大黒殿
雨に萌ゆる緑が風情を漂わせるこの頃、留は、忙しそうに
働いていた。
ペンペン号の注文が沢山入ったからだ。
「留、いつも忙しいわね。」
クロちゃんが言った。
「ペンペン号は、人間でも動かせるからね。」
みっちゃんが言うと、
「龍の戦車は、妖力がいるから妖力がある程度強い妖怪
が同乗しないと動かないからね。」
星明が、言った。
「そう言えば、最近大黒のおっちゃん見ないわね。」
クロちゃんが言うと、
「儂は、しばらく家に帰っていたからな。」
大黒天が、水無月をつまんで食べた。
「大黒のおっちゃん!いつの間に!って家があったの?」
クロちゃんが驚いていると、
「万福商店街は、旨い物が沢山あるから家から通っていただけだ。」
「え、でもクロちゃんン家で、パパや親方達と晩酌してたじゃない。
だから・・・てっきりクロちゃんンに住んでいると・・・。」
クロちゃんが言いにくそうに言うと、
「クロちゃんン家のご飯が旨いから通ってただけだ。」
おっちゃんは、苺牛乳寒天をツルンと食べた。
「旨いな、流石おばあちゃんだ。
儂が家に帰っていた間、騒動があったみたいだな。
変な風邪も流行って大変だったな。」
大黒おっちゃんが、言った。
「そうなの中国風邪って言って、中国の細菌研究所からウィルスが
出て、世界中に広がって、アマビエ様っていう病を祓う神様が
中国風邪を祓う舞を教えてくれて、クロちゃん達は、アチコチで、
中国風邪を祓う舞を踊って、アマビエ様が中国で暴れて、
中国が攻めてきて、アマビエ様が叩きのめしたの。
その時同乗していた、動画クリエイターが撮影していた動画で
映画を作る事になったの。」
クロちゃんは、今までの事を大黒のおっちゃんに話した。
「ほらもうポスターが出来ているの今秋公開の映画
『暴れん坊神アマビエ』が公開されるのよ。」
壁には、『暴れん坊神アマビエ』のポスターが貼ってある。
アマビエが龍に跨り、たっちゃんに乗ったクロちゃん達と、
龍の戦車を引き連れて飛んでいる勇壮なポスターである。
キャッチコピーは、『中国の罪は我が裁く!』
「アマビエ頑張っているな」
おっちゃんは、笑った。
「おっちゃんの家に行ってみたいですね、どんな家ですか?」
チョコがいきなり現れて言った。
「福の神の家なら宝で出来ているのか?」
セヒも興味深々である。
「ま、その内に招待してやる、久々にこっち来たから
色々食べたいからな。」
大黒のおっちゃんは、苺タルトにかぶりついて、
「旨いなあ。」
とご満悦である。
「しかし、クロちゃん神社は、中国人が増えたな。」
大黒のおっちゃんは、言った。
アマビエが中国を返り討ちにして以来、更に中国人が増えた。
今、人気のお土産は、クロちゃんと、アマビエグッツである。
沢山の中国人がクロちゃんの水を飲む為に長蛇の列を作って
いる。
「香港の人も多いみたい、絵馬に広東語や、英語、日本語で
中国政府を倒してくださいって書いてあるらしいわ。
中国は、アマビエ様の罰で、凄く景気が悪くなっているのに
沢山の中国人がくるんで驚いているわ。」
クロちゃんが、言うと、
「いろんな意味でアマビエが圧倒的な力を見せつけたからな。
ま、この世で一番強いのは、金だ。
『ペンは、剣より強し』と、言う言葉があるが、儂に言わせて
みれば、『金は、ペンや剣より強しだ。』金があれば大抵の事は、
解決する。
だから福の神のは、最強なんだぞ。」
大黒のおっちゃんが笑った。
「あの、クロちゃんいつの間に福の神の修行していたの?」
「打ち出の小槌をやった時からだよ、見込みのある奴しか
修行は、させんよ。」
「クロちゃんは、ただの子供よ。」
クロちゃんが言うと、
「まず、みっちゃんが見えて、儂が見えたろう?
心清く、賢く、優しく勇気がある、妖怪達も慕っている。
資格は十分だよ。」
大黒のおっちゃんが笑った。
「もし、クロちゃんが、将来なりたい職業を見つけたらどうすの?」
クロちゃんが聞くと、
「兼任すればいいだろう、どんな職に就こうと金は役にたつぞ。
それに、金以外のあらゆる富を操れるぞ。」
おっちゃんは、言った。
家に帰って、ママに
「クロちゃん、福の神の修行をしているから将来福の神に
なるみたい。」
すると、ママは、
「まあ、そうなの、でも高校や大学には行くでしょう?
行った方がいいわよ。」
「・・・ママは、駄目とか言わないのね。」
「え!だって、クロちゃん神社の御神体だもの、クロちゃん神社は、
おばあちゃんが経営しているからいずれは、社長にするって
言っていたし。」
「え!そうなの!?」
クロちゃんが驚くと、
「それに、おばあちゃんがね、クロちゃんが社長に就任する頃まで
自分は、生きてないかもしれないから、繋ぎでパパに社長に
なってくれないかって、言うの。」
ママが複雑な顔をすると、
「パパは、WEBエンジニアの仕事好きだもの
断るわね。」
「それが、受ける気満々なのよね。
給料は、上がるし、嫌な上司とも縁が切れるって、大丈夫かしら。」
ママが心配そうな顔をすると、
「大丈夫よ、経営とか経理とかは、専門家がいるから。
クロちゃんのパパって言うのが大事なの。
クロちゃんのパパなら妖怪も言う事聞くもの。」
「あ、そうか。」
「それに、クロちゃんのおかげで、クロちゃん神社は、儲かって、
儲かって、しょうがないんだもの。適任でしょう。
ホッホッホッ。」
おばあちゃんは、高笑いをした。
「又べえと、親方が作ってくれる、痩せるドリンクや、虫を取る花、
それに中国風邪のワクチンが売れて、売れて大変なんだ。」
パパが嬉しそうに言った。
格安で、一回の接種で抗体が出来て、アナフィラキシーもない、
赤ん坊も打てると、世界中から注文が来ている。
クロちゃん達の舞と、ワクチン草のおかげで、日本の株は
上がりまくりである。
「これが、福の神の威力だ、凄いだろう!」
大黒のおっちゃんが言った。
「凄いわね。」
クロちゃんが、言うと、
「何他人事の様に言ってるんだ、クロちゃんの力だろう。」
大黒のおっちゃんが言った。
「え!クロちゃんのせい?」
・・・いつの間にそんな事になってるんだろう。
「それにね、クロちゃんは、妖怪に狙われやすくなっているだろう、
クロちゃんが危ない時は、クロちゃん神社の運営の社長なら
仕事ホッポリ出して、駆け付けても誰も文句言わないからね。」
パパは、クロちゃんの頭を撫でた。
「パパは、クロちゃんの為に会社を辞めるのね。」
クロちゃんが聞くと、
「クロちゃんと一緒だと、色んな所に行けて楽しいのもあるのよ。
ま、パパがついて行ってくれると、心強くはあるけど・・・。」
ママはが言った。
「いいね、クロちゃんは、もう将来の就職先決まっていて。」
カダ兄ちゃんが言った。
「じゃ、チョコは営業マンになって、クロちゃん印の商品を
売ります!」
チョコが言った。
「じゃ、俺が経理になるなお前達は、どんぶり勘定だかな。」
セヒが言った。
「お前達なりたいものないの?」
カダ兄ちゃんが言った。
「カダ兄ちゃんは、何になるの?」
クロちゃんが聞くと、
「・・・特にないな・・・。」
カダ兄ちゃんが言うと、
「じゃ、クロちゃん神社の宣伝マンですね。」
チョコが言った。
「う~ん、それも悪くないかもね。」
カダ兄ちゃんが笑った。
・・・大食い王子のイケメンぶりなら宣伝効果は抜群ね。
その内親族会社になっちゃうのかしら。
すると、
「やあ、クロちゃん、お邪魔しているよ。」
星明が言った。
「星明、どうしたの?」
「クロちゃんのパパが、『(株)クロちゃん』の社長になる
から打ち合わせをしに来たんだよ。
俺は、顧問なんだ。」
星明が言った。
「『㈱クロちゃん』?そんな名前の会社?何か嫌だわ。
・・・たしか『㈱久路福』とか言ってなかった?」
「それは、又べえ達の作った花とか、ワクチンの製造販売の
会社の名前だよ、クロちゃん神社とか海ガッパの傭兵代とか
のグループ会社の総合は、『㈱クロちゃん』なんだ。」
クロちゃんは、頭が痛くなった。
クロちゃんは、将来は、『㈱クロちゃん』の社長に
なるらしいからだ。
「その内、慣れるよ。」
星明は、笑った。
「でも最近困ってるんだ、北方四島に住んでた妖怪が
故郷に帰りたくないか?とか日本政府がいってくるんだ。」
「何で?」
「北方四島は、元々日本の領土だったんだけど、
太平洋戦争敗戦後すぐ、ソ連が、違法に攻めてきて、ソ連の領土に
したんだよ。
日本は、妖怪使ってでも取り返したいんだろうね。」
「元々日本の領土だもの返してくれないの?」
「金で買い取るか、戦争で勝ち取るしかないよ、
竹島と違って、普通の人が住んでいるから簡単には
いかないよ。」
「そうなのね、でも妖怪に占拠させたどさくさに、
日本は取り返したいのね。」
クロちゃんが言うと、
「元々ソ連が、「日ソ中立条約」を一方的にの不延長を通告して
いきなり宣戦布告して襲ってきて、とられた領土だから
強引でも取り返したいんだよ。」
「色々あるのね。」
クロちゃんは、考えてしまった。
「色々ままならない事は、多いよ。
・・・それは、そうと、明日は、クロちゃん神社で中国風邪の
集団接種があるからクロちゃんも受けるだろう?」
星明が言うと、
「え!クロちゃんは、竜神様がくれた小瓶の水飲んで、
もうかからないわよ。」
「でも、政府から子供にも接種券がきているだろう?
たしか予約が入っていたよ。」
「ママ、何で接種予約したの。」
クロちゃんが言うと、
「接種証明書が発行されるのよ、それないと入れない所
とかあるらしいのよ。
家族全員接種するからクロちゃんも接種するの。」
ママは、ぴしゃりと言った。
「何で、クロちゃんが。」
クロちゃんは、ガックリ来た。
「仕方ないよ、それが人間のルールだからね。
・・・でも、SNSでデマが広がって、接種を嫌がる人も
多くて問題になっているんだ。」
星明が言うと、
「あ、接種したら、子供出来なくなるとか、子供に悪いとか、
体が磁石になるとか、ミュータントになるとか、妖怪になる
とか言うヤツですね。」
チョコが言った。
「そう、実在の偉い教授がそう言ったって、デマ流して
いるんだよ。
製造方法を秘密にしているからね、妖怪が作っているって
言ったら余計に疑われるね。
心配なのは、結構過激だから明日の集団接種を邪魔しない
といいんだけどね。」
星明が言うと、
「何で、そんなデマ流して、接種の邪魔するのかしら?」
クロちゃんが言うと、
「接種する勇気がないんだよ、悪い事ばかり考えてね。
今、何十年先の事は、何十年もたってみないと
わからないよ。
でも、このワクチンは、神様と、妖怪の妖力の賜物だから
後遺症は、ないと思うよ。
接種した安心感は、代えがたいと思うけど。」
星明は、言った。
「そうよね、そう言えば、何でクロちゃん神社で集団接種する事に
なったの?」
「今度、新しく屋根付きの舞台を建てたから歳さんが、場所貸して
くれって言って来たからだよ。」
「神威病院は、中国風邪の患者で一杯だもんね。」
神威病院は、都内で一番患者を受け入れているので、ワクチン接種
の場所が確保できずに困っていたのだ。
「あのワクチンって、どんな物なの?」
クロちゃんは、ふと不思議に思って聞いた。
「普通ワクチンっていうのは、弱いウィルスを体に入れて抗体を
作るものだけど。
あのワクチン草のワクチンは、どうも抗体の情報を体に記憶させて
抗体を作っているようだって、歳さん言ってたけど。
だから一回の接種で抗体が出来て、アナフィラキシーもない
って事らしいよ。」
「桜の大樹の神様の力ね。」
「うん、そう言う事。」
「あれ、飲んでも効くわよね、注射しなくてもよくない?」
「そんなワクチンは、ないよ。
説得力がなくなるから注射するしかないね。」
星明が言った。
クロちゃんは、暗い気持ちになった。
次の日、ママは、クロちゃん達を連れて、クロちゃん神社の
ワクチン接種会場に行った。
沢山の人が並んでいて、お医者さんが椅子に座って、椅子を転がし
移動して、接種している。
「お医者さんが移動して注射打つのね。」
クロちゃんが言うと、
「あの方法で接種が7倍速くなったんだよ。」
歳さんが言った。
「あ、歳さんは注射しないの?」
クロちゃんが聞くと、
「私は、医師免許がないからね、注射は打てないんだよ。」
「そうなんだ。」
「でも、注射は上手だよ、練習したからね、公じゃない所では
打つこともあるよ。」
歳さんが言った。
「あ、そうなの。」
「臨機応変ってヤツだよ、要は患者を助けられればいいんだよ。
今の時代の医療も医者に憑りついて、大学や病院で勉強しているよ。
医療ってのは、ドンドン新しい方法が出てくる。」
「あ、だから歳さんパソコンもスマホも使えるのね。」
クロちゃんは、納得した。
「最近、ワクチン接種を邪魔する輩がいるから様子を見に
きたんだよ。
ま、このワクチンは、常温保存できるから冷蔵庫の温度上げたり
の妨害は、できないけどね。」
歳さんは、笑った。
会場は、ザワザワして、突然
「このワクチンを接種すると、妖怪になるぞ!人間でなくなるぞ!
クロちゃん神社のコケシや二ポポ人形、妖怪になりたいか!」
と、変な集団がドカドカと乱入して、騒ぎ始めた。
「また、変なのが来たわ。」
クロちゃんは、ゲッソリした、ただでさえ注射で気分は滅入るのに
この頭のおかしな集団の相手をしないといけないのである。
スタッフと、看護師さんが集団を追い返そうとするが、
ワクチン接種を反対する集団は、益々ヒートアップしていく。
お互いもみ合いが始まった。
「ここは、ワクチン接種をしない人は、出ていって!」
クロちゃんが怒鳴った。
「クロちゃんだ!」
「クロちゃんだ!」
「クロちゃんだ!」
「クロちゃんだ!」
会場は、クロちゃんに気が付き騒めいた。
「ワクチンを接種されて、妖怪になったらどうする!
大体拒絶反応もない、常温保存、一回の接種で抗体ができる!?
そんな都合のいいワクチンがあるものか!」
ワクチン反対派の集団は、叫んだ!
「じゃ、聞くけど、このワクチンを打って妖怪にないった人
連れて来て!」
クロちゃんは、怒鳴った。
「ネットで有名な教授が言ってたぞ!」
「じゃ、その有名な教授を連れて来て!
ワクチンで治らなかった人連れて来て!
動かぬ証拠を連れて来て!」
クロちゃんは、怒鳴った。
「ネットやSNSじゃそう言われているぞ!」
「ネットでは、このワクチンは拒絶反応もない、常温保存、
一回の接種で抗体ができる素晴らしいワクチンって
喜んでるわ!
適当な事言って、注射が怖いんでしょう!邪魔しないで
予約して、次回接種して!」
クロちゃんが怒鳴ると、ワクチン反対派の集団は、一斉に
スマホを取り出し予約を始めた。
「あ、予約番号がわかないと予約できませんから
家で予約してください!邪魔ですから!」
看護師さんと、スタッフは、ワクチン反対派の集団を
追っ払った。
「クロちゃん、ありがとう!お礼に一番上手な先生に
接種して貰うわね。」
看護師さんがにこやかに言った。
・・・全然嬉しくない。
クロちゃんは、引きつった笑いをした。
接種を終わったクロちゃん達はセブンスパラダイスにいた。
接種が終わった後のご褒美のチョコパフェを食べながら
「終わったね。」
「怖かったね。」
「痛かったよな。」
三人は、ブツブツ文句を垂れていた。
「たいして痛くなかったでしょう?チクッくらいでしょう?」
おばあちゃんは、笑った。
「あの注射を打つのはメチャこわいぞ。」
セヒは、言った。
「でも、付き添いは、おばあちゃんで正解です。
ママなら注射打った、ご褒美は、安いアイスくらいです。
流石、おばあちゃん豪勢です。」
チョコはチョコパフェをパクパク食べた。
「あ、三人で分けるのでプリンを追加してもいいですか?」
チョコは聞いた。
「今日は、特別よ、照子さん、プリン3つね。」
おばあちゃんは、プリンを頼んだ。
「美味しいわ。」
クロちゃんもご機嫌になってきた。
「旨い、旨い。」
ふと気が付くと、大黒のおっちゃんも一緒に食べている。
「おっちゃん、いたの?いつから?」
「今日は、クロちゃんに憑いて、朝ご飯を一緒に食べた所
からだよ。」
プリンをプルンと食べて言った。
「大分レベルが上がったから、初級の福の神試験受けるかい?」
大黒のおっちゃんが言った。
「ええ!試験あるの!?」
「もちろんだ。受かったら福の神の下っ端になれるぞ。」
・・・正直福の神になりたい訳ではない、しかし、なりたいものが
ある訳でもない。
でも、周りは期待している。
「クロちゃん!凄い!がんばってね。」
おばあちゃんは、言った。
「受かれば福の神だな!凄いな!」
セヒが言った。
「もう、神社持ちですからね。
免許ないのに、医者や、教師やっているようなもんですから
受かるしかないですね。」
チョコが茶化すように言った。
「受けてみたらいいよ、クロちゃんならできるよ。」
みっちゃんが笑った。
「あ、でも今から勉強して間に合うかしら?」
クロちゃんが言うと、
「あ、筆記試験じゃなくて、実技だから難しく考えるな。
次の日曜日に、儂の家『大黒殿』に行くからママに言っとけ。」
大黒のおっちゃんが言った。
次の日の日曜日に、クロちゃんン家の庭で、クロちゃんが
待っていると、豪華な宝船が飛んで来た。
「クロちゃん、乗れ。」
大黒のおっちゃんが言った。
「スゲー宝船だ!」
「わ~!浮いてます!」
セヒ、チョコ、みっちゃん、又べえ、親方、福ちゃん、星明
、小雪姫は、宝船に乗ってご機嫌である。
「この宝船、帆に宝って刺繍してあるけど、宝は乗ってないのね。
それに、普通の木なのね。」
クロちゃんが言うと、
「この船は、樹齢1000年のケヤキと、松で出来ている。
軽くて丈夫な船だ、今日は、人の運搬だから宝を乗せていない。」
大黒のおっちゃんは言った。
「あ、そうなのね。
・・・おっちゃん意外と実用的ね。」
クロちゃんが言うと、
「でも、細かい彫刻だし、彫刻された琵琶や、笛は音楽を
奏でている、綺麗に金箔を施してあるし、豪華だろう?
名工の作だ。」
確かに、生き生きとした彫刻は、動いていて、素晴らしい出来だ。
「凄い腕のいい職人さんの作ね。」
クロちゃんが関心していると、
「これは、留がつくったんじゃろ。」
親方が言った。
「え、そうなの!?」
「ほら、帆の柱の所に留と書いてある。
アイツは、自分で作ったもんは、自分の名前を書いておくんじゃ。」
「そうなんだ、留は、神様御用達の名工だったのね。」
くろちゃんは、感心した。
そうしている内に、キラキラと、周りが輝き森が見えて来た。
何重にも虹がかかり、なんとも幻想的な美しさだ。
畑や、田んぼも見えてきて、果樹園の木は、たわわに実を実らせて
いた。
人々は、宝船を見つけて、皆手を振っている。
とても豊かで、楽しそうな人々だ。
「みんな楽しそうね。」
クロちゃんは、楽し気に言った。
そして、ひと際大きな城が見えて来た。
「わあ~お城だわ~!」
クロちゃんが言うと、
「あれが、儂の家『大黒殿』だ。」
大黒のおっちゃんは笑った。
城に着くと、沢山の人々に歓迎された。
みんなふくふくと豊そうである。
綺麗に磨かれた廊下は、鏡みたいにピカピカに磨かれていた。
「この廊下綺麗なもようね。」
クロちゃんが言うと、
「これは、寄木細工だよ。
様々な種類の木材を組み合わせ、それぞれの色合いの違いを
利用して模様を作るんだよ。
とても手間がかかっている。」
「襖絵も綺麗ね、みんな動いているわ。」
クロちゃんがおどろいていると、
「みんな腕のいい職人の作だ。
金銀キラキラでなくて残念かい?でも本当に価値のある物は、
こういう物なんだよ、落ち着くだろう。」
大黒のおっちゃんが言った。
「確かに、手が込んでいるわね。」
クロちゃんは、納得した。
よく見ると、城のさり気ない所に、彫刻や、透かし彫り、
寄木細工が施してある、凄く手間がかかっているのだ。
奥の立派な部屋に通された、柱は漆塗りで、金箔で綺麗な
花や鹿や鳥が描かれている。
天井も床も寄木細工で、龍と、宝船の彫刻は、動いている。
そして、テーブルには、沢山の御馳走が並んでいた。
「わあ~美味しそう!」
「いつも御馳走になっているからな遠慮なく食べてくれ。」
大黒のおっちゃんは、言った。
「わあ~頂きます!」
みんなお御馳走を食べ始めた。すると、
「あ、クロちゃん、みっちゃん、福ちゃんは、試験を
受けるから、腹八分にするんだよ。」
大黒のおっちゃんは、言った。
「あ、頭が鈍くなるものね。」
クロちゃんが納得していると、
「踊るから、お腹が痛くなったり、吐いたりしたらいけだろう。
でも、酒は、少し飲んでいいぞ、ほら、楽になる。」
甘く、芳醇な香りが鼻腔をくすぐった。
クロちゃんは、一口クピッと飲んだ。
芳醇な香りが口一杯広がり、スッキリとした味わいだ。
「美味しい!」
クロちゃんは、また飲んだ。
「あああ~!なんていい香り!」
「クロちゃん、お酒は、二十歳からだぞ。」
セヒが言うと、
「ここは、日本じゃないから大丈夫だ。
ここの酒は、悪酔いしないから大丈夫。」
そう言って、クロちゃんの盃にまた、酒を継ぎ足した。
「美味しいわ~!」
クロちゃんは、すっかり出来上がってしまった。
「お前、こんなに飲んで大丈夫ですか?」
チョコが心配そうに言ったが、みっちゃんも福ちゃんも
お酒を飲んでいる。
「今から試験なのに、お酒飲んでいいのね。
このお刺身美味しいわ!焼き鳥も焼肉も凄く美味しい!」
クロちゃんは、パクパク食べた。
魚や、肉、野菜その物が凄く美味しいのだ。
「ここは、食べ物が凄く美味しいのね、何でクロちゃんン家や
万福商店街に食べにくるの?」
クロちゃんが聞くと、
「そりゃ違う料理を食べたくなるからだよ。
桜の大樹の大老と同じで、飽きるんだよ。」
大黒のおっちゃんは、言った。
・・・そう言えば桜の大樹の神様もそんな事言っていたわね。
大黒のおっちゃんは、ハンバーガとか、ホットドックとか
ジャンクフード好きよね。
そんな事を思いながらクロちゃんは、御馳走を食べた。
「おっちゃん、そろそろ腹八分くらい食べたわ。」
クロちゃんが、言うと、
「え、デザートがありますよ。」
チョコが言った。
「それは、試験が終わって食べるわ。」
クロちゃんは、笑った。
「それじゃ試験を始めるか。」
大黒のおっちゃんは、言った。
大黒殿の広い庭は木々が生い茂り、綺麗に手入れをされた庭だった。
・・・大黒のおっちゃんは、結構趣味がいいんだ。
中央の池に連れて来られ、
「さあ、試験を始める、まず福ちゃん、踊れ。」
大黒のおっちゃんが言うと、福ちゃんは、打ち出の小槌を持って
踊り始めた。
すると、見る見るうちに、蓮が生え美しい花を咲かせた。
「随分レベルが上がったな合格だ。」
「やった!又ランクが上がった!」
福ちゃんは、大喜びだ。
「次は、みっちゃん!踊れ。」
みっちゃんも小槌を持って、陽気に踊り始めた。
すると、周りの木々は、花を咲かせた、そしてたわわに実を
実らせた。
「よし、合格だ。」
「よし!またランクが上がった。」
みっちゃんは、嬉しそうに言った。
「次は、クロちゃんだ。」
クロちゃんが立ち上がったが、酒が回っている。
ご機嫌にテケテケ歩き出した。
「アイツ大丈夫か?」
セヒが心配そうに言うと、
「いきなりこんな所で踊れって言われると、緊張しますね。
アイツは酔っ払っているくらいが丁度いいですよ。」
チョコは言った。
クロちゃんは、軽やかに踊り出した、すると、お天気なのに
雨がザーと降ってすぐ上がり、二重の虹がかかった。
池では、楽し気に魚が飛び跳ね、それを目当てに沢山の鳥が
寄って来た。
花々は、楽し気に咲き誇り、蝶々が沢山寄ってきた。
木々には、更に沢山の実がなった、そして、打ち出の小槌から
沢山の金銀財宝が出てきた。
「すごい!クロちゃん!」
みんな驚いていると、
「よし、クロちゃん合格だ。」
大黒のおっちゃんが、言うと、クロちゃんは、ペタンと座りこんだ。
「こいつ出来上がってます。」
チョコが言うと、
「大丈夫か?でもこのお宝はどっから出たんだ?」
セヒが不思議そうに言うと、
「中国のだ。」
大黒のおっちゃんが、言った。
「え?中国???」
「クロちゃんは、無意識に中国マネーを引き寄せている。」
「何でそんな事になるの?」
クロちゃんが尋ねると、
「クロちゃん、アマビエに打ち出の小槌を貸しただろう。」
「ええ、それが何か?」
「アマビエが中国に罰を与えたろう、貧乏になるように。
本来、アマビエの専門は、病を祓う事で、いつまでも
経済を操れない。
で、クロちゃんの打ち出の小槌に細工して、中国マネーが、
クロちゃんに引き寄せられるようにしたんだ。
だから、クロちゃん神社に連日とんでもない数の中国人が
中国マネーを落としていくんだよ。
その打ち出の小槌を使うと、余計集まってくると、いう訳だ。」
大黒のおっちゃんが説明した。
「・・・アマビエ様、そんな事していたのね。」
クロちゃんが絶句していると、
「クロちゃん、その打ち出の小槌を景気よく降って踊って下さい!
降れば、降る程儲かります!
中国が貧乏になれば、成る程、日本は、安全で、中国風邪の
損を取り戻せます!」
チョコが言った。
「クロちゃん、俺達も踊るぞ!みんなも踊るぞ!」
セヒが言った。
「クロちゃんの福の神になったお祝いだもんね。」
みっちゃんは、笑って、踊り出した。
「ほら、クロちゃん、もっと酒飲んでいいぞ。」
大黒のおっちゃんは、盃に酒を注いで、クロちゃんに渡した。
クピッとクロちゃんは、飲んで
「美味しい!」
クロちゃんは、陽気に、踊りまくった。
「おい、又べえ宴が、終わったら庭の手入れをしなきゃならん
から酒は、程々にしとけ。」
ドンドン、木々が実を付け、花が咲き乱れた庭を見て、親方が言った。
「あ~あ~これから仕事するのか。」
又べえは、ガッカリしたが、クロちゃん達に混ざって、一緒に
踊った。
「ただいま。」
ほろ酔いでクロちゃんが家に帰ると、
「お帰りなさい、クロちゃん試験どうだった?」
ママが聞いた。
「無事、合格よ。福の神の下っ端になったわ。」
クロちゃんが言うと、
「まあ、おめでとう!そのせいかしら。」
おばあちゃんが言った。
「どうかしたの?」
「クロちゃん神社に、沢山の中国人が押し寄せてね、
お守りも、おみくじも根こそぎ買って行っちゃったの。
お菓子とかは、毎日入荷するけど、他のはすぐ入らないし、
万福商店街のクロちゃん関連商品も買い占めちゃった
らしいわ。」
おばあちゃんが、困惑気味で言った。
「中国マネーがガンガン!クロちゃん神社に流れてますね。」
チョコが茶化した。
「とにかく、クロちゃん神社に行ってみるわ。」
クロちゃんは、クロちゃん神社に向かった。
クロちゃん神社は、驚くほど多くの中国人が詰めかけていた。
状毒草が沢山の人を追いかけ、ペンペン号が忙しそうに
中国風邪の感染者を回収していて、
土産物売り場では、品切れで、文句を言う中国人、
買う物がなく、何杯もクロちゃんの水を飲む中国人、
万福商店街の店で、品々を買い漁っている中国人。
「すごい事になっているわね。」
クロちゃんが言うと、
「あ、クロちゃん!」
歳さんが話しかけた。
「歳さん、どうしたの?」
「神威病院で、有料で外国人の中国風邪の予防接種始めたら
とんでもない数の中国人が押し寄せて大変なんだ。」
歳さんは、ため息をついた。
「大変ね。」
クロちゃんが言うと、
「それで、ワクチンの在庫が無くなったっんで、又べえに
貰いたいんだが、又べえは?」
「あ、家にいると思うわ。」
「じゃ、電話して持って来て貰うか、じゃあね、クロちゃん。」
歳さんは、行ってしまった。
すると、
「クロちゃん、福の神になったんだって!おめでとう!」
星明がやって来た。
「あ、星明!福の神の下っ端よ。」
「おかげで、大盛況だよ。
・・・中国マネーが流れて来ているんだよ。」
「大変な事になっているんで、ビックリしているの。」
「そうだね、根こそぎ買っていかれるので、お土産や、
お守りをどう仕入れようかが、頭痛いよ。
『はるばる中国からやって来て、手ぶらで帰れない!』
と、殺気立っているね、暴動が起きなきゃいいけど。」
星明が心配そうに言った。
「そんなお土産ぐらいで、暴動なんでおきないわよ。」
クロちゃんが言いながら周りをみると、みんな殺気立っている。
・・・なんにも起きないといいけど、不安が胸をよぎる
クロちゃんだった。




