節分
早咲きの梅に心浮き立つこのごろ、クロちゃんビルでは、
香港妖怪達が、アマビエの猛特訓を受けていた。
中国貧乏音頭、中国風邪を祓う舞、武道をビシバシと、
鍛えられている。
「ロシア妖怪の時より、アマビエ様、気合入ってるわね。」
クロちゃんが、言うと、
「そりゃ、貢物を沢山持って来たからだよ。
魚介類や、ブランド品や、絹製品とかお菓子とか。
香港は、貿易で栄えた所だもん。」
そういって、みっちゃんは、香港妖怪のお土産のフランス産の
缶入りのクッキーを食べた。
「でも、香港妖怪の方が、やる気満々ね。」
「香港は、ずっとイギリス領だったから民主主義の自由を
知っているんだよ。
今は、中国政府に統治されて、自由がなくなったんだ。
だから命がけで、自由を取り戻そうとしているんだよ。」
「命がけで!?」
「自由とは、それだけ価値が、あるのです。
大好きなテレビ番組も映画も、大好きな本も、見れず、
政府が、悪い事をしてても抗議もできない、
不当な弾圧を受ける、楽しくないでしょう?
自由がないのは、生き甲斐がないのと同じです。」
と、いつの間にか香港妖怪が、やって来ていた。
「自由って、そんなに、大事な事なのね。
当たり前のことじゃないのね。」
クロちゃんは、考えこんだ。
・・・今まで考えた事もなかった、自分達は、自由だった
のだと、それは、当たり前ではなかったのだ。
「クロちゃんに、助けを請いに来て、良かったです。
色々アマビエ様に、教えて頂きました。
美安守花の種も沢山撒いておきます、そして、
決戦の準備をします。」
香港妖怪は、言った。
「こいつらは、よく頑張ったから一旦、香港に、帰す。
ほら、みんなコレを飲んでいけ!」
アマビエは、水で薄めた竜神様の酒を香港妖怪に、
飲ませた。
すると、香港妖怪は、ムクムクと、力がみなぎってきた。
「これの効果は、3カ月くらいだが、強い敵とも
戦えるぞ。」
アマビエは、言った。
「ありがとうございます!頑張ります。」
香港妖怪達もお土産の菓子パンや総菜パン等を
貰って、嬉しそうに、龍の戦車で、帰って行った。
「黄熊に、勝てるかしら。」
クロちゃんが、聞くと、
「勝てるまで頑張るだけだ、中国なんて、昔から
中央に不満がある地方からクーデターが起きて、
何回も王朝滅んでいるからな。」
アマビエは、言った。
「大変なのね。」
クロちゃんは、呟いた。
「それは、そうと、水神様の所で、節分があるので、
クロちゃんも連れて来てくれと、水神様に、仰せつかった。
明日は、水神池に、行くぞ。」
「明日は、学校があるから駄目よ。」
クロちゃんが、慌てて言うと、
「あ、学校の先生には、水神池の節分の件で、明日は、
休むと、連絡しておいた。」
「え!先生いいっていったの!?」
「罰が当たると、大変だからクロちゃんは、神事を
優先してもらって、いいそうだ。」
アマビエは、ニンマリと、笑った。
「あ、でもママは、何て・・・。」
「ママも『水神様の頼みじゃしょうがないわね』
と、言っていたぞ。」
アマビエは、ドヤ顔で、言った。
こうして、クロちゃんは、水神池の節分に、行く事と、
なった。
水神池の竜宮城の広間では、節分の華やかな飾りが
施されていた。
「クロちゃん、よく来たのう。」
水神様が、ご機嫌で、迎えた。
「今日は、水神様。
水神池の節分楽しみ、どんな豆をまくのかしら。」
クロちゃんが、聞くと、
「豆なんか、まかんぞ、水神池の節分は、魔を祓う
為に、魔を討伐するんじゃ。」
「魔を討伐ね、なかなか勇ましいわね・・・
ひょっとして、クロちゃんが、魔と戦うの?」
「そうじゃ。」
「無理!無理!無理!無理!無理!無理!クロちゃんは、
下っ端の福の神だもの!他を当たってよ!」
クロちゃんが、慌てて言うと、
「クロちゃんは、我と戦う!我がいるから大丈夫だ。」
アマビエが、ニッコリ笑った。
「え!でも・・・。」
クロちゃんは、逃げ腰になった。
「儂は、クロちゃんまで、討伐しなくてもいいと、
思ったんじゃが、レベルが上がるかと、アマビエに、
言われてな。」
「別に、クロちゃんは、急いでレベル上げなくても・・・。」
「何を言う!黄熊が、いつ攻めてくるかもしれんのに!
悟空にみたいに、しっかり修行して強くなれ!」
アマビエは、ハッパをかけた。
「そんな・・・。」
「みっちゃんも行くよ、クロちゃん、大丈夫。」
みっちゃんは、笑った。
竜宮城の広間には、闘技場が、設置されていた。
「これより節分を始める。」
水神様の掛け声で、魔を討伐が、始まった。
一斉に、色んな魔が、放たれた。
「おい!一匹たりとも逃すなよ!特に、円安、物価高、
戦争、疫病、地震、台風、大雨は、沢山いるから
逃すと、とんでもない事に、なるぞ!」
アマビエが、言った。
「え!ええええ!魔って、そういうことなの!?」
クロちゃんは、驚いた。
「特に、円安と、物価高は、小さくて、沢山いるから
逃すなよ!
ちびっこいのは、クロちゃん担当だ!わかったな!」
アマビエは、怒鳴った。
クロちゃんの足元を小さい魔が、沢山ウロウロしている。
・・・これ全部クロちゃん担当!?クロちゃんは、
ひきつったが、気を取り直しして、打ち出の小槌で、
叩き出した。
バッコン!バッコン!バッコン!バッコン!バッコン!
バッコン!バッコン!バッコン!
クロちゃんがは、叩き回ったが、ヘトヘトに、なって
来た。
「あ、少し手伝って・・・。」
横を見ると、みっちゃんが、大きな台風と、闘っている!
向こうでは、アマビエが、黄熊と、ハゲ白熊と、死闘を
繰り広げている!
・・・とても応援は、頼めそうに、ない。
それでもクロちゃんは、頑張って、円安と、物価高を
駆逐していったが、後少しのところで、アマビエが、
ハゲ白熊を半殺しにして、黄熊と戦っていると、
不意をついて、ハゲ白熊が襲って来た!
「必殺!ウォーターガン!」
強力水鉄砲が、ハゲ白熊を襲った!ハゲ白熊は、
ふっとばされた!
「お!クロちゃん、ナイスアシストだ!
時間制限が、あるからドンドン倒せよ!
残すと、今年の厄さいに、なるぞ!」
アマビエは、叫んだ!
「え!ええええ!」
クロちゃんは、必死で、叩き回った!
・・・が、まだまだ沢山いる・・・どうしょう・・・。
「あ!必殺技使えば!
必殺!桜吹雪!必殺!ウォーターガン!滅滅!」
クロちゃんは、必殺技を駆使して、厄さいを駆逐した。
「時間じゃ!」
「え!待って!また何匹か、残っているわ!」
クロちゃんの叫びも空しく・・・小さい厄さいは、
逃げて行った・・・・どうしょう・・・。
「どうしょう・・・、何匹か逃がしちゃったわ。」
クロちゃんは、暗い面持ちで、言った。
「みっちゃんも何匹か、逃したよ、今年もいくつか
台風、地震、大雨の被害は、ありそうだね。」
みっちゃんは、ポツリと言った。
「ま、何も厄災の無い年は、ない、気にするな。
我は、黄熊と、ハゲ白熊を倒したから中国と、ロシアの
日本進攻は、ないぞ。」
アマビエは、ドヤ顔で、言った。
「でもレベルは、大分上がったな、よしよし。」
アマビエは、クロちゃんと、みっちゃんの頭を撫でた。
「そうなんだ・・・。」
クロちゃんは、ちょっと安心して、ヘタり込んだ。
「大丈夫、クロちゃん。」
みっちゃんが、かけよると、
「うん、急に、力が抜けて、疲れがドッときた。
・・・お腹空いた。」
「節分の御馳走が、用意してあるぞ!ほら。」
アマビエがクロちゃんを抱き上げて、広間に連れて行った。
広間には、沢山の山海珍味が、並んでいた。
そして、中央に、巨大な鰻の蒲焼があった。
「凄い!ふとんみたいに大きな鰻の蒲焼だわ!?」
クロちゃんが、驚いていると、
「クロちゃんの大好物と、聞いて、用意させだぞ!
ほら、たんと喰うといいぞ。」
水神様が、ご機嫌に、言った。
「ありがとう、水神様。」
クロちゃんは、大鰻の蒲焼を切り分けて食べた。
中はふっくら、外はカリッと、ジューシー
タレのうま味が体に染み渡る。
なんか、力がみなぎるようだ。
「この鰻は、美味しいわ!それに、力がみなぎって
くるわ。」
クロちゃんが、言うと、
「これは、霊力がアップするから沢山喰えよ。」
アマビエは、そう言って、バクバク食べ始めた。
他の御馳走も美味しくて、お腹は、パンパンになった。
「もう、食べれないわ・・・。」
クロちゃんが、お腹をさすると、
「じゃ、そろそろ帰るか。」
アマビエは、言った。
家に帰ると、夕飯が待っていた、クロちゃんの大好きな
和風ハンバーグである。
「美味しそうだけど、お腹パンパンだわ。」
クロちゃんは、ショゲた。
「お前の分は、チョコ達で、食べますね。」
そう言って、チョコとセヒと、カダ兄ちゃんは、クロちゃんの
和風ハンバーグをパクパク食べた。
横を見ると、アマビエが旨そうそうに、和風ハンバーグを
食べている。
「旨いな!」
と、ご機嫌である、あの大きな胃袋が羨ましい。
次の日、クロちゃんは、クロちゃんビルへ向かった。
あの水神様の所で食べた鰻の蒲焼をアマビエが、クロちゃんビル
へ、持って行ったと、聞いたからだ。
「あの蒲焼が残っているなら食べないと~♪」
クロちゃんが、広間に行くと、アマビエが、見知らぬ中国妖怪
を訓練していた。
「あ、今日は、この妖怪達は?」
クロちゃんが、話しかけると、中国妖怪達は、クロちゃんに
ひれ伏した。
「こいつらは、台湾妖怪達だ。
中国が攻めて来そうだからクロちゃんに、貢物を持って、
助けを求めに来たから訓練している。」
「大変ね、あ、水神様に貰った、鰻の蒲焼が、ここに、
あるって聞いて、食べに来たんだけど。」
「あ~食べるんだったか、あれは、こいつらに食わした。
中国妖怪と、闘うのに、力と、霊力をつけさせないとな。」
アマビエが、言いにくそうに言った。
「・・・あ、食べちゃったのね・・・。」
クロちゃんは、ガックリした。
「中国に、台湾を盗られると、次は、日本進攻だから
こいつらに、頑張ってもらわないとな。」
アマビエが、言った。
「しかたないわ・・・頑張ってね。」
「悪かったな、あの鰻の蒲焼は、我らの食べ残しだから
クロちゃんが、そこまで執着してるとは、思わなかった。」
アマビエは、すまなそうに、言った。
「いいの、でも、いつの間に、妖怪達のクーデターの訓練所に、
なったの?」
クロちゃんが、尋ねると、
「クロちゃんは、大物の中国やロシア妖怪を倒した、
大物の福の神だからな、この辺の国では、その名を
知らぬ者は、いないんだぞ。」
アマビエが、言うと、
「ちょっと!いつの間に、そんな事になってるの!?
強い妖怪や、神様を倒したのは、他の妖怪や、アマビエ様
じゃない!」
クロちゃんが、うろたえると、
「我は、クロちゃんの師匠だし、他の妖怪は、クロちゃんの眷族だ、
名だたる福の神のクロちゃんの名の元に、みんなが集結している。
つまり、クロちゃんは、それだけの力が、あると
いう事になる。」
アマビエが、説明すると、クロちゃんは、眩暈がした。
段々話が、大げさになって、クロちゃんを祀り上げていく。
噂が独り歩きしているのに、呆然とするしかない
クロちゃんだった。




