盆踊り
お盆も過ぎて、熱い日々が続いている。
亀屋万年堂で、クロちゃんと、みっちゃん、チョコは、
わらび餅パフェを食べていた。
アイスクリームと、甘さ控えめの餡とアイスクリーム
と、わらび餅が添えて、最中を被せて、黄な粉が振ってあった。
「どうだい、わらび餅パフェ!俺が考えたんだ!」
「美味しい!甘さが丁度いいわね。最中も香ばしいわ!」
「やっぱ、こういうの出さないと、夏は客足が落ちるんだ。
心太とか、くずもち、フルーツあんみつとかで、寄って
貰って、次いでに店の菓子を売る!
わかった!大将!」
亀ちゃんは、亀屋のおっちゃんに、言った。
「流石、家を代々守ってくれてる妖怪だ!脱帽だよ。」
亀屋のおっちゃんもニコニコ笑っている。
最初、亀ちゃんの姿が見えた時は、色々あったらしいが、
接客してくれるので、亀ちゃん目当ての客も来るくらいだ。
妖怪が接客する店という売りらしい。
「この近くの宝満神社、で盆踊りがあるんだよ。」
みっちゃんが言うと、
「盆踊りか、クロちゃん初めて楽しみね。」
クロちゃんは、嬉しそうに言った。
「クロちゃん盆踊りは、初めてかい?」
亀ちゃんが聞くと、
「前住んでいた所は、近くに盆踊りとかする神社が、
なかったの。」
「そうかい、明日から練習だよ、がんばりな!」
「うん。」
クロちゃんは、元気よく返事をした。
それから皆で、宝満神社に行った。
宝満神社では、櫓が沢山の提灯や、電球で飾り付けられて
いた。
周りでは、チラホラ、夜店も準備していた。
「何か、クロちゃん神社の賑わいに比べると、寂しい
ですね。」
チョコが周りを見わして、言った。
「宝満神社は、昔からあるけど、クロちゃん神社が大人気で、
最近は、忘れられている感じだからね。」
みっちゃんが言った。
「やあ、クロちゃん!」
宝満神社の神主さんが、やって来た。
「今日は神主さん、随分飾り付け出来たわね。」
クロちゃんが、楽しそうに言った。
「盆踊り、クロちゃんも来てくれるかい?」
「もちろんよ!毎日練習に来るわ。」
「嬉しいねぇ!じゃ妖怪も来て一緒に踊ってくれるのかい?」
「え!妖怪も一緒に踊っていいの?・・・暗闇で、怖くない
かしら。」
「それなら、妖怪だけの盆踊りタイムを作るよ!踊りたい人は、
一緒に踊ればいいし、写真や、動画もとれるし。」
「いいわね!皆に言っとくわね!」
クロちゃんは、言った。
クロちゃん達は、鶴屋千年堂に行った。
「今日は!」
クロちゃん達が挨拶すると、
「あ、クロちゃん!いらっしゃい!」
鶴屋の兄ちゃんが、言った。
「新作の淡雪かん食べてくかい?桃味だよ!」
鶴ちゃんは、鶴屋の兄ちゃんと裏でロックを聴きながら
お菓子を作っている。
二人は、なかなか気の合う相棒だ。
すると、人の大きさのコケシが歩いて来た。
「クロちゃん!私よ!美咲よ!」
「え!美咲さん、随分大きくなったのね。」
「うふ、この体になったら、甘い物いくら食べても太らないの。
で、忙しい時ここのお手伝いして、色々甘味を貰っているの。
大黒様にお願いしたら、大きくしてくれて、手足付けてくれた
のよ。」
美咲は、桃の淡雪かんをテーブルにおいた。
「そうなんだ、凄いわね。」
「今日は、何か食べにきたの?」
「今日はね、宝満神社の神主さんが、盆踊りに妖怪に出て欲し
いらしいので、皆に呼びかけにきたの。」
「私出るわ!手も足も出来たし!楽しみ!」
美咲は、嬉しそうだ。
「じゃ、俺皆に声掛けしとくよ!任せておいてよ。」
鶴ちゃんが言った。
「じゃ、お願いね。」
クロちゃん達は、桃の淡雪かんを食べた。
桃のペーストを練り込んだ淡雪かんに、みじん切りの
桃の粒々が入っていて、上に桃の薄切り、その上に、
透明の寒天がかかっていた。
「美味しいね、ヒンヤリ、ふんわり桃味ね。」
クロちゃんは、少しワクワクして来た。
家に帰ると、ママとおばあちゃんと、お手伝いさん達が
おやつを作っていた。
台湾カステラだ、ふわふわである。
それと、プリンである、ほろ苦いキャラメルが美味しそうだ。
おやつをお盆に乗せて、クロちゃんは妖怪の皆の所へ行った。
お庭のカッパに、おやつをあげた。
子ガッパは、プリンをプルルンとしながら飲み込んだ。
「この台湾カステラも美味しいわ!添えてある桃と
アイスクリームもヒンヤリして美味しいわ。」
お富は台湾カステラを食べた。
「俺達も子供を連れて参加するよ。」
与作も台湾カステラをパクつきながら言った。
それから、クロちゃんは、おばあちゃんン家に言った。
「みんな!おやつよ!」
クロちゃんが言うと、
「あ、クロちゃん、今外にお客さんが来てるんだ。
出てきてくれないかい。
私達が出ていって、吃驚するといけないから。」
歳さんが言うので、
クロちゃんは、玄関へ向かった。
玄関を開けると、大人が6人いた、中に見知った顔が
あった。
「今日は、クロちゃん。」
「あ、おばちゃん。」
歳さんが後ろで
「知り合いかい?」
囁くと、
「おばあちゃんの長男さんの奥さん。」
おばあちゃんの家で、クロちゃんは、おばあちゃんを
待っていた。
「あら、あんた達来たの?お盆に来なかったから、もう
来ないと思ったわ。」
「今日、17日は、親父の命日だ!まとめて今日にした。」
おばあちゃんの長男さんが、言った。
来たのは、おばあちゃんの長男さん夫婦、次男さん夫婦、
娘さん夫婦である。
「あれ、おばあちゃんが、普段から鬼嫁って言ってる
嫁さんだろう?」
留が言うと、
「あの、おばちゃんは鬼嫁じゃないの。
家に時々、カステラとメロン持ってきて、おばあちゃんを
よろしくって、ママに頼んでいくわ。」
「嫁姑バトルは、今も昔も変わらんな。」
親方は、言った。
「ばあちゃん、本当は仲良くしたんじゃないか?
あ、ママがお茶持ってきた!
この又べえの名酒『ほめ殺し』をお茶に入れるってのは
どうだ?」
そう言って、又べえは、ママの所へ言った。
「ママ、ばあちゃん達のお茶に、この名酒『ほめ殺し』
を少し入れたらどうだ?皆仲良くなるかもしれないぞ。」
「あ、そうね、仲良くするチャンスかも。」
ママが同意すると、
「ママ!『ほめ殺し』をお茶や、お菓子に混ぜないように!」
おばあちゃんが、立っていた。
「あ、はい。」
ママは、いそいそと、お茶を出しに行った。
6人は、プリンと、台湾カステラを食べながら、話を始めた。
それを障子の外から、クロちゃん達は、聞き耳を立てていた。
「美味しい!お母さんのお菓子、久しぶりね!」
娘さんが言うと、長男さんが、徐に口を開いた。
「あれが、クロちゃん。・・・・
お母さん、弁護士に聞きいた、お母さんの家と、万福商店を
お母さんの死後、クロちゃんに譲ると、遺言状を書いた
そうだな。」
え!ええ!!!?
「そうよ、それが何か?私の財産を誰にあげようが、私の
勝手よ!あんた達にあれこれ言われたくないわ!」
「本気か!?赤の他人の子供に!?」
次男さんは言った。
「そうよ、お母さん!何で赤の他人に譲るの!」
娘さんも納得できない様だった。
「赤の他人じゃないわ!今の私の家族よ!毎日一緒に
ご飯食べて、たわいのない話して、遊んでいるのよ。
この間、血圧が上がった時、病院に連れて行って貰った
わ!
他人じゃないの!それに、持ち主があんた達じゃ、
ここに住んでいる妖怪達が許さないわいよ!」
「えええ!!お母さん妖怪と住んでいるの!」
「そうよ、皆出てきて!」
おばあちゃんが、呼ぶので皆出てきた。
おばあちゃんの息子さん達は、二の句が出なかった。
「あ~今日は、お世話になってます。」
妖怪達が言った。
「夜は、この妖怪達と毎日、晩酌しているのよ!
楽しくてしょうがないわ!」
皆おばあちゃんの迫力に圧倒された。
すると、長男の奥さんが、徐に口を開いた。
「私は、この家も、万福商店街もクロちゃんに譲っても
いいと思ってます。」
「えええ!義姉さん何で!他人の物になるのですよ!」
義弟夫婦と、娘夫婦は、驚いた!
「じゃ聞きますけど、妖怪付きの家に住みたい?
売ろうとしても、妖怪達が邪魔すると思うの。
万福商店街も同じよ。
それに、お義母さん、新規事業で月5億くらい収益上がってます
よね。
今、巷で人気の虫を捕る花と、痩せるドリンク、栄養ドリンク
は、どこから仕入れてます?」
「そこの又ちゃんと、親方が作っているわ。」
「え!!!?そうなの!」
義弟夫婦と、娘夫婦は、驚いた!
「それと、クロちゃん神社の経営は、どこがしてるんです?」
「私よ!」
おばあちゃんは、答えた。
「つまり、この家は、虫を捕る花と、痩せるドリンク、栄養ドリンク
の製造工場で、クロちゃん神社の収益もお義母さんの懐に入って
るんですね。
その事業は、お義母さんの死後は、私達に譲って頂けるんですか?」
「譲るわよ、経営は色々あるから仕方ないわ。」
おばあちゃんは、言った。
「その膨大な利益を思えば、この家と、万福商店街ぐらい大した事
ないですね、クロちゃんに譲っていいですよ。
妖怪を従え、龍の背に乗り雲を追い払い、癌患者も治す
神様付きの子だもの。
大事にしないと、バチがあたるわ。」
長男の奥さんは、にっこり笑った。
「嫌な事に、あんたが一番頭が切れるのよね。
新規事業の事、いろいろ調べたのね。」
おばあちゃんは、複雑な顔をした。
「勿論です、私は、お義母さんが、見込んだ嫁じゃないで
すか。」
長男の奥さんは、クロちゃんと、ママと、妖怪達に、
「お義母さんをお願いしますね。
残念ながら、皆さんと暮らす方が楽しいようなので、
何かあれば、連絡下さいね。」
すると、皆なんとなく納得した。
皆帰ろうと、玄関に行って靴を履こうとすると、
「きゃ~!」「わ~!なんだこれ!」
靴に沢山のダンゴムシが入っていた。
「あ、ごめん、嫌な客の靴には、昔から櫻子ちゃん、
ダンゴムシ入れていたから、つい。」
みっちゃんが謝った。
「でも、みっちゃん、リーマンショックの時、会社が危ない
時、助けてあげたよ。」
「え!あの時客足が急に良くなったのは、みっちゃんの
おかげなの?」
長男の奥さんが尋ねると、
「だって、みっちゃんは、座敷わらしだもん!
クロちゃんは、もっと凄いよ!大黒様のご加護があるんだから。」
皆、クロちゃんをまじまじと見た。
「よろしくね、クロちゃん、今度は、お土産を持って来るよ。」
娘さん、息子さん夫婦は、そう言って帰って行った。
「カミキリムシと、カマキリも捕まえておいたけど、いらなかっ
たね。」
と、みっちゃんが笑った。
「櫻子ちゃんは、嫌いなお客さんには、カミキリムシと、
カマキリをくっけてたんだよ。」
みっちゃんが、悪戯っぽく笑った。
おばあちゃんは、
「子供の頃よ。」
と、罰が悪そうだった。
すると、パパが帰って来た。
「お義父さんと、お義母さんを無事空港に送って来たよ。
空港で、皆にお土産買ってくれたよ。」
パパが紙袋を見せた。
「わぁ~!」
クロちゃん達は、喜んで袋を貰った。
家で包みを開けると、スヌーピーの腕時計が入っていた。
「わぁ!スヌーピーの腕時計!
やっぱり、空港まで送って行けば良かったな。」
「おじいちゃんが、帰りたくなくなるから、空港までは
いいって言ったからね。」
パパが言った。
クロちゃんは、スヌーピーの腕時計をはめた。
ちょっと、お兄さんになったような気がした。
クロちゃんと達は、盆踊り大会まで毎日練習した。
妖怪達も姿を消して練習した。
盆踊り当日、みっちゃんとクロちゃんと、チョコ、セヒは、
ママの作った浴衣を着て先に宝満神社へ行った。
「あれ、又べえと、親方は?」
「まだ、盆踊り草を植えているよ」
クロちゃんは、気になったので、クロちゃん神社に走って
行った。
クロちゃん神社では、親方と、又べえが、花壇に、盆踊り草
を植えていた。
「親方、もう明日にして、盆踊り行こうよ!」
「あと少しだ、黙ってやれ!」
そこへ、星明がやって来た。
「今晩は、親方と又べえも盆踊りに行くのかい?」
「ああ、ここ全部植えたら行くぞ。」
「そうか、仕方ない。俺が見張ってるか。」
星明は、ガッカリしたように言った。
「見張り?ああ、星鬼達か。結界張ってるだろう?
見張ってなくてもいいんじゃないか?」
「そう言っても、この間のガマ吉の事もあるし、油断できな
いよ。
楽しそうなんで、ちょっと行ってみたかったけど。」
「ああ、じゃ儂と、又べえと、星明で交代で見張ったら
どうだ?」
「えええ!!又べえも!やだ!ず~っと皆と踊ったり、
遊んだりしたい。」
「我儘言うな!」
親方に叱られて、又べえは、渋々承知した。
「又べえ、お前が一番我慢がきかんから、最初に見張れ。」
そう言って、親方と、星明は、盆踊りに行ってしまった。
クロちゃん神社の地下で、又べえは、不機嫌そうに星鬼達を
恨めし気に見ていた。
「ああ~今頃盆踊り始まってるだろうな・・・はあ・・・。」
「おい、俺達は、檻に入れられて、結界まで張っているんだ、
何もできないぜ。盆踊り言って来い!」
又べえは、ジロッと星鬼を見て、
「又べえもそう思うが、ほったらかして、盆踊りに行ったら
親方に叱られる。」
又べえはブスッと言った。
「いつまで閉じ込めて、置くんだ?いっそ、お前が喰ったら
どうだ?
俺達の能力が、お前の物になる!クロちゃんの役に立つぞ。」
星鬼が言った。
又べえは、しばらく考えた。
「何でお前、自分の事食べろって言う?何か企んでいるだろ
う?」
「もう、外に出れないからな。お前達に嬲られるのも辛い、
それなら、もう死んで家族の元に帰りたい・・・。」
星鬼達は、神妙な顔をした。
又べえは、ちょっと気の毒になってきた。
「でも、親方が怒るからな。やっぱやめる!
又べえは、弱い妖怪だから、お前達喰っても、消化できない
かもしれない。」
又べえは、言った。
「親方が、怖いんだろう!弱虫!チキンだな!お前本当に
天津甕星様に、致命傷を与えたのか?」
星鬼はからかうように、言った。
又べえは、ツカツカと、寄って来て、
「又べえは、何って言われても、出さないぞ!」
と、怒鳴った!
すると、星鬼が又べえの服の裾を引っ張った!
カツーン!と又べえのポケットが檻に当たった。
「バ~カ!この時を待ってたぞ!」
バキッ!封印が解けて、星鬼達が檻を壊した!
「ああ~!」
又べえは、体から血の気が引いた。
クロちゃんと、みっちゃんは、クロちゃん神社に向かって走って
いた。
「クロちゃん、どうして、そんなに気になるの?」
みっちゃんが聞くと、
「何か、嫌な予感がする。」
すると、向こうから、親方と、星明がやって来た。
「あ、親方!星明!」
「おや、クロちゃん、盆踊りは行かなかったのかい?」
「嫌な予感がして、来たの。あれ、又べえは?」
「星鬼達を見張ってるよ、俺と、親方、又べえで今夜は、
交代で見張る事にしたんだよ。」
「又べえが、いつまでも大人しく見張るかしら。」
クロちゃんが心配そうに言った。
「何、30分したら交代行くから大丈夫じゃ。
アイツが我慢できるのは、30分くらいじゃからな。」
親方が言った。
すると、上空から、何かが、降ってきた!
ドーン!みっちゃんが、大槌で受け止めた!その顔を
見ると、星鬼!
「おい!クロ!打ち出の小槌を貰うぞ!」
星鬼が不敵に笑った。
「絶対に!渡さないわよ!・・・又べえはどこ!?」
クロちゃんが叫ぶと、星鬼がニヤリと笑った。
そして、小脇に抱えていた物を見せた。
「クロちゃん・・・助けてくれよお。」
それは、又べえの首だった!又べえが力なく言った。
「又べえ!」
「こいつの命が惜しければ!打ち出の小槌を渡せ!」
星鬼が叫んだ!
え!!・・・仕方ないわ・・・。
クロちゃんは、打ち出の小槌を出そうとすると、
「クロちゃん!ダメ!絶対ダメ!」
みっちゃんが、叫んだ!
「それは、悪いが、又べえより大事な物だ!絶対渡したら
ダメだ!」
星明が叫んだ!
「又べえなんぞ、どうなってもかまわん!絶対渡すなよ!」
親方も叫んだ!
・・・誰も打ち出の小槌を渡すのに賛同してくれなかった。
「だって、又べえが・・・。」
クロちゃんは、困りはてた。
「絶対!渡したらダメ!!!!」
皆にダメ押しされてしまった。
「おい!こいつが、どうなってもいいのか!」
星鬼は凄んだ!
「又べえ!」
困った顔をして、みっちゃん達を見たら、皆怖い顔をして
首を振った。
「クロちゃん・・・助けてくれよお。」
又べえが哀れな声で言った。
「・・・クロちゃん、まだ6歳なのに、こんな難しい事・・・
どうしたらいいの。」
クロちゃんは、困りはてた、その時!
バキッ!!バキッ!!バキッ!
コケシと、ニポポ人形達が、一斉に、星鬼達に飛び掛かり
攻撃した!
何百ものコケシと、二ポポ人形が襲ってきたのだ!
最初は、攻撃して叩き壊していたが、あまりの数に、
とうとう、星鬼は、又べえの首を落としてしまった。
ゴロンと、転がった又べえの首を大きなコケシが
拾った!
「クロちゃん!又べえ助けたわよ!」
美咲コケシが叫んだ!
「美咲さん!ありがとう!」
クロちゃんは、叫んだ!
「皆行くよ!」
みっちゃんの掛け声で、親方達も星鬼に襲いかかった!
クロちゃんも打ち出の小槌をすっくっと、出すと、
星鬼に襲いかかった!
「クロちゃん!危ないよ、みっちゃんに、任せて!
誰か、盆踊り会場に行って、助っ人呼んで来て!」
みっちゃんが叫ぶと、コケシが何匹か、盆踊り会場の方へ
跳ねて行った。
万福商店街は、星鬼と、クロちゃん達の戦いに皆驚いて、
遠巻きに様子を見ていた。
みっちゃんの連続技がさく裂する!
親方と、星明は、星鬼の部下を叩きのめした!
コケシと、二ポポ人形もバキッ!!バキッ!!バキッ!
攻撃した!
「必殺!桜吹雪!」
クロちゃんの必殺技がさく裂した!
「いいぞ!クロちゃん!」
周りの人々は、盛り上がった!
ジリジリと、星鬼達は追い詰められて来た。
すると、星鬼は、いきなり、全ての部下を飲み込んだ!
そして、パワーアップした!
そのパワーに圧倒された!みっちゃんの攻撃も、クロちゃん
の攻撃にもビクともしない!
「強い!どうしよう・・・。」
その時!バコ~ン!バコ~ン!バコ~ン!バコ~ン!
と福ちゃんが連続攻撃した!
「福ちゃん!」
「こいつ、この姿をいつまでも維持できないわよ!
ドンドン攻撃して、弱るの待つよ!
コケシも二ポポ人形も、弱い奴もみんな攻撃するよ!」
福ちゃんも叫んだ!
皆一斉に、星鬼に襲いかかった!
最後に、みっちゃんが、ぶっ叩いた!
星鬼は、部下を皆吐いた。そして、皆に取り押さえられた。
「クロちゃん、どうする?」
みっちゃんが、聞くと。
「ここに置いておいたら、また逃げて、クロちゃんの
打ち出の小槌を狙われるのも困るわ。
・・・水神様あずかってくれないかしら。」
クロちゃんが言うと、
「じゃ、水神に頼むとしよう。」
いつの間にか、大黒のおっちゃんが現れて行った。
「おい、預かってくれるそうだ!明日、カッパ池に連れて
来いだそうだ。」
大黒のおっちゃんが言った。
・・・・おっちゃんいたなら、助けてくれればいいのに。
クロちゃんは、こっぱみじんになった、コケシや
二ポポ人形を見て思った。
「クロちゃん、私達がかたずけるから、盆踊りに
行っていいわよ。」
美咲コケシが言った。
「はい、又べえ」
美咲コケシは、又べえをクロちゃんに渡した。
「ありがとう、美咲さん。」
「クロちゃんの役にたって良かったわ。」
美咲コケシは、笑った。
「あの、あの子達痛くないかしら。」
「大丈夫!コケシやニポポ人形に憑りついていただけ
だから、新しい人形があればいいわ。」
「あ、じゃ!クロちゃんリュックに入っていたお金で
買ってあげる、待っててね、みんな!」
クロちゃんは、壊れたコケシ達に話しかけた。
「クロちゃん、頼むね!」
コケシ達は、言った。
「お~い!戦いに参加したヤツは、並べ!
褒美に、ランク上げてやるぞ!」
大黒のおっちゃんが叫んだ。
妖怪達、砕けた、コケシと、二ポポ人形も並んだ。
あの状態で並ぶなんて、根性だなと、クロちゃんは、思った。
その妖怪達を尻目に、クロちゃんは、宝満神社へ向かった。
盆踊りは、万福商店街の騒ぎで一時中止していた。
クロちゃんが、やって来ると、神主がやって来た。
「クロちゃん、万福商店街の方大丈夫かい?」
神主さんは、クロちゃんが持ってる又べえの首を
見て言った。
「悪い妖怪が逃げ出して暴れたの。でも取り押さえたから
大丈夫よ!」
「じゃ、盆踊り続けようか!妖怪の盆踊りタイムだ!」
神主さんは、急いで、盆踊りの本部の方に行った。
「クロちゃん!」
セヒと、チョコ、パパ、ママ、カダ兄ちゃん、おばあちゃん
が来た。
「大丈夫だった?」
「うん、この間捕まえた妖怪が逃げて、暴れたんだけど、
もう捕まえたわ!」
「あら、又ちゃん、どうしちゃったの?親方達は?」
おばあちゃんが、尋ねた。
「又べえは、悪い妖怪を見張ってて、逃げられて、
酷いめにあったの。
親方達は、警察に事情聴取受けているわ。」
クロちゃんは、言った。
「そうなの、可愛そうに。」
ママが、そう言って、又べえの頭を撫でた。
「ママ・・。」
又べえは、涙目になった。
すると、親方がやって来た。
「又べえ!星鬼が飲み込んでいた中にコレあったぞ。」
親方は、唐草模様の小箱を差し出した。
「あ、又べえの小箱!良かった。ごめんよ、
ポケットに入れていたら、アイツに服の裾を引っ張られて
あの檻に小箱が当たったんだ。」
又べえが謝ると、
「ちゃんと、見張りも出来んのか!役立たず。」
親方は、怒鳴って行ってしまった。
「親方、あんなに怒らなくてもいいのに。」
クロちゃんが、言うと
「仕方がない、又べえのポカだ。
それでも親方は、小箱探して持ってきてくれた。
それ、庭師なら喉から手が出る程欲しいものだ。
親方優しい。」
「うん、優しいね。」
「クロちゃん、ありがとうな。
クロちゃん、悩んでくれたな。
皆又べえ見捨てろって、言ったけど、
クロちゃんは、どうかして、又べえを助けようと、
してくれたな。
又べえは、弱い取るにとらないヤツだ。
ましてや、あの巨大な力を持つ天津甕星の右腕だ。
見捨てられても仕方がない、嬉しかった。」
又べえがしんみりと、言った。
「何言っているの!当り前じゃない!又べえは、
大事な家族よ。」
「クロちゃん、ありがとうな。
又べえは、クロちゃんがいれば、何にでもなれそうな気が
する。
あと、500年は、一緒にいてくれ!
大妖怪になって、役にたつようになるぞ!」
「無理よ、クロちゃん後100年も寿命ないと思うわ。」
クロちゃんは、困ったように言った。
「えええ!」
又べえは、ガッカリした。
「生きてる間は、一緒にいようね。」
クロちゃんは、笑った。
すると、
「クロちゃん!妖怪盆踊りタイムだよ!」
みっちゃんが、叫んだ!
楽し気なお囃子に乗って、妖怪達がソーラン節を踊り出した。
クロちゃん達も一緒になって踊った。
おどろおどろしい妖怪達が楽し気に踊る姿に、周りの人も
大喜びだった。
すると、盆踊り草も連動して、同じ踊りを踊った。
人々は、妖怪盆踊りタイムに、歓喜して、その世は更けて
いった。
次の日、警察の許可も貰って、カッパ池で星鬼達を水神様に
引き渡す事になった。
安西さん、池面さん、白皙さん立ち合いの元、水神様の
お出ましを待った。
「ねえ、クロちゃん、俺、気になる事があるんだ。」
星明が言った。
「なあに、星明。」
「星鬼達は、WEBとか知識は、なかったんだ。
だけど、あのホットコインや、ネットで変な連中を集めてた
だろう?
だから、星鬼達の他に、まだ天津甕星の部下がいるんじゃない
かな。」
「え!」
「油断しない方がいいと、思うんだ。」
星明は、言った。
すると、カッパ池の水が盛り上がり、水神様が姿を現した
かと、思ったら、大きな黒い龍のような妖怪が現れた!
大きな龍を見て、安西さん達は、言葉を失った。
ママ達も龍の姿に見入った。
だが、黒い龍のような妖怪!あんなの見た事がない!
「何!あれ!」
「あれ、天津甕星の手下だよ!星黒だよ!
あいつは、幹部だ!頭もいい。」
みっちゃんが、言った。
「あ、あいつが、ホットコインや、ネットで人集めたり
したの!」
クロちゃんが言うと、
「その通り!知識がある人間を操るのは、造作もない事!
さあ!天津甕星様の腕を返してもらおうか!」
星黒が襲って来た!
バッ!バキッ!バキバキ!星鬼達の檻を壊した!
星鬼達は、飛び出し襲ってきた!
クロちゃんは、打ち出の小槌で、ばっこん!ばっこん!
応戦した!が、あのでかい星黒が相手である!
頭に飛び乗り、ぶっ叩いた!
が、振り落とされた!ドスッ!星明がクロちゃんを受け止めた。
「星明!ありがとう!とんでもない強さね!
そうだ、大黒のおっちゃんは?」
「いないな、自分達で、頑張れって事だよ。」
星明は、周りを見わして言った。
「そんな~!」
「と、いう事は、俺達に倒せるって事だよ!頑張ろう
クロちゃん!ランクあげてもらえるよ!」
星明は、そう言って、クロちゃんを降ろして、
星鬼の剣を受け止めた!
「よこせ!その打ち出の小槌!」
「絶対!嫌~!!!!」
クロちゃんは、連打した、ひたすら、連打!連打!
そして、
「必殺!スクリューウォーター!」
水柱が、突然立ち上がり!水の渦が星黒と、星鬼を飲み込
んだ!
「あれ、必殺技が出ている・・・。」
クロちゃんは、驚いて呆然とした。
「クロちゃん!すご!」
みんなで、弱った星黒、星鬼と部下たちを取り押さえた。
すると、
「頑張ったな、クロちゃん!」
大黒のおっちゃんと、水神様が出て来た。
「おっちゃん達いたなら助けてよ!」
クロちゃんは、ぶー垂れた。
「ほら、レベル上がって、必殺技が増えたぞ!
ご褒美に、更にランクを上げてやるぞ。」
大黒のおっちゃんが、クロちゃんの頭を撫でた。
「どうだ、儂の力の必殺技は、凄いだろう!」
水神様は、言った。
「凄くって、吃驚したわ!」
クロちゃんが言った。
「そうじゃろ!そうじゃろ!」
「水神様、クロちゃんお願いがあるの。」
「なんじゃ?」
「この打ち出の小槌も一緒に預かって。」
「どうしてじゃ?天津甕星の力も含まれいるのに?」
「クロちゃんには、過ぎた力なの。
偶然打ち出の小槌の中に入ってしまって、これがある限り
天津甕星の手下が襲ってきて、皆怪我するの。
無かったら、何も起きないわ。」
クロちゃんは、水神様に頼んだ。
すると、水神様は、人型になって、クロちゃんの打ち出の
小槌を受け取り、それを振った。
すると、天津甕星の右手がゴロンと出て来た。
「じゃ、預かるな。」
そう言って、水神様は、天津甕星の右手を一飲みした。
「レベルが上がったら返すよ。」
と、言った。
「あの、もう一つお願いがあるの、星黒、星鬼と部下達は、
天津甕星と取引して、返してあげて。
奥さんと、子供がいるらしいの。
ウソかもしれないけど、家に帰りたいと思うの。」
「・・・クロちゃん優しいのう。」
「だって、もう争いたくないの。
だから、天津甕星の右手は、そのまま水神様の力にして
いいわ。」
クロちゃんは、星黒達に近づいて
「水神様に頼んだから、天津甕星の所に返してくれるわよ。
帰ったら、天津甕星に言って、天津甕星の右手は、水神様に
あげたからもう、ここにはないって。
又べえは、クロちゃん達を逃がす為に、天津甕星に怪我させて、
右手取っちゃたけど、
天津甕星の手下がクロちゃん神社と、万福商店街で暴れたから
ここの妖怪達も戦って怪我したの!
痛み分けって事で、これで終わりにしてって!伝えて!」
星黒達は、
「解った。」
と、言った。
「水神様、後お願いね。」
そう言うと、
「まかせとけ、それからクロちゃん、レベルの上がり方が
遅いようじゃの、修行するか?」
「え!クロちゃん、別に強くならなくても。」
「ちょっと、修行すると、すぐ強くなるぞ。
丁度夏休みだし。」
「でも、クロちゃん、そろそろ夏休みの宿題の追い込みを
しないといけないから、悪いけど。」
「3日くらい、集中すると、すぐ終わるぞ!
悟空みたいにな。」
「ドラゴンボールを知ってるの?」
「面白いのう、修行するか?うん、明日迎えにくるな。」
と、星黒達を連れて消えてしまった。
「あ、ちょっと待って、夏休みの宿題の追い込みが・・・
行っちゃった。」
まだ、絵とか工作とか、まだ終わってないのに・・・。
「修行楽しみですね!」
「また、水神池に行けるな楽しみ。」
チョコと、セヒは、楽しそうだ。
「兄ちゃん達宿題は?」
「なんとかなるさ!3日くらい。」
・・・何で、夏休みの宿題の追い込みの時期に修行?
なんとなく納得できないクロちゃんだった。