美代ちゃん
クロちゃん一家が、櫻子おばあちゃんの家に引っ越して、一週間がたった。
一通のラインが、ママのスマホに入った。
(奥さん悪いけど、漬物出したいので、石出してくれにないかしら(^人^))
最後、スタンプも送ってある。
「おばあちゃんからだわ、やれやれ、ちょっと行ってくるね。
おばあちゃんは、あの年でスマホも、パソコンも使えるからすごいわね。」
ふう~とため息をついて、ママはおばあちゃんのお家へ向かった。
ママは、漬物石を出してだの、宅配便が重いので、台所に運んでだの細々とおばあ
ちゃんに使われている。
それに、料理が苦手でレンジでレトルトをチンが多かったママの様子を見た、
おばあちゃんが呆れて、朝、昼、晩と、ママに料理の猛特訓をする事になったのだ。
花嫁修業をおろそかにしていた、ツケが今まわってきたのである。
でも、おばあちゃんは果物や、お菓子を1人で食べれないからと気前よく分けてくれ
るし、お料理も、和、洋、中、和洋お菓子まで得意なおばあちゃんのおかげで、
クロちゃん達は、毎日美味しいご飯やおやつが食べられてラッキーなのだ。
ま、思わぬ姑の苦労をする羽目になったママは気の毒ではあるが、家賃、ガス、水
道、電気をタダなのだから、多少の勤労奉仕は仕方がないのだろう。
妖怪のいる生活にも段々慣れてきた、慣れるとなかなか気のいい連中で、お家やお庭
の掃除してくれたり、お庭の草木の世話をしてくれたり、一緒に遊んでくれる。
この家が荒れていないのは、妖怪が管理してくれていたおかげなのだ。
でも、見えるのは、セヒ兄ちゃん、チョコ兄ちゃん、クラリス、クロちゃんとか、
子供だけなのだけど。
クラリスは、ゴロンと転がってみっちゃんとジャレている。
二人共とっても仲良しだ。
しばらくすると、ママが帰って来た。両手には沢山のいちごの箱をかかえていた。
「わあ~い!いちごだあ~!」
「おばあちゃんに貰ったのよ、いちごタルトと、ジャムを作りにくるって」
ママは、ゲッソリしながら言った。
「わ~い!おやつは、いちごタルトね!」
楽しみ~♪クロちゃんとみっちゃんは、おやつが出来るまで外に遊びに出かける事に
した。行き先は、万福商店街だ。
食べ物屋さんの他に、昔ながらの駄菓子や、おもちゃ屋や、洋服やさん、雑貨屋さん、
野菜やさん、魚屋さん、肉屋さん、等々色々なお店があってなかなか楽しい。
しばらく行くと、鰻屋の「うな八」さんの角の路地の上の方に、巨大な鰻の蒲焼が
美味しそうに泳いでいるのが見えた。
「みっちゃん、アレ何?」
「鰻の蒲焼の神様よ!クロちゃん、あそこ行ってみよう。」
「へ~鰻の蒲焼の神様・・・だったのか・・・」
二人は、路地の方に歩き出した。路地に入ると、そこは、「うな八」さんの玄関前で、
7つくらいの女の子が遊んでいて、上には大きな鰻の蒲焼が女の子の上をヒラヒラと泳
いでいた。
おいちそう。ゴックンとクロちゃんは、生唾を飲んだ。
「アンタ誰?」
女の子が訊ねた?おかっぱ頭の細い目が印象的な子だ。
「あ、クロちゃんっていうの、こっちはね、みっちゃん。」
女の子は怪訝な顔をして、クロちゃんの横を見た。
「何言っているの誰もいないじゃない。」
あ・この子は、みっちゃんが見えないんだ・・・じゃ鰻の蒲焼も見えてないのかな。
みっちゃんの方を見ると、みっちゃんはうなずいた。
女の子の頭の上を泳いでいる鰻の蒲焼を見土産ると、本当にてりてりで美味しそうだ
った。
「あたしは、美代って言うの!変な子・・・でも綺麗な銀髪、緑の目ね。外人さん?」
「ううん、クロちゃんは、パパはアメリカ人だけど、ママは日本人だから日本人。」
「ハーフか、アンタいくつ?」
「クロちゃん、6つよ」
「アタシは、7つ!アタシの方がお姉ちゃんね!遊ぼう!ケンケンパー知っている?」
女の子は、ニコッと笑った。
美代ちゃんと、楽しく遊び始めた、ケンケンパーは、面白かった。
美代ちゃんは、楽しくて、優しい子で、ポケットからキャンディーを1つ出して、
クロちゃんにくれた。
そのキャンディーは、いつもより甘~く口の中で蕩けた。
美代ちゃん笑うと、とっても可愛いなあ・・・。クロちゃんは、ちょっと胸が暖かく
なった。
二人は、遊びながら色々話し始めた。
「うな八」は、美代ちゃんのおじいちゃんの店で、よそにお嫁に行ったママは、
10時から5時までパートで店を手伝いに来ているので、幼稚園から帰ると、
美代ちゃんは、ここでママのお仕事が終わるまで遊んでいるという事だっ
た。
「ふ~ん鰻のかば焼きって、おいしいの?」
「美味しいよ!アンタ食べた事ないの?」
「うん」
と思わず返事をした。
(確か前に食べた時、泥臭くてクロちゃんはあんまり好きじゃなかったのよね、
美代ちゃんにそんな事言えないな。)
と、心の中で思った。
「食べさせてあげる!今、お客さんがいない時間だから。おいで!」
と、言うと、美代ちゃんは、クロちゃんの手を引いて、店の裏口にまわった。
「おや、美代、友達かい?」
クロちゃんを見て、ひいじいちゃんが言った。
「うん、ひいじっちゃん、この子、鰻の蒲焼食べた事ないんだって、頭とか、しっ
ぽとかでいいから食べさせてあげて」
「そうかい、初めて食べるのかい。じゃ、ひいじっちゃんが焼いてやるぞ。ちょっ
と待ってるんじゃよ」
そう言って、ひいじっちゃんは、店の厨房に入っていった。
「いい匂いね。楽しみね」
クロちゃんと、みっちゃんは笑った。
「あら、可愛い金太郎さんみたいね」
美代ちゃんのママが笑いかけた。
「金太郎じゃない!」
クロちゃんはぷーとふくれてしまった。
「ごめんなさい、美代ちゃんのママがあやまった。
「金太郎ならまだいいわよ!アタシなんか、「コケシ」って言われるもん!」
美代ちゃんが、そう言うと、周りは爆笑した。
向こうの方で、美代ちゃんのじいちゃんが、
「あんな小さい子にタダで、鰻を食べさせるのか!」と言ったが、
ひいじいちゃんは、
「人生最初に食べる鰻は、最高に美味しいのを食べんとな。せこい事を言うな。」
と、言った。
そして、ひいじいちゃんは、焼きたての鰻丼をクロちゃんの前に置いた。
クロちゃんは、ぱくっと一口食べた。
ふっくら、ジューシーで、程良く脂がのった鰻は、甘辛いタレと合わせってすごく
美味しかった!
「おいしい!!こんな おいしいのは、初めて食べた!おいしい!おいしい!」
おじいちゃんは、嬉しそうにそうにクロちゃんを眺めた。
すると、次々に店の中にお客さんが入って来た。そして、店の外にもお客さんが
ズラ~と並んだ。
「そういえば、お好み焼き屋のタエちゃんとこに、お客さんが押し寄せて大盛況
だった時、お店に銀髪の男の子が来たって言ってたな、クロちゃんは、福の神な
のかい?」
ひいじいちゃんは、訊ねた。
「ううん、違う」
クロちゃんは、美味そうに鰻の蒲焼をほおばっている。
「そうかい、でも、来てくれてありがとう。」
ひいじいちゃんは、笑ってクロちゃんの頭を撫でた。
クロちゃんは、ニコッと笑った。
みっちゃんと、クロちゃんは鰻丼をぺろりと食べ上げてしまって、
「ごちそうさま、そろそろクロちゃん帰るね、さようなら、美代ちゃんバイバイ
!」
と、クロちゃんは言って店を出た。
「またおいで」とクロちゃんを見送って、ひいじいちゃんは、クロちゃんの座って
いた席に残された、二組の割り箸を不思議そうに眺めていた。
「おいしかったね」
クロちゃんと、みっちゃんは、ご機嫌で家に帰った。
家に入ると、香ばしい甘い匂いが漂っていた、ダイニングキッチンでは、
ママと、おばあちゃん、セヒ兄ちゃん、チョコ兄ちゃん、クラリスが、いちごタ
ルトを食べていた。
「兄ちゃん、おかえり」
「クロちゃん、どこいってたんだ?」
セピが訊ねた。
「万福商店街よ!お友達ができたの、美代ちゃんっていう可愛い子」
クロちゃんは、テレテレしながら言った。
「ガールフレンドが、できたんですね!クロちゃんも隅に置けないですね、このこ
の~♪」
チョコがひやかした。
クロちゃんは、照れながら、いちごタルトを一口食べた・・・おいしい!・・・
でも、お腹がいっぱいで入らない・・・。
「クロちゃん、どうしたの?大好きないちごタルトあまり食べないのね」
ママが不思議そうに訊ねた。
「あのね、美代ちゃんは、『うな八』さんのトコの子で、鰻を食べさせてもらった
の・・・でお腹がいっぱい」
小さな声でクロちゃんは、言った。
「え!そうなの?じゃ後でお礼に行かないとね」
ママはそう言って、おばあちゃんに色々聞き始めた。
「『うな八』は、よく知っているわ、あそこのご隠居は、幼馴染よ。」
「そうなんですか、何を持って行ったらいいですかね。」
「明日、ケーキでも焼いて持ってたら、私も一緒に行くわよ。」
「いいんですか、是非おねがいします。」
明日のおやつは、いちごケーキのようだ~♪
「クロちゃん、食べたら晩御飯 入らないですよ、食べてあげます!」
食が進まないクロちゃんのイチゴタルをチョコは、バクッと食べてしまった。
「あ~!」
「チョコひで~!いやしんぼ!」
セヒが、チョコをボカッと殴った。
チョコは、「イテテ・・・」と頭を撫でた。
クロちゃんは、笑った。
次の日、小学校から帰った兄ちゃん達は、『うな八』さんへ行った。
「鰻ね、世界一おいちいのよ!美代ちゃんすご~く可愛いのよ!」
クロちゃんが、自慢げに言っていったので、気になって行ってみる事にしたのだ。
「うな八」の裏の自宅の前で、クロちゃんと、美代ちゃんが遊んでいた。
美代ちゃんの頭上には、大きな鰻の蒲焼がヒラヒラと飛んでいた。
なんかシュールだな~と、二人は、思った。
「お~い!クロちゃん!」
兄ちゃん達が呼んだ。
「あ、兄ちゃん!」
クロちゃんが気づいた。
「美代ちゃんよ、美代ちゃん、銀髪がセピ兄ちゃん、金髪がチョコ兄ちゃん」
クロちゃんが紹介した。
「こんにちは、アタシ美代よ」
美代ちゃんがニコと笑った。兄ちゃん達は、沈黙した。
目が線!コケシ!いや、ニポポ人形!可愛い!?え?クロちゃんの好み変
と思った。
「え、目が細!コケシみたいな子ですね!」
チョコが、言った!美代ちゃんは、ぷ~と膨れた!
「そんな事ないわ!可愛いわ!」
クロちゃんは、困って言った。
それを見たセヒは、困ったように、
「え、いや可愛いと思うよ、うん」
そう言うと、クロちゃんの顔が明るくなって、
「そうよね、可愛いわよね~」
美代ちゃんは、嬉しそうな顔をして
「ありがと」と言った。
セヒは、上をみながら、
「俺は、それより上のでっかい鰻の蒲焼が気になる」
「美代には、見えないけど・・・」
横で、みっちゃんが、セヒに「あれ鰻の蒲焼きの神様よ」と説明した。
「アレ、鰻の蒲焼の神様だって」とセピがつぶやいた。
「そうなの、何してくれるの?」
美代ちゃんが聞くと、
「一生鰻の蒲焼が食える!」
と、セヒが答えた。
「そんなの嬉しくない!今でも、尻尾とか、お店に出せない部分毎日頭が御飯に出るんだもん」
美代ちゃんが、不機嫌そうに言った。
「あとな、日本一の鰻職人になる!」
と、セピが言うと、
「嬉しくない!アタシは、キャビンアテンダントになるの!」
美代ちゃんは、言った。
「キャビンアテンダントは、線目じゃ、なれないんですよ!美人じゃないとダメなん
です!壮大な野望ですね!」
チョコが、言うと美代ちゃんが恨めしそうな目をした。
クロちゃんはオロオロして、「そんな事ない」と言うとしたら、
「やめろよ!この失言大魔王!」
ボカッとセヒは、チョコをなぐった。
「イテテ、チョコは、正直なだけです!それより、鰻って、美味しいんですか?」
チョコが言った。
「美味しいよ、あ、アンタ達食べにきたの?いいわよ食べさせてあげる」
美代ちゃんは、そう言って、みんなを連れて家の中に入った。
あんな失礼な事を言うチョコ兄ちゃんにも鰻ごちそうしてくれるなんて、美代ち
ゃん優しいとクロちゃんは、目を細めた。
「ひいじっちゃん、クロちゃんのお兄ちゃん、セピちゃん、チョコちゃんよ。
鰻食べたいって」
「おやおや、可愛い子達だね、今美味しいのを焼いてあげるよ!」
そう言って、ひいじいちゃんは、みんなをお店に入れて、椅子に座らせた。
「まあ、クロちゃんのお兄ちゃん!可愛い!お人形さんみたいね!」
すると、お店の人が口々に言った。
いいな、兄ちゃん達可愛くて・・・クロちゃんは、ちょっと羨ましく思った。
しばらくすると、こんがりと、甘辛い、いい匂いがして、鰻が焼きあがった。
そして、照り照りの鰻丼がクロちゃん達の前に並んだ。
「すげ~うまそう!」「わ~!美味しそうです!」
チョコとセヒは叫んだ!
「頂きます!」
一口パクッと!食べると!
「うま~♪なんか、去年家で食べたのは、こんなにうまくなかったな。」
セヒが言うと、
「あの鰻は、ドロ臭かったからですね、これはすごく美味しいです!」
チョコも大絶賛だ!
「その鰻はきっとスーパーで売っている中国産じゃろ、うちは、国産じゃ
からな、だからうまいんじゃよ!」
ひいじいちゃんが自慢げにいった。
「そうなの!世界一おいしいわ!」
クロちゃんがご機嫌でそう言った。その横で、みっちゃんも笑って頷いた。
すると、いきなりガラッと戸が開いて、手に包丁を持った男が入ってきて、
美代ちゃんを
捕まえて、叫んだ!
「おい!このガキの命が惜しけりゃ騒ぐな!」
「嫌~」
泣き叫ぶ美代ちゃん!
「美代~!」
「美代ちゃん!」
美代ちゃんのママや、じっちゃん達が叫んだ!店の中は、騒然となった!
美代ちゃんどうしょう・・・すると、大黒様が、いきなり姿を現した!
「あれ?どっから?」
そして、大黒様はクロちゃんの肩をポン!と叩いた、すると、クロちゃんはダ~ッと、強盗
の所に走って行った!
「クロちゃん!ダメ!」「危ないよ、戻れクロちゃん!」
みんなが慌てて叫んだ!
「なんだ、このガキ!」
「やい!この悪党!櫻子おばあちゃんの家に押し入って、薙刀で追っぱら
われて、ここに逃げ込んだ挙句!美代ちゃんを人質に取るなんて!何て
悪党よ!このクロちゃんが許しゃしないわ!」
と、クロちゃんがキッと睨んで啖呵をきった!そして、クロちゃんの前に
大黒様がスックと立ってクロちゃんと同じポーズをしていた!
みっちゃんも、その横に立っていた!
「クロちゃん、詳しいですね、あいつ家に盗みに入ったんでしょうか?」
チョコが言った。
「おばあちゃん薙刀2段って言っていたからな、追っ払われたんだろうな、
案外情けないヤツだな」
セヒが言った。
が、大黒様達が見えない店の人達は、阿鼻叫喚である!
「クロちゃん!逃げて!」「危ないぞ!クロちゃん!」
みんな必死で叫んだ!
「さあ、どっからでもかかってらっしゃい!」
クロちゃんは、右手を挙げて、掌を上にしてクイクイと挑発した!
「このガキ!ふざけやがって!」
強盗は、包丁でクロちゃんを脅そうと、切りつけた!
すると、クロちゃんがサッと避けた!強盗は、すっ転んで、その上に机が
バタッと倒れた!そして・・・チョコと、セヒには、タコ殴りにされている強盗
が見えていた。
大黒様が大槌で殴るわ!みっちゃんも、どっから出したのか、自分の体よ
りでかい木槌で叩いている!
蒲焼の神様もバシバシ叩いている!痛そうである・・・。
それでも強盗が起き上がろうとすると、その顎の下をクロちゃんは、思い
っきり頭ずきした!バキッ!強盗はパタッ!と倒れた。
そしてクロちゃんは、強盗の右手の親指にカブリついた!
「痛え!」
強盗は、思わず包丁をとり落とした!それを見たおっちゃん達が、わ~っと
強盗を取り押さえた!
「おい悪党!これにこりて、己が罪を心の底から反省するのよ~!」
と、キリッと、クロちゃんがポーズを決めた。
その前で、大黒様が同じポーズをとっていたのは、笑えた。
「あ~あ~クロちゃん、すっかり大黒様に憑かれてますねぇ。」
チョコが、笑った。
「ああ本当だ」
セヒも思わず吹き出した。
「美代!」
美代ちゃんのママは、美代ちゃんを抱きしめた。
「クロちゃん!」
セヒと、チョコがクロちゃんに抱きついた。
「あれ、どうかしたの?」
クロちゃんは、キョトンとしている。
「覚えてないのか、今クロちゃん強盗をやっけたんだよ」
セヒが言った。
「本当はですね、大黒様と、みっちゃんと、蒲焼の神様がやっけたんですけど。
あの蒲焼き本当に神様だったんですね、見直しました」
チョコが言った、鰻の蒲焼きの神様は、自慢げに美代ちゃんの上でたなびいた。
横でみっちゃんと、大黒様が笑った。
「クロちゃんありがとう!」
「クロちゃんありがとう!スゴイね!」
お店の人達は口々にお礼を言った。
「でもね、こんな危ない事は二度としちゃダメだよ」
ひいじいちゃんは、言ってクロちゃんの頭を撫でた。
「うん・・・でも、クロちゃんわからないの。」
クロちゃんは困ったように言った。
するとピ~ポ~!ピ~ポ~!とサイレンと共に、警察がやってきた。
事情徴収が済んで、家にひいじいちゃんがクロちゃん達を送ってくれた。
そして、おばあちゃんのお家で、みんなでいちごケーキを食べながら、
事件の事を話し始めた。
「そうなのよ、奥さんとケーキ焼いていたら、宅配屋さんが来たのよ。
大きな荷物だったんで玄関まで運んでもらったら、いきなり包丁で脅すのよ!
で、右手を掴んで投げ飛ばしたの、そして玄関入口の横に飾っている薙刀で
叩きのめして、追っ払ったのよ~!それがまさか八のとこに行くなんてね!」
おばあちゃんがプンプン怒りながら言った。
おばあちゃんと、ひいじいちゃんは、同郷で、おばあちゃんの家は、そのあ
たり一帯を治める地主で、昔はお殿様だったらしい。
で、ひいじいちゃんは、名を「源八」といい、おばあちゃんは「八」ひいじ
いちゃんは、「姫さん」と言い合う仲らしい。
「鬼の櫻子姫を脅すなんて、命知らずのバカじゃな。なんせ姫さんは、薙刀
2段、柔道2段、剣道2段、空手2段じゃからな。」
ひいじいちゃんがしみじみと言った。
「あら~本当は、もっと上の段が取れたのよ、でも親が嫁の貰い手が無くな
るって反対したから、やめたのよ。」
おばあちゃんは残念そうに言った。こわ~みんなは、苦笑いをした。
「でも、クロちゃんは、本当に凄かったよ!強盗に立ち向かって行って、強
盗がクロちゃんを包丁で斬りかかった時は、どうなるかと思ったが、包丁を
避けて、頭ずきして、強盗の手に噛み付いて、包丁をはなさせちまっただか
らな、ビックリだ!いや~すごい子だ」
ひいじいちゃんは、熱く語った。
「キリッとしてですね、クロちゃんカッコよかったですよ!」
チョコが、言った。
「でもね、クロちゃん知らないのよ」
クロちゃんは、困った様に言った。
「あのさ、信じてもらえないかもしてないけど、本当は、クロちゃんに憑い
ている大黒様と、みっちゃんと、美代ちゃんに憑いている鰻の蒲焼きの神様
が、強盗をやっけたんだ。
いきなり、大黒様が現れて、クロちゃんを連れて強盗をやっけたんだ。」
セヒが、言いにくそうに語った。
「不思議な事があるもんだね」
と、最近不思議な出来事に慣れてきた、家の大人は納得していた。
「クロちゃんが、いい子だから神様がついたのかしら、七つまでは神のうち
ていうものね。」
おばあちゃんが、クロちゃんの頭を撫でた。
「それじゃ、そろそろお邪魔します、又改めてお礼に伺いますんで。」
ひいじいちゃんは、立ち上がって玄関へ向かった。
「そうそう、これほんの気持ちですが、クロちゃん達が鰻をごちそうになっ
たお礼です。おばあちゃんと一緒に作ったんですよ」
そう言って、ママは、いちごケーキを渡した。
「奥さん、すいませんね、ありがとうございます」
ひいじいちゃんは、お礼を言った。
「じゃ、クロちゃんまた遊びにおいでね、美代が待っとるよ。」
ひいじいちゃんは、帰って行った。
「でも良かったですね、クロちゃんカッコよかったから、美代ちゃん惚れち
ゃいましたよ」
チョコが冷やかした。
「うん、クロちゃんカッコよかったもんな!惚れ惚れした!」
セヒもそう言って笑った。
「そうかしら」
クロちゃんは、ほおが赤くしながら、すごく嬉しくなった。
次の日、万福商店街に行くと、強盗をやっつけたクロちゃんの話題で持ちき
りだった。
クロちゃんは、知らないおっちゃんや、おばちゃん達に話しかけられてドギ
マギした。
『うな八』さんの所に行くと、大きな鰻の蒲焼きがたなびいていて、その下
で美代ちゃんが遊んでいた。
「美代ちゃん!」
クロちゃんが、呼ぶと美代ちゃんが気がついた。
「あ、クロちゃん!昨日はありがとう!」
美代ちゃんがそう言うと、
「うん、美代ちゃんが無事で良かったわ」
クロちゃんは嬉しそうに言った。
「クロちゃん、強いのね!カッコよかったよ!」
美代ちゃんがそう言うと、クロちゃんは照れながら
「そうでもないわ」
と言った、嬉しくて心臓の音がドキドキした。美代ちゃん、クロちゃんの事
好きになってくれたかな。
こういうのガールフレンドっていうのよね、ドキドキ。
クロちゃんは嬉しくて、嬉しくてしょうがなかった。
「ねえ、今日はセヒちゃんは?」
美代ちゃんが不意に訪ねた。
「あ、セピ兄ちゃん達は、まだ小学校から帰ってないの、まだ前のお家の近くの
小学校だからちょっと遠いの。」
「ふ~ん、まだなのか・・・セヒちゃんて優しいよね、王子様みたいに素敵だ
し。」
え・・・それって・・・。
突然、クロちゃんの心の中に失恋の嵐が吹き荒れてしまった。
みっちゃんと、大黒様がいつの間にか現れて、クロちゃんの頭を撫でた。
春だというのに、なんだか切なくなったクロちゃんだった。