お盆
連日、うだるような暑さがつづいている。
もうすぐお盆なので、ママと、おばあちゃんは、お盆の
飾り付けに勤しんでいた。
「奥さん達は、お盆は実家に帰るの?」
お盆の提灯を出しながら、おばあちゃんが聞いた。
「実家は、福岡なんです、遠いでしょう。お正月だけ帰省
しています。」
ママが答えた。
「それに、主人が実家に行きたがらなくて。
私の父と、主人は馬が合わないんいです。
アメリカ人っていうのも気に入らなかった上に、
子供達の名前の事で、揉めてしまって。」
「名前?」
「子供が生まれたら、父は自分が名前を決めるって、
言ってたんですが。」
「ご主人が、勝手に決めたの?」
「それが、父からメールで、名前が送ってきたのですが、
チョコは、『知古』と書くんですが、『ともふる』
セヒは、『勢陽』と書いて『せいよう』
クロちゃんは、『久路』と書いて『ひさみち』と読むらしい
のですが、メールにフリガナを書いてこなかったんで、
パパがネットで検索して、出て来た読みで届けたんですよ。」
「まあ、そうなの。」
「クラリスは、「カリオストロの城」のクラリスのファン
なんで、譲らなかったんですよ。」
ママは、ため息をついた。
「じゃ、お盆はこっちで過ごすのね。
それじゃ、盆鱈の炊き方を教えてあげるわね。
沢山お御馳走をつくりましょう。」
おばあちゃんは、とても機嫌が良くなった。
クロちゃん神社では、又べえと、親方が忙しそうに
お盆草を植えていた。
お盆草は、釜のフタが空き、亡霊が出てきて、閻魔様が後
で笑っていた。
「何で釜のフタなの?」
「お盆は、地獄の釜のフタが開いて死んだ人の魂が、家に
帰るんだよ。」
又べえが自慢げに説明した。
「天国に行った人は、何で帰ってくるの?」
クロちゃんが聞くと、
「え、天国はどうだろう?う~ん。」
又べえは考えこんだ。
「天国からも帰ってくるんだよ。
天国は極楽浄土って言って、浄土からもご先祖様が、
帰って来るって、言われているんだよ。」
横から星明が言った。
「星明は、物知りね。さすが学者さんだっただけあるわ。」
クロちゃんが尊敬の眼差しで見た。
「わからない事があったら、何でも聞いてくれ。」
星明は、言った。
ふと、本堂を見ると、熱心に拝んでいる人がいる。
あれ、見覚えが・・・ママの方のじっちゃんだ!
「じっちゃん!来たの?」
クロちゃんが叫ぶと、
「久路!大きくなったな!」
「久路って、言われると誰かと思うわ!」
クロちゃんが言うと、
「クロちゃんのじっちゃんかい、今日は、俺は星明。
クロちゃんの友達だ。
人間だった時は、学者だったんだ、何でも聞いてくれ!」
「俺は又べえ、庭師で、このお盆草を作ったんだ。
あそこの怖い顔をした妖怪が、源太親方だ。」
妖怪達が自己紹介をした。
「初めて来たが、いつの間に久路、生き神様になったんだ
?妖怪が友達?コケシや二ポポ人形が動いている。
動く彫刻、妖怪御輿・・・テレビ見て驚いたよ。
で、様子を見に来たんだ。」
「で、ばあちゃんは?どこ?」
クロちゃんは、ばあちゃんを探した。
「ばあちゃんは、久路の家にいる。
あんまり立派な家を借りてるんで、驚いたよ!」
「そうなの、櫻子おばあちゃんがタダで貸してくれて
いるの。」
「さっき、ママから聞いた。座敷童子本当にいるんだな。」
じっちゃんが言うと、
「みっちゃんだよ。クロちゃんン家の大家さん
の所の座敷童子だよ。よろしくね。」
みっちゃんがいきなり出てきた。
「おや、可愛らしいね。よろしくな。」
じっちゃんは、妖怪にあんまり抵抗が、ないみたいだった。
「おや、クロちゃん!アイス最中食べていかないかい?」
鶴屋千年堂の前を通ると、鶴ちゃんが話しかけた。
そして、沢山アイス最中をお土産に貰った。
亀ちゃんも負けじと、アイスを挟んだアイスカステラを
くれた。と、こんな具合で、じっちゃんと、クロちゃん
みっちゃんは両手に、沢山お菓子や、餃子や、お肉や
魚、野菜、お惣菜を貰った。
「こんなに貰うなら、ママは買い物行かなくていいなあ。」
じっちゃんは、驚いていた。
「ただいま!」
家に着くと、クロちゃんは、背負ったスヌーピーリュック
を降ろして、テーブルに中のお金を出した。
殆ど一万円札で、五千円札、千円札、少し硬貨が入って
いた。
「みんな勝手に、お金入れていくの!クロちゃんの
リュックにお金入れると、お願いが叶うってデマが
でまわってるの。重かったわ。」
クロちゃんは、ため息をついた。
「まあ、毎回こんな大金を貰ってくるの!凄いわね。」
ばあちゃんも、驚いていた。
「おやつの淡雪かんと、シャーベットがあるわよ。
クロちゃんは、妖怪の皆におやつ持っていってね。」
ママが言った。
「あの、白玉団子もロクに作れなくて、お料理も全然だった
のに、ママ凄いわね。」
ばあちゃんは、感心していた。
「本当に、花嫁修業までして頂いて、なんてお礼を言って
いいやら。」
ばあちゃんは、お礼を言った。
「今晩は、腕を振るうから楽しみにしててくださいね。」
おばあちゃんは、笑った。
おばあちゃんの家の道場で、パパは真剣を使って稽古を
していた。
とても綺麗な殺陣だ、重い真剣をすうっと踊るように
日本刀を振っていた。
「パパ!じいちゃん達が来たよ!」
クロちゃんが、じっちゃんを連れて来た。
「あ、お義父さん、いらっしゃい。」
「あ、元気にしてるか。真剣なんぞ振り回しているのか。
なかなかいい太刀筋じゃないか。
相変わらず、日本かぶれか?」
「あ、珍しく褒めてくれるんですね!確かお義父さんも
剣道してらっしゃいましたね。
是非、お手本見せてください。」
パパは、ニコニコしながら刀を渡した。
じっちゃんは、刀を持った手が沈んだ。
「真剣は、結構重いでしょう?なかなかうまく扱え
なくて、木刀とは違いますね。」
じっちゃんは、刀を振ったが、動きが鈍い。
少し顔色も悪い・・・重いんだ。
「・・・じっちゃん、重いの?無理しなくていいのよ。」
「あ、それいい刀でしょう?クロちゃんに憑いている。
大黒様から頂いた『聖福剣』と、言うんです。
落とさないでくださいね。
It's something that an old man shouldn't do.
(年寄りの冷や水だ)」
・・・じっちゃん喧嘩売るから、パパも少しは
折れればいいのに。
「なんか、今、悪口いったな。」
「He can't speak English but he knows bad things
(英語 は話せないのに悪口はわかるんだな)
・・・そんな事は、ないですよ。」
パパは、ニコニコしている。・・・気まずい。
「ふん、その腹に一物態度が相変わらずだな。」
と、その時、グキッ!じっちゃんの顔色が変わった!
「・・・痛っ!」
「ぎっくり腰みたいですね、大丈夫ですか?
It ’s not that you do n’t say
(としよりが無理するから 言わない事じゃない)
病院に、行きましょう。背負いますね。」
パパは、四の五の言わさず、じっちゃんを背負った。
「歳さんに見せると、いいわ!名医なの。」
おばあちゃんン家では、歳さんが薬を調合していた。
そこへ
「歳さん!クロちゃんのじっちゃんが、ぎっくり腰に
なっちゃたの。」
クロちゃんと、パパがじっちゃんを背負ってやって来た。
「あ、クロちゃん!それは大変だね。
そこに座って下さい。」
歳さんは、じっちゃんを座らせた。
「え、妖怪!?」
じっちゃんが驚ていると、
「歳さんは、名医なの!クロちゃん神社の裏の神威総合病院
の創始者の先生のお父さんなの。」
クロちゃんがそう言ったので、じいちゃんは納得した。
「何をやってて、こうなったんですか?」
「真剣を振っていたら、いきなり、グキッっとなったんだ。」
歳さんは、パパをチラッとと見て
「なるほど。」
と、呟いて、歳さんは、じっちゃんの背中から腰をポンポンと、
軽く叩いた。
すると、痛みがす~っとひいた。
「どうですか?」
「こりゃ驚いた!全然痛くないぞ!」
じっちゃんが驚いていると、
「ダメでしょう、真剣は、1キロ前後あるんです。
ちゃんと訓練してない人が、扱うからです、気を付けて下さい
。」
じっちゃんは、ショゲた。
「それから、パパ!そんな意地の悪い事をすると、大黒様に
聖福剣取り返されますよ!
神様からの頂き物なんですから、クロちゃんを守れなくなり
ますよ。
折角、お義父様が、はるばるいらしているのですから、
仲良くして下さい。
ほら、クロちゃんが困っている。」
そう言って、歳さんは、クロちゃんの頭を撫でた。
「すいません、大人げなかったですね。」
パパは、謝った。
・・・が、気まずい。パパ離れてればいいのに。
クロちゃんは庭を案内した。
「これが、カッパ池よ、与作と、お富と子供達。」
「カッパって初めて見るよ!本当にいるんだね、
よろしくな。」
「亭主は、鰻、アタシは、ニジマスの穴場を知ってる
んですよ。
今日も沢山獲って来たから、今夜沢山召し上がって
下さいね。」
お富が言った。足元で子ガッパがキャーキャー遊んで
いる。
「可愛いな、よしよし。」
じっちゃんは、子ガッパを撫でた。
桜鳥は、もう若鳥になっていた。
「綺麗な鳥だろう!俺名前つけたんだ!あれは、ピーコ、
ポッピー、ロッキー、ボビー、サム、ピー・・・。」
と、セヒは、桜鳥に全部に名前を付けて可愛がっていた。
「綺麗な鳥だな、初めてみるぞ!」
じっちゃんは、目を細めて見ていた。
「卵もピンクなの!家にあるから見せてあげるわね。」
それから、クロちゃんは、おばあちゃんン家の畑に
連れて行った。
「これがゴンベエ、野菜を作っているの、あの桜牛の
お世話もしているの。」
「はい、桜牛のミルクと、トマトだよ。」
ゴンベエは、ミルクと、トマトを差し出した。
じっちゃんは、ミルクを飲んだ、濃厚でほんのり桜の
香りがした。
トマトもとても味が濃かった。
「うまいなあ、こんなうまい牛乳は初めてだ!
トマトも味が濃くてうまい!」
ゴンベエは、嬉しそうだった。
「変わった牛だな。」
「幽世の桜の大樹の神様に、山田パン屋のおっちゃんが
もらったの、この世の牛じゃないの。
幽世のパンシリーズは、この牛のミルクを使っているの。」
「そうか、貴重な物なんだな。・・・ところで、龍は、
どこにいるんだ?」
「あ、たっちゃんは、今、クロちゃんの髪の毛の中で寝て
るの、赤ちゃんだから殆ど寝てるの。」
「あのデカイ龍が、そんなに小さくなるのか!?
不思議だな。」
じっちゃんは、残念そうに言った。
すると、又べえが向こうから瓢箪を持って、やって来た。
「クロちゃ~ん!これ又べえが作った酒だ!
うまいぞ!」
そう言うと、又べえは、瓢箪の上の部分をパキッと、折って
瓢箪の酒の香りを嗅がせた。
すこし甘いフルーツのような、何とも言えないいい香りだっ
た。
「いい香りだ。」
パパと、じっちゃんは、香りを嗅いで驚いた。
「だろう、これ飲んで仲良くしてくれ。
肴も色々ばあちゃんと、ママに言って用意してもらうから。」
又べえは、そう言って二人をクロちゃんの家へ連れて行った。
家に着くと、ママと、おばあちゃんが肴を色々運んで来た。
鰻のかば焼き、ニジマスのお刺身、焼き魚、桜鳥の焼き鳥、
桜鳥の卵焼き、カラスミ、イカの黄金焼き、ヤマメの塩焼き。
「さ、二人共飲んでくれ。」
又べえの注いだ酒を二人は、飲んだ。
芳醇で、甘いフルーツのような、花のような香りで、
キリリと、すっきりした辛口の酒だった。
「うまいなあ、ほんのり花の香りのする酒だ。」
「ニジマスのお刺身も、甘くて美味しいですよ。
お酒によく合います。
お義父さんは、漢字には強いから、羨ましいです。」
「いや、いや、背が高く、男前で、頭がよくて、有名外資の
会社に勤めているエリート、自慢の婿だよ。」
パパは、褒められると、思ってなくて驚いた!
「え!ありがとうございます!まさか褒めて頂けるとは!?
お義父さんも日本のいい親父と言う感じで、
自慢のお義父さんですよ。」
パパから、すらすらと、誉め言葉が出始めてきた。
「子供の名前すいませんね、読み方聞けば良かったのですが、
中学の時、両親の仕事の関係で、日本に来たんですが。
私は、日本に来るまでに、日本語を覚えていたので、
日本の中学に入ったのですが、アメリカ人と虐められました。
で、倍返しで仕返ししてやりましたが、
外人とかアメリカ人と言われると、差別されて馬鹿にされて
いるようで意地になるんですね。」
パパは、ポツリと言った。
「儂も悪かった、何も貶す所が見つからないんで、ついな。
娘を盗られたようでな。悪かった。
アンタは、自慢の婿だ!娘はいい人を見つけた。」
「お義父さん、ありがとうございます!
お義父さんは、いいお義父さんです!漢です!
釣りも、囲碁も、将棋も得意で羨ましいです!」
「釣りも、囲碁も、将棋も今度おしえてやるな!
アンタならすぐに免許皆伝だ!」
なんか、二人は褒めあった。
「凄いわ、お酒っていいもんね。」
クロちゃんが言うと、
「又べえの名酒『ほめ殺し』だ、あれ飲むと、お互い褒めたく
て、褒めたくて、仕方が無くなるんだ。
これで、仲良くなってくれるといいな。」
又べえは、言った。
「え!そうなの凄いわ!流石又ちゃん!」
おばあちゃんの目がキラりと、光った!
「また、売り出すの?」
「まさか、商談や、決め事をスムーズに運ぶ時使えるわね。
大事な時にコッソリ使うわ。
だって、自分が飲まされて、不利になったら困るもの。
料理や、お菓子や、飲み物に混ぜてもいいわね、
実験しましょ。」
おばあちゃんは、考えを巡らせていた。
「パパと、じっちゃんが仲良くお酒飲むなんて、本当に
又べえお手柄ね。」
クロちゃんは、又べえにコソッと囁いた。
そして、クロちゃんは、パパと、じっちゃんの間に座って、
肴を食べた。
それから、パパが肴を食べて、じっちゃんと話している時、
くぴっ!と、酒を飲んだ。
花のようなフルーツのような芳醇な香り、体に染み渡った。
チョコは、
「じっちゃん!チョコお祭りで、色々買いたいです。」
と、おこずかいをねだっている。
セヒも焼き鳥を頬張っていた。
「旨いな、この焼き鳥!ジューシーで少し花の香りがする。」
セヒが喜んで焼き鳥を食べていると、
「じっちゃん、桜鳥の雄は、大きくなると、旅に出るんだ。
今日、ロッキーが旅に出たんだ。」
セヒは寂しそうに言った。
・・・ロッキーは、今、セヒ兄ちゃんが食べてる。
「内緒にしとかないと、煩いですよ!あの話信じるなんて、
あいつが馬鹿で助かります。」
そう言ってチョコは、焼き鳥を食べた。
セヒの事を気の毒に思いながら、じっちゃんのおちょこを
くぴっ!うまっvvパパのおちょこをくぴっ!うまっ!
クロちゃんは、気分良く打ち出の小槌を振り、振り
踊り出した。
「あ~よい!よい!あ~よい!よい!」
「あ~こいつ酒飲んでます!」
「クロちゃんダメだろう!」
パパがクロちゃんを叱るが、クロちゃんは、どこ吹く風
で、益々調子づいて踊り出した!打ち出の小槌を
振る度に、一万円、五千円、千円と、お金がバサバサと
出て来る。
「また、景気のいい踊りだな。」
じっちゃんは、驚いていた。
「クロちゃん、もっと踊れ!」
カダ兄ちゃんは囃し立てた。
「クロちゃん、あれ!ま!」
とばあちゃんは、驚き。
ママは、お金をパッパッと出すクロちゃんをあきれて
見ていた。
おばあちゃんは、笑っていた。
いつの間にか、大黒のおっちゃんや、親方達もやって来て、
楽しい酒宴になった。
次の日、酔いが覚め、また、パパとじっちゃんは、仲良く
はならなかった。
「昨日は、仲良しだったのに、今日は、ロクに話も
しないわ。」
「また、何か考えるぞ、う~ん。」
又べえは、考え込んだ。
「お~い!クロちゃん!精霊流しに行くぞ。」
じっちゃんは、クロちゃんを呼んだ。
「え!久路って呼ばないの?」
「不本意だが、パパも慣れない日本で苦労したんだ。
漢字の読み方も変だが、パパなりにいい名前と
思って付けた名前だろうからな。」
「うん、ありがとう。」
クロちゃんは、笑った。
クロちゃん神社の近くの川で、精霊流しが行われていた。
「こうやって、御先祖様が帰って行くんだよ。」
じっちゃんが言った。
「ふ~ん、この先は極楽浄土なのね。」
クロちゃんが、言うと。
「いや、海に続いている。途中で網が張ってあって
回収されるんだ、環境破壊になるからね。
でも、伝統行事なんだよ。」
パパが説明してくれた。
夜空の下、川を流れて行く鐘楼は美しかった。
「クロちゃん!」
美咲コケシが話しかけて来た。
「あ、美咲さん、もうコケシ慣れた?」
「うん、コケシライフを楽しんでいるわ!何かあったら
手伝うわよ!」
「ありがとう、気にしないで、楽しく過ごしてね。」
クロちゃんは、言った。
「綺麗ね・・・私の家族も鐘楼を流してくれているんだろ
うな。」
美咲は、家族を探したが、思わぬ人物を見つけて驚いた。
「あ、クロちゃん!」
誠が鐘楼を持って、やって来た。
「誠さん、来たの。」
「うん、美咲ちゃんの鐘楼を流そうと思って。」
美咲と書いた、鐘楼を誠は見せた。
「じゃ、一緒に流そうね、クロちゃん達は、曾爺ちゃん
と、曾ばあちゃんの鐘楼を流すの。」
すると誠は、足元をピョンピョン飛ぶコケシが気になった。
「このコケシ、なんか美咲ちゃんに似ている。」
「え!何で!」
クロちゃんは、驚いた!わかるの!?
美咲コケシもぴょ~んと飛び上がった!
「何か、他のコケシと違う動きなんだよね。
何か、美咲ちゃん他の人と動きが違うだよね。
なんて、言うか、面白い動きするんだよ。」
そう言えば、不思議な動きする人だよね。
「そうなんだ・・・ここで流さない。」
「うん、そうだね。・・・美咲ちゃん、ここで流すよ、
さようなら・・・流れて行くね。」
「そうね・・・。」
流れて行く鐘楼をしばらく見送って、
「じゃ、クロちゃんまた、クロちゃん神社で会った時は、
よろしく、さようなら。」
誠は、手を振って、帰って行った。
「誠さん、ありがとう。」
美咲コケシは、それをいつまでも見送った。
それを見て、クロちゃんは切ないなと思った。
次の日、じっちゃんは、万福商店街で、碁石と、碁盤、
将棋盤と将棋駒を買って来て、パパと碁を打ったり、
将棋をを指したりした。
沢山話をしている訳じゃないけど、少し楽しそうだ。
ま、おばあちゃんが、名酒『ほめ殺し』を二人の
ジュースや、お菓子にコッソリ混ぜているから、
かもしれないけど。
「香りが強いから、ハーブティーとかもいいかも~♪」
・・・おばあちゃんは、二人で実験して楽しそうである。
パパは、車運転するから、昼間は余り実験しないと
いいけど・・・と思うクロちゃんだった。