月が綺麗な夜に会いましょう
菊の香りただよう霜月の頃、クロちゃん神社は、賑わっていた。
境内の花壇やお店には、又べえと親方の育てた七五三草が、
可愛らしく咲いていた。
そして、クロちゃんビルの会議室では、おやつのスイートポテト
と、モンブラン、金団、栗入り芋羊羹、アップルパイが、並んで
いた。
それをアマビエが、バクバク食べながら秋祭りの打合せをしていた。
「安守花のおかげで、中国妖怪もロシア妖怪も襲撃して
来なくなった。
おかげで、楽しい祭りになりそうだな。」
アマビエは、言った。
すると、
「そういえば、尖閣の海カッパ達が、秋祭りをするので、
是非、クロちゃんに来て欲しいと、言って来てるんだ。」
と、吾作が言った。
「尖閣!行きたいな!海軍の飯美味いんだよな。」
留が、言った。
「留は、駄目だよ、龍の戦車と、ペンペン号の注文が、
山ほど入っている。」
星明が、言った。
留は、ガッカリした。
「じゃ、クロちゃん、今度の日曜は、尖閣の海カッパ達の
秋祭りに行こう。」
アマビエが、言った。
「わあ~!楽しみね。」
クロちゃんと、みっちゃんは、喜んだ。
日曜は、良く晴れて、尖閣の海は、青かった。
秋祭りの儀式の後、
浜辺では、海カッパ達が、魚介類のバーベキューで、
もてなしていた。
神社の本堂の前の舞台では、娘カッパ達が、舞い踊って
いた。
その向こうでは、海カッパが餅つきをして、
つきたての餅を作っている。
「お魚が、新鮮ね。」
クロちゃんが、魚を食べると、
「ほら、肉も焼けた。」
自衛隊員も一緒になって、肉を焼いてクロちゃんの皿に、
乗せてくれた。
「夕飯は、基地の方で、用意しているよ。
海軍のご飯は、凄いよ、楽しみにしてね。」
「海軍カレーって、有名ね!楽しみ。」
クロちゃんは、言った。
「カレーも美味しいけど、もっと、御馳走が
出るよ、楽しみに、しててね。」
そう言って、クロちゃんの皿に、自衛隊のお兄さん蒼海さんは、
ソーセージを乗せてくれた。
「今夜は、天気が、いいから月が綺麗だろうね。」
「月が綺麗だと、いい事があるの?」
「うん、綺麗な月夜は、彼女と、デートなんだ。」
「素敵ね、いいな。この基地の隊員さん?」
「いや、この近くに住んでいるらしいよ。」
言うと、みんなが微妙な顔をした。
「ここは、立ち入り禁止区域だもん。
それ、カッパじゃない?」
みっちゃんが、言うと、
「違うよ、頭に皿もないし、くちばしもないよ。
とても可愛いんだ、彼女。」
と、蒼海さんは、照れながら話した。
「あ、ジュース無くなったね、持ってくるよ。」
蒼海さんが、向こうに行くと、他の隊員が、
「みんな、カッパだって言ってるのに、聞かないんだ。
な、海斗。」
隊員さんは、近くの海カッパに、同意を求めた。
「ああ、最近様子がおかしい一族の女が、いるんだ。
汐里っていう可愛い子なんだけど、
よく思い詰めて、ため息をついてるんだけど・・・。
ほら、あそこで、蒼海と話してる海カッパの女だよ。」
二人は、親し気に話している。
恋人って感じでは、ないようだけど?
「でも、恋人って感じじゃないみたい。」
クロちゃんは、言った。
「そうなんだ、だから違うかもしてないけど。」
海斗は、言った。
「今夜は、月の綺麗な夜になりそうだから
会いに行くかもね。」
みっちゃんが、言うと、
「確かめに行くか。」
アマビエが、言った。
夕食は、自衛隊基地で、パーティーだった。
舞台では、楽隊の生演奏や、余興で盛り上がっていた。
とりどりの御馳走に、クロちゃん達は、
大喜びだった。
大きな木の船には、刺身がてんこ盛りで、
戦車の形の器には、握りずしがたくさん載って、
各種のオードブル、ローストチキン、ローストビーフ、
ミートローフ、焼売、餃子、、パスタ、うなむすび、etcの御馳走と、
果物、プチフール、フルーツパンチと、大きな軍艦ケーキには、
マジパンで作った、クロちゃんと、自衛隊員と、海カッパが、
仲良く乗っていた。
「いいな、クロちゃん、今度はみっちゃんも作って
もらって。」
みっちゃんは、ミートローフを食べながら言った。
「そんな事、クロちゃんに言われても・・・。
あれ?蒼海さんは?」
クロちゃんが、聞くと、近くの隊員が、
「蒼海は、昼の勤務でしたからもう帰りました。」
と、答えた。
「彼女に、会いに行ったのかな?」
「おい、確かめに、行くぞ。
今は、盛り上がって、抜けてもバレないぞ。」
アマビエは、言った。
夜空で、月が輝いていた。
波の音だけが響く海岸で、男女の影が映っていた。
「あ、いた蒼海さん、・・・となりの綺麗な女の人
カッパじゃないわ?」
クロちゃんが、不思議そうに、言った。
二人は、軽く口づけして別れた。
「キスだけで、よかったな、クロちゃんに見せられない
所だった。
さ、女の後をつけるぞ。」
アマビエが、言った。
女は、海に入ると、カッパの姿を現した。
「あ、やっぱりカッパだったか!」
アマビエが、叫ぶと、慌てて、カッパは海に、逃げよう
とした、ところをアマビエが捕まえた。
「おい!何でこんな事をした!」
そのカッパの顔を見て、アマビエは、驚いた。
「あれ?汐里じゃない?」
クロちゃん達が、驚いていると、カッパは、二つに割れて、
中から人魚が出て来た。
上半身は、美しい女で、下半身は、魚で、二股に分かれて
いる、微妙な人魚だった。
「なんだ、お前は、人魚か?何で人間を誑かしている。」
アマビエが、尋ねると、
「許してください、誑かしたわけじゃないのです。
私は、蒼海さんをお慕いしているのです。」
人魚は、怯えながら言った。
「汐夏ちゃんは、悪い子じゃありません!私の親友です!」
そう言って、汐里が、駆け寄って来た。
「私達、龍の戦車を操縦する事が、あるんです、
その時、ウォーターガンで、中国船を撃退する、蒼海さん
を見て、汐夏ちゃんは、好きになったんです。」
「でも、人魚と人間じゃ結ばれないぞ。」
アマビエが、言うと、
「私の一族に、魔法に詳しいばあやに、人間になる方法
を聞きました。」
汐里が、言うと、
「あ、カッパの魔女だからカッパにしないと、人間に
化けられなかったのか。
でも、お前は、何か代償を払わされるぞ。」
アマビエが、言うと、
「そうよ!声を盗られて、失敗したら海の泡になるわよ!」
クロちゃんが、言うと、
「声?泡??ばあやさんには、真珠と珊瑚と、お魚を
差し上げましたけど。」
汐夏は、言った。
「悪い、魔女じゃないみたいだな。」
アマビエは、言った。
「人間になるには、この辺りの海神様に、頼んで、
七つの試練を受けて、人間にしてもらうのです。」
「もし、失敗したら・・・どうなるの?」
クロちゃんが、心配そうに聞くと、
「もちろん・・・また来年チャレンジします。」
汐夏は、言った。
「普通に良心的だね・・・。」
みっちゃんは、言った。
「明日、七つの試練を受けるのです。」
汐夏は、目を輝かせて、言った。
「そういう事なら・・・頑張ってね。」
クロちゃんが、言うと、
「おい、面白そうだから見に行こう。」
アマビエが、ワクワクしながら言った。
翌日、クロちゃん達は、人魚と一緒に、海神様の所に行く事に
なった。
馬鯉に跨り、クロちゃん達は、海神様の所へ向かった。
青い、海の底にドンドン潜って行く。
「息が苦しくないのね?」
「クロちゃん達は、術をかけているからだ。」
アマビエが言った。
「だから水の中でも空気中みたいに、違和感がないのね。」
煌めく道を進んでいくと、美しい竜宮城が見えて来た。
馬鯉から降りると、汐夏は、
「あの七つの試練を受けにきました。」
門番に話て手続きを始めた。
アマビエは、門番に、
「アマビエと、弟子のクロちゃんが、来たと海神様に、
伝えてくれ。」
しばらくすると、門が開き、沢山の魚の妖怪が出迎えた。
「ようこそいらっしゃいました。
海神様がお待ちです、ご案内いたします。」
クロちゃん達は、奥へ案内された。
大広間では、海神様が、待っていて、とりどりの御馳走が
運ばれてきた。
「よく来たな、クロちゃん、噂通りかわいいなあ!
踊りを踊ってくれないか?」
海神様が、言った。
すると、
「あ~クロちゃんに、ついて来た、師匠のアマビエです。
クロちゃんと、一緒に踊ります。」
アマビエが、割って、入った。
「あ~!鬼のアマビエか、よく来たな。
クロちゃんの師匠だったか、楽しみだな。」
海神様が、言った。
「一刺し舞ます。」
クロちゃんと、アマビエは、中国風邪を祓う舞を舞い始めた。
舞い終わると、
「良かった、良かった。」
海神様は、大喜びで、クロちゃんを頭の上に乗せて、
飛び回った。
「あ、そうだ、七つの試練の件なんだけど。」
クロちゃんが、言うと、
「クロちゃんも七つの試練を受けに来たのか!
よし、特別に試練は、1つにしてやろう!」
海神様は、言った。
「いえ、試練は、クロちゃんじゃなくて・・・。」
クロちゃんが、言う間の無く、クロちゃんは、光に
吸い込まれて行った。
「あ~あ~、人の話を最後まで聞いてくださいよ。
七つの試練を受けに来たのは、この汐夏です。」
アマビエが、言うと。
「あ、しまったな。
試練が終わるまで、帰って来れんぞ。」
海神様は、困った顔をした。
気が付くと、クロちゃんは、万福商店街に、立っていた。
・・・万福商店街?何で?
周りは、沢山の中国兵と、ロシア兵が、店を壊し、人々を
嬲り殺しにして、略奪をしている!
「な、何が起こったの!?」
クロちゃんが、驚いていると、
「クロちゃん!無事かい!」
八じいちゃんが、叫んだ。
「あ、八じいちゃん、何が、起こったの?」
「中国と、ロシアが、攻めてきたんじゃ!みんな殺されて
しまった・・・美代も・・・殺された。」
・・・え!えええ!クロちゃんは、目の前が、真っ暗に、
なった。
気が付くと、妖怪や二ポポ人形と、コケシが、果敢に
ロシア兵と、中国兵と戦って、殺していた。
血みどろの地獄絵図である。
「丁度、アマビエ様が、お出かけになった時でな
物凄く強い、中国妖怪と、ロシア妖怪が、中国と、ロシアと
一緒に、攻めて来たんじゃ。」
八じいちゃんは、言った。
「クロちゃん!無事か~!」
向こうから、親方と又べえが、走って来た。
「あ、クロちゃんは、大丈夫よ。
でも、酷い・・・。
他のみんなは?」
「いきなり、尖閣に中国が、北海道にロシアが、攻めて
来て、みんな龍の戦車で、応戦に行って、手薄な所を
やられたんじゃ。」
親方が、言った。
「歳さんは、アッチで、怪我人の手当てをしている。
クロちゃんビルで、パパと、ばあちゃんは、ロシア兵と、
中国兵を撃退している。
今、ママ達を助けに行くところだ。」
又べえが、言った。
「あの沢山の中国兵と、ロシア兵は、どこから来ている
の?」
「中国妖怪と、ロシア妖怪が吐き出しているんじゃ。」
「吐き出す!?」
「だから中国妖怪と、ロシア妖怪を倒さんと、無限に
出て来る!中国のプーさんと、ロシアのプーさんは、
「ソ連兵は畑で取れる」と言った、スターリンと
同じ考えなんで、兵士が何人死のうと、送り込んで
来るんじゃ。」
「『ソ連兵は畑で取れる』って?」
「ロシアじゃ、農民は、貧しいから政治将校率いる徴発隊が
農村にいって、兵にできそうな農民を強制徴兵するんじゃ。」
親方は、言った。
「だから、畑から取れる・・・。」
クロちゃんは、絶句した。
「クロちゃん!無事だったかい?」
向こうからタロべえが、ママ達と、やって来た。
なんか、様子が変だ?ママと、チョコ兄ちゃん達が、泣いている?
小梅ちゃんが、泣きながら背中の冷たくなったクラリスを見せた。
「クロちゃん、お家に、ロシア兵と、中国兵が攻めて来て、
ママと、タロべえと、アタシ達、一生懸命戦ったの。
でも、ごめんね、アタシが目を離した、隙に、ロシア兵に
クラリスちゃん殺されたの。」
・・・クラリス・・・クロちゃんは、ボロボロ泣いた。
「ごめんね、クロちゃん。
俺、間に合わなかった・・・本当にごめん。」
血まみれのタロべえが、泣いていた。
「クロちゃん、ここは、危ない、。
急いで、クロちゃんビルにもどるぞ!
そこに、中国妖怪と、ロシア妖怪が、いる!」
親方が、言った。
クロちゃんビルの前では、みっちゃん、鶴ちゃん、亀ちゃんが、
中国妖怪と、ロシア妖怪と血みどろの死闘をしていた。
パパと、おばあちゃんもクロちゃんビルの迎撃システムで
応戦していた。
10メートルは、あろうかという黄色の熊の妖怪と、シロクマの
妖怪が、腹の穴から中国兵と、ロシア兵を出している!
「妖怪の腹から出てくる、中国兵と、ロシア兵が蛮行を繰り返す
んじゃ。
まず、アイツらを倒さんと、甚大な被害が出る一方じゃ。」
親方は、言った。
「トリプルウォーターガン!」
クロちゃんは、黄熊の妖怪と、シロクマ妖怪に、
トリプルウォーターガン!で、連続攻撃をした!
そこをみっちゃん達が、切り込み!まわりは、血の海になった。
「滅滅!」
クロちゃんが、叫ぶと、黄熊の妖怪と、シロクマ妖怪は、カビに
覆われて、朽ちて行った。
「やった!」
皆歓喜して、残った、中国とロシア兵を殺し始めた。
「え・・・。」
妖怪達が、中国とロシア兵の武器を取り上げると、
皆は、バットや、棒、包丁等で、殴ったり、刺したりと、
地獄絵図である。
「あ、ちょっと皆・・・。」
皆を止めようと、しているクロちゃんをママが止めた。
「クラリスを殺されたの!ママも行って、殺して
やりたくらいよ。
美代ちゃんも美代ちゃんのご家族も殆どころされたの。
皆、大事な人を殺されたの。
生かしていたら他の人を殺したり、襲ったり、盗んだり
するわ!当然の報いよ!」
目を血走らせて、怖い顔で、ママは、言った。
ゴオォオ!凄い音がして、振り向くと、
朽ちていたはずの黄熊の妖怪と、シロクマ妖怪が合体して、
右半分黄熊、左半分シロクマ妖怪になって、巨大化して、
クロちゃんに、襲い掛かってきた!
思わずクロちゃんは、避けたが、隣にいたママの脇腹を
えぐった!
「ママ!」
クロちゃんが駆け寄ると、
「クロ・・・。」
ママは、言いかけて、絶命した。
「ママ~!」
クロちゃんの目からポロポロと、涙がこぼれた。
「この~!絶対に許さないわ!」
クロちゃんは、打ち出の小槌を構えて、
「ウオータースクリュー!」
打ち出の小槌から鉄砲水がでて、渦を巻き、
巨大クマ妖怪を砕き、沢山のロシア兵と、中国兵を
巻き込んで、殺した。
沢山のロシア兵と、中国兵の死体の山が出来た。
「人を殺した・・・。」
クロちゃんは、恐ろしくて、真っ青に、なった。
「この~人殺しめ~!」
沢山のロシア兵と、中国兵がクロちゃんを罵った!
「・・・どの口で言うの!ママやクラリスや美代ちゃんや
沢山の人達を殺しておいて!クロちゃんは、後悔ないわ!
みんなを守る為なら仕方ないわ!」
クロちゃんは、叫んだ!
・・・だんだん周りは、白くなり、海神様と、アマビエ達
が見えた。
「あれ?」
「よく頑張ったな!クロちゃん、合格だ。」
海神様は、笑った。
「え?合格?」
「クロちゃんの願いは、皆を守って、幸せに暮らす事。
大きな力を手にすれば、襲ってくる人間達も殺すかも
しれない。
仕方がない事だ、そうなっても後悔しない覚悟を見た。」
海神様は、言った。
「あ~試験は、クロちゃん用のマイルド使用で、
突っ込みどころは、沢山あったが、よく頑張った。
エライ、エライ。」
アマビエは、笑って、クロちゃんの頭を撫でた。
「クロちゃん、新しい力を与えるぞ。」
海神様は、そう言って、クロちゃんの持っている
打ち出の小槌を撫でた。
「ありがとうございます。どんな技かしら。」
クロちゃんが、打ち出の小槌を見ていると、
「あ、海神様、俺は、又べえと言います。
クロちゃんの眷族で、色んな神様から貰った物で、
クロちゃんを守ってます。」
又べえは、今まで貰った物を海神様に見せた。
「みんなから色々貰っているな。
よし、これをやろう。」
海神様は、小さな波をくれた。
「ありがとうございます。」
又べえは、嬉しそうに、小さな波をポケットにしまった。
「よかったな!お前いいもん貰ったな!
海神様、我もこれから大きな敵と、闘わねばなりません。」
アマビエは、海神様をジッと見た。
「やれやれ、かなわんなホレ。」
海神様は、波をまとった刀を一振り、アマビエに、渡した。
「ありがとうございます!これで、どんな敵でも蹴散らします!」
アマビエは、嬉しそうに、刀を眺めて、言った。
すると、汐夏が、青い顔で、目の前に現れた。
「・・・不合格でした。」
力なく汐夏は、呟いた。
「大丈夫?・・・どんな試験だったの?」
クロちゃんが、尋ねると、
「私は、人間になって、蒼海さんと結婚する事になった
のですが、周りの隊員の方々と、彼のご両親に、妖怪は、
やめろと、反対されました。
それでも私達は、結婚しましたが子供は、人魚でした。
それでも仲良く暮らしたのですが、彼が、病で亡くなって
しまって、誰も守ってくれる人が、いなくて・・・
ついには、悪い人に騙され、売り飛ばされてしまい。
我が子とは、離れ離れになり、見世物として生きて
行くしか・・・あまりの辛さに、泣きました。
・・・で、不合格に・・・。」
汐夏が、呟くように、言った。
「・・・昼メロみたいに、酷い話だな。」
アマビエは、言った。
「これは、覚悟をみる試練だ。
お前は、人間になった時、色々な事が起きても
後悔しない覚悟がなかった。
一生の事だからよく考えて、来年又受けに来い。
覚悟があれば、人間にしてやろう。」
海神様は、言った。
「・・・はい。」
汐夏は、小さな声で、返事をした。
その汐夏を心配そうに、汐里が、背中をさすって
慰めた。
「・・・クロちゃんも必殺技で、人を殺しちゃう事
が、あるのかしら・・・。」
クロちゃんが、呟くと、
「クロちゃんは、下っ端だが、神なんだから気にするな。
命の重みも知っているだろう。
皆を守るって、いうのが、クロちゃんの一番だ。
大きな力を持つ責任も解っている、いい子だ。」
アマビエが言った。
「クロちゃんが、人を殺めそうになったら
みっちゃんが、殺すから心配しないで。」
「そ、それも・・・でも、ありがとう。」
クロちゃんが、笑った。
「クロちゃん、我らは、今できる事を頑張ろう。
毎日、張り切って、中国貧乏音頭と、ロシア貧乏音頭を
踊るぞ~♪」
アマビエは、楽しそうに、踊り出した。
「あ、そうね、汐夏さんは、これからどうするの?」
クロちゃんが、尋ねると、
「又、来年、チャレンジします。
覚悟が、できたら人間になります。
それまでは、蒼海さんには、今まで通り
『月が綺麗な夜に会いましょう』っていいます。」
そう言った、汐夏は、綺麗だった。
尖閣に、戻ると、蒼海が、待っていた。
「よかった、昼食に間に合ったね。
クロちゃんの為に、特製お子様ランチを用意しているよ。」
ニコニコと、笑う蒼海に、
「あの蒼海さん、汐夏さんの事なんだけど・・・
本当はね・・・。」
クロちゃんが言いにくそうに、切り出すと、
「あ、彼女は、人魚だからね。」
「え!知ってたの!?」
「うん、コッソリ帰って行くところを見たんだ。」
「人魚で、いいの?」
「うん、カッパよりいいよ、可愛いし、俺、退役したら
ユーチューバーに、なろうと思っているから
『人魚と楽しい日々』でも起ち上げようかと思うんだ。
でも、彼女、人魚だって隠したいみたいだったから
気づかないふりをしていたんだ。」
蒼海は、能天気に、言った。
「人魚なら再生回数爆上がりだな。」
アマビエは、言った。
「汐夏さん・・・人間になったらフラれるかも。」
みっちゃんは、言った。
「あ、早く教えてやった方が、いいな。
・・・蒼海、アイツ意外と馬鹿じゃなかったな。」
アマビエは、呟いた。
「・・・別に、無理に人間になる必要は、なかったのね。」
クロちゃんは、言った。
・・・世の中わからないものだと、思うクロちゃんだった。




