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この身は消えゆこうとも

肌寒くなり、秋の気配を感じる今日この頃。

美咲コケシは、佐藤古本屋で店番をしていた。

「今日は、美咲さん。」

クロちゃんと、みっちゃんが入って来た。

「あ、クロちゃんいらっしゃい。」

「何書いてるの?美咲さん。」

何やら、美咲コケシが、ノートに色々書いているのを

見て、クロちゃんは、言った。

「あ、コレは、もうすぐ私は、成仏するから、お世話に

なった人に色々書き残そうかと思って。

コレは、星明さん、お掃除した時、色々かたずけたけど、

収納した場所を詳しく書いているの。

あと、お気に入りのドライカレーのレシピ。

誰か作ってくれる人が出来た時の為にね。

コレは、これは鶴ちゃん、今までのお菓子のカロリーを

計算してみたの。

参考にしてくれると、いいな。」

美咲コケシは、何冊かノートを見せた。

「それから、これは、天津甕星様に。

沢山のお菓子のレシピと、料理のレシピ。

この間、人間に戻れて、すごく楽しかったの。

そのお礼にね、自分で渡しに行ければいいけど、

もうすぐ成仏するし、簡単に行けない所だから、

親方が水神様のお庭のお手入れに行く時にでも

持って行って貰おうかと、思って。」

美咲は、お菓子ノートと、お料理ノートである。

「美咲さんって、マメね。」

丁寧な綺麗な字で、絵まで描いている、美咲

コケシに関心した。

「じゃ、クロちゃん達、クロちゃん神社に行くわ。」

そう言って、二人は、クロちゃん神社に向かった。


クロちゃん神社では、星明が次のイベントの企画を

神主さんと相談していた。

「今日は!」

「あ、クロちゃん、みっちゃん。」

「また、イベントの企画?」

「うん、10月は、敬老の日かな無難に、

何しよう?」

「いい企画あるよ。」

みっちゃんが、言うと、

「へえ~何?」

「星明と、美咲さんの結婚式!」

「・・・それは、ちょっと、どうかな。」

星明は、どもった。

「何で?」

「この間のは、冗談だよ。

それに、それ盛り上がる?」

星明が、言うと。

「盛り上がると!世にも珍しい妖怪の結婚式。」

みっちゃんは、主張した!

「・・・花嫁がどんな怖い妖怪かと、皆が思っていて、

顔が見えたら、コケシだったら、笑うだろう?

この間と違うよ、美咲ちゃんをピエロにできないよ。」

星明は、言った。

「・・・そうだね。」

みっちゃんは、シュンとなった。


イベントに、これといった企画が決まらないまま

お開きとなった。

みっちゃんと、クロちゃんは、家に向かっていた。

「みっちゃん、何で星明と、美咲さんの結婚式

イベントしたの?」

クロちゃんが聞くと、

「星明は、いい奴だからね、あんなに女の子

好きになったの見た事ないんだよ。」

「でも、美咲さん成仏しちゃう人だよ。」

「わかってるよ、だから何か楽しい思い出作ってあげたい

んだよ。」

みっちゃんは、言った。

「そうだね、結婚式じゃなくてもいいんじゃない?

何か考えようよ。」


・・・・とはいえ何ならいいんだろう?

「クロちゃん、カレーこぼれるわよ。」

ママが言った。

「あ、大変!」

クロちゃんは、スプーンを持ち直した。

横には、ツナサラダと、鰻のかば焼きが並んでいる。

「カレーの時も鰻食べるなんて、味覚疑いますね。」

チョコが言った。

「クロちゃん、悩み事があるなら、聞いてやるぞ。」

セヒが言った。

「うん、兄ちゃん、ご飯の後聞いて。」

「いいぞ。」

クロちゃんは、急いでご飯を食べ始めた。


夕飯の後、クロちゃんは、セヒに星明の事を相談した。

「みっちゃんは、そう言うだけど、結婚式の

真似事でもしてあげたいって・・・どうかな。」

「なあ、クロちゃん、みっちゃん、物事には順序がある。

いきなり結婚式ってのも、楽しいデートでもいいんじゃ

ないか?

みんなで、楽しいピクニックでもいいかもしれないぞ。」

セヒが言うと、

「そうね、みんなでピクニック、いいかもしれないわ!

・・・美咲さん、天津甕星にお礼に、お料理や、お菓子の

レシピ帳を書いてたから、天津甕星の所へ

みんなで、行くのはどう?」

「・・・また、あそこへ?クロちゃん、ぶっとんでるよな。」

セヒは、ちょっと驚いた。

「そうだね、クロちゃんに、わざわざ作物持って来てくれた

くらいだし、今度は、歓待してくれるんじゃないかな。」

みっちゃんは、言った。

「じゃ、美咲さんと、星明に聞いてみよう。」


次の日佐藤古本屋で、美咲と、星明に天津甕星へ

行く事を聞いた。

「え、いいの?良かった、このノート渡せるわ。」

美咲は嬉しそうに、ノートを見た。

「俺も行ってもいいの?」

「うん、翌週は、クロちゃん神社でイベントするんで

しょう?

次の日曜に行こう。」

クロちゃんは、言った。

「天津甕星には、水神様経由で行くこと伝えたから

大丈夫だよ。」

みっちゃんが、言った。

「そこは、綺麗な所なのかい?」

星明が聞くと、

「・・・あんまり、貧しい国だから。」

クロちゃんが言いにくそうに言った。

「じゃ、美味しい食べ物があるといいね。」

「食べ物は、美味しくないわ、だから、美咲さん

ノートにレシピを書いているの。」

クロちゃんは、言いにくそうに言った。

「じゃ、楽しい所なんだろうね。」

「・・・楽しい所じゃなくて、美咲さんがこの間の

お礼に、ノートを届けたいって言ってたら、

行ったらどうかと、思って。」

クロちゃんは、言いにくそうに言った。

「そうか、それは、絶対行かないといけないね、

じゃ、ついて行ってあげるよ。」

星明は、言った。

「あ、でも水神様の所へも寄るから、あそこは、

綺麗で、食べ物もおいしくって、みんなで宴会に

なるから、楽しいよ!まさしく竜宮城だよ。」

みっちゃんは、言った。

「そりゃ楽しみだね。」

「じゃ、次の日曜日に、クロちゃんン家に来てね、

親方が、軽トラで乗せてってくれるわ。」

クロちゃんが、言うと、

「え、軽トラで、あれ揺れるだろう?」

「え、沢山乗れるわよ。」

「美咲ちゃんに、軽トラ可哀そうだよ。」

星明が言うと、

「私気にしないわ、この間も軽トラで行ったもの。」

美咲コケシは笑った。

「俺、ジープ手配するから、乗せて行ってやるよ。」

「あ、星明ジープ乗れるんだ、凄いね。」

クロちゃんは、感心した。

次の日曜に、みんなで行く事になった。


日曜日、星明は、ピカピカのジープに、美咲コケシを

乗せてやってきた。

「凄い!ジープどうしたの?」

クロちゃんが聞くと、

「買ったんだよ。」

「買った!いくらしたの?」

「1400万くらいしたよ。」

「せんよんひゃくまん!」

クロちゃんは、絶句した、タダならぬ気合の入れようだ。

・・・もうすぐいなくなるのに、

そう思うと、切なくなった。

「帰りは、そのジープで、美咲さんとその辺

ドライブすると、いいよ。」

みっちゃんは、笑った。

「その辺ドライブするなら、アウディーを持って

いるから、それの方が乗り心地いいよ。」

「星明、何台車持ってるの?いつ買ったの?」

みっちゃんが追及っすると、

「先週、ジープ買った時ついでに。」

クロちゃんと、みっちゃんは、絶句して、益々切なく

なってきた。


クロちゃん、みっちゃん、美咲コケシ、星明、親方、又べえは、

ジープに乗って、水神池へ向かった。

進んで行くと、ぼう~と光って!大きな滝!

大きな池が見えた、池がさ~っと割れて中から道が

できた。

「綺麗な所だな。」

星明が見入っていると、

沢山の魚や、カニや、貝の妖怪達が出迎えた。

そして、水神様が現れた。

「クロちゃん、よく来たな、さ、御馳走を用意しておるぞ。」

水神様は、ご機嫌でクロちゃん達を迎えた。

「今日は、水神様。

今日は、天津甕星に、美咲さんがお礼に行くので、

その後に寄るわね。」

クロちゃんは、言った。

「残念じゃのう、帰りは必ず寄ってくれ。

まっとるぞ!」

水神様は、残念そうに言った。



クロちゃん達は、水神様の不思議な綺麗なお庭を進んでいた。

「こんな綺麗な庭をドライブできるなんて、素敵だね。」

「本当に綺麗ね。」

美咲コケシを助手席に乗せて、星明は言った。

周りの事は、気になってないように楽しそうだ。

それを見ると、クロちゃんの胸は、キュンと痛んだ。

松の柵の所に来ると、

「こっから先は、天津甕星の領地だ。」

親方は、言った。

松の柵を超えると、綺麗な田園風景が広がった。

木々も前より緑が強く、果実がたわわに実っている。

花も咲いて、小鳥がざえずっていた。

周りの妖怪達も楽し気に、作物を収穫している。

前とはくらべものにならないくらい、美しい風景だった。

「随分綺麗になったのね!すごいわ!」

クロちゃんが驚いていると、

「クロちゃんが、豊穣の踊りを踊ったからだよ。」

「あの踊り?」

「大黒様からの力は、踊って、豊かにしたり、貧乏に

したりする力みたいだね。」

みっちゃんは、言った。

しばらくすると、天津甕星の城に着いた。

沢山の妖怪達と、天津甕星が出迎えた。

「やあ、クロちゃん、いらっしゃい。

クロちゃんのおかげで、今年は、かつてない程の豊作

だったよ。」

天津甕星は、ご機嫌に迎えてくれた。

「今日は、随分緑が多くなって、綺麗な所になっていて、

ビックリしたわ。」

クロちゃんは、言った。

「そうだろう、中に御馳走を用意しているよ。」

そう言って、クロちゃん達は、城の中に案内された。


ひと際立派な部屋に入ると、大きなテーブルに、

沢山の御馳走が用意してあった。

「わあ!おいしそう!あ、お土産があったの。

この間は、沢山、穀物、野菜、果物ありがとう。

これ、おばちゃんと、ママからお土産よ。

お料理と、お菓子、そのレシピよ。

美咲さんが一緒に作ったから、ここの料理人さんに、

伝授するって。」

クロちゃんは、そう言って、親方の水神様の信玄袋

から、色々取り出した。

「これは、鶴屋のスイートポテト大福、亀屋のカステラ、

山田パン屋のパン、シャルルのエクレア。」

天津甕星は、目を丸くして、

「沢山ありがとう、どれも美味しそうだね。」

そう言って、色々食べ始めた。

「どれもこれも、皆美味しい。」

「あの、天津甕星様、この間のご褒美本当に、

ありがとうございました。

私は、もうすぐ成仏するんですが、お料理と、

お菓子のレシピノートを書きました。

これをここの料理人さんに渡して下さい。」

美咲コケシは、料理ノートを渡した。

「褒美のお返しとは、初めてだ。

・・・何か、褒美をやろう・・・・。」

天津甕星は、しばし考えて、

「じゃ、余興に、楽しいゲームをしよう。」

と、悪戯っぽく笑った。


前よりも、随分美味しくなったお菓子をクロちゃんは、

食べた。

でも、料理は、いまひとつだ。

天津甕星は、目を丸くして、おばあちゃん達の作った

料理や、お菓子を食べた。

「どれもみんな美味しいな。

美食家の大黒天が、クロちゃんに憑いている訳が、

良くわかるな。」

そう言って、料理人達を呼んで、食べさせていた。

味を覚えさせる為だ。


食事の後、クロちゃん達は、庭に出た。

前より緑が青々と美しく、花は彩を増していた。

「兵士の育成用のコースが、3つある。

3組に分かれて、3つの道を進んで、一番早く

出口に着いた組には、ご褒美をあげよう。

弱いモンスターや、行きにくい所があるが

気を付けるように。」

天津甕星は、言った。

「この箱の中に三色の玉が入っている、

同じ色の玉同士が、組になる、さあ、玉を取れ。」

天津甕星は、箱を差し出した。

クロちゃん達は、箱に手を入れ、玉を取った。

クロちゃんと、又べえが同じ組に、親方と、みっちゃんが

同じ組に、美咲コケシと、星明が同じ組になった。

「この組み合わせだと、力に差がありすぎるよ。

親方と、みっちゃんじゃ強すぎるよ。」

みっちゃんが言った。

「大丈夫、レベルに合わせて、モンスターは強くなるし、

道も解り難くなる。」

天津甕星は、悪戯っぽく笑った。


クロちゃん達は、3組のパーティーに分かれて、

違う道に、進んだ。


みっちゃんと親方の道は、険しく、解りずらい。

そして、でっかい熊のモンスターが襲って来た。

「あ!もう!また来た!」

みっちゃんは、大槌で熊のモンスターを連打した!

親方も大ばさみで応戦した!が、

「もう、20匹目じゃ、このクラスがこんなに

続けざまにでると、流石にしんどいわい。」

親方にも疲労がみられた。

「クロちゃん、大丈夫かな。」

みっちゃんは、心配になった。


その頃、クロちゃんも、とっても困った状況だった。

道々に、美味しそうな果物がたわわに実っている

のである。

「このマンゴー美味しいわ!ああ!さっき柿を

食べるんじゃなかった。」

先には、リンゴ、ブドウ、バナナ、パイナップル、

サクランボ、木苺、ブルーベリーパパイヤと、

美味しそうな果実が実った、木々が並んでいた。

モンスターも出てこない、食い倒れコースだ。

・・・ゴールにつけるかしら、

見ないフリして行きたいけど、とても美味しそう

で、甘酸っぱい匂いの誘惑に勝てないのである。

でも、お腹いっぱいで、早く歩けないわ。

又べえもパクパク食べている。

すると、いきなり小さなモンスターが背後からやって来た!

又べえがバコン!と殴ると、

「いた~い!」

リスに、似た妖怪の可愛い女の子が泣いていた。

「ごめんな、いきなり出てくるから。」

又べえは、頭を撫でた。

「一目、憧れの又べえ様を見たかったの。」

「そうか、こんな顔でよければ、いくらでも見ろ。」

又べえが言うと、

「間抜けな顔ですのね・・・。」

「悪かったな!」

「ねえ、何で又べえに憧れていたの?」

クロちゃんは、不思議に思って聞いた。

「だって、国一番の剣豪の星剛様を打倒したって

聞きましたわ。」

「たしかに、星剛には勝ったけど、頭がくっいて、

乗っ取ったの。」

リスに、似た妖怪の可愛い女の子は、目を丸くした。

「お強いのですね。」

「まあな。」

又べえが、気取ってみせた。

立ち上がろうとすると、

「痛い!」

足をくじいているようだった。

「仕方がないな。」

又べえは、リスに、似た妖怪の可愛い女の子を背負って

やった。

「お優しいのですね、私は、星華(セイカ)といいます。

お嫁さんにして下さい。」

クロちゃんと、又べえは、ビックリした!


その頃、美咲コケシと、星明は、道を急いでいた。

綺麗な花々、二人で行くのはデートみたいで

嬉しいなと、星明は、ご機嫌で歩いていた。

たまに出て来る、弱いモンスターを

二人で、やっけたりと、ゆるゆるコースである。

「結構早く着きそうね。」

美咲コケシは、嬉しそうに言った。

「ここ綺麗だよね、クロちゃんが言っていた

から期待してなかったけど。」

等と言っている内に出口が見えた。

出口の外には、天津甕星が待っていた。

「やあ、一番のりだね。」

そう言って出迎えた。

その隣の出口から、みっちゃんと、親方がクタクタに

なって出てきた。

「やっと、出口だ、巨大モンスター100匹以上倒したよ。」

二人は、その場に座り込んだ。

その隣の出口から、クロちゃんと、又べえが

お腹を大きくして出て来た。

「もう、食べれないわ。」

クロちゃんは、ペタンと座った。

又べえは、リスに似た女の子の妖怪を背負っていた。

「その子は、どうしたの?」

みっちゃんが聞くと、

「又べえ様のお嫁さん。」

リスに似た女の子の妖怪が言った。

一同ビックリした!

「又べえ、お前、嫁もらうの!?」

みっちゃんが聞くと、

「私は、星華、星栗鼠の一族の長の娘です。

父の決めた婚約者が、弱くて、嫌なのです。

我が一族の誇り、この国一番の豪傑、星剛様

よりお強い、又べえ様と結婚するのです!」

「ええ!この子と、あのゴツイ星剛は、同じ一族なの!?」

みんな驚いた。

「又べえは、まだ嫁に貰うとは言ってないぞ。」

又べえが困っていると、

「親方は、どう思う?」

クロちゃんが聞くと、

「又べえの唯一の嫁を貰うチャンスかもしれんぞ。

見れば、なかなか可愛い子だし、

この先嫁を貰いたくなっても、嫁の来てはないかも

しれんし。

タンポポが嫁が欲しくなるかどうかは、

わからんが。」

親方は、言った。

「そうか、クロちゃんが死んだ後は、又べえも

寂しいかもしれないし、お嫁さん貰うのも

いいかもしれない。

よし、親御さんに挨拶に行こう。」

みっちゃんが、言った。

「おい、ご褒美は、欲しくないのか?」

天津甕星が、ちょっと不服そうに言った。

「あ、あまりの衝撃に忘れていたわ。」

クロちゃんは、言った。

「美咲コケシと、星明の組が優勝だ。

これがご褒美、願い玉だ、それぞれ一つずつ

願うと、いい。」

天津甕星が、言うと、

「じゃ、美咲ちゃんが、次に生まれ変わったら、

長生きできますように。」

星明は、言った。

「お前の望みでなくていいのか?」

「俺は、それなりに幸せだから、今度こそ

美咲ちゃんが幸せな一生を終えたらいいなと

思うよ。」

星明は、言った。

「星明さん、・・・じゃ私は、星明さんに、

お嫁さんか、恋人ができますように。」

美咲コケシは、祈った。

「お前達・・・そんなにお互い好きなのか?」

天津甕星が、冷やかした。

美咲コケシと、星明は、

「えっ!」

「そんなんじゃ。」

と、お互い照れた。

天津甕星は、可愛い連中だと、思った。

願い玉は、虹色光った。

「願いは、叶った。」

天津甕星は、言った。

美咲コケシと、星明は、お互い見て、照れ笑いをした。

「じゃ、星華ちゃんの親御さんに、挨拶に行くよ。」

みっちゃんが言うと、

「星華を嫁に欲しいと、言ったら、きっと、星華の親父に、

勝負を挑まれるぞ。」

天津甕星が、言った。

「そいつ強いか?」

又べえが聞くと、

「父、元星(ゲンセイ)は、達人ですわ。」

花星が言った。

「行くのやめよう。」

又べえは、めんどくさそうに言った。

「そんな~。」

星華は、落胆した。

「元星に勝ったら、ご褒美やるぞ。」

天津甕星が、言った。

「ご褒美!どんなご褒美だ?」

「物凄い必殺技が使えるようになるぞ。」

「やる!」

又べえは、叫んだ。

「面白がっているよね。」

みっちゃんが言った。

「・・・又べえ、お嫁さん貰いに行くのよ、

解っているのかしら。」

クロちゃんが、心配そうに言った。


クロちゃん達は、星明のジープに乗って、星栗鼠一族

の土地にやってきた。

木で出来た、そまつな家がポツリ、ポツリとあり、

一番大きな家に星華は、案内した。

「ここが、私の家ですの。」

すると、又べえが、大きな声で、

「たのもう~!」

と叫んだ。

「又べえ、道場破りじゃなの、お嫁さん貰いに

来たのよ。」

クロちゃんが、言うと、

「誰だ!」

元星が出て来た。

「お父様。」

「何だ、この連中は?」

「私のお婿さん、又べえ様です。」

星華は、言った。

「婿だあ~!お前婚約者がいるだろう!」

「私は、星剛様を打倒した、お強い又べえ様と結婚

したいのです!」

「はあ?その間抜け面のやつが、星剛をたおしたと

いうのか!?」

「星剛の師匠なら、間抜け面のヤツにやられたって、

聞いてない?」

みっちゃんが笑った。

「たしかに、最初弱くて、油断したら、いきなり強く

なって、やられたと聞いたが、

お前が又べえ!・・・こんなヤツに星剛が負けたのか!?」

元星は、又べえの間抜けな顔を見て言った。

「そうだ!又べえは、アイツより強い!」

又べえが、偉そうに言うと、

「よし!儂に勝ったら、娘をくれてやる!こっちにこい!」

そう言って、元星は、クロちゃん達を道場に案内した。

木の壁の広い道場だった。

元星は、構えると、

「さ!どっからでもかかってこい!」

「いくぞ~!」

又べえの懇親の一撃!

バ~ン!

全然きいていない・・・・。

又べえが、ガンガン攻撃するが、全くきいてなかった。

「こんなものか?じゃこちらから行くぞ!」

元星は、又べえに連続で、鉄拳をおみまいした!

それから、鋭い蹴りが又べえを襲った!

「弱い!弱すぎる!!」

更に、鋭い蹴りが、又べえの腹をえぐった!

「グエッ!!」

もう、又べえは、フラフラだった。

「又べえ!大丈夫!?もう、降参する?」

クロちゃんは、言った。

「又べえ!頑張って!星華ちゃんが信じてるの!

絶対勝ってあげて!」

美咲コケシは、叫んだ!

見ると、星華が、一生懸命お祈りしていた。

・・・でも、無理だよね。

「みっちゃん、止めよう・・・。」

言いかけた時、

元星の蹴りで、又べえの体が、砕けた!

「又べえ!」

皆が叫ぶと、又べえの頭は、元星の方へ飛んで行った。

元星の頭に憑りつこうと、すると、

元星の鉄拳が、又べえの頭を砕いた!

「又べえ!」

クロちゃんは、目の前が真っ暗になった。

・・・又べえ死んだ・・・。

・・・怒りがこみ上げる!

「何で殺す必要があるの!」

打ち出の小槌を出して、元星に襲い掛かった!

バコ~ン!バコ~ン!バコ~ン!

「クロちゃ~ん!いい攻撃だ。」

又べえの声がした、元星の頭にタンポポがくっ付いてる。

タンポポが又べえの声で話している。

「え!又べえなの?!」

クロちゃんが、驚いていると、

「あれが、又べえの本体じゃ、元々タンポポじゃからな。

本当にしぶとい奴じゃ。」

親方は、言った。

「おい!元星、降参か?もう乗っ取って、又べえの勝ちだ!」

又べえが言った。

「うう・・こんな負け方・・・。参った。」

元星は、言った。

「よし、又べえの勝ちだ!」

そう言うと、又べえタンポポは、元星の頭から、クロちゃんの

方へ飛んだ。

クロちゃんは、タンポポを受け止めた。

「ビックリしたわ、又べえ。」

「勝ったぞ、クロちゃん、ご褒美貰える。」

又べえは、嬉しそうに、言った。

「わかった、娘はやろう。で、結納の品は、

持ってきているのか?」

元星が、言うと、

「又べえは、そうんなの持ってないぞ、持ってるのは、

小箱と・・・そうだ、ペンダントがあった。

それやる、クロちゃん、又べえの服のポケットから

出して、アイツにやってくれ。」

クロちゃんは、又べえの服のポケットから、ペンダント

を取り出し、渡した。

「これは、見事な、黒ダイヤに、金だ!しかも何か、

力がこもっておる!」

元星は、驚いた!

「天津甕星から貰った、ご褒美だ。凄いだろう!」

「・・・星華、良かったな、物凄い結納の品だ。」

そう言って、星華の首にかけてやった。

「わあ!綺麗!大事にしますわ!足が治り次第、

お嫁入しますわ。」

星華は、嬉しそうに、言った。

「・・・嫁入りは、しばらくいいから、花嫁修業

してくれ。

クロちゃん、天津甕星の城へ帰ろう、ご褒美貰わないと。」

又べえは、言った。

「え、じゃそう言う事で。」

クロちゃん達は、天津甕星へ戻る事になった。

星華は、名残惜しそうに、いつまでも手を振っていた。


道々クロちゃんは、聞いた。

「ねえ、又べえ、あのペンダントあげてよかったの?

星華ちゃん、お嫁さんに貰う事、どう思ってるの?」

「あれは、持ってたら、うっかり使って死にそうだから、

いいんだ。

あの子は、まだ、子供だし、夢見がちな感じだ。

又べえは、間抜け面だから、モテた事ないしな。

次は、忘れてるんじゃないかな。」

星華ちゃんは、本気だと、思うけど。

又べえは、婚約しちゃった事わかっているのかしら?

クロちゃんは、不安に思った。

「何言っているの!星華ちゃんは、本気よ!又べえ、

星華ちゃんを責任もって幸せにするのよ!」

美咲コケシは、又べえ、を怒った。

又べえは、ひきつった。


天津甕星の城では、天津甕星が出迎えた。

「やっぱり、勝ったか、又べえ。

しかし、お前の本体は、可愛いな。」

天津甕星がタンポポを見て、笑うと、

「そうだ、ご褒美くれ。」

又べえは、ご褒美を催促した。

天津甕星は、又べえタンポポを撫でた。

「さ、必殺技をさずけたぞ。」

「やった!早く体復活させて、使ってみるぞ。」

嬉しそうに、又べえは、言った。

「がんばれ!強烈な技だから、レベル100になったら、

使えるぞ。」

天津甕星は、意地悪く笑った。

「レベル100!?」

又べえタンポポは、ガッカリした。

「又べえ、レベルいくつなの?」

「レベル20くらいかな・・・。」

又べえタンポポは、ショゲた。

「頑張って、レベル100になるんだな。」

天津甕星は、意地悪く笑った。

「やっぱり、お前意地悪だ。」

又べえは、言った。

「又べえ、それより、沢山食べて。」

美咲コケシが、料理人達と、沢山の料理と、

お菓子を運んできた。

「この料理と、お菓子は、料理人さん達に伝授

しました。

香辛料とかは、後で又べえに植えてもらいますから。」

天津甕星は、美咲コケシに、願い玉を渡して、

「褒美だ、今度は、来世の幸せを願え。」

「ありがとうございます、じゃ来世も、またみんなに

会えるといいな。」

願い玉は、光った。

「願いは、かなった。」

天津甕星が笑った。

又べえタンポポは、食べ物の上に乗って、ガンガン根から

吸い寄せて、頭ができ、体ができ、手足ができた。

「結構シュールねえ。」

クロちゃんは、呟いた。


そうして、クロちゃんには、さらなる試練が待ち構えて

いた!水神様のところでの大宴会だ。

もうお腹一杯なのに、山海珍味がズラ~と並んでいるのである。

どれも、これも、みな美味しい・・・でも入らない。

「ほれ、クロちゃん、踊れ!」

酒を飲まされ、踊りまくった!大判小判がザックザクで、

金銀財宝出しまくりの景気のいい踊りである。

そして、いつの間にか、大黒のおっちゃんが、一緒に

踊っていた。

ますます、金銀財宝出しまくりで、宴会は、盛り上がった。


家に着く頃は、10時になって、眠い目をこすりながら、

「ただいま~。」

「クロちゃん、心配したわよ。」

ママ達が出迎えた。

「水神様からのお土産、海の幸がてんこ盛りよ。」

沢山の魚の山を見て、

「これをどうしたらいいの!?」

ママは、驚いた!

「奥さん、大丈夫!今、魚屋さんと、私の経営している

レストランに連絡したから、引き取ってくれるわ。」

おばあちゃんが、ご機嫌に言った。

「じゃ、俺達これで失礼します。」

「クロちゃん、楽しかったわ、ありがとうね。」

星明と、美咲コケシが挨拶した。

二人は、車の中で語りあった。

「ねえ、このまま星明さんの家に言っていい?」

美咲コケシが言った。

「え!」

星明は、ドキッとした。

「あ、うん。」

と、返事をした。


二人は、佐藤古本屋の自宅の縁側で、お酒を

飲んでいた。

スッキリと、辛口のお酒は、水神様からの

お土産で、肴は、ニジマスと、ヒラメの刺身だ。

「月が綺麗ね。」

美咲コケシが、そう言うと、

「夏目漱石が英語教師をしていたとき、生徒が " I love you "

の一文を「我君を愛す」と訳したのを聞いてね、

「日本人はそんなことを言わない。『月が綺麗ですね』

とでもしておきなさい」と言ったんだよね。」

星明は、言って・・・えっ・・・。

美咲コケシを見た。

「星明さん、色々親切にしてくれてありがとう。

とっても楽しいコケシライフだったの。

早死にしたけど、面白いおまけの人生だったわ。

私は、消えちゃうけど、幸せになってね。

大好きよ。」

そう言って、美咲コケシは、ほほ笑んで・・・・

動かなくなった。

後には、小さなコケシが残されていた。

「・・・美咲ちゃん、成仏したんだ・・・。」

星明は、涙が止まらなかった。

悲しくて、呆けていると、

「星明、勝手に上がらせてもらったわよ。」

お政がやってきた。

小さなコケシを抱きしめて泣いている星明を見て、

「美咲ちゃん成仏しちゃったんだ・・・。

ほら、これカレーピザ、あんた好きでしょ。

今朝ね、美咲ちゃんとお料理してる時に、

今夜、私成仏するから、消えた頃、星明さんを

慰めてあげってて、頼まれたんだよ。」

そう言って、星明の肩を抱いた。

「よかったね、最後は、星明さんといるって

言ってたよ。

良かったね、思いは通じてたんだよ。」

お政は、言った。

・・・ま、誠さんには、最後のコケシの姿なんて

覚えて欲しくなかったからかもしれないけど。

「あ、ヒック、美咲ちゃん。」

星明は、一晩泣き明かした。


次の日、クロちゃんは学校から帰ると、ママにプレゼント

の包を渡された。

「美咲さんは、昨晩成仏したのよ。

それ、美咲さんからクロちゃんに渡してくださいって

頼まれたの。」

ママが言うと、クロちゃんは、涙がポロポロでてきた。

「何で、昨晩言ってくれなかったの?

ちゃんとお別れしたかった・・・

いや、『クロちゃん、楽しかったわ、ありがとうね。』

て、言ってた。」

「ほら、クロちゃんと、星明さんが号泣するからって、

言ってたの。

昨日は、クロちゃん、とっても楽しそうだったから

言えないと、思ったのよ。」

ママは、クロちゃんの頭を撫でた。

クロちゃんは、リボンを外して、箱を開けた。

中には、茶色の革の2つ折り財布。

大好きなスヌーピーが型押ししてある。

小銭入れの中に、願い玉が2つと、ムーンストーンの

ペンダント。

それと、手紙が添えてあった。


『クロちゃんへ

これを読んでいる頃は、私は、成仏していると思います。

泣かないでね、コケシライフは、とっても楽しかったの。

万福商店街で、バイトしながら沢山美味しい物食べて、

妖怪さん達と遊んだり、クロちゃん神社でのイベントしたり、

クロちゃんと、神様の国にも行けて、

とっもラッキーで楽しかったです。

もっと恩返し、したかったのですが、残念ながら

期限がきてしましたした。

願い玉のおかげで、来世の幸せは、約束されているので、

転生するのが楽しみです。


心ばかりのプレゼントですが、長く使えるように

財布にしました。

大好きなスヌーピーです!大人になっても使えますよ。

願い玉は、使い終わったら、10個ためたら、また

願いを聞いてくれるそうなので、クロちゃんに

あげます。

何かのくじのハズレ券みたいですが、天津甕星様は、

また、クロちゃんに来て欲しいみたいです。

ムーンストーンのペンダントは、この間

生きてた頃の姿に戻れた時のペンダントです。

クロちゃんにあげます。

大きくなって、美代ちゃんにでもあげて下さい。

そこ頃まで、美代ちゃんを好きだったらですが、

その頃は、クロちゃんは、素敵なナイスガイになって

るでしょうね。

見れないのは、残念です。

クロちゃんは、自分の事は過小評価しがちですが、

知力、体力、時の運、金運もあるうえに、大黒様の

ご加護もあって、妖怪が守ってくれるんですよ。

それに、とっても優しくて、勇気もあります。

どんな女の子も好きになってくれますよ、

自信を持って大丈夫です。


生まれ変わって、どこかで会えるのを楽しみにして

います。

だから、泣かないでね。

それから、本当にありがとう、感謝しかありません。

この身は、消えゆこうとも、貴方を見守ってます。

クロちゃんの幸せを心から願ってます。


美咲 』


手紙を見ると、またクロちゃんは、ポロポロ

泣き出した。

気が付くと、みっちゃんが、涙をハンカチで拭いてくれた。

「ありがとう。」

「うん、涙止まったら、星明に会いに行こう。」

「うん。」


それから、二人は、佐藤古本屋へ行った。

店のカウンターで、星明がぼんやりコケシを眺めていた。

「今日は、それ美咲さん?」

「うん、昨晩無事成仏したよ。

今朝、カウンターにノートが置いてあって、色々

美咲ちゃんが書いてくれていたんだ。

俺の好物のレシピや、色々かたずけてくれた物の収納場所とか、

今まで、色々ありがとうって、最後の感謝の言葉とか。」

星明は、ノートを見せた。

「美咲さん、マメな人だったからね。」

「うん、最後の最後まで、ありがたいよ。」

星明がしんみりと、言うと、家の奥からお政が出てきた。

「あら、クロちゃん来てたの?食べるタルトタタン。

星明の好物で、美咲ちゃんのレシピノートどおりに

作ったんだよ。」

クロちゃん達は、居間でタルトタタンを食べた。

紅茶を飲みながら、

「美味しいかい?」

「うん、美味い。」

「よかったね。」

「うん、ありがとう。」

なんとなく二人共いい感じである。

「お政さん、いつもは着物なのに、洋服きてるのね、

そのワンピース・・・。」

クロちゃんが言いかけると、

「そう、美咲ちゃんが人間に戻った時来てた服だよ。

クリーニングしたから、貰ってくれって、ほら、

この白蝶貝の花のブローチと一緒にくれ名たんだよ。

星明の世話をしばらく頼むってね。」

「洋服も似合うよね。ね、星明。」

みっちゃんは、笑った。

「うん、いいね、新鮮だね。」

星明が言うと、

「そうかい、これからは、洋服も来てみようかね。

洋服代どうやって稼ごうかね。」

お政は、言った。

「じゃ、家の店番のバイトする?美咲ちゃんが

いなくなったんで、代わり探さないとと、思って

いたんだ。」

「いいよ!ご飯も作ってやるよ。」

お政は答えた。

さすが、美咲コケシ、出来る女である、最後までキッカリ

と仕事をして逝ったなと、思うクロちゃんだった。




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