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うなぎ祭り

いくぶん残暑も和らぎ、しのぎ良い日が多くなったこの頃

又べえは、十五夜草を作っていた。

まん丸お月様と、うさぎが跳ねている、可愛い花だ。

「わあ、可愛いね。

親方、小箱と、ハサミ返してくれてよかったわね。」

クロちゃんが喜んで言った。

「ああ、親方いい奴だよな。」

嬉しそうに、又べえは、言った。

「親方と、明日から『クロちゃん神社』の花壇に植えるんだ。

こっちは、万福商店街のお店に飾ってもらう分の鉢植えを

するんだ。」

「凄いね。」

「可愛いから、美代ちゃんに持って行くか?」

「え!いいの?」

「美代ちゃん喜ぶといいな。」

クロちゃんは、十五夜草の鉢植えを持って、『うな八』に

行った。


お店の裏の『うな八』の自宅に回ると、

「美代~ちゃん~!」

クロちゃんが呼ぶと、

「おや、クロちゃんいらっしゃい。

美代は、遊びに行っているよ。」

美代ちゃんのひいじっちゃんが出て来た。

「いないのね、じゃ、コレあげて。

又べえが作った十五夜草なの。」

「これは、また、可愛いなあ。

美代が喜ぶよ、ありがとう。

あ、クロちゃん、今、鰻を焼いてあげるから

待ってな。」

ひいじっちゃんは、厨房に入って、うなぎを

焼いて来た。

香ばしい鰻の香りが立ち込めた。

「ほら、おあがり、こっちは、お土産だ。」

「わあ、頂きます!美味しい!」

クロちゃんは、大喜びで食べた。

すると、『うな八』に客が押し寄せ、大忙しとなった。

「美味しいかい、良かったな。」

ひいじっちゃんが目を細めると、

「おい!クロちゃんいるか!」

玄関先から親方の声がした。


クロちゃんが、ひいじっちゃんと、玄関にいくと、

親方が、大きなかめを持っていた。

「水神様の庭の手入れをしに行ったら、水神様がクロちゃんに

お土産だ。

鰻の稚魚だ。」

「ちっちゃいね。」

「これは、鰻の養殖をしてくれている業者に

育ててくれるように頼んでやるよ。」

ひいじちゃんは、言った。

「楽しみね。」


それから、3日後の午後クロちゃんが、おやつの

牛乳寒天を食べていた時、美代ちゃんのひいじっちゃんから

電話が入った。

「クロちゃん、あの鰻な大変な事になってるそうじゃ。」

「え?」


鰻の養殖をしてくれている業者さんの所へ行くと、

鰻がへびくらいの大きさになっていた。

「わあ、大きくなっている!

焼いて食べたらおいしいわね。」

クロちゃんは、ゴクンと、つばを飲んだ。

「この勢いで、増えると、この生簀から溢れるな。

クロちゃん、『うな八』に卸してくれないかい?」

「いいわよ。・・・それでもこの勢いで育つと

大変ね。」

クロちゃんが言うと、

「じゃ、『クロちゃん神社』で、うなぎ祭りをしょうよ。

神社で、捌いて焼いて売るんだよ。

『うな八』の職人総動員してね。

捌くのは、一之介に頼もう。」

みっちゃんが、言った。


一之介は、万福商店街の日本料理店『一桜(イチヨウ)』に住んでいる妖怪だ。

人間だった時は、武士で、妖怪になって、料理人になった。

気のいい性格で、『一桜』で厨房で働いている、料理指南をしていた。

西瓜のフルーツカービングで、美しい牡丹を作っていた、

先に作った、胡瓜の龍の飾り切りも見事で、角とひげは人参

で作ってあり、今にも動きそうだった。

「いや~相変わらずいい腕だ。」

『一桜』の御隠居は、出来栄えに驚いた。

「次の日曜は、『クロちゃん神社』で、『うなぎ祭り』がある

ので、手伝う事になった。

店の手伝いは、できない、いいな。」

「え!一之介さんは、クロちゃんの知り合いなのか?」

「万福商店街の妖怪は、みんなクロちゃんの友達だ。」

「妖怪を率いてるって、いうのは、本当だったんだな。

じゃ、うちに食べに来てくれるよう言ってくれないか?」

「いいが、何でだ?」

御隠居は、真顔で

「うちは、まだ一度もクロちゃんが食べに来てくれた事が

ないんだ。

クロちゃんが、食べに来ない店は、不味い。

クロちゃん御用達の店じゃないと、格が落ちる。」

一之介は、目が点になった。

「うちは、本格的な日本料理店で、子供が気楽に

入れる店じゃないからじゃないか?」

「ランチもしてるだろう。」

「昼ごはんと、夕飯は、家で食べてるみたいだぞ。」

「じゃ、一家でご招待するから、頼んでくれ。

頼む。」

御隠居は、墨書きの『クロちゃん一家様ご招待券』を

一之介に渡した。


『クロちゃん神社』で、『うなぎ祭り』の打ち合わせを

していた。

宣伝部長は、星明である、SNSや、ホームページや、

ポスターをお店中に貼ってと、大忙しだ。

「お店はいいの?」

「美咲ちゃんに頼んでいるよ。」

「嫁探しはいいの?」

「・・・毎日、女の子紹介されるよ、今度合コンを

するって言ってた。」

星明は、複雑そうに言った。

「星明も複雑ね。」

「うん・・・。」

星明は、寂しそうに言った。

その時、一之介がやって来た。

「クロちゃん、鰻運ぶのに、誰か借りれないか?」

「え、トラックで運んでもらえば。」

「それが・・・もう大蛇になってるんだ。」

「えええ!大丈夫なの!大暴れしたら!?」

クロちゃんが驚いていると、

「金縛りにして、運べばいいよ。

夜中に、力のある飛べる妖怪を集めて運ぶよ。」

みっちゃんが言った。

「それに、ほら水神様のウロコを拾ってるから、

無理そうなら、また、又べえを龍にするよ。」

みっちゃんは、テキパキと言った。

みっちゃん、凄い!さすがこの辺を取り仕切ってるだけあるな。

・・・本当に、力の弱い妖怪って、強い妖怪の言うがまま

なんだ・・・又べえが、大妖怪になりたい気持ちが

少しわかるな・・・。


日曜は、良く晴れたいい日になった。

クロちゃん一家も、揃って『うなぎ祭り』に出かけた。

今朝、都合よく、たっちゃんが目覚めたので、

たっちゃんが、鰻を運ぶ事になった。


『クロちゃん神社』で、鰻を待っていると、

空の上から龍が現れた、たっちゃんである。

頭の上には、クロちゃん、みっちゃん、一之介が乗っていた。

手には、大蛇のような鰻を握っている。

「わあ~!龍だ!!」

人々は、歓声を送った。

「ね、一之介、鰻しめて、血抜きしたのね。」

「暴れたら、危ないし、鰻の血は毒だから、

危ないからね。」

「みっちゃんが、妖力で、クネクネ動かすからいいよ。」

「え!動かすの!」

「その方が盛り上がるよ!」

「・・・この大鰻、大味じゃないの?」

クロちゃんが心配そうに聞くと、

「流石、水神様が召し上がるだけあって、大きくても

身がしまって美味しいんだよ。」

「小さいと、水神様も食いでがないんだよ。」

みっちゃんが、言った。

「クロちゃん、降りるぞ~。」

たっちゃんが、言った。


龍が舞い降りると、みんな大歓声だ!

「本物の龍だ!」

「何て、デカイ鰻!大蛇だ!」

妖怪達が集まって、鰻をまっすぐにした。

大うなぎは、クネクネ動いた。

「きゃ~!」

「わあ~!」

皆大喜びだ。

そして、一之介が日本刀を取り出し、すぱーっと、

三枚おろしにして、更に、食べやすい大きさに切って行った。

それをうな八の職人が手際よく串に刺し、蒸して、

こんがり焼き上げた。

辺り一面醤油ダレの香ばしい香りで一杯になった。

クロちゃんも鰻にかぶりついた。

「美味しい!身が引き締まって、外はカリッ!

中はふわふわジューシー!最高!」

クロちゃん大絶賛である!

「これで、一切れ500円だもん、嬉しいよね。」

みっちゃんも喜んでかぶりついた。

「あ、おにぎりもあるの!パパは、お酒もあっちに

あるわ。」

美咲コケシが言った。


その時変な集団がやってきた。

「『うなぎ祭り』反対!鰻が可哀そうだ!」

「動物を食べるのは、やめよう!」

と口々に叫んでいる。


「何、あれ?」

クロちゃんは、目を丸くした。

「あれは、ヴィーガンだよ。

肉や魚は可愛そうだから、食べなって連中だ。

ベジタリアンと違って、卵・乳製品・はちみつも

食べないって連中だ。」

星明が言った。

「頭が変な人達ね。」

クロちゃんは、よくわかんない人達だと思った。

「そうなんだ、鰹だしで作ったと、わかると

ギャーギャー文句言うだぜ、美味いのに。」

一之介が不服そうに言った。

「ファッションで、肉や魚を喰わないなんて、

馬鹿じゃないかと思うぜ!

人間は、雑食だ、バランスよく食べないと、

体に良くないんだぜ。」

星明は、言った。

「外人みたいに、パクパク肉を食べるのはどうかと

思うが、そこそこは、食べないとな。

大体、動物殺すのが可哀そう?

植物は可愛そうじゃないのか?

環境に悪いなら、減らす方向に行くならわからるが、

全く食べないってのは無理だ。」

一之介が言った。

「自分が食べないのは勝手だけど、他人に強制

しないで欲しいわ!

鰻が不味くなるじゃない。」

クロちゃんは、怒った。


「こんな野蛮な祭りはやめろ!」

「クロちゃんは、神の使いじゃないのか!?」

「本当は、妖怪なんじゃないのか!?」

「肉を食べるなんて!家畜がどんなに劣悪な環境で

育てられているか、知っているのか!」

と、訳の解らない事を口々に叫んでいる。


「・・・段々おかしな事を口走っているわ。」

クロちゃんは、目を丸くした。

「肉を売るのが、悪いって言って、フランスじゃ

肉屋を襲撃したらしいぞ。

そういう頭がおかしい連中だからな。」

星明がため息をついた。

「目立つように『うなぎ祭り』に来てるんだよ。

こういう活動をしてるっていう宣伝だよ。」

パパが言った。


そして、連中は、鰻を売ってる人達の邪魔をし始めた。

「やめて下さい!お客さんが迷惑します!」

美咲コケシが言った。

「お祭りの邪魔すると、喰うぞ!オラ!」

イライラした妖怪が怖い顔で脅した!

「ああ!なんて危ない奴らだ!」

と口々で叫んだ!

・・・自分達の方がよっぽど危ないわ。

ヴィーガンと、妖怪、祭り関係者が争い始めた。


「もう!頭にきた!何で鰻食べちゃ駄目なの!」

クロちゃんは、叫んだ!

「あ、クロちゃん、鰻が可哀そうだろう?」

「じゃ、お米や、小麦や、お豆、野菜は、可愛そうじゃ

ないの?」

「動物は、植物より、人間に近いだろう?

可哀そうじゃないか、どんなに家畜が劣悪な環境で

育っているか、知っているかい?

狭いところでギュウギュウ詰めで、ロクに運動も

出来ずに、薬で無理やり大きくされたりするんだよ。

クロちゃん、猫や犬は、可愛そうで食べないだろう?

同じだよ、可愛そうだろう?

それに、牛や豚を育てる餌に植物を消費する、

牛や豚を食べなかったら、沢山の人が飢えから

救われるんだよ。」

ヴィーガンが、宣教師のように酔いしれて説明した。

「で?劣悪な環境で家畜が可哀そうなら、畜産農家に

文句言って!

猫や犬を食べないのは、不味いからよ!

カンガルーや、キリンは美味しいから食べるって

聞いたわ!それだけでしょう!

犬や猫が美味しいなら、

家畜よ!豚は犬より賢いって言われてくらい

賢いけど、美味しいから家畜なの!

確かに、動物が食べないなら植物は、減らないけど、

それで、飢える人がなくなるなんて事は、ないわ!

もっと高く売れる、野菜、果物、珈琲、カカオ豆

とかを植えて、飢えてる人達の口には入らないわ!

なんでなら儲からないからよ!

それに、『うなぎ祭り』には、関係ないでしょう!

この鰻は、水神様から貰ったの!特に餌をあげなくても

美味しく、大きく育ったの!

お米や豆、野菜、沢山の植物の命を犠牲にしているくせに、

1匹の鰻の命で、これだけの人のお腹を満たせるのよ!

文句言われる筋合いはないわ!」

クロちゃんは、叫んだ!

「動物は、可愛そうだろう?環境破壊にもあるんだよ、

私たちが牛肉を1kg食べるごとに、車で100km走るのと

同じ量の温室効果ガスが排出されるだよ、

それに、動物の排泄物は・・・」

ヴィーガンは、説明し出した。

「だから、鰻に関係ないでしょう!

文句があるなら、養鶏、畜産業者に言って!」

クロちゃんの機嫌がますます悪くなった。


「あいつ立派な事言ってるな。」

セヒが感心した。

「あいつは、鰻を美味しく食べるのを邪魔されるのが

一番嫌なんです。それだけですよ。

もうすぐ、爆発します、アイツ温厚で、優しいですが、

堪忍袋の緒が切れると、手がつけられません。」

チョコが言った。

「鰻は、焼きたての美味しいのを食べるのが

一番美味しいの!

邪魔をするヤツは、お仕置きよ!」

クロちゃんは、打ち出の小槌を取り出した!

「お仕置きの時間だ!!~♪」

妖怪達は、嬉しそうに叫んだ。

「醤油ダレ~香ばし、美味しい鰻~熱いうちに~

召し上がれ~♪

トンカツ、東坡肉~豚玉~焼きそば~熱いうちに~

召し上がれ~♪

ビフテキ~ハンバーグ~焼肉~牛丼~熱いうちに~

召し上がれ~♪

フライドチキン~♪焼き鳥~♪とり天~♪親子丼~

熱いうちに~召し上がれ~♪

美味しいお肉を熱いうちに~召し上がれ~♪」

クロちゃんは、歌って、踊り出した。

すると、妖怪達も嬉しそうに踊り出した。

「醤油ダレ~香ばし、美味しい鰻~熱いうちに~

召し上がれ~♪

トンカツ、東坡肉~豚玉~焼きそば~熱いうちに~

召し上がれ~♪

ビフテキ~ハンバーグ~焼肉~牛丼~熱いうちに~

召し上がれ~♪

フライドチキン~♪焼き鳥~♪とり天~♪親子丼~

熱いうちに~召し上がれ~♪

美味しいお肉を熱いうちに~召し上がれ~♪」

すると、ヴィーガン達は、鰻を売っている所に行き

鰻を買ってかぶりついた。

「美味しい!」

近くの食堂や、レストランのに駆け込み、物凄い勢いで、

トンカツ、東坡肉、豚玉、焼きそば、ビフテキ、ハンバーグ

、焼肉、牛丼、フライドチキン、焼き鳥、とり天、親子丼

を頼んで食べ始めた。

「もう、一生ヴィーガンなんて馬鹿な事をしようなんて

思わなくなったわ!」

クロちゃんが、叫ぶと、周りから、拍手喝采だった。

妖怪達は、歌と踊りが気に入ったのか、

「醤油ダレ~香ばし、美味しい鰻~熱いうちに~

召し上がれ~♪

トンカツ、東坡肉~豚玉~焼きそば~熱いうちに~

召し上がれ~♪

ビフテキ~ハンバーグ~焼肉~牛丼~熱いうちに~

召し上がれ~♪

フライドチキン~♪焼き鳥~♪とり天~♪親子丼~

熱いうちに~召し上がれ~♪

美味しいお肉を熱いうちに~召し上がれ~♪」

と、歌い踊りだし、中には、大鰻の頭を担いで踊りだす

のもいた。

たっちゃんも、ちっちゃくなって鰻を食べて、ご機嫌に

なって、大きくなって、空中で舞い出した。

やたら、お腹が空いて、

万福商店街の食事処は、大儲けした。


『うなぎ祭り』が終わると、

「クロちゃん、お疲れ様、打ち上げがあるんだけど。」

星明が、言うと、

「残念だけど、今日は、家族で『一桜』さんにご招待

されているから、夕飯は、そこで食べるの。」

「そうかい、残念だね。」

あ、美咲ちゃんは、打ち上げくるだろう?」

星明が聞くと、

「残念だけど、約束があるの。

でも、今日は、知り合いの女の子を沢山誘ったから

頑張ってね!」

「えええ!!」

星明は、ガッカリした。

向こうで、誠が手を振っていた。

美咲コケシは、嬉しそうに、駆け寄った。

「・・・美咲さん、コケシに憑りついてる事内緒

にしてるんだよね・・・。」

クロちゃんが聞くと、

「内緒にしているらしいけど、亡くなった彼女に

似たコケシちゃんに会いに、来てるらしいんだ。

生前の美咲ちゃんの写真見せて貰ったけど、

似てないよね、美咲ちゃん可愛かった。」

星明は言うと、

「きっと、誠さん美咲さんの中身が好きだったんだよ。

出来る女で、優しくで、ちょっと抜けてて可愛いよね。」

と、みっちゃんが笑った。

「うん、クロちゃんも大好き。

星明も諦めて、今日の打ち上げ頑張ってね、

うちのお政さんや、小梅ちゃん、蛍ちゃんも行くから、

みんなお料理上手で、いい人だよ。」

クロちゃんが、言うと、

「小梅ちゃんと、蛍ちゃんは、カダ兄ちゃんの服を

どっちが畳むか、取り合ってますがね。」

チョコがいった。

「パンツも取り合ってるよな、毎日キャーキャー

言ってるよな。」

セヒが言った。

「カダ兄ちゃんは、二人のアイドルだもの。」

クロちゃんが言うと、

「それなら、クロちゃんは、この辺一体の

アイドルだよ。」

ガダ兄ちゃんが笑った。

打ち上げ、みんな楽しいといいなと、思った。


『一桜』では、御隠居が待ち構えていて、

クロちゃんは、座敷の上座に座らされ、

歓待を受けた。

「クロちゃん、いらっしゃい、一之介は、

打ち上げでいませんが、特別な料理を作って

いきました。

どうぞ召し上げってください。」

前菜と、別に中央の皿には、胡瓜で作った龍が

蠢いていた。

カブは、薔薇の花のように切られていた。

「すげ!動いてる。」

「でも、味は胡瓜ですね、酢の物ですね。」

先付けの山芋の寒天寄せも美味しかった。

あられ鮑やわらか煮茶巾しんじょも

優しい味だ。

刺身の盛り合わせも、新鮮な魚が美味しかった。

巻きえびの冷やし餡掛け、那須のグラタン、

キャビアや、チーズが添えてあり、

和え物は、鰻と干瓢の土佐酢合え、かきの蓮蒸

太刀魚難波揚げ、あまご唐揚げ、小切り茄子、

おこぜの葛たたき。

ご飯、みそ汁、香の物、最後は、メロンシャーベット

で、クロちゃんは、お腹一杯になった。


「美味しい」を連発していたので、帰る頃には、

『一桜』でズラリと、人の列が出来ていた。


「あの店もクロちゃんマークが貰えて良かったわね。」

おばあちゃんが言った。

「そのクロちゃんマークって、何?」

クロちゃんが聞くと、

「クロちゃん御用達の店には、そういう認定書が

貰えるの。」

おばあちゃんは言った。

「・・・その認定書は、どこが発行しているの?」

「クロちゃん神社よ。」

「クロちゃん神社の経営は、おばあちゃんよね。」

「そうよ、最近たいした味じゃないのに、クロちゃん

御用達の店を名乗る店が出てきたの。

クロちゃんの舌が、認めた美味しいお店だけが、

クロちゃん御用達の店なの。

発行は、無料。

クロちゃんが美味しいと、言った店だけが名乗れるの。」

おばあちゃんは、言った。

・・・なんか、最近食べ物屋さんが目の色変えて

クロちゃんに、おいで、おいでするのは、そういう事

なのね。


帰って、テレビを見ていると、ニュースで、『うなぎ祭り』

の事をやっていた。

クロちゃんが、踊ってヴィーガンをやめさせ、

たっちゃんが、舞い踊り、妖怪が踊っていた。


・・・あれ?よく見ると、クロちゃんが、ヴィーガンと

言い合っている時も、踊っている時も、

大黒のおっちゃんがいた。

手に鰻と、おそらく酒の入った紙コップ、実にご機嫌だ。

・・・見ていたら、助けて・・・そう言えば、

豚が賢いことや、カンガルーや、キリンが美味しい事は、

ふと、頭に浮かんだような・・・。

きっと、操られてる。


・・・・こうして見ると、我ながら、なんて、ひょうきん

なのかしら、見てて笑いしかないわ。

・・・・いつの間にか自分は、こんなキャラになったの

かしら・・・。

クロちゃんが落ち込んでいると、

「酷いよね、クロちゃん!」

みっちゃんが叫んだ!

「みっちゃんも踊っていたのに!何で映ってないの!

テレビ局の人に言って!」

みっちゃんが、また文句言い始めた。

・・・それか・・。

「おっきい妖怪の方が、テレビに映えるもの、

みっちゃんは、タダの子供に見えたんじゃない?」

クロちゃんが言うと、

「ちゃんと、座敷童って、説明して。」

「もう、放映終わっているよ。」

「ええ!」

みっちゃんは、ガッカリした。

・・・映りたくも、目立ちたくもないのに、目立つ

のが嫌なので、変わって欲しいなと

思うクロちゃんだった。

横では、いつの間にか、大黒のおっちゃんが、

パパの横で酒を飲んでいた。

















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