者達だからアマビエの
障りになるからな。」
ツキビエが、言うと、
「それに、漁民達は、我に、美味しい魚介の貢物を
寄越したしな、美味しかったろう!エビハンバーグと、
クラムチャウダーは。」
アマビエが、ドヤ顔で、言った。
「あ、そういう事か。」
クロちゃんが、納得すると、
「では、クロちゃん達は、馬鯉に、送らせよう。」
ツキビエが、言った。
「え?アマビエ様は?」
「アマビエは、領地内の決算や、今後の事を話し合わない
と、いけない。」
「それじゃ、ディズニーランドは・・・。」
「ごめんな、クロちゃん、こちらの仕事が、片付いたら
必ず連れて行ってやるから。」
アマビエは、気の毒そうに言った。
「仕方ないわね、お仕事がんばってね。」
クロちゃんが、言うと、
「ありがとう、クロちゃん、いい子だな。」
アマビエは、クロちゃんの頭を撫でた。
クロちゃん達は、馬鯉に乗って、家に帰った。
「お帰りなさい、クロちゃん、遅かったのね。
もう、学校始まっているわよ。」
ママが困った様に言った。
「え!えええええ!宿題終わっていないわ!」
クロちゃんは、あわてて、ランドセルをからった。
「学校行ってくるわ!行ってきます!」
すると、馬鯉が、
「クロちゃん、乗れ!学校まで送ってやる。」
クロちゃんは、馬鯉に、跨り学校へ急いだ。
校庭では朝礼中で、全校生徒が、空から降り立った
クロちゃんに、注目した。
・・・やだ、恥ずかしい・・・しまった・・・。
「クロちゃん、丁度良かった、中国風邪を祓う舞を
踊ってくれないかい?
クロちゃんのママから電話が、あったんだ。
神事が、忙しくて宿題が出来なかったのは、大目に
見てあげるよ。」
担任の先生は、言った。
「え!いいの?」
「龍に跨って登校して来たら下手に怒ると、
罰があたりそうだからな。」
先生の言葉に、クロちゃんは、ホッとした。




