又べえの小箱
うららかな春の日差しが肌に心地よいこのごろ又べえは、
婚礼の日を迎えていた。
おばあちゃん達は、朝から大忙しだった。
星華の実家から送られて来た、豪華な花婿衣装は、絹の
白の衣装に、銀や金、水色、青の重ね着の美しい衣装だった。
又べえに全く似合ってなかった、完全に衣装負けである。
「妖怪の結婚衣装って、豪華なのね。」
おばあちゃんが関心していると、
「こんな高価な衣装は、神様用じゃ、天津甕星の差し金じゃろう。」
親方は、言った。
「ああ、星華ちゃん達の国の神様ね、きっと、クロちゃんの
妖怪だから贈り物してくれたのね。」
おばあちゃんが言うと、
「あいつの事だから嫌がらせだ、あいつ又べえが嫌いだから。」
又べえがため息をついた。
そして、壊れた小箱の入った、袋を撫でた。
・・・庭師ならだれでも羨むようなお宝だったのに・・・。
クロちゃん神社のカッパ池で、皆は花嫁の来るのを待った。
水神池が盛り上がり、穴がぼうっと開いた、その中から
花嫁の一行が現れた、白い馬に、絹の白の衣装に、薄紅や、桃色
桜色、オレンジ、赤の重ね着に金糸銀糸を施してある美しい
衣装に身を包んだ星華を中心に、星華の親兄弟、百人程の親族が
ぞろぞろとやって来た。
「花嫁さん綺麗ですね。」
小雪姫がうっとりと言った。
「小雪姫ちゃんが着たらもっと綺麗ね。」
クロちゃんが、ポツリと言うと、
「わあ、嬉しい。」
小雪姫が、クロちゃんに抱き付いた。
「ええ!」
クロちゃんは、真っ赤になった。
「星華ちゃんのお姉様方、みんなお優しそうで羨ましいです。」
小雪姫がポツリと言った。
「小雪姫ちゃんのお姉さん、怖い人だったもんね。
言葉使いも怖かったし、小雪姫ちゃんは、優しいのにね。」
クロちゃんが言うと、
「姉は、本当に我儘な人で、言い方がきつくて、
物凄い勢いで言いまかして、勝った気になるのですが、
相手がひいているのに、気が付かないのですの。
平気で、人がムッとする事をして勝った気になっても
相手が上っ面だけ合わせてるだけで、心が離れているのに
気が付かないのですわ。
相手はけして許しはしなくて、恨みが溜まっていくだけ
なのに気が付いていませんでしたの。
よく馬鹿な女程幸せになれると、嘯いてましたけど、
そうじゃいのですよね、キツイモラハラ女が
幸せになれないのです。
その反面お鈴さんのような優しく、可愛い人が羨ましくて
憑りついてましたの。
結局、石にするしかなかったですけどね。」
小雪姫が、寂しそうに言うと、
「あ、家の家族は、みんな小雪姫ちゃんが大好き
だから。」
クロちゃんが言うと、
「ありがとうございます!もうキュンキュンしますわ。」
小雪姫は、またクロちゃんを抱きしめた。
「もう、クロちゃん小雪姫ちゃんをお嫁さんにしたら。」
みっちゃんが冷やかした。
「星華ちゃんも、小雪姫ちゃんも気は強いけど、優しく
て可愛いもん、みっちゃん2人とも大好きだよ。」
みっちゃんが言った。
みっちゃんもお嫁さんが欲しくなったのかな・・・。
それにしても晴れやかな星華に比べて、又べえの青い顔が
気になった。
皆は、クロちゃん神社の本堂へ向かった。
道行く人々は、世にも珍しい妖怪の婚礼の一団を珍し気に
見守った。
この辺りの人は、又べえのワクチンをおばあちゃんが安く
提供したので、ワクチン接種が進んで、殆どマスクしている
人は、いない。
又べえのワクチンは、接種が1回でいいし、沢山親方達が
作ってくれるからサクサク進んだ。
それにクロちゃん達の舞で祓ってくれるからこの辺りは、
もう中国風邪の心配は、なくなった。
クロちゃん神社の本堂では、又べえと星華の結婚式が
厳かに行われた。
三々九度を飲み干して二人は、見つめあって笑った。
それから万福商店街の結婚式場で宴会になった。
みんな花婿と、花嫁にお酒をつぎに行った。
「又べえ様、元気がないですね。」
星華が心配そうに聞くと、
「こんな目出度い日に、言うのもどうかと思うけど・・・。
実は、桜の大樹の神様から貰った小箱を壊してしまった。
中国風邪をばら蒔いている妖怪をやっつける時、
ヘマやって、妖怪に壊された・・・どんな罰が当たるか
・・・。
又べえに何かあった時は、星華は、又べえの稼いだ金で、
美味しい物を沢山食べて、綺麗な服を沢山買って、
面白おかしく暮らしてくれ・・・。」
力なく又べえは、言った。
「ここの人達は、みんな又べえ様に感謝してましたわ。
婚礼が終わったら星華もお詫びの品を持って一緒に
神様の所へ謝りに行きましょう。
許してくれるまで、二人で謝りに行きましょう。
大丈夫、きっと許してくれます。」
星華は笑った。
「星華ありがとう、本当に又べえには過ぎた嫁だ。」
又べえは涙ぐんだ。
「又べえ、可愛くて、しっかりした、いい嫁貰ったな。」
鶴ちゃんと、亀ちゃんが又べえに、酒をつぎながら言った。
「又べえなんぞの所へよく来てくれた、ありがとうな。」
親方は、星華に酒をつぎながら言った。
星華は、それをくいっと飲み干した。
「不束者ですが、よろしくお願いいたします。」
「いい飲みっぷりだ!」
みんな大はしゃぎだ。
結婚式場の人達もなんだか嬉しそうだ。
「中国風邪のせいで、感染の心配があったんで、
結婚式場は、ずっとキャンセル続きだったの
それで、久しぶりの結婚式だからみんな嬉しいのよ。」
しかも、世にも珍しい妖怪の結婚式だ。
式場の人も楽しくなったのだろう。
「この結婚式を宣伝に使ってもいいって、又ちゃんが
言うから費用はタダにしたの。」
おばあちゃん太っ腹だ。
確かに珍しい衣装だし、妖怪だらけの結婚式はCMに
使えるかもしれない。
プロが撮影しているので、素晴らしいビデオも
出来上がってくるんだろうな楽しみだ。
・・・さっきからクロちゃんを沢山映して
いるような・・・。
賑やかな結婚式は、終わって星華の親兄弟だけ
おばあちゃんの家に泊る事になり、夜は、
また宴会になった。
「クロちゃんのお屋敷素敵ですね。」
星華の親兄弟は、おばあちゃんン家を褒めた。
「ここは、おばあちゃんのお家で、クロちゃんの
お家じゃないの。」
クロちゃんが言うと、
「私が死んだらクロちゃんの物だからクロちゃんの
お家よ。」
おばあちゃんは、笑った。
「この山海の珍味に、珍しい酒!星華は果報者だ。」
星華の父は喜んだ。
「それに、ここの家は、女性が強いのでい心地が
とてもいいんですのよ。」
星華は、言った。
又べえは、皆に酒を飲まされ、真っ赤で騒いでいる。
・・・元気になって良かった。
それから2日程星華の親兄弟は、おばあちゃんの家
に泊って、万福商店街とクロちゃん神社で楽しんだ
後、お土産を沢山貰って帰って行った。
それを見送りながら
「来週の日曜に、隔離の桜の大樹の花見に行くぞ。」
親方が言った。
「じゃ準備が大変ね、任せてね。」
おばあちゃんは、笑った。
「ばあちゃん悪いなあ、星華の親兄弟も世話になった。」
又べえがお礼を言うと、
「何言っているの家族でしょう、気にしないで。」
おばあちゃんは、笑った。
「ばあちゃん、太っ腹だ。」
又べえが言うと、
「姫さんは昔っから太っ腹じゃ、儂らは昔から
姫さんから色々貰ったし、こっちに出て来てからも
飯食わせてくれたり、店の資金貸してくれたり
したが、一回もそれを恩にきせた事は、なかったぞ。」
八じいちゃんが言った。
「嫌いな兄が、勝手に買って来て、恩によくきせていたの
気に喰わない事があると、すぐ買ってやったり、食べた物
返せとか、食べるなとか言うの!最低!
そんな事言うなら、貰わないわ!
本当にセコイ!モラハラ男しか言わないセリフだって
後でわかったわ。人間性が卑しいからそんな事言うのよ。
本当に嫌な人だった。」
おばあちゃんは、言った。
「大変だったのね。そんな事言われたら本当に嫌ね。」
クロちゃんが言うと、
「クロちゃんの家族で、そんな事言うような人いないものね
そんな事言うと、人間が下がるだけだから。
言わない方がスマートで、カッコイイわ。」
おばちゃんが言うと、
「だからおばあちゃんは、男前ってみんなが言うのね。」
クロちゃんは、おばあちゃんをカッコイイと思った。
「クロちゃん、儂と六も一緒に花見に来るから
よろしくな。
沢山、鰻の蒲焼を焼いてくるよ。」
八じっちゃんは、笑った。
「わあ!楽しみ。」
クロちゃんは、ゴックンとつばを飲み込んだ。
次の日曜日は、いい天気だった。
おばあちゃんの家の庭に、クロちゃん一家、クロちゃ
んン家とおばあちゃんン家の妖怪、八爺ちゃん、美代ちゃん、
ケンちゃん、六爺ちゃん、星明、鶴ちゃん、亀ちゃん、
山田パン屋のおっちゃん、福ちゃんが集まっていた。
すると、龍の戦車がやって来た。
「今日は、龍の戦車に乗って行くね、あれなら軽トラも
乗せられるし、桜の大樹の神様の所へもいけるわ。」
クロちゃんは、得意になって美代ちゃんに言った。
「じゃ、皆行くぞ!」
親方が叫んだ!
すると、庭の背景がボオ~ッと光って、背景は
裂け、薄紅色の世界が広がった。
一面の薄紅色の世界!全て見事な1本の木桜だった。
花も微妙に濃淡が違う花が重なりあって、
何とも不思議な世界だった。
桜の下では、妖怪や、妖精が花見を楽しんでいた。
陽気に歌う者、軽やかに踊るもの!
沢山の夜店が並んでいた。
「わあ、夜店だ!又べえ沢山お菓子持って来たから
又ぼったくて下さい。」
チョコが言った。
この為にクロちゃん達は、背中のリュックに沢山のお菓子を
持って来ていた。
物々交換で、色々な物と取り換えたり、遊んだりする為だ。
「よし、任せとけ!」
又べえは、みんなを引き連れて、夜店周りをした。
その間に、山田パン屋の軽トラで、鶴ちゃん、亀ちゃんは、
持って来たお菓子の販売を始めた。
しばらくすると、クロちゃん達は、桜鳥の雛や、綺麗な桜金魚
綺麗なお菓子を一杯持って帰って来た。
又べえは、綺麗な桜の髪飾りを星華に渡した。
「まあ、綺麗。ありがとうございます。
花びらが揺れて素敵ですね。」
又べえは、そうして星華の髪につけてやった。
「それから、ばあちゃん、又反物を買ってきたぞ。」
又べえは、桜柄の反物をおばあちゃんに渡した。
反物は渋い紫に変わった。
「まあ、これも不思議な反物ね、ありがとう又ちゃん。
これでまた着物を作ってあげるわね。」
おばあちゃんは、嬉しそうに言った。
「ところで又ちゃん、コレいくらしたの?」
「ポッキー一箱だ。」
おばあちゃんがにんまり笑って、
「クロちゃん達、残りのお菓子くれない?帰ったら倍返しで
お菓子買ってあげるから。」
「いいわよ、はい。」
クロちゃん達からお菓子を貰うと、おばあちゃんは、又べえと
夜店に行って、沢山の反物をgetして来た。
「みんな不思議な反物なの!着物縫ってあげるわね。」
おばあちゃんは、嬉しそうに言った。
「楽しみね。」
クロちゃんが言った。
「そろそろお昼だし、桜の大樹の神様の所へ行きましょう。」
おばあちゃんが言った。
山田パン屋のおっちゃんと、鶴ちゃん、亀ちゃんは、
店じまいを始めた。
「沢山珍しいものが、手に入ったぞ。」
みんな戦利品があって嬉しそうだ。
しかし、又べえの元気は、無くなってきた。
「又べえ様、元気を出して下さい、私に秘策がありますの
美々茸を沢山持ってきました、猫にマタタビ、神様に美々茸
と、言われるくらい神様の好物ですの。」
星華が笑うと、
「ありがとう、星華!本当に又べえには過ぎた嫁だ。」
又べえは、涙ぐんでよろこんだが、
「あれ?ここに置いておいた風呂敷包知りません?」
いつの間にか美々茸を包んだ風呂敷が忽然と消えていた。
「そう言えば、さっき蟹の妖怪が来て、美々茸を売って
欲しいって言わたわ、もちろん断ったけど、しつこかったわね。」
ママが言うと、
「じゃ、その辺探してみよう。」
鶴ちゃん、亀ちゃん、親方、星明、ゴンベイ、歳さん、留は、
手分けして情報を仕入れてきた。
「あちこち聞いて回ったらな、この辺りで商売を仕切って
いるガマ太郎の部下のカニ丸が美々茸を探していたらしい。」
星明が言うと、
「じゃ、ガマ太郎の所へ行って取り返しましょう。」
クロちゃんが言った。
クロちゃん達は、ガマ太郎の屋敷に行った、なかなか立派な
屋敷だった。
「ロクでもない金持ちの家だな、表札もドアも金ぴかだ。
如何にも成金って感じだな。」
星明が言った。
「いきなり行っても入れてくれないわね、どうする?」
クロちゃんが言うと、
「くん、くん、くん・・・!美々茸の匂いがする!」
又べえが言った。
「間違いないね、又べえは、鼻がきくから。」
みっちゃんは、そう言うと、
「桜の大樹の大老の賓客の大黒様と、クロちゃんの一行だ!
尋ねたい事がある、門を開けてくれ!」
星明は、叫んだ。
すると、ギィ~と門が開いて、門番が出て来た。
「ガマ太郎様がお会いになるそうです。」
クロちゃん達は、奥の応接室に通された。
中では、ガマ太郎がいた。
「いらっしゃいませ、大黒様とクロちゃんの御一考様
ですね、何のごようでしょうか?」
「桜の大樹の神様の所へ持って来た、お土産の美々茸が
なくなったの、夜店で、ガマ太郎の部下のカニ丸が
美々茸を探していたって聞いたから来てみたの。」
「失礼でしょう!カニ丸が盗んだっていうんですか?
証拠は、あるんですか?」
ガマ太郎が言うと、
「ある!」
又べえは、走り出し、ドアを次々に開け、美々茸を
探し出した。
「ほら!ここにあるぞ!動かぬ証拠だ!」
又べえがそう言うと、
「確かに美々茸ですが、そちら様の物だという証拠は
あるのですか?」
ガマ太郎は怪訝そうに言った。
「それは、ないわ・・・。」
クロちゃんが言うと、
「そうですか、ではお引き取りください。」
ガマ太郎は、勝ち誇った顔で言った。
「仕方ない、桜の大樹の神様には、美々茸を盗まれた事を
素直にいってあやまろう・・・。
それから言っとくけど、俺達の美々茸は、本物の美々茸
じゃない、又べえが作った類似品だ。
桜の大樹の大老から貰った賜り物で作った物だ。
だから・・・桜の大樹の大老は食べればわかると思うよ。
桜の大樹の大老に訴え出るからバレた時は、キツイ
罰が下るよ!覚悟しろ!」
星明が言った。
すると、ガマ太郎は慌てて、
「カニ丸!おい!カニ丸!」
大声でカニ丸を呼んだ。
「およびで。」
カニ丸がやって来た。
「お前、この方々から美々茸を盗んだのか?」
ガマ太郎が聞くと、
カニ丸を見て
「この人よ!しつこく美々茸を譲ってくれって言って、
断ったの、星華ちゃんが美々茸焼いて、みんなに
御馳走するって言うから用意していたら
いつの間にか無くなっていたの!」
ママが言うと、
「みんなで食べるなら譲ってくれればいいのに。」
カニ丸が言うと
「天津甕星様から許可なく流通しないように、
言われているんです!
知り合いならともかく、赤の他人に売る訳ないでしょう!」
星華が言った。
「つまり、お前が盗んだんだな!」
星明が言った。
「ガマ太郎!お前どうする気だ!」
みっちゃんが凄んだ。
「申し訳ございません、全部お返ししますし、ほら
この金の壺も差し上げます、お許しください。」
ガマ太郎は、謝った。
「こいつは、厳重に処罰いたします。」
「待って下さい!俺は、ガマ太郎様に譲って貰え
ないなら盗んで来いって言われたから仕方なく。」
カニ丸は泣きそうに言った。
「それに、美々茸が用意できないなら今までに、
貰った物や、金や、食料を返せって言うから・・・
用意できないなら娘を神様のお供えの材料に
するっていうから・・・。」
泣き出すカニ丸に、
「娘さんがいるの?」
クロちゃんが聞くと、
「ほらこの子、今年10歳になります。」
カニ丸は、可愛いカニの女の子の写真を見せた。
「まあ、美味しそう!」
クロちゃんは、思わす言った。
「あ、本当に美味そうです!チョコはカニの方が
いいですね。」
チョコが言うと、
「そんな事いうなよ、可愛そうだろう。」
セピが生唾を飲んでいった。
「みっちゃんもカニでいいと思う。」
みっちゃんが言った。
「じゃ、そのカニの子を渡すって事でいいね、
美々茸コレ半分の量しかないけど、後はどうしたの?」
星明が聞くと、
「桜の大樹の神様の所へ納品しました。
・・・どうしたら・・・カニで許して貰えるでしょうか。」
ガマ太郎が心配そうに言うと、
いきなり大黒のおっちゃんが出て来て、
「桜の大樹の大老には、カニより大好物がある。」
「それは、何ですか?すぐ用意します。」
ガマ太郎が慌てて言うと、
「それはな・・・ガマの丸焼きだ。
ガマ吉も喰われないように、必死だっぞ!
特にたっぷり肥え太った中年ガエルがだ、お前を献上
したら許してくれるぞ!はっはっはっはっは!」
そう言うと、
「そろそろ桜の大樹の大老へ行くぞ。」
大黒のおっちゃんは、言った。
「お前らの事は、桜の大樹の大老に訴えとくから
覚悟しな!」
星明は言った。
ガマ太郎と、カニ丸は呆然と見送った。
龍の戦車の中で、クロちゃんが心配そうに、
「あの、カニの女の子お供えの材料にされちゃうの?
ガマ太郎食べられちゃうの?」
「多分、食べられんよ。
神様に献上する為でも盗んじゃいかん、ガマ太郎が
気に喰わんから脅したんだよ。
色々やったからと恩着せて盗ませるなんて根性が
腐っているからな。
カニ丸も弱みを握られても盗みはいかん、キモを
冷やすぐらいの罰は受けんとな。」
「そうだったの。」
「桜の大樹の大老には、出入りの業者が行き過ぎた事を
話して、注意してもらおう。
それにな、桜の大樹の大老は、多分美々茸より、おばあちゃん
達の御馳走を楽しみにしていると思うぞ。
多分同じ御馳走で飽きてるんだろうな、ミートローフや
ミートパイが気に入っていたようだったが、
一番気に入っていたのは、おにぎりだったからな。」
大黒のおっちゃんが言った。
「美々茸を神様の目の前で焼こうと七輪持って来ましたわ。
焼きおにぎりにできますよ」
星華が言った。
「儂も神様の前で鰻をお出ししょうと、白焼きとタレを
持ってきたぞ、このタレでおにぎりを焼くと旨いぞ。」
八じっちゃんが言った。
桜の大樹の大老の城の庭に、龍の戦車は、降りた。
すると、沢山の召使達が集まって来た。
「よくいらっしゃいました、大老様がお待ちです。」
クロちゃん達は、城の中に通された。
壁は、綺麗な桜の絵がえがかれている、しかも桜は、
揺れるのだ。
品の良い桜の彫刻が施された扉を開くと、中には、
桜の大樹の大老が待ち構えていた。
「今日は、桜の大樹の神様、約束どおり沢山お御馳走を
持って又来ました。
お庭で七輪を使わせてね、八じっちゃんが鰻を焼いて
くれて、星華ちゃんが、美々茸と焼きおにぎりを
作ってくれるから。」
「よく来たね、クロちゃん、お御馳走楽しみにして
いるよ。
私も御馳走を用意した、桜を見ながら沢山食べてくれ。」
桜の大樹の大老は、機嫌よく言った。
そう言うと、大老は、庭に案内した。
見事な一本桜は、見事で思わずため息が出た。
庭には、大きなテーブルが用意されていて、
沢山のお御馳走が並んでいた。
「わあ!凄い!美味しそう。」
クロちゃん達が椅子に座ると、ママ達は、重箱を開いて、
大老の前に開いた。
「私も沢山パンを焼いてきましたよ。」
山田パン屋のおっちゃんも沢山のパンを並べた。
「うちのお菓子も食べて下さい。」
鶴ちゃんと亀ちゃんもお菓子を並べた。
「どれも美味しそうだ。」
そう言って、大老は御馳走を食べ始めた。
しばらくすると、香ばしい鰻と、美々茸、焼きおにぎりの
香りで一杯になった。
「神様、ひき肉料理がお好きなのね。」
おばあちゃんが言うと、
「儂らは一番いい肉を出されるから、ひき肉は珍しいんだよ。
ひき肉は、あんまりいい肉を使わないからな。」
大黒のおっちゃんが言った。
「そうか、逆に美々茸あんまり食べないわね。
でも焼きおにぎりや鰻は、物凄く食べてる。」
クロちゃんが神様の方を見て言った。
そして、又べえを見ると、青ざめている。
「ま、お酒を一献どうぞ。」
星華は、神様にの盃にお酒を注いだ。
「ああ、ありがとう。」
「私、又べえ様の妻で星華と申します、先週式を
上げました・・・それで・・・。」
星華が話を切り出そうとすると、
「あ、あの桜の大樹の神様、又べえです、覚えてますか。
神様が去年小箱をくれた・・・。」
又べえが言いかけると、
「ああ、そう言えば、へっぽこな妖怪が、ねだったから
小箱やったな。クロちゃんへのご褒美の代わりに。
お前だったか。」
「あの時は、小箱ありがとう。
あの小箱の種で、沢山綺麗で楽しい花を咲かせられた。
みんなとても喜びました・・・。
でも小箱壊して・・・しまって・・・。
すいません・・・・。」
又べえの声は、震えて段々小さくなった。
そして壊れた小箱を大老に見せた。
「本当にすいません・・・節句貰ったのに・・・。」
又べえは、半泣きになった。
「あの、わざとじゃないの、又べえは、中国風邪をばら蒔いて
いた悪い妖怪から親方を助けようとして、小箱落としたの
そしたら悪い妖怪が、壊したの!
又べえのおかげで、中国風邪のワクチンできて、中国風邪が
終息したの!マスク草マスクしない人に強制的にマスク
させたり、消毒草で感染者消毒したり、大活躍だったの!
だから、罰なんて当てないで!」
クロちゃんは、一生懸命又べえをかばった。
大老は、小箱を取ると、しばらく見て、
「又べえ、よく頑張ったな、この小箱がお前のした事を
教えてくれた。
正直お前には、何も期待していなかった、だが、
沢山の人を喜ばせて、沢山の人を救ったな、偉いぞ!
褒美にランクを上げてやる。」
大老は、又べえの頭を撫でた、するとピカッと光り!
又べえのランクが10上がった!
「小箱も直してやる、これからも精進しろ。」
大老が小箱を撫でると、小箱は光り、元通りに直った。
「ありがとう、神様・・・本当に・・・褒めてもらって
・・・ご褒美まで・・・。」
又べえは、泣き出してしまった。
「又べえ、良かったわね。」
クロちゃんが言うと、
「クロちゃん・・・ありがとう、クロちゃんのおかげだ。
・・・又べえは、一人ぼっちのつまんない妖怪だった・・・。
でもクロちゃんが、家に入れてくれて家族にしてくれた。
沢山美味しい物も食べさせてくれた。一緒に眠って、
遊んでくれて・・・助けてくれた・・・。
おクロちゃんのおかげで神様から賜り物貰って・・・
そしたら、家族の喜ぶように頑張って・・・そうやってたら
・・・嫁も貰えて・・
神様から褒められて・・・夢みたいだ・・・。
ありがとう・・・。」
又べえは、また涙がポロポロと、止まらなくなった。
「クロちゃん、何もしてないわ、
又べえが、頑張ったからよ、中国風邪も又べえのおかげで、
終息しそうよ、又べえは、凄いわ。」
それを聞いてまた、又べえは、泣き出した。
「クロちゃん、色々ありがとうな。
クロちゃんは、こんなに色々してくれるのに
一回だって恩にきせた事ないよな。」
「当たり前じゃない、家族だもん、色々貰った物は、
分けてあげる。
恩にきせるなんて、クズのする事ような事する訳ないわ。」
クロちゃんは、笑った。
「クロちゃん、又べえは、一生クロちゃんに憑いて行くぞ。」
「・・・クロちゃんの方が先に死ぬけど。」
「そうだった!どうしよう・・・。」
又べえが悲しそうに言った。
「クロちゃんは、みっちゃんと一緒に福の神修行をして
福の神になるから寿命は、延びるよ。」
みっちゃんがニコニコと言った。
「え!いつの間にかそんな話になっているの!?」
クロちゃんが驚いていると、
「じゃ、美代ちゃんじゃ寿命が足りないから、
私の方がいいですよね。」
小雪姫がにこやかに言った。
「ま、神様一献、どうぞ。」
小雪姫が大老にお酒を注いだ。
「クロちゃんの押しかけ女房です。」
みっちゃんが小雪姫を紹介した。
「それは、クロちゃんも目出度いのう。」
大老は、ご機嫌になって、ドンドン御地租を食べて
いった。
すると、大老は、ドンドン若返り美しい青年になった。
女性陣は、皆見とれてしまった。
桜色の桜色の着物が、似合う男の人なんてなかなかいない。
「まあ、目の保養ねえ、白皙の横顔がなんとも綺麗ね。」
おばあちゃんが、ため息をついた。
すると、六爺ちゃんが、
「神様、儂は、酒を色々持ってきました。
ブランデー、コニャック、ウイスキー、ワイン、ラム酒
ウォッカ、ビール、秘蔵の日本酒、お口に会うといいのですが。」
色々とお酒を大老に飲ませた、ほろ酔いになった大老は、
「クロちゃん、一献。」
クロちゃんにお酒を注いだ、クロちゃんは、それをクイクイと
飲んでしまった。
そして、ご機嫌に踊りだした。
打ち出の小槌を振り振り踊り出すと、大判小判がザクザク出てくる。
「こりゃ景気がいいな。」
大老は、更に機嫌が良くなった。
すると、おばあちゃんが、
「私も一刺し舞いましょうか。」
そう言って踊りだした。
「おばあちゃん、日本舞踊も名取だったわね。」
ママが言った。
なかなかの舞で、大老は、機嫌が更に良くなった。
「今は、ばばあになってますが、姫さんは若い頃は、三国一の
美女でしてな。
若い頃、神社で踊りを披露した時は、見とれましたなあ。」
六爺ちゃんが言うと、
「ばばあで悪かったわね!」
おばあちゃんが怒った。
「なかなか良かったぞ、ほら、コレを羽織って舞え。」
神様は、綺麗な桜柄の着物を羽織らせた。
それをおばあちゃんがは、二十歳ぐらいの
うりざね顔の目のパッチリとした美女になった。
「まあ、おばあちゃん、綺麗!」
みんながそう言うと、
「え!若返ってる!鏡はどこ!」
おばあちゃんは、鏡を探して隣の部屋に入って行った。
そして、その桜柄の着物に着替えて来ていて、
「一刺し舞いますわ。」
と舞い始めた。
「やっぱり、ばばあより、若い方がいいなあ。
姫さん60年前は、やっぱり綺麗じゃなあ。」
六爺ちゃんと八爺ちゃんは喜んだ。
若いと、おばあちゃんの動きは、更に滑らかになった。
踊り終わると、みんな拍手喝采した。
「なかなか良かったぞ、褒美にその着物をやる。
それを着た時だけは、若返る。」
大老が、言うと、
「ありがとうございます!最高です!」
おばあちゃんは、狂喜乱舞だ。
「又べえ、婚礼の祝いをやる、小箱を貸せ。」
又べえが小箱を出すと、大老は、種を一つ入れた。
「帰ったらそれを庭に植えろ。」
「あ、ありがとうございます!」
又べえと星華は、大喜びだ。
「パン屋と、菓子屋達には、最高の豆と、小麦、米を
やる。
みんな美味かった、又精進するように。」
「ありがとうございます、精進します!」
山田パン屋のおっちゃん、亀ちゃん、鶴ちゃんは狂喜乱舞だ。
「それから老人達、こっちに来い。」
大老は、八爺ちゃんと六爺ちゃんの肩をポンポンと叩いた。
すると、二人共肩こりがなくなった。
「凄い!肩こりも腰痛もなくなったぞ!」
「体が滅茶苦茶軽いぞ!」
二人共大喜びだ。
「一年、肩こりと腰痛は、なくなった。」
大老が言うと、
「神様、本当にありがとうございました。」
二人共お礼を言った。
「女達は、この桜の化粧水だ。」
女性達は、化粧水の瓶を受け取り大喜びだ。
「ありがとうございます、この化粧水すごくいいんです。
肌がすべすべで、日に焼けないし、モチモチ肌になって。
でも、丁度一年で中身があくなるんですね。」
ママが聞くと、
「一年たったら、又来い。」
大老は、笑った。
「あの、神様、チョコとセヒもコロッケ丸めるの手伝い
ました、何かください。」
チョコが言った。
「え~じゃあ僕は、買い物に行って、重い荷物を
持ったよ。」
カダ兄ちゃんが言った。
「初めましてクロちゃんのパパです、私は、ハンディカムでビデオ
撮影しました。写真も撮りました、ほら。」
パパは、大老に、ハンディカムの動画を見せた。
「成る程、よくできてる。」
大老は感心した。
・・・何家の家族はご褒美ねだっているんだろう。
クロちゃんは、ちょっと呆れた。
大老は、パパ、カダ兄ちゃん、セヒ、チョコの頭を撫でた。
「これで、必殺技が出るようになった、強い敵が出てきたら
皆心して戦うように。」
大老は、言った。
・・・また、強い敵が出て来るって事?
「留といいます、宮大工です、俺は、龍の戦車を作って、
みんなを運びました。」
すると、綺麗な桜色の輝く玉を大老は、留に渡した。
「それは、『桜玉』私の力を込めている、それで、
強力な戦車を作れ。」
「ありがとうございます!頑張ります!」
留は、狂喜乱舞だ。
「大黒のおっちゃん、神様気前よく、皆にご褒美あげてる
けど、気難しくないじゃない。」
クロちゃんが、言うと、
「クロちゃんは、知らないかもしれないが、あんな機嫌の
いい大老は、他では見た事がないな。」
と、驚いている。
「いいな、留。」
星明が羨ましがると、
「神様、星明は、俺達に色々教えてくれます、クロちゃん
の知恵袋で、いつも宿題を教えてやってます。」
留が言うと、
「星明こっちへ」
大老は、手招きした、そして星明の頭を撫でると、
「お前は、知恵者だが、戦闘脳能力が低いようだ。
戦闘能力を上げてやった。」
「ありがとうございます!頑張って、クロちゃん達を
守ります!」
星明は、喜んだ。
「他の者は、取っときの酒を土産にやるぞ。」
大老は、機嫌よく言った。
その時、侍従が入って来て、
「大老様、ガマ太郎とカニ丸が面会を申し出ておりますが、
どうしますか?」
「ここに通せ。」
大老が言うと、
ガマ太郎と、カニ丸が通させて来た。
「これは、大老様、ご機嫌うるわしゅうございます。」
ガマ吉が言うと、
「お前達、美々茸の類似品を美々茸と、たばかって売りつけ
たそうだな。」
「ええ!ご存じでしたか!申し訳ございません!
平仁平にご容赦下さい。
お詫びに、この子ガニを持ってまいりました。」
ガマ吉が、カニ丸の子供を差し出した。
「お前達、美々茸の類似品を売りつける、クロちゃん達の
美々茸の類似品を盗む!
罪を償うどころか、その小さな子に押し付けるのか?」
大老は、不機嫌そうに言った。
「罰に、お前達が食材になれ!」
大老は、叫んだ!
「ひぇええ!お許しを。」
ガマ吉とカニ丸が許しを請うた。
「まって、カニ丸を食べたら、その子が可哀そうよ。」
クロちゃんが止めると、
「でもクロちゃん、カニ美味しそうです!ガマはどうでしょう?」
チョコが能天気に言った。
「ガマ太郎!何でもかんでもやったからって、威張り腐って
言う事聞け!高利貸し!?
最悪!後で恩にきせるって、言ったの?言ってないわよね!
最低!もう二度とあげた事を恩にきせないの!
わかった!」
クロちゃんが言うと、
「では、ガマ太郎、人にあげた物、与えた物、貸した物
全てに恩をきせないように、借用書も全て破棄せよ。
誰かが訴え出た時は、食材にする。」
大老は、言った。
「カニ丸は、その子を背負って家まで帰るように。
その子が生きている重みを感じて、自分のした事を
反省するように。
クロちゃんに免じて、これで許してやる。」
大老は、言った。
「はは~。」
二人は、そう言ってオタオタしながら出て行った。
「折角の楽しい宴にわるかったな、クロちゃん。」
大老が言うと、
「ううん、神様ちゃんとわかっていたのね。」
クロちゃんが言うと、
「私の国のことだからな。
クロちゃん、打ち出の小槌を出してごらん。」
クロちゃんが打ち出の小槌を出すと、大老が軽く撫でた。
「これで、更に強い必殺技がでるぞ。」
「ありがとうございます・・・あの神様、又強い敵がくるの?」
クロちゃんが聞くと、
「もう来ているだろう、これからも来るだろうけど、
みんなと力を合わせて撃退するんだよ。
みんなが助けてくれるだろう。」
「クロちゃん、喧嘩は嫌いなんだけど。」
クロちゃんが言うと、
「でも、皆を守る為ならクロちゃんは、頑張るんだろう?」
大老はクロちゃんの頭を撫でた。
「うん、頑張る、みんなの為だもの。」
クロちゃんは、笑った。
「それから女達には、あの美味しい料理をここの料理人達に
教えてくれ。
業者の食材納品合戦にならないように、料理長に言っておこう。
もう、こんな事がないようにな。」
大老は、言った。それから大黒のおっちゃんの方を見て、
「これで、いいか。」
と言った。
「儂ごときの若造は、何も言う事は、ありませんよ。」
大黒のおっちゃんは、丁寧な言葉で言った。
「あ、神様、お礼にね、中国風邪を祓う舞をみんなで
舞うわ。」
そう言うと、クロちゃん、カダ兄ちゃん、チョコ、セヒ、たろべえが
皆で舞いを舞い。
クロちゃんは、桜のお酒を飲んで、楽しく桜の宴は、終わった。
「クロちゃん、来年も又おいで、待っているよ。」
大老は、言った。
「神様、また来年ね。」
クロちゃんは、言った。
クロちゃんは家に着くと、お土産の品々を広げて見てみた。
「沢山神様くれたのね、気前いわね。」
クロちゃんが言うと、
「くろちゃん、来週から又中国風邪を祓う舞を踊って
欲しいって依頼がきてるよ。」
カダ兄ちゃんが言った。
「そうね、まだ他の所は大変ね、行かなきゃね。
どこから?」
「アメリカ、インド、ブラジル、フランス、トルコ・・・。」
「無理よ、宿題を全然してなくて・・・。」
クロちゃんが言いにくそうに言うと、
「宿題してなくて、先生に怒られたのかい?」
「ううん、クロちゃんは、宿題より早く中国風邪を祓う舞を
踊って、中国風邪をはらってね、て言われたわ。」
「じゃ、龍の戦車で行こうね。」
「日帰りは、無理よ!」
クロちゃんが、言うと、
「じゃ、泊で海外旅行ですね!」
チョコが嬉しそうに言った。
「でもパスポートないわよ。」
クロちゃんが言うと、
「お前馬鹿ですか、飛行機に乗らなきゃ要らないんですよ。
どこでチェックするんですか?」
チョコが言った。
「どこの国に行く~♪」
皆楽しそうである。
「でも政府が外国に行っちゃ駄目って・・・・。」
・・・行っても無駄だろうなと、あきらめ気味のクロちゃんだった。




