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龍の穴

夏の終わり、セミの鳴き声が、ツクツクボウシへ変わる頃。

クロちゃんは、クロちゃん神社のカッパ池にいた。

成り行きで、水神様の所で修行する事になったので、

水神様のお迎えを待っていた。

「ママは、絶対反対すると思ったのに・・・。」


昨日の事。

「まあ、そうなの水神様のお誘いじゃ断れないわね。」

と、おばあちゃんが言うもので、

「じゃ、仕方ないから頑張ってきてね。」

で、ある。

普通は、夏休みの宿題の追い込みがあるでしょう!

と、言いそうなのに・・・。

「え、水神池行くの?僕も行くよ。」

と、カダ兄ちゃんが、嬉しそうに言った。

・・・カダ兄ちゃん、宿題は?

「みっちゃんも行くね。」

「儂と、歳さんがお目付け役でついて行くか。」

「クロちゃんが、行くなら俺もお付きでついてくよ。」

茂作が、言った。

「又べえも行く!」

又べえの首が言った。

「又べえ、体がまだできてないじゃない。」

「大丈夫だ、もっとご飯くれ!」

クロちゃんは、ママと、おばあちゃんが作った。

ミートローフ、ローストチキン、団子、おにぎりを

放り込んだ。

すると、ムクムクと、体が出来た。

・・・頭だけで、どこで消化するのかしら???

に、しても今回は、やたらと再生が早いわ。

と、いう事でセヒ、チョコ、みっちゃん、親方、歳さん、

又べえ、茂作が、ついて行く事になった。

「クロちゃん、水神池行くのね。

いいな、私も冥途の土産に、言ってみたいな。」

・・・美咲コケシも追加された。


皆で、水神様のお出ましを待った。

「ねえ、親方、この間みたいに、軽トラで連れて行かないの?」

「今回は、水神様が迎えに来ると、おっしゃるんでな。」

親方は、言った。

しばらくすると、水が盛り上がり、ピカッ!と光った。

大きな龍、水神様のお出ましである。

今回は、りっぱな興があった。

それを蟹の妖怪が担いでいる。

立派な龍の彫刻が施され、蒔絵と、金箔で飾ってあった。

よく見ると、真珠や、サンゴもはめ込んである。

「今日は、水神様。昨日は、お願い聞いてくれてありがとう。」

「今日は、クロちゃん、さあ行くぞ。

さ、皆腰に乗れ。」

皆は、腰に乗った。

中も、見事な作りだった。ふわふわの椅子に皆腰かけた。

「さあ、出発じゃ!」

水神様の掛け声で、出発した。


水の中のような、光のような、水色に虹がかかったような

不思議な道を通って、水神池に向かった。

「綺麗ね、虹色の水の中みたい。」

クロちゃんは、綺麗な景色に見入った。

しばらくすると、海藻と草花が混ざった不思議な森を通り、

真珠色に輝く水神様の城に着いた。


「さあ、着いたぞ!」

降ろされた所は、大きな輝くウロコに覆われた扉の前だった。

「ここは?」

「龍の穴じゃよ。修行場だ。」

「この中で、修行するんだ。」

「そうじゃ、中にモンスターがいて、それを倒すんじゃ。

弱いのを沢山倒すと、レベルがあがるぞ!

レベルが高いと、強いモンスターが出てくるから

パーティーは、考えて組むんじゃぞ。」

「え!皆で行くんじゃないの?」

クロちゃんは、驚いた。

「5人ずつのパーティーで行くんじゃ、さ、パーティーを

組んでみるんじゃ。」

・・・パーティーって、どう組めば・・・。

「みっちゃん!クロちゃんと一緒!」

「じゃ、力の配分を考えると・・・。

クロちゃん、みっちゃん、又べえ、与作、美咲さんだな。

私、親方、カダちゃん、セヒちゃん、チョコちゃんだな。」

歳さんは、言った。

「ええ!こっちはかなり弱いんじゃ・・・。」

クロちゃんが言うと、

「みっちゃんが、強いからな。そんなもんじゃろ。」

親方が言った。

・・・えええ!強さだけじゃなく、かなり頼りないんだけど。

「食料は、自給自足なんで、中で調達するように。

ここで、持って行ける分は、持って行っていいぞ。」

沢山の、穀物、果物、野菜、肉、魚、調味料、水、酒、

寝袋、テント、ランプ、調味料、調理道具が盛られてあった。」

親方は、ツカツカ前に出て、水神様の信玄袋を取り出した。

「さあ、みんな、どれぐらい持っていこうか?」

親方は、みんなと相談しながら、色々水神様の信玄袋に、

放り込んで、

「さ、みんな出発するぞ!」

と、出かけてしまった。

・・・親方いいな・・・。

クロちゃんは、リュックに、野菜、果物、肉を詰めた。

みっちゃんが、

「そんなに持って行くと、重いよ。」

そう言って、リュックの中身を出した。

「材料は、中で調達できるから、お米と、パン、調理器具

、水筒とかを持って行こう。」

と、みっちゃんが、言った。

「え、野菜とか、果物、肉、水は?」

「中で調達できるから、大丈夫。」

「私、何にもできないけど、お料理は得意よ!

調味料持って行くわね!」

「あの、水はどうするの?」

「カッパがいるから、水はすぐ湧き出るよ。

ここは、水神様の領域だから、水脈は、沢山

見つけてくれるよ。」

みっちゃんは、笑った。

「心配ないから、さあ行こう!クロちゃん!」

みっちゃんの掛け声で、出発した。


龍の穴は、綺麗な所で、海藻と、草花木が混ざりあった

不思議な森だった。

行ける道が決まっているから、ダンジョンのような感じ

だった。

「実のなっている木も結構あるね。

クロちゃんが、マジマジと、見ていると、

「毒がある物があるから、みっちゃんに食べる時は、

聞いてね。」

「毒!?怖いね。」

「ここは、水神様の兵隊の訓練所なんだよ。

レベルによって、モンスターも強くなるし、

食べられる草、実も無くなってくる。

だから、弱いメンバーの方がいいんだよ。」

「そっか、ここは、優しいダンジョンなんだね。」

「みっちゃんが、強いモンスターは倒すから、援護や、

弱いモンスターをみんなが倒してね。」

「了解!」

みんなは、叫んだ。

すると、うさぎの様なモンスターが現れた。

「可愛いね!」

クロちゃんが、言うと、

「あれを倒すんだよ!沢山倒してね!

あれがお昼ご飯だよ!」

みっちゃんが、言った。

「え!、倒す・・・殺すの!?」

クロちゃんが、尋ねるよ、

「もちろん!美味しいから頑張って倒してね。」

「美味しいんだ。」

クロちゃんは、打ち出の小槌を取り出し、バンバン

叩きだした!

美咲コケシも、カッパも頑張って、倒した。

ピロロ~ン!ピロロ~ン!ピロロ~ン!とレベルUPの

音が響いた。


お昼は、茂作が、うさぎに似たモンスターを捌いてくれた。

又べえは、小箱に祈りを込めて、種を2つを出し、

地面に撒いて、太るドリンクをかけた。

すると、木が見る見る大きくなり、一つの木は、ニンジン、

玉ねぎ、キャベツ、ジャガイモ、トマト、エリンギが実った。

一つの木には、オレンジ、リンゴ、苺、メロン、サクランボが

実った。

それを美咲コケシが、料理してくれた。

「ニンニクを効かせた、バター醤油味の焼肉と、

野菜のクラムチャウダー、ジャガイモのパンケーキよ!」

バター醤油と、ニンニクの香りが鼻を刺激した。

付け合わせのキノコと、玉ねぎの炒め物も

美味しかった。

クラムチャウダーもトマトが効いていて美味しい。

「千切りキャベツも残さず食べてね。」

美咲さんが言った。

「美味しいね、美咲さんお料理上手だね。」

「美味しい物食べると、楽しくなるね。

あっちのメンバーだと、食事は期待できないもんね。

みっちゃんが言った。

「そうなの?」

「味付けなんて、塩降るか、醤油かけるかだよ。」

「美咲さんいてラッキーだったね、美味しいね。」

「うふ、沢山食べてね。」

ご飯を食べた後は、果物を沢山食べた。

「オレンジ、リンゴ、苺、メロン、サクランボ

美味しいね。」

みっちゃんは、果物をパクついた。

「又べえすごいね!あんな木作れるんだ!家の

庭にも植えてほしいわ。」

クロちゃんが言うと、

「帰ったら、庭にも植えてやるな。」

又べえは得意げに言った。

クロちゃん達は、楽しいお昼ご飯を終えた。


・・・その頃。

「うわぁあ!!」

親方が、うさぎに似たモンスターを歳さんが、捌いて

いると、セヒが騒いだ!

「流石、歳さん旨いもんだ。」

親方が褒めると、

「人間にくべたら、楽なもんだ。」

歳さんが、サッサっと捌いた。

それを親方が、塩降って焼いてくれた。

「ほら、喰え、千切りキャベツもちゃんと、

たべろよ。」

「俺は、絶対喰わないぞ!」

「じゃ、千切りキャベツとご飯喰え。」

セヒは、渋々千切りキャベツに塩降って食べた。

「この焼肉美味しいですよ!食べればいいのに。」

チョコが言うと、

「可哀そうだろうが!」

「折角、死んでお肉になったんですから、美味しく

食べないと、勿体ないです。」

と、チョコはパクパク食べた。

「塩味だけど、いけるね!」

カダ兄ちゃんもパクパク食べた。

「おい、カダ!お前よく喰うから、沢山獲れよ。」

親方が、言った。

「任せてよ!」

カダ兄ちゃんは、元気よく返事した。


午後から、クロちゃん達は、テクテク歩いて行くと、川が見えた。

「ここの魚のモンスター美味しいよ!ヒラメに

似た味してるの。」

みっちゃんが、言った。

「じゃ、ムニエルにしてあげるね。

ミルクがあると、クリーム煮にできるんだけど。」

美咲さんが言うと、

「この先に牛に似たモンスターがいるよ!メスなら

ミルクもお肉も捕れるよ。」

みっちゃんが楽しそうに言った。

「あ、あれだよ!待っててね!」

みっちゃんが、追いかけて行った。

「あ、みっちゃん待って!」

道が険しく、かなり歩きにくい、みっちゃんは、

ポンポン飛んで行くが、クロちゃんは、出来ない。

えっちらおっちらついて行く。

クロちゃんも追っかけて行くと、あのモンスターが

いた。

近づくと、グルルル・・・!!と、なんか様子が変だ。

なんか、思ったより大きい・・・ヤバそう。

そう思っていたら、いきなり襲ってきた!

「わぁあああ!」

クロちゃんは、慌てて逃げた。

牛に似たモンスターは、追っかけて来た!

必死で逃げたが、ドンドン距離は縮まっていった。

「グルルル・・・!!」

とうとう、追いつかれ、飛び掛かって来た!

バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!

美咲コケシが、連続頭突きをお見舞いした!

遂には叩きのめしてしまった。

「大丈夫、クロちゃん。」

「美咲さん、ありがとう助かった。強いだね!」

「怪我しないから、バンバンがんばれちゃう!

このくらいなら任せて!」

美咲コケシ出来る女なんだ、凄いな。

すると、向こうからみっちゃんがやっって来た。

「わあ、凄い!これメスだ!やった!美咲さんナイス!」

そう言うと、みっちゃんは、金縛りをして乳を搾り始めた。

「みっちゃん、乳搾り出来るんだ。」

「うん、家には、桜の大樹の大老様から貰った牛がいるから、

ゴンベエのお手伝いをするんだよ。」

みっちゃんは、ニコッと、笑って牛のモンスターに

止めを刺した。

「夕飯楽しみだね!今日の寝床にいい場所見つけたよ。」

そういうと、みっちゃんは、でっかい牛のモンスターを

抱えて歩き出した。

「みっちゃん、力持ちだね。」

クロちゃんが驚くと、

「このくらい軽いよ。」

みっちゃんは、笑った。


その頃、親方たちは、牛に似たモンスターや鳥に似た

モンスターを狩っていた。

チョコと、カダ兄ちゃんは、うさぎに似たモンスターを

狩っていた。

「セヒ、お前全然モンスター狩らないな。」

カダ兄ちゃんが言うと、

「可愛そうだろ!」

セヒが言うと、

「じゃ、来なきゃいいのに。」

「来たかったんだ!」

セヒは、ふてて、向こうに歩いて行った。

気がつくと、親方達を覗いているチワワのような

モンスターがいた。

「お前、見つからない内に逃げろよ。」

セヒが言うと、

「助けてくれて、ありがとう。」

そう言って、走り去った。


みっちゃんの見つけた場所は、湧き水が近くにあって、

柔らかい芝生みたいな草が生えていた。

又べえは、小箱を取り出し、祈りを込めて種を取り出した。

種を地面に撒いて、太るドリンクをかけた。

一つの木は、バンガローのようになった、窓もあれば、

ドアもあり、開く。

中は、ベッドとテーブル椅子があった。

「凄いね又べえ!ベッドは、ふかふかだ!」

クロちゃんは驚いた。

「天井にランプ付いてるね!又べえやるね!」

みっちゃんは、喜んだ。

外に出ると、茂作が水を湧き出し、今日の獲物を捌いて

いた。

又べえは、木から野菜、果物を収穫していた。

美咲コケシは、料理をしていた。

「今日は、魚のクリーム煮と、鳥のチーズ焼き。野菜の

ソテー、野菜スープ、サラダよ。」

「ねえ、バターどうしたの?」

クロちゃんが聞くと、

「又べえが、調味料の木も植えてくれたから、ケチャップ、

マヨネーズ、バター、チーズ、ソースとか捕れるの。

便利ね、又べえ。」

美咲が褒めると、又べえは得意げだった。

「凄いのね、又べえ。」

クロちゃんが言うと、又べえは更に喜んだ。


夕飯を食べながら、

「美味しいね、でもここのモンスターは、話とかしないの?」

クロちゃんが聞くと、

「ここのモンスターは、水神様が訓練用に作っているから、

そんな知能が高いのはいないよ。

それに、食べてもレベルが上がるから、普通より沢山

食べれるんだよ。

美味しいね、ご飯おかわり」

みっちゃんが、食べながら言った。

「それで沢山たべれるのか。」

「この中は、ちょっと特殊なんだよ。

エネルギーも使うし。」

「そうなんだ・・・キャンプみたいで、楽しいけど。

夏休みの宿題がな、ここ絵日記に書いていいかな。」

「いいんじゃない、クロちゃんだし。

私が宿題手伝ってあげる、まかせて。」

美咲コケシは、笑った。


その頃、親方達は、鍋を囲んでいた。

今日捕った肉と、野菜を煮込んでいた。

「セヒ、肉と、魚喰わんのか?」

「可哀そうだろう。」

セヒは、野菜ばかり食べてる。

「やれやれ、仕方がない。」

親方は、水神様の信玄袋から、ソーセージを出して

鍋に放り込んだ。

「ほら、喰え」

「ありがとう、親方。」

セヒは、喜んで食べた。

「ソーセージだって、誰かがお肉にして、作って

・・・。」

カダ兄ちゃんがチョコの口を塞いで、

「しーっ、親方の好意を台無しにしない。」

と、言った。

翌日は、海辺に着いた、お昼は、美咲さんがパンケーキを

焼いてくれた。

ふわふわのパンケーキにバターを塗って、蜂蜜をとろ~りと

かけた。

「ふわふわで、美味しいね。」

「蜂蜜も又べえが取ってきたの。」

「軽いもんだ。」

又べえは、自慢げだ。

「凄いね。・・・。」

「ね、クロちゃん、段々元気がなくってきたね。」

「何でもないよ。」


ご飯の後、パンツ一丁で、でっかいエビのモンターを

見つけて、

「えびだあ~!」

嬉しそうに、クロちゃんは、打ち出の小槌で

えびモンスターに向かっていった。

バッコ~ン!バッコ~ン!バッコ~ン!


夕飯は、シーフードカレーと、サラダ、えび、魚のソテー

だった。

「美味しいね、・・・クロちゃん、どうしたの?」

「・・・うん、実は、鰻が食べたいなと・・・。」

「ああ、大好きだもんね、毎日食べていたもんね。

流石に、鰻は無理かな。」

みっちゃんが言うと、

「又べえに任せろ!」

又べえは、小箱を取り出し、長いを込めて種を取り出した。

それを植えて、取り出した瓢箪の太るドリンクをかけた。

みるみる芽が出て、伸びて、蕾を付けて、花が咲いた。

花の上には、美味しそうな、うな重が!?

「さ、食べろ!」

クロちゃんは、驚きつつ食べてみた。

「うな八の鰻の味だわ!凄い!又べえ、ありがとう!」

クロちゃんは、喜んで食べた。


翌朝、味噌汁と、ご飯、卵焼き、焼き魚、エビの照り焼き

だった。

「美味しいね、今日は、お昼になったら終了だよ。」

みっちゃんが言った。

「結構楽しかったわね。」

クロちゃんが、言うと、

「ランク低いと楽しいね、ランク高いメンバーだと大変

なんだよ。」

みっちゃんが言った。


ご飯の後、また野原を歩いていると、大きな豚モンスター

が現れた。

「あれが、ラスボス倒して、トンカツだよ!」

みっちゃんが叫んだ!

「おおお!!」

皆は、大きな豚モンスターに向かって行った。


大きな豚モンスターを倒すと、ピカッと光り、何かが

クロちゃんの手中に入って来た。

虹色の手のひらくらいの大きさのウロコだった。

「それは、クリアのご褒美、水神様のウロコだよ。

水神様の力があるんだよ、大事にするんだよ。

本当は、もっとレベルの高いパーティーのご褒美だけど、

クロちゃんには、サービスなんだろうね。」

みっちゃんは言った。

「そうなの、凄いのね。」

クロちゃんは、大辞にポケットにしまった。

そして、扉が現れ修行は終了した。


外に出ると、水神様が待っていた。

「おお!クロちゃん、ランクが上がったな!

頑張ったな!御馳走と、お菓子を沢山用意しているぞ!」

水神様が言った。

「それは、楽しみだわ。」

クロちゃんが喜んでいると、突然扉が現れ、親方達が

出てきた。

「あ、クロちゃん!」

「あ、兄ちゃん達!今から、お城で宴会よ!」

クロちゃんが笑った。


城の中では、とりどりのお御馳走が並んでいた。

「美味しいね、この鳥。

あ、この水、お酒ね、知らないで飲んじゃった。」

とか言いながら、クロちゃんは、酒を飲んで

踊りだした。

更に宴会は、盛り上がった。

セヒが庭を見ると、龍の穴の中で見たチワワに似た

モンスターがいた。

セヒは、庭に向かって歩き出した。


「おい、お前無事だったのか。」

「この間は、ありがとう!お礼に美味しい果物の木

を教えてあげる、来て。」

チワワに似たモンスターが歩きだした。

セヒは、その後をついて行った。


「あの木だよ。」

見ると、木には苺のような見がなっていた。

「あ、旨そう。」

セヒが取ろうとすると、

チワワに似たモンスターが見る見る大きくなり

セヒを捕まえた。

「うわぁああ!何する!」

「ウワハハ・・・!馬鹿め!」

チワワに似たモンスターの笑い声が響いた。


城の中では、クロちゃんが踊り終わって、一息ついた。

「クロちゃん、良かったぞ~。」

と、水神様は、クロちゃんを頭の上に乗せて宙を舞った。

「きゃ~!~♪~♪」

と、クロちゃんは喜んだ。

その時!天津甕星の幻影が現れた。

「やあ、水神、久しぶりだな。」

「何の様じゃ。」

「私の領域に子供が紛れ込んだんで、どうしようかと

思ってね。

そちらのお客さんだろう?」

ぼうっと、セヒが映った。

「あ!兄ちゃん!」

「あ、クロちゃんの兄ちゃんだなんだ。

返して欲しかったら、私の右腕と、部下を返してもらお

うか。」

天津甕星が言った。

「いいわよ、兄ちゃん返してね。」

クロちゃんは、あっさり言った。

「えらく簡単にいったね。

クロちゃんが、私の城に返しに来るんだよ。」

「え!クロちゃんだけじゃ、あの大人数連れてないわ。」

「5人だけ連れて来ていいよ、1人は、お前だ!」

天津甕星は、又べえを指さした。

「ええ!」

又べえは、ビビった。

「わかったわ!」

「それから、この間のちび龍は連れてくるなよ。」

「・・・え!・・・わかったわ。」

クロちゃんは、答えた。

「クロちゃん、大丈夫かい?」

水神様が心配そうに聞いた。

「行って戻してくるだけだもの。」

「天津甕星、クロちゃんに危害を加えたり、閉じ込めたら

攻め入って行くぞ!」

水神様は怒鳴った。

「ああ、約束は、守るよ。」

「どうだか。」

水神様は、怪訝な顔をした。

「クロちゃん、行くわ!兄ちゃん助けないと。」

クロちゃんは、言った。

「じゃ明日、御馳走用意して待っているよ。

そう言って、天津甕星は、消えた。

「・・・ご飯は食べていくわ、水筒とおやつ持参する。」

「そうじゃな、何か盛られるかもしれんからな。」

「ぼったくられたら大変だもの。」

「ぼっ・・・ハハハハハ!ぼったくる!

クロちゃんは、しっかりしているのう。

水神様は、大笑いした。

「誰かついて来てくれる?」

「みっちゃんが、ついて行くよ。

あと、親方、歳さん、又べえは強制的だけど。」

「クロちゃんの眷属の俺がついて行くよ。」

茂作が言った。

「パパと、ママに頼まれているから僕が行くよ。」

カダ兄ちゃんが言った。

「危なそうな人だもの、私が行くわ!

頭突でやっけちゃう!もしもの事があっても、

四十九日には、成仏するんですもの、ちょっと早いだけだから。」

美咲コケシが言った。

「美咲さん、いいの?」

「もちろんよ!」

「・・・じゃ美咲さんで。」

クロちゃんが言った。

こうして、美咲コケシがついて行く事になった。


次の日昼ごはんの後、クロちゃん達は、天津甕星の部下を

連れて行く事になった。

護送には、亀の大きな妖怪の背に檻と、荷物を載せた。

水神様は、ぺっ!と、天津甕星の右手を吐き出した。

「じゃ、持っていけ、用心するんじゃよ。」

「うん、色々ありがとう。」

大黒のおっちゃんが頭を撫でて、

「クロちゃん、運をあげておいたよ。

儂のあげた必殺技が役にたつと思うよ。」

「おっちゃんの必殺技?」

「富!金!実りだよ。うまく使うんだよ。」

「富?金?実り????」

クロちゃんは、首を傾げた。


亀の背で揺られながら、クロちゃんは、天津甕星の周りの

景色を見て言った。

「こうして見ると、水神様のとこより、緑が少ないのね。

天津甕星って、どんな悪い事したの?」

「神様達の戦いに負けたんだよ、最後まで従わないんだ。

だから、周りに恵みを盗られるし、力も弱くなる。

だから、性格も歪んでくるんだよ。」

みっちゃんが、答えた。

「何で、取っちゃうの?」

「強い者が、弱い者から盗る、この世は全て弱肉強食

なんだよ。

負けるって、そう言う事なんだよ。」

「何か、嫌ね。」

クロちゃんは、言った。

しばらく進んで行くと、

天津甕星の城が見えた、沢山の妖怪が出迎えた。

「さあ、天津甕星様がお待ちです。」

皆檻の中の星黒達を見てざわめいた。

「天津甕星を呼んで来て!ここで引き渡すわ!

兄ちゃん返して。」

クロちゃんは、叫んだ。

「正式な使者の方です、丁重に扱います。

丁重にしないと、水神様が攻め入って来られても困ります。」

背の高い妖怪が言った。

「あれ、天津甕星の右腕の星秀(セイシュウ)だよ。

変な事は、出来ないと思うけど。」

みっちゃんが言った。


クロちゃんは、渋々城の中に入った。

長い廊下を通り、奥の部屋に通された。

中には、沢山の饅頭、クッキー、パンケーキ、蒸しケーキ

、干し果物、砂糖漬けの果物等のお菓子と、数種類のジュース

、お茶が用意されていた。

天津甕星が丸いテーブルの中央に座っていた。

「よく来たね、クロちゃん、ほら、ご飯は食べて来ると、

いう事なんで、おやつを用意したよ。

おあがり。」

天津甕星が言った。

「いらないわ、右腕と、部下達持っていたわ!

早く兄ちゃん返して。」

クロちゃんは、天津甕星をにらんだ。

みっちゃんは、天津甕星の右腕をチラつかせた。

天津甕星は、やれやれという顔をして、

「折角用意したんだら、食べればいいのに。

ほら、あの子供を連れて来い!」

部下に命じた。

しばらくすると、部下は、セヒを連れて来た。

「クロちゃん!」

「兄ちゃん!」

セヒと、クロちゃんは叫んだ!

「はい、右腕と、星黒達返すわ。

又べえは、クロちゃんを逃がす為に、天津甕星に

怪我させたけど、クロちゃん神社で、星黒達が

暴れたから、クロちゃん神社や万福商店街の

妖怪達も沢山怪我したの、痛み分けって事で、

これで終わりにして欲しいの。」

クロちゃんは、言った。

天津甕星は、右腕をみっちゃんから受け取った。

「わかったよ。その子をはなしてやれ。」

セピは走って来て、クロちゃんに抱き付いた。

「クロちゃん!」

「兄ちゃん!」

クロちゃんとセヒは抱き付いた。

すると、グ~とセヒのお腹が鳴った。

「その子昨日から、何も食べないんだ、

ぼったくられるって、聞かないんだ。

私は、そんなにケチじゃないよ。」

天津甕星は、言った。

クロちゃんは、背負ったリュックからお菓子を

取り出し、セヒに渡した。

「わ、ポテチだ!」

セヒは、パリパリ食べ始めた。

「・・・だから、用意したお菓子を食べればいいのに。」

天津甕星は、不服そうに言った。

みっちゃんは、星黒達の金縛りを解いた。

「さ、帰ろうクロちゃん。」

「うん。」

クロちゃん達が帰ろうとすると、

又べえの体が浮いて宙に浮いた。

「な、何するんだ!」

又べえが叫ぶと、

「水神との約束で、クロちゃんには、手が出せないが、

お前には、恨みがあるからな。」

すると、扉が開いて又べえは、宙に浮いたまま扉の向こうへ

放り込まれた。

「又べえ!」

クロちゃんは、叫んで扉の向こうへ走って行った。

扉の向こうは、競技場だった。

又べえは、競技場の真ん中に放り込まれた。

目の前には、大きな龍のような、顔は、ライオンのような

怪物がいた。

「グルル・・・!」

よだれを垂らしながら、又べえに襲い掛かった。

「勝ったら、許してあげるよ。」

天津甕星は、せせら笑った。

「なんて事するの!あんなブルドーザーみたいに、大きい怪物

!又べえが、勝てる訳ないじゃない!」

「私は、あんなに痛い目にあったんだよ。

クロちゃん、その小さなお手々で、応戦するかい?」

天津甕星は、小馬鹿にして言った。

「又べえを助けに行くわ!当り前じゃない!

又べえは、大事な家族よ!」

そう叫んで、クロちゃんは、又べえの元へ急いだ。


「うわぁああ!」

又べえは、襲い掛かってくる、怪物を避けて逃げ回る

のが、やっとだった。

それでも、ハサミを構えて、切りかかる隙を狙った。

「又べえ!」

「クロちゃん!助けに来てくれたのか!」

「当たり前じゃない!いくわよ!必殺!桜吹雪!」

クロちゃんは、打ち出の小槌を振った!

桜吹雪をモンスターにおみまいした!

モンスターがひるんだが、また持ち直した。

「次は、必殺!スクリューウォーター!」

必殺!スクリューウォーター!を連発した!

怪物は、かなりダメージを受けた。

が、また、別の虎の怪物が出てきた!

「な、何で増えるの!」

「二人だから、怪物も2匹だよ。」

天津甕星が意地悪く笑った。

「性格わる!」

クロちゃんが叫んだ。

「クロちゃん!助太刀するよ!」

みっちゃんが、競技場の中に入った、そして、バコバコと、

大槌で連続攻撃した!虎の怪物は、ノックアウトされた。

「みっちゃん、強い!」

「うん!あと、1匹だね!」

みっちゃんは、構えた。

すると、今度は、星秀が現れた。

「あいつは、あの星秀とか言ってたね。」

「あいつは、強いよ。さっきのデカイだけの怪物じゃない。」

みっちゃんの顔色が変わった。

「お~い!助太刀するぞ!」

親方と、歳さんが入ってきた!

すると、大きな龍のようなモンスターと、強そうな剣士が入っ

て来た!

「あいつは、星剛(セイゴウ)この国一番の剣士だよ。

あいつは、みっちゃんがやる!」

そう言って、みっちゃんは、星剛に襲い掛かった!

星剛は、みっちゃんの大槌を受け止めた。

怯まず、みっちゃんは、連続攻撃した。

「儂が、星秀の相手をする!」

親方が言った。

「私は、あの龍のようなデカブツを片付けよう!」

歳さんは、大きなメスで龍のような怪物に向かって行った。

「じゃ、クロちゃんは、あのライオンみたいな奴ね!」

クロちゃんは、飛び上がって、ばっこん!ばっこん!ばっこん!

と連続攻撃した!

又べえも大ばさみで、応戦したが、すぐ、弾かれた。

・・・弱いな・・・。

「クロちゃん!頑張って!大丈夫?私と交代する?」

美咲コケシが心配そうに見ていた。

「大丈夫よ!」

その時、ポケットの水神様のウロコが、カツンと音をたてた。

「あ、コレ使えるかも。

又べえ!これ飲み込んだら、パワーアップするかも!」

クロちゃんは、又べえに水神様のウロコを渡した。

又べえには、水神様のウロコを飲んだ。

すると、ムクムクと、パワーアップ又べえになった。

又べえは、大ばさみで、ライオンの化け物を切り裂いた!

「ガウゥウウ!!」

そして、止めを刺した。

「凄い!又べえ!」

そして、龍のような怪物に襲いかかり、切り裂いて倒して

しまった。

「凄いな、又べえ!」

歳さんも驚いた。

次に、星秀に向かって行った。


親方と、星秀が戦っていたが、親方は押されていた。

「なんちゅう強さだ・・・。」

その時又べえが、襲いかかった。

星秀は、又べえの大ばさみを剣で受けながら、

「凄いパワーだ!!」

ドンドン星秀を追い詰める!

が、次の瞬間!星秀の手から発せられた光の玉が、又べえに

当たった!

又べえは、砕け散ってしまった!

「またべえ~!!!」

クロちゃんは、砕けた又べえの体に触れた。

涙がボロボロ止まらない・・・。

もう許さない!クロちゃんは、すくっと打ち出の小槌を

構えた!

「よくも又べえを!!許さないわ!」

星秀に殴りかかろうとすると、

星秀は、それを避けて、星剛に切りかかった!

「え???何で???」

よく見ると、星秀の頭に、又べえの頭がくっ付いて

いる。

「助太刀するぞ!みっちゃん!」

又べえの頭は叫んだ!

「流石、又べえ、しぶとい。」

親方と、歳さんは呟いた。

「乗っ取られたのか!?なんてヤツだ!」

天津甕星は、驚いたた。

星秀を乗っ取った又べえは、星剛に大ばさみで攻撃した!

背後からみっちゃんが、攻撃した!

左右から、親方と、歳さんが攻撃する!

正面からクロちゃんが、スクリューウォーターをおみまい

した!

が、星剛は、皆を振り払った!

「なんてバケモンだ!」

親方と、歳さんは、呟いた。

又べえは、物凄いパワーで襲い掛かる!

星剛は、又べえを切りつけた!鮮血が飛び散った!

「いくら切っても痛くないぞ!体は星秀だからな!

お前、お前の国の大幹部様を傷つけたんだ!

後で、タダじゃすまないぞ!

ほら!ドンドン切れよ!

又べえは、痛くも痒くもないぞ!ハハハハハ。」

又べえは、嘲笑った!

「く、くそ!」

その時、

「構わん!私が許す!星秀を切れ!」

天津甕星は、叫んだ!

「なんてこと言うの!自分の部下でしょう!最低よ!」

クロちゃんは、怒鳴って、天津甕星を睨みつけた。

「今の星秀は、星秀じゃない!又べえだ!構わん!」

天津甕星は、叫んだ!

星剛は、凄い勢いで、星秀に切りかかった!

カン!!!カン!!カン!カン!!カン!カン!!

二人は、斬りあった!眼にも止まらず切りあった!

段々、又べえは、押されてきた!

皆も応戦するが、動きがついていかない!

そして、バサッり!

星秀は、腹をバックり切られた!

「又べ~え!!!」

クロちゃんが駆け寄った。

星秀は、ひん死である。

・・・あれ?又べえの頭がない???

振り向くと、星剛の頭に、又べえがくっ付いていた!

「おい!勝ったぞ!コイツも乗っ取った!

又べえ達の勝ちだ!」

又べえが叫んだ!

「何だとう!なら最後は、私を倒せ!」

天津甕星は、叫んだ!

「解った!待ってろ!」

又べえが叫んだ!天津甕星の所へ行こうとすると、

又べえをクロちゃんが止めた。

「待って、天津甕星は、勝ったら許すって、言ったのに

嘘ついたのよ!

その報いは、受けてもらうわ!」

そう言うと、クロちゃんは、打ち出の小槌を振り、振り

踊り出した。

「全ての実~りは、この手の中に~♪

全ての富~は、この手の中に~♪

全ての恵み~は、この手の中に~♪

ああ~全ては、我が手の中に~♪

全ての実~りは、この手の中に~♪

全ての富~は、この手の中に~♪

全ての恵み~は、この手の中に~♪

ああ~全ては、我が手の中に~♪」

皆ぽか~んとクロちゃんを見ていた。すると、

天津甕星の部下が飛び込んで来た。

「天津甕星様、大変です!外をご覧下さい!草も木々

も稲も麦も、果物、野菜が枯れ始めました!!」

天津甕星が慌てて上の階に上がり、バルコニーから

国を見ると、国中が全て枯れていた。

あまりの光景に、声を失った。

「な、なんて事だ!」

「意地の悪い事した上に、嘘ついたからよ!」

「すぐ、元に戻せ!」

「ちゃんと約束守ってくれたらね。

又べえの事許してくれるって言ったわよね!」

天津甕星は、グッと詰まって、

「解った、あの件は、水に流そう。」

天津甕星は、渋々承諾した。

「それと、クロちゃんと友達になって、他の神様と

仲良くしてね。」

「は?」

天津甕星は、目が点になった。

・・・さすが6歳児の発想だと、呆れて・・・。

笑い出した。

「は、はっはっはっはっは!もう負けたよ、

私と友達になってくれ。」

「もちろんよ!今から友達ね!」

クロちゃんは、手を差し出して、

「握手して!友達だから!早く!」

天津甕星は、気が抜けたような顔でクロちゃんと握手

した。

すると、クロちゃんは、また、踊り出した。

「我が手に来た実~りは、大地に帰れ~♪

我が手に来た富~りは、大地に帰れ~♪

我が手に来た恵~は、大地に帰れ~♪

全ては、大地に戻れ~♪

我が手に来た実~りは、大地に帰れ~♪

我が手に来た富~りは、大地に帰れ~♪

我が手に来た恵~は、大地に帰れ~♪

全ては、大地に戻れ~♪」

すると、大地は、見る見る緑になった。

「凄いな、クロちゃん。本当に、完敗だ。

・・・中に入っておやつを食べないかい?」

「うん、友達だもんね。」

クロちゃんが、ニッコリ笑った。


中に入ると、テーブルのリンゴのような果物を

一口クロちゃんは、食べた。

そして、その果物を皿に置いて、パンケーキを

一口食べた。

そして、また、皿に置いた。

別の焼き菓子をとって一口食べて、また、皿に置いた。

「あの、これいつもの味なの?」

クロちゃんは、恐る恐る天津甕星に尋ねた。

「ああ、美味しいだろう。」

クロちゃんの顔色が、変わって。

「不味いわ!コレ!なんて舌が貧しいの!」

クロちゃんは、叫んだ!

「おい、クロちゃん、ここは、大人になれよ。

これ作った人が罰うけるぞ。」

歳さんが言った。

「ここは、我慢だよ。」

みっちゃんが言った。

「昔のママのお菓子は、こんなもんだったぞ、

喰える、喰える。」

セヒが言った。

「又べえは、よくわからない。」

テーブルの上で又べえの頭は言った。

「ま、贅沢言うな。」

親方が言った。

「クロちゃん、不味い物には我慢できないわ!」

そう言うと、打ち出の小槌を取り出して、

踊り出した。

「全ての木の実に~豊かな恵み~と~実りあれ~♪

全ての野菜に~豊かな恵み~と~実りあれ~♪

全ての穀物に~豊かな恵み~と~実りあれ~♪

全ての作物に豊かな恵み~と~実りあれ~♪

全ての木の実に~豊かな恵み~と~実りあれ~♪

全ての野菜に~豊かな恵み~と~実りあれ~♪

全ての穀物に~豊かな恵み~と~実りあれ~♪

全ての作物に豊かな恵み~と~実りあれ~♪」

踊り終えると、クロちゃんは、食べかけの果物を

食べた。

「甘くなってる。」

果物は、さっきと比べ物になりないくらい、甘く

美味しくなっていた。

「こんな甘く、美味い果物は初めてだ!」

天津甕星は、驚いた。

「お菓子は、不味いままね。」

クロちゃんは、ショゲた。

「私が、ここの料理人さんに、美味しいお菓子の作り方

教えてあげます。

台所貸してくださいね。」

美咲コケシは、そういうと、調理場へ行った。


しばらくすると、沢山のお菓子が運ばれて来た。

ケーキ、クッキー、パンケーキ、台湾カステラ、プリン

チーズケーキ、、マドレーヌ、ドーナッツ。

「わあ、美味しい!」

クロちゃんは、喜んで食べた。

「こんなうまい菓子は、初めてだ!お前、

私の料理人にならないか?」

天津甕星は、美咲コケシをスカウトした。

「ごめんなさい、私は妖怪じゃないの。

神様のご厚意で四十九日まで、クロちゃんに恩を

返す為に、コケシに憑りついているけど、

四十九日がきたら、成仏するんです。」

美咲コケシは、言った。

「そうか、残念だな。」

天津甕星は残念そうに言った。

「でも、ここの料理人さんに、教えておきました。

チーズや、バター、バニラがないから、又べえに

香辛料や、バターやチーズが実る木を植えて

もらいます。

だから、これからは、クロちゃんに良くしてあげて

下さい。」

美咲コケシは、言った。

又べえの頭は、チロッと天津甕星を見て

「植えてやらないまでも、ないが。」

「何だ。」

「色々したから、ご褒美くれ!」

又べえは、笑った。

・・・さすが又べえ!強かだ!

「ご褒美ね・・・。」

天津甕星は、少し考えて、黒ダイヤのついた

ペンダントを渡した。

「それは、一度だけ私の力が使える、

危機が訪れた時、クロちゃんを守ってやれ。」

又べえは、受け取って、

「たった一度しか使えないのか、ケチだな。

ま、綺麗だからいいか。」

「私の本当の力を使ったら、お前ごとき弱い妖怪は、

耐えられなくて、使った後、木っ端みじんだ!

だから、1回使えれば十分だ、二度目はない。

なんなら試してみるか?」

又べえの頭は、ヒクッと、ひきつって、首を振った。

「まったく、こんなへっぽこのくせに、よくあれだけの

大暴れできたもんだ。」

天津甕星は、又べえの間抜け面を見て言った。

「又べえは、クロちゃんがいれば、大妖怪になれるんだ!

クロちゃんが、力くれる、信じてくれるからな。

何があっても、見捨てない、助けてくれる。

だから、又べえは、強くなれる。」

又べえは、得意げに言った。

「そんな御大層な事じゃないわ。

あたりまえじゃない。」

クロちゃんは言った。

「成る程、又べえ、お前は、幸せなヤツだな。

確かに、この子には毒気を抜かれる。」

天津甕星は、目を細めた。

天津甕星は、クロちゃんの方を見て、

「クロちゃん、打ち出の小槌を出してくれ。」

「はい、」

クロちゃんが打ち出の小槌を差し出すと、天津甕星は、

軽く撫でた。

「これで、私の力を与えた。

ランクが上がると、使えるよ。」

「そうなの、ありがとう。どんな技?」

「それは、使ってみてからのお楽しみだ。」

天津甕星は、悪戯っぽく笑った。



別れ際、

「今年は、沢山作物が実るわよ。しかも美味しいわよ。

他の神様と、仲良くしてね、そうしたら、また、

来年も踊りに来てあげるわ。」

クロちゃんがニコッと笑った。

天津甕星は、目を細めて、

「そうだな、小さくとも、豊かで、強い国を目指すよ。」

と、言った。

歳さんは、星秀と、怪物達を治してあげて、

「無理をするなよ、まだ完治していないからな。」

「恩にきるよ、ありがとうな、アンタ本当に腕も

いいし、妖力も高い、いい医者だな。」

星秀達は、そう褒めて感謝した。

「クロちゃん、ありがとう。

国に戻れた上に、クロちゃんが取り成してくれた

おかげで、お咎めなしだ。」

星黒達も心からお礼を言った。

「じゃまた、来るわね!バイバ~イ!」

そう言って、クロちゃん達は、亀の背中に乗って

帰って行った。


松の柵の所で、水神様と、大黒のおっちゃん達が出迎えた。

「ただいま~。」

「お帰り、クロちゃん、美味くいったようじゃの。」

水神様は、クロちゃんの頭を撫でた。

「よくやった、偉い、偉い。」

大黒のおっちゃんも、クロちゃんの頭を撫でた。

「お帰り、クロちゃん、セヒ大丈夫だった?」

カダ兄ちゃんと、チョコと、与作が駆け寄った。

「大丈夫よ、天津甕星と友達になったから。」

クロちゃんは、笑った。

「え!本当?」

カダ兄ちゃん達は、驚いた。

「本当だよ!みっちゃん、大殺戮する覚悟で行ったけど。

おやつ御馳走になって帰ってきたの。」

みっちゃんが笑った。

「又べえは、大活躍したぞ!調味料の木も植えてやった

ぞ!」

クロちゃんのリュックの上で、又べえの首が言った。

「また、コイツ首だけになってますね。」

チョコが言った。

「バカタレ!木を植えたのは、儂じゃ!お前、体ないじゃろ

う!

大事な小箱も、ハサミも儂が拾って、やったんだぞ!

感謝しろ!」

親方が言った。

「ありがとな、親方。やさしいな、いい奴だな。」

又べえは、嬉しそうに言った。

親方は、

「ふん!」

と、言って、照れたちょっと。

「大変だったんだね、クロちゃんどうやって、天津甕星と

友達になったんだい?」

カダ兄ちゃんが尋ねた。

「果物を甘くしてあげたの、作物も豊に実るように、

踊っててあげたの。

美味しい物は、世界を救うのよ。」

クロちゃんが笑った。

「それと、金だ、金で何でも買えないが、

大抵の事は、金があれば解決する、おっちゃんの

必殺技は、金!ランクがあがれば、世界中の経済を

牛耳れるぞ、頑張れ!」

大黒のおっちゃんは、クロちゃんの肩をポンと叩いた。

「凄いね、クロちゃん!頑張れ!」

カダ兄ちゃんが興奮して言った。

「・・・クロちゃんよくわからないけど。

家に帰って宿題しないと、間に合わないわ。」

と、言った。

未来の経済を牛耳るとかより、夏休みの宿題の方が

気になるクロちゃんだった。




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