牡丹夢源郷
若葉が清々しい季節を迎えた頃、クロちゃんビルの客室
では、富貴王はが優雅なティータイムをしていた。
テーブルには、苺のパンケーキ、苺ロールケーキ、
苺のショートケーキ、苺ミルフィーユ、苺大福、苺最中
苺の主菓子、苺饅頭、苺を挟んだクリームパン等が
ズラリと、並んでいた。
「このパンケーキ美味しいね。」
富貴王が言うと、
「そのパンケーキは、リコッタチーズのパンケーキで、
『セブンスパラダイス』さんに頼んで、届けて貰ったの」
クロちゃんが、言うと。
「どれも美味しいお菓子だ。」
「お気に召して、良かったです。」
アマビエが、ご機嫌に、お菓子をパクつきながら言った。
「ところで、そろそろ私も帰ろうと、思うのだけど。
クロちゃん、遊びに来ないかい?」
富貴王が言った。
「フッキーの国へ?」
「そうだよ、丁度明日、イベントが、あるんだよ。
『牡丹舞踊祭』っていう舞踊祭なんだ。
駄目かな?」
「ありがとう。
でも、学校が、あるからお休みの日に、遊びにいくわ。」
クロちゃんが、言うと、
「明日は、先生に事情を言って、休ませます。」
アマビエが、言った。
「え、でも学校が!?」
アマビエは、パパに内線して、先生に連絡させた。
「パパから返事が、来た。
先生に、事情を話したら休んでいいそうだ。」
「え!いいの!?」
「クロちゃんは、神事の事を優先していいそうだ。」
・・・神事なの?
そう言えば、先生が『御神体業務は、大変だねえ』
って、意味不明な事言っていたわ。
クロちゃんは、微妙な気持ちになった。
こうして、クロちゃんは、富貴王の国に、遊びに行く
事になった。
次の日、クロちゃん達は、富貴王が出した、巨大な
牡丹の花の上に乗って、富貴王の国『牡丹夢源郷』に、
向かった。
「牡丹の花の上って、親指姫みたいね。」
クロちゃんは、不思議な乗り心地に、ウキウキした。
「我も牡丹の花は、初めてだ。
柔らかくて、速い速度で飛んでいるのに、抵抗を
感じないソフトな乗り心地だ。」
アマビエもウキウキしている。
暫く行くと、美しい牡丹の花の咲き乱れる国が、
見えて来た。
「綺麗ね~。」
あまりの美しさに、クロちゃんは、ウットリと
した。
地面に、降り立つと、沢山の花の妖怪が、出迎えた。
「富貴王様、お帰りなさいませ。」
皆は、次々と、富貴王を出迎えた。
「皆の者、出迎えご苦労!
客人を連れて来た、クロちゃんだ!もてなしてくれ。」
富貴王が、高らかに言うと、大歓声が起きた。
そして、クロちゃんは、設置された観客席の一番いい
富貴王の隣に、案内された。
舞台には、美しい衣装に身を包んだ、花の妖怪が、
次々と、挨拶した。
「あれは、牡丹舞踊祭の出場者で、踊りで、勝負するんだよ。
私が実力を認めた、才能のある者達だ。
みんなが着ている衣装は、私が褒美で贈ったのだよ。」
富貴王が、言った。
・・・え?あっちは、まともに、綺麗なのに、何で、
クロちゃんには、こんな変なコスチュームなの?
なんか腑に落ちないでいると、
「そうだ、クロちゃんも出場しないか?」
富貴王が、突然言い出した。
「え!無理!無理!無理!無理!・・・」
クロちゃんの口をアマビエが、塞いで、
「ありがたく出場させて頂きます。」
と、言った。
「無理よ!」
「クロちゃん、勝てば賞品が出る、頑張れ!
富貴王様の出す賞品だ、素晴らしい物に、違いない!
凄い力になる!いいな!」
アマビエが、凄んだ。
「そんな~。」
クロちゃんが、困っていると、
「クロちゃん、頑張って、クロちゃんなら大丈夫!」
みっちゃんが、笑った。
「だって、あの変なコスチュームを着て踊るのよ。」
クロちゃんが、嫌そうに言うと、
「クロちゃん、富貴王様は、あのコスチュームを
お披露目されたいのだ、察してさしあげろ。」
アマビエが、耳打ちした。
・・・え!あれを!?フッキー、謎だわ。
こうして、クロちゃんは、渋々牡丹舞踊祭に参加する事に、
なった。
とりどりの美しい衣装を着た妖怪の中に、クロちゃんが、
ピンクのコスチュームで、現れたクロちゃんを見て、
皆騒めいた。
「・・・ああ・・恥ずかしい、大体クロちゃんの霊力じゃ
3分くらいしか持たないんじゃ。」
クロちゃんが、ぼやくと、
「この舞台の上では、霊力は、減りません。」
ひと際、凛々しく美しい花の妖怪が、話しかけて来た。
「そうなんだ。」
「私は、芳紅と申します、名高いクロちゃんの
お噂は、聞いております。
素晴らしいお衣装ですね、そんな斬新なお衣装は、見た事が
ありません。
今までにない物、富貴王様が、相当お目をかけられてらっしゃる
のが、よくわかります。」
「この変な衣装がお気に入りの人に、あげるものなの?
しかも素晴らしい???」
・・・ここの人達謎だわ。
「では、これより舞踊大会を始める!」
司会の妖怪の声が高らかに響いた。
そして、二人の花の妖怪が、踊り始めた。
すると、バチバチと、火花が散り、風が吹き、
舞台は嵐と、なった。
「何で、嵐になっているの?!」
クロちゃんが、驚いていると、
「我らは、踊りで戦うからです、勝ち抜いた者が、
優勝者です。
ちなみに、私は、剣舞が得意です。」
芳紅は、不敵に笑った。
「え!!!!聞いてない!無理!無理!無理!無理!」
クロちゃんは、慌てた!
「そんな事は、ないハズです。
富貴王様は、そんな無責任な方では、ありません。」
「無理よ~!フッキー!聞いてない!」
クロちゃんは、叫んだが、後の祭りだった。
すると、アマビエが、やって来て、
「クロちゃん、こちらは、芳紅将軍だ、粗相のないよう
にな。」
「え!将軍!まさか!?」
「そう、舞踊大会の出場者は、将軍や将校たちだ。
つまり、この国の武道大会だ。」
「無理よ!無理じゃない!」
「ここの舞踊大会の出場の権利は、富貴王様から
特別の衣装を賜った者だけだ。
残念ながら我は、出れない、頑張ってくれ。」
アマビエは、クロちゃんの肩をポン!と叩いた。
「ポン!って肩叩かれても、無理よ!」
クロちゃんは、必死で、言うと、
「おい、周りの羨望の眼差しを感じないか?
かなり、いい衣装を貰って羨ましいと言う感じだ。
それ、凄い強化スーツじゃないのかな。
つまり、果てしなく優勝できそうと、いう事だ。」
「そうなの?」
「そういう事だ、ほれ、竜神様のヒゲの欠片だ、コッソリ
飲んどけ!な頑張れ!」
アマビエは、小声で、コソコソクロちゃんに、囁いて
竜神様のヒゲの欠片を渡して、ニンマリ笑った。
・・・ズルをするのね。
クロちゃんは、気が進まなかったが、周りの妖怪達を
見て、子供なんだし、ま、いいかと、ヒゲの欠片を
飲もうと、すると、
「アマビエ殿、子供に悪い事を教えては、いけません。」
芳紅将軍は、クロちゃんから竜神様のヒゲの欠片を
取り上げて、アマビエに返した。
「富貴王様の御指名です、真の実力を見せて下さい。」
そういって、刀をブン!と一振りして、舞台に、出て行った。
舞台では、華麗な、剣舞を舞い、相手の出場者を
華麗な牡丹の花吹雪で、吹き飛ばしていた。
「細そうなのに、あの重そうな剣を軽々と、扱う
のね、しかもすごく強い。」
クロちゃんは、不安そうに、言った。
「心配するなクロちゃんの出番は、1回だけだ。」
「1回出ればいいのね。」
クロちゃんが、少しホッとすると、
「決勝戦だけ出ればいいそうだ。」
アマビエが、シレっと言った。
「え!えええええ!無理じゃない!フッキー、何考えて
いるの!?」
クロちゃんが、慌てまくると、
「頑張れ!クロちゃん、応援してあげるよ。
優勝のご褒美は、楽しみにしてね。」
富貴王が、大きな声で言った。
みんなの羨望と、期待の眼差しが、痛い。
あれやこれやで、大会は、進んで、芳紅将軍が、勝ち残った。
「あの芳紅将軍が、相手なの。」
クロちゃんは、暗い面持ちに、なった。
そして、渋々舞台に、出て行った。
芳紅将軍は、両手に剣を持ち華麗に舞い始めた。
物凄い風で、嵐になった、クロちゃんは、吹き飛ばされ
そうになりながらヨタヨタと、舞っていると、
「クロちゃんを虐めるな!」
と、たっちゃんと、天ちゃんが、飛び出して来た。
龍と、麒麟がクロちゃんの頭から飛び出してきて、
皆騒めいた。
「あ、たっちゃん、天ちゃん、虐められてる訳じゃ
ないの舞踊大会なの。」
クロちゃんが、言うと、
「踊ればいいのか?」
たっちゃんと、天ちゃんは、踊り出した。
すると、風と、雷で、物凄い嵐に、なり、
芳紅将軍を吹き飛ばしてしまった。
「あ、大変!大丈夫?」
慌てて、クロちゃんが、駆け寄ろうと、すると、
「勝負あった!クロちゃんの勝ち!」
司会者の声が、響いた!
「参った、流石、富貴牡丹の衣装を賜っただけある。」
芳紅将軍が、言うと、
「富貴牡丹?この頭と、背中の牡丹の事?」
「そう、我が王の象徴、富貴牡丹。
それを賜った者は、誰もいない。」
・・・そりゃ、こんなアホなコスチュームは、誰も着たくない
だろう。
「クロちゃん、おめでとう!素晴らしい龍と、麒麟の舞だ!」
富貴王は、近寄ってきて、クロちゃんの頭を撫でた。
「クロちゃんの踊りが、いいわけじゃないのに
優勝なの?」
クロちゃんが、不思議そうに聞くと、
「クロちゃんが、龍と、麒麟は、使役したから出て来た
んだろう?
すごいね、身の内に、こんな凄い霊獣を飼っていたんだね。
凄い霊力だ、私の見込んだ通りだ。」
富貴王は、感心している。
「たっちゃんと、天ちゃんは、クロちゃんの頭に住んでる
から使役したわけじゃないわ。」
クロちゃんが、慌てて言うと、
「でも、クロちゃんに懐いているね。
凄い事なんだよ。」
富貴王は、言った。
「そうなの?」
「クロちゃんの武器はね、みんながクロちゃんを大好きで、
助けてくれる事なんだよ。
クロちゃんが、優しくて、一生懸命だからだよ。
優勝賞品をあげるね。」
富貴王が、クロちゃんの頭を撫でると、ピカッと、光り!
クロちゃんの頭と、背中の花は、更に、大きくなって、
更に、花が増えた。
鏡を見せられ、クロちゃんは、吃驚した!
「何、これ!」
「戦闘能力が、200倍に、なった。
更に、霊力が増えて、10分このスーツで戦える。
これで、みんなを守ってやると、いいよ。」
富貴王は、にっこり笑った。
「フッキー、流石に、へ・・・」
アマビエが、クロちゃんの口を塞いだ。
「良かったな!クロちゃん、流石、我の弟子だ!
戦闘能力が、200倍!我なら嬉しさのあまりに、
花まみれで、踊ってしまうぞ!」
アマビエが、言った。
・・・しかたないわ、みんなを守る為だもの・・・。
微妙な顔をしていると、
「さ、優勝者は、踊りを披露する事に、なって
ます!踊ってください。」
司会の妖怪の声が高らかに響いた。
・・・更に自虐行為だわ・・・。
クロちゃんは、渋々踊った。
「クロちゃん、スマホの動画に、撮っておいたぞ!」
アマビエは、嬉しそうに、見せた。
牡丹スーツで踊るクロちゃんは、変なカッコの
わりには、綺麗で、優雅だった。
クロちゃん神社に、戻ると、神社の事務所で、
「クロちゃんが、素晴らしいご褒美を貰ったぞ!」
アマビエが、みんなに、語り始めた。
美代ちゃん達も聞いている。
「クロちゃん、あのイケメンの神様から貰ったスーツを
見せてよ。」
美代ちゃんが、いきなり言った。
「あ、あれは霊力を使うから普通の時は、着れないの。」
クロちゃんが、苦しい言い訳をしていると、
「緊急事態発生!敵襲!クロちゃん神社の北門で、ロシア妖怪が
暴れている!総員は、すぐ現場に、急行せよ!」
境内放送が、入った。
「よし、我が行って、シメてくる!クロちゃんは、ここに
いていいぞ。」
アマビエは、そう言って、クロちゃん神社の北門へ行った。
すると、ド、ド~ン!と、物凄い音がしたので、外へ
出ると、大人の大きさくらいのロシア妖怪が、暴れて
いた。
天鯉部隊と、平癒マン達が、果敢に、応戦していた。
「ロシア妖怪、随分数が、多いのね。」
クロちゃんが、驚いていると、
天鯉部隊が、ロシア妖怪を倒すと、その影から
別のロシア妖怪が、襲ってきた。
「な、何あれ!」
クロちゃんが、驚いていると、
「気を付けてください、アイツらは、弱い仲間を盾にして、
弱い仲間が殺られて、気が緩んだところを
別の強いロシア妖怪が、襲ってきます!
仲間の屍を越える事なんて、なんとも思ってないのです!
敵どころか、味方にも非道な連中です。」
いつの間にかやって来た、ウクライナ妖怪が、言った。
「俺達も応戦します。」
ウクライナ妖怪も応戦した。
クロちゃんもロシア妖怪を叩きのめしたが、叩きのめしても
叩きのめしても、別のロシア妖怪が、襲ってくる!
「ど、どうしたら・・・。」
スッパン!みっちゃんが、ロシア妖怪を真っ二つに、
切り裂いていった。
「大丈夫?クロちゃん、ほら、味方も集まってきたよ。」
万福商店街の妖怪達も集まって来た。
二ポポ人形と、コケシも人海戦術で、ロシア妖怪を倒して
いった。
叩きのめされても、叩き壊されても、無数のコケシと、
二ポポ人形が、襲ってくるのである!
「な、なんて連中だ!」
やたら動きの速い黒いロシア妖怪が、驚いている。
「あ、アイツが、ボスじゃない?」
そう言っていると、
そいつは、美代ちゃんを捕まえて、
「一旦引くぞ!」
そう叫んで、みんな一斉に、空に、飛び立った!
「空を飛んだ!」
「美代ちゃ~ん!」
クロちゃん達は、叫んだが、連中は、ドンドン飛んで行った。
「何で、美代ちゃんをさらうの!?」
クロちゃんが、驚いていると、
「美代ちゃんの頭の上の鰻の蒲焼の神様に、ロシア妖怪が、
かぶりついてるからだよ。」
みっちゃんが、言った。
なるほど、鰻の蒲焼の神様に、たかっている。
「急いで、龍の戦車で、追いかけよう・・・クロちゃん!?」
みっちゃんが、そう言って振り返ると、クロちゃんが、
いない!?
上を見ると、まっピンクの小さな人影が、バビューン!と、
飛んで行った。
「クロちゃんが、飛んでる!?」
みっちゃんの驚きをよそに、クロちゃんは、飛んでいた。
そして、困惑していた。
「な、何で飛んでるの!?」
富貴王から貰ったピンクスーツの頭と、背中の大きな牡丹は、
プロペラのように、ブンブン回って、恐ろしい速さで、
ロシア妖怪に、追いついた。
「美代ちゃんを返せ!」
クロちゃんが、叫ぶと、
「追いかけて来たか!お前達!殺ってしまえ!」
黒いロシア妖怪は、下っ端妖怪に、命令した!
すると、下っ端妖怪は、一斉にクロちゃんに、襲いかかった!
「わああぁ!」
クロちゃんが、叫ぶと、
クロちゃんのコスチュームの小さい牡丹の花は、一斉に、
飛び立ち、手裏剣の様に、凄い速さで、下っ端妖怪を
次々に、倒していった!
「す、凄い!?」
クロちゃんが、驚いている間に、あっと言う間に、
下っ端妖怪をかたずけてしまった。
そして、黒いロシア妖怪は、いきなり苦しみだした。
「うわああぁぁ!」
そして、頭に、大きな牡丹の花が咲き、美代ちゃんを
抱えて、クロちゃんの方に、飛んで来た。
「クロちゃん、もう大丈夫、コイツは、乗っ取った。」
黒いロシア妖怪は、笑った。
あまりの事に、クロちゃんが、呆然としていると、
「クロちゃ~ん!」
竜の戦車と、馬鯉に跨ったアマビエが、やって来た。
クロちゃんと、美代ちゃんを龍の戦車に、乗せて
「クロちゃん、凄かったね!ありがとう!」
美代ちゃんが、言った。
「本当に、凄い強化スーツだ!いいなあ、我も欲しい。」
アマビエは、クロちゃんを眺めていると、
「でも、何でそんな変なコスチュームなの?」
美代ちゃんが、言った。
・・・あ、見られちゃった・・・ああ、
滅茶苦茶恥ずかしい・・・。
「クロちゃん、でも凄いよ!ほら動画撮ったぞ、
拡大するよ。」
留が、動画を再生しながらクロちゃんの部分を拡大した。
「やだ、めちゃ変!あははは!」
美代ちゃんが、明るく笑っている。
「クロちゃんカッコイイな。」
「このコスチューム可愛くて、似合ってるよ。」
「凄い能力だな!クロちゃん凄い!」
妖怪達は、皆嬉しそうに、動画を見ている。
牡丹スーツの威力に、興奮していた。
「牡丹マンの誕生だなクロちゃん!」
アマビエが、明るく言った。
が、しかし・・・。
「美代ちゃんに、見らちゃった・・・。
・・・しかも牡丹マンなんて、間抜けな名前まで付けられて
・・・穴があったら入りたいわ・・・。」
・・・クロちゃんは、暗い海の底に、いるように寒く、
暗くなっていた。
その横で、
「正義の味方!牡丹マン!」
と、チョコ兄ちゃんと、セピ兄ちゃんが、はしゃいでいる
のを恨めし気に、見るしかないクロちゃんだった。




