水神池
あじさいの花が日ごとの長雨に色づいてきた。
最近、親方がカッパ池の水を台所にひいてくれて、
台所の竹で作った、蛇口からカッパ池の水を使え
るようにしてくれた。
美味しいお水は、料理や、お菓子を美味しくして
くれた。
それと、もう一つ効果があった。
「この水飲むと、疲れが取れるのよね。」
おばあちゃんが、言った。
「そうなんですよ!不思議ですね。」
と、パパが言った。
「これ使えるわね!」
キラリ!とおばあちゃんの目が光った!
そして、『クロちゃん神社』では、カッパ池の水を
売り出した。
『クロちゃんの水コップ1杯100円!』
流石おばあちゃん!ぼったくりの商売が旨い!と
クロちゃんは、感心した。
『クロちゃんの水』は、大人気になった、連日長蛇
の列である、疲れたサラリーマン、
OL、お年寄り、色んな人々が疲れを癒しに、
クロちゃんの水を求めた。
「本当に、疲れが取れるなら、ぼったくりじゃない
わ。」
おばあちゃんが言った。
最近は、お風呂にもひいたり、庭の水撒きにも使って
いる。
こんなにお水使って、水神様にお水代請求されない
といいけど、クロちゃんは、密かに心配した。
「大丈夫よ!クロちゃんの水は、有料だから、
請求されたら、そこから補填すればいいわ。」
と、おばあちゃんは、笑った。
「水を瓶入りにしないのはね、ネットで転売されない
ようによ。」
こうでないと、儲からないのね。
やっぱ凄い人だとクロちゃんは、思った。
おばあちゃんン家で、妖怪達とおやつを食べている
時、親方が言った。
「次の土日に、水神様のお庭の手入れをする予定
なんじゃが、クロちゃん一緒に行くかい?」
「え!何でクロちゃん?・・・お水代の請求かしら。」
心配げにクロちゃんは、言った。
「水代の請求?何だそれ?水神様に、今度来るときは、
クロちゃんを連れて来るように、言われたからじゃ。」
親方は、言った。
「何でクロちゃん?」
「大黒様が加護している、酒を飲んだら面白い踊りを
踊るらしいので、見て見たいらしい。
ほら、隔離世の大桜の大老が、話していたらしいぞ。」
親方が言うと、
「そんなに面白かったかしら?」
クロちゃんが言うと、
「最高に面白かったよ。」
みっちゃんが笑った。
「ほら、こんな感じだ!アラエッサッサ~~♪」
又べえが踊り出した!思わずおかしくて噴出したが、
「クロちゃんは、もっと面白かったぞ!」
親方が言った。
「あのご褒美は、御馳走だけじゃなく、あの愉快な
踊りのご褒美だと思うよ。」
歳さんまでそう言った。
・・・あれより面白い?・・・微妙な気持ちだ。
「その踊りを披露すると、水神も何かご褒美くれる
んじゃないか。」
キウィのクリーム大福を飲み込みながら、大黒
のおっちゃんが言った。
「じゃ、次の土日に行くからな。」
親方が言った。
「と、言う訳で、次の土日は、水神様の水神池に
行く事になったの。」
クロちゃんは、家族に言った。
「まあ、水神池どんな所かしら、何着ていこうか
しら。」
ママは、はしゃいでいる。
「まあ、お弁当のおかずは、何にしょうかしら。」
おばあちゃん、花見じゃないのよ。
「楽しみだな、どんな動物いるかな!」
「また、持って帰ろうな。」
兄ちゃん達はしゃいでいる。
「どんなところか楽しみだね。」
「綺麗な所なんだろうね。」
カダにいちゃん、パパ、言いにくいんだけど、
「あのね、招待されているのは、クロちゃんだけ
だから」
クロちゃんが言いにくそうに、言った。
「まあ、そうなの残念!クロちゃん一人でお泊り
できるかしら?誰かついて行って、廊下で
見守らないといけないわね。」
ママは言った。
あ、そういえば、一人でお泊りした事ない。
行くのは、親方と、大黒のおっちゃんか。
クロちゃんは、考えこんだ。
「私は、クラリスがいるから、パパついて
いってあげて。」
ママが言うと、
「勿論だ!廊下で見守るよ。」
パパは、いった。
「兄ちゃんだけだと、暇だろうから僕もついて
いくよ。」
カダ兄ちゃんが言った。
「クロちゃんは、チョコと、セヒがいないと、
つまりませんよ!」
「勿論!俺達もいくぞ!」
セヒ兄ちゃんが言った。
「親方に、何人まで行っていいか、聞いてみて?」
おばあちゃんが言った。
皆行く気満々である、大丈夫かしら?
しかも、客間に入れなかったら、廊下で宴会する
気だわ。
「親方、何人まで連れてっていいの?」
クロちゃんが聞くと、
「何人来る気じゃ?」
親方が聞くと、
「たぶん、家族全部と、おばあちゃん。」
クロちゃんが言うと、
「儂と違って、クロちゃんは、神様待遇だろうから、
御馳走も一番いいのだろうし、寝床も客間の一番
いい部屋で、二重真綿布団だと思うからな。
大人数で行っていいやら。」
と親方は、言った。
「親方達と同じ部屋で、御馳走も一番下のでいいし、
なんなら、お弁当持参で行くし、
お布団もせんべい布団でいいから、みんなで
行ったらダメかしら?」
クロちゃんは聞いた。
「ホテルのプランじゃないから、ランク落とせば
いいってもんじゃないと思うが。」
親方は、考えこんだ。
結局、女性陣は、お留守番で男性陣だけ行く事に
なった。
「気を付けて行ってくるのよ。」
おばあちゃんが言った。
「いい子にしてるのよ。」
ママが言った。
「お土産忘れないでね~!」
お手伝いさん達が言った。
「アンタしっかりね!」
お富が子ガッパと、見送った。
親方の軽トラにみんな乗って、水神池へ向かった。
進んで行くと、ぼう~と光って!大きな滝!
大きな池が見えた、池がさ~っと割れて中から道が
できた。
「ここが水神様の池かあ。」
沢山の魚や、エビ、カニの妖怪が出迎えた。
中を案内してくれたのは、人魚だった。
見事な庭は、海藻と、草花が交じり合った不思議
な庭だった。
「あれ、親方が手入れしたの?すごいね!」
クロちゃんが聞くと、
「そうじゃよ!いいだろ!」
親方は、自慢げに言った。
しばらく行くと、でっかい龍が待っていた。
「よう!水神久しぶりだな!」
大黒のおっちゃんが、いつの間にか来て言った。
「よく来たな!大黒天!その子がクロちゃんか?」
水神様が聞いた。
クロちゃんは、でかい!と、水神様に圧倒されながら、
「初めまして、クロちゃんです!家族とお招き頂き
ありがとうございます。」
と、いうとペコリと頭を下げた。
「良い子じゃ、よく来たな!」
水神様は、中に招き入れてくれた。
中は、見た事のない御馳走が、沢山並べられていた。
凄いわ!
中に入ると、親方は、水神様の信玄袋から、重箱や、
菓子箱、パンの袋を次々に出した。
おばあちゃんと、ママと、お手伝いさん達が作って
くれた御馳走と、亀屋と鶴屋、シャルルのお菓子、
山田パン屋のパンである。
「大奥さんから言付かってきた、お土産ですじゃ。」
親方は、水神様に渡した。
「ありがとな!皆楽しくやってくれ!」
水神様が言うと、皆楽しく食べ始めた!
「さ、クロちゃん飲め!」
いつの間にか人型のおっちゃんになった水神様が、
酒を勧めた。
「え、お酒は20歳からだけど。」
「ええぞ!ここは、人間界じゃないからな!
ワハハ!」
・・・そうね、少しだけ・・・クピッ!ウマ!
「あ~美味しい!」
「あ、踊るかあ~!」
と、大黒のおっちゃんと、クロちゃんは、踊り出し
た。
歯をむき出したり、目を大きく開いて、おどけた
表情で、腹を出したり、引っ込めたりと、
滅茶苦茶面白い!いつの間にか、又べえと、チョコ
も加わり!盛り上がった!
「ええぞ!!ええぞ!!」
水神様は、大喜びで、龍になって、クロちゃんを頭に
乗せて飛び回った!
「いいな、クロちゃん、チョコも頑張ったのに。」
チョコが不満げに言った。
「クロちゃん程面白くないからな。」
セヒは、笑った。
「クロちゃん!最高に面白かったよ!」
みっちゃんが笑った。
「愉快愉快!コレやるぞ!」
水神様は、ひげをプチッ!と、抜くと、ひげが小さな龍に
なってクネクネと、飛んでクロちゃんの手に止まった!
「わあ!凄い!ありがとう!名前はね、たっちゃん!」
クロちゃんは、笑った。
「たっちゃんに、儂の加護を与えるな。」
そう言って、大黒のおっちゃんは、たっちゃんを
撫でた。
たっちゃんは、そのままクロちゃんの髪の中に、
もぐり込んだ。
「可愛いのう!コレもやるぞ!」
水神様は、宝珠をクロちゃんにあげた。
七色に光るそれは、とても綺麗だった。
「ありがとう!とても綺麗!」
「可愛いのう!ほれ、打ち出の小槌を出せ!」
言われるままに、打ち出の小槌を出すと、宝珠は、
打ち出の小槌の中に吸い込まれた。
「落とすと、いけないからな、これは、何でも1つ
願いが叶う、よく考えて使え!」
それから打ち出の小槌をなでると、ポウッと光った。
「これで、我の加護を与えた!新しい技が出るぞ!」
水神様が言うと、
「どんな技?」
クロちゃんが尋ねると、
「それは、出た時のお楽しみじゃ!はっはっ!」
と水神様は、笑った。
技の出し方については、謎である。
パパは、酔っ払って英語で、ペラペラ話している。
カダ兄ちゃんは、喰いまくっているな。
歳さん、ゴンベエ、又べえ、与作は、楽しそうに
飲んでいる。
・・・あれ?親方は?
クロちゃんは、庭を見ると、親方は木に登って剪定を
していた。
クロちゃんは、庭に向かって行った。
「親方!一緒に飲まないの?」
クロちゃんが聞くと、
「儂は、仕事しにきたんでな、終わったら飲むよ。」
親方は、言った。
「そうなんだ、綺麗なお庭!お散歩するわ!」
クロちゃんが歩き出すと、
「クロちゃん!あっちの松の柵より向こうには、行く
なよ。悪い神様の領域じゃからな!」
親方は、クロちゃんを呼び止めて言った。
「悪い神様?」
クロちゃんが聞くと、
「そう、神様同士の約束事があって、何かやらかして
も水神様や、大黒天様は助けに行けんから、
他のチビ達も言っとけ。」
親方は、言った。
「わかったわ、あ!この辺りに売店はないかしら?」
クロちゃんが聞いた。
「売店?ないぞ。」
「困ったわ、鶴屋や、亀屋、山田パン屋のおっちゃん
に、お土産に、ここのお菓子か、お菓子の材料を
頼まれたの。」
クロちゃんが困っていると、
「ああ、それは、儂が調達しとくから大丈夫じゃ。
いい子で、御馳走食べて、遊んどけ!」
親方は言った。
「うん、ありがとう。」
クロちゃんは、笑った。
不思議なお庭、花も葉っぱも、海藻のような感じだ。
「クロちゃん!ここにいた!」
みっちゃんが、走って来た。
「水神様が探しているよ!クロちゃんがいないと、
盛り上がらないよ!」
「あ、ごめん!今、行く!」
クロちゃんは、みっちゃんと水神様の所へ戻った。
「あれ?チョコとセヒは一緒じゃないのか?」
パパが言った。
「え、会わなかったけど。」
「まだ、戻ってないの?探してくる!」
みっちゃんが走り出した。
「あ、クロちゃんも行く!」
クロちゃんも追っかけた。
「クロちゃん!どこ!」
「クロちゃん!お~い!」
チョコと、セヒは、クロちゃんを探していた。
すると、目の前をウロコだらけの馬が走って
行った。
「あ、すげ~!」
「あんなのいるんですね!」
と、二人はウロコだらけの馬を追いかけて、松の柵の
向こうへ走って行った。
「チョコ兄ちゃん!セヒ兄ちゃん!」
「チョ~コ!セヒ~!」
クロちゃんと、みっちゃんが二人を探しに来た。
「これ、ケルピー(水馬)が踏んだ跡だ。
こっちは、子供が踏んだ跡だ。
あ、あの二人この先に行ったんじゃ!」
下の草が、踏み倒されているのをみっちゃんは、
見て行った。
「え!この先行っちゃ駄目なんでしょう!」
クロちゃんが叫ぶと、
「早く探さないと、ケルピーは人肉が大好きなんだ。」
みっちゃんは、言った。
「え!ええ!!!」
クロちゃんは驚いて叫んだ!
「親方!」
みっちゃんは叫んだ!
すると、向こうから親方が走って来た。
「どうした!」
「セヒと、チョコが、ケルピーを追いかけて、柵の
向こうに行ったみたいなの!
クロちゃんと探しに行くから、皆に応援頼んで!」
みっちゃんが叫んだ!
「わかった!皆呼んでくるぞ!」
親方は、走って行った。
クロちゃんと、みっちゃんが歩いて行っていると、
「クロちゃん~!」
又べえが、追っかけてきた。
「あ、又べえ!皆は?」
「又べえは、クロちゃんを探していたら、親方が
一緒にセヒと、チョコを探せって!」
又べえが言った。
「又べえは、鼻が利くからまかせろ!あっちだ!」
又べえが指刺した。
「じゃ、あっちに行こう!」
みっちゃんがそう言って、みんな歩き始めた。
しばらくすると、
「なんか、臭うな。」
又べえが言うと、
後ろから、ウロコに覆われたライオンが現れた!
「ガオォ!!」
こっちに、走ってくる!
「又べえは、クロちゃんを連れて逃げて!みっち
ゃんは、あの水獅子ここで食い止める!」
みっちゃんは、大槌を取り出した。
「え!みっちゃん!」
クロちゃんが叫ぶと、
「大丈夫!みっちゃん強い!又べえ!クロちゃん
連れて、行け!早く!」
そう言って、みっちゃんは、象のように大きな
水獅子に立ち向かって行った!
「クロちゃん行くぞ!大丈夫!みっちゃんは、
又べえ達の中で一番強い!」
又べえが、クロちゃんの手を引っ張って、走り出
した!
「又べえ!クロちゃんが、食べられそうになったら
お前が食べられるだよ!」
え!!ちょっと、みっちゃん!
「無理だ!トンカツがあるのに、千切りキャベツを
食べるか?走ってでもトンカツ食べるぞ!」
又べえは、叫んだ!
・・・クロちゃんの方が美味しそうって事?・・・
嬉しくないな。
「あの馬どこ行った?」
セヒが言うと、
「あ!いた!あっちです!」
チョコが見つけて、走って行った。
ケルピーが岩のそばで、止まったので、二人は、そろそろ
近づいた。
「おい!沢山いるぞ!!」
「わ!いつの間に!」
いつの間にか周りはケルピーが一杯だった!
そして、二人を追いかけて来た!
「わあああ~~~!!」
「わあああぁあ!!!」
二人の悲鳴が響いた!
「あ!兄ちゃん達の声!」
クロちゃんは叫んだ!
「クロちゃん!背中に摑まれ!」
又べえは、クロちゃんを背負って、ポ~ン!と飛んだ!
「え!わ~っ!すご~い!」
そしてムササビのように飛んだ!
いつの間にか、手から足にムササビのような膜が出来
てる。
「ムササビ又べえだ!チョコと、セヒのとこへ急ぐぞ
!」
又べえは、シュピ~ン!と飛んで二人の元へ急いだ!
二人は、もう周りをケルピーに囲まれいた。
「わああxx!!」
「わああxxxx!!」
もう、半泣きである。
ケルピーは、よだれを垂らしながら突進してきた。
もうだめだ!そう思った時、
クロちゃんと、又べえが降り立った!
「兄ちゃん!助けにきたわ!」
「あ!クロちゃん!」
「クロちゃん!」
ばっこ~ん!!ばっこ~ん!!ばっこ~ん!!
次々に、クロちゃんが打ち出の小槌で
打倒した!
「すげ!クロちゃん!」
「クロちゃん凄い!」
又べえも、よたたと、ハサミで応戦した!
が、打倒しても、打倒しても、ケルピーは
やって来た!段々くろちゃんは、疲れてきた。
ちょっと、ヨロッと、体がフラツいた。
「クロちゃん大丈夫か?その打ち出の小槌が
俺でも使えるなら、かわるぞ!」
セヒが心配そうに言った。
「多分、クロちゃんしか使えないと思うわ。
兄ちゃん達は、逃げて!クロちゃんだけなら、
又べえが飛んで逃げてくれるから!」
クロちゃんは、叫んだ!
「お前達、早くにげろ!又べえは弱いけど、
逃げ足は速い!クロちゃん連れて飛んで逃げる!」
又べえも叫んだ!
「よし、解った!」
二人は、叫んだ時!
一際大きいケルピーがクロちゃんに襲い掛かった!
「わああ!!」
思わずクロちゃんは、思いっきり打ち出の小槌を
降り下ろした!
すると、桜吹雪がおきてケルピーを一掃してしまった。
「すげ~!」
「やった!」
「クロちゃん、すげ~!」
セヒ、チョコ、又べえは、思わず叫んだ!
クロちゃんは、ぽか~んとしていた。
「何でいきなり、あんな大技がでたの???」
クロちゃんが呟くと、
「クロちゃんが、沢山妖怪や魔物を倒したから
ランクが上がったんだよ!」
又べえが、言った。
「沢山妖怪や魔物を倒すと、ランクが上がって大技
がでるのね・・・ロールプレイングゲームみたい。」
クロちゃんが呟くと、
「これは、お前がやったのか?」
振り向くと、黒い着流しを着た背の高い男の人がいた。
「ごめんなさい、ケルピーに襲われて、怖かったの。」
クロちゃんが謝ると、
「ふ~ん、なるほど。」
クロちゃんの顔を除きこんだ。・・・綺麗な顔・・・。
「怖かっただろう、家で休んでおゆき、近くだから。」
そう言って笑った。
・・・優しそうだけど。
「良かった、クタクタだ。」
「喉カラカラです。」
兄ちゃん達は、動けそうにないし、クロちゃんも
クタクタだ、少し休みたい。
クロちゃん達は、背の高い男の人の家へ行く事になった。
「あの、クロちゃんと言います。兄ちゃん名前は?」
クロちゃんは、尋ねた。
「私は、天津甕星と言うのだよ。」
天津甕星は答えた。
しばらく行くと、黒い城が見えて来た。
「あれが私の家だ。」
天津甕星は、言った。
・・え!お城が家!って事は、悪い神様!・・・。
中では、沢山の妖怪が出迎えてくれた。
客間に通されると、次々に御馳走が出てきた。
「さ、沢山お食べ。」
天津甕星は、言った。
「うわ~うまそう!」
「あ、ジュース!喉カラカラです!」
セヒと、チョコが、御馳走に手を出そうとすると、
「待って、兄ちゃん!」
クロちゃんが叫んだ!
「何で食べちゃ駄目なんだ!」
「そうです!何で!」
兄ちゃん達は、言った。
「松の柵あったでしょう?あそこから向こうは、悪い
神様の領域だから入っちゃ駄目って、言われてたの!」
クロちゃんは、天津甕星を見た。
「悪い神様?酷いな?毒は入ってないよ、何なら
先に食べようか?」
神様は、お菓子をつまんで食べた。
「毒は、入ってなくても、迂闊に食べて、後でとんでも
ない値段をぼったくられるかもしれないわ!」
クロちゃんが言った。
「プーッ!ぼったくる!クックッ!クロちゃん本当に
面白い子だね、ぼったくると来た!
ここは、銀座のぼったくりバーじゃないから大丈夫
だよ。」
天津甕星は、笑いをこらえて言った。
「『千と千尋の神隠し』だって、千尋のママとパパは、
勝手に御馳走食べたら、豚にされたわ!」
クロちゃんは、にらんだ。
「じゃ、水神が絶賛した踊りでも踊ってくれ!
それが、料金だ。」
天津甕星は、言った。
・・・情報早い・・・周りは妖怪だらけ・・・。
どうしよう?みっちゃん、どうしよう・・・。
・・・なんか、計画的にここに連れられてきた気がする。
そして、強いみっちゃんと、引き離された・・・。
「クロちゃん!踊るぞ!又べえも踊る!」
又べえが言った。
「じゃ、俺も踊るよ!クロちゃん!」
「バックダンサーの兄ちゃんズです!」
兄ちゃん達は、言った。
・・・正直、素面で、あの変な踊りを踊るのは・・
・・辛いな。
「クロちゃん、あの踊りな、ヒットポイントと、
マジックポイントを吸い取るんだ。
又べえが、いいって言うまで頑張って踊るんだ。」
又べえが、クロちゃんの耳元で囁いた。
え!あの踊りそんな効果が!
4人は、歌いながら踊り出した、歯をむき出したり、
目を大きく開いて、おどけた表情で、腹を出したり、
引っ込めたりと、滅茶苦茶面白い!
「はっはっはっはっは!これは、面白い!」
天津甕星は、腹を抱えて笑いだした。
クロちゃんは、段々疲れが取れて元気になってきた。
本当に、疲れが取れてきた。
大黒のおっちゃんこういう事を見越して、この変な
踊り教えてくれたのかしら。
だとしたら、アホそうに見えて、流石神様!と言う
べきか!・・・しかし、水神様や、あそこの妖怪の
ヒットポイントと、
マジックポイントを吸い取っていたって事じゃ・・・。
「はっはっはっはっは!気に入った!私の道化師に
してやるぞ!」
天津甕星は、喜んで言った。
「断るわ!クロちゃん、お家に帰るわ!」
クロちゃんは、きっぱりと断った!
「沢山おもちゃもあげるし、美味しいお菓子も、御馳走
も食べ放題だ!」
天津甕星は、言った。
「何にもいらないわ!お菓子も、ご飯も、お家のが一番よ!」
クロちゃんは、キッパリ言った!
「ならば、仕方がない!喰うとしよう!お前のみなぎる
力をもらおう!」
天津甕星の目がギラリと、光った!
その時!
「クロちゃん!ごめんよ!」
又べえが、クロちゃんを一飲みにした!
「うわあああぁあ!クロちゃん!」
「何て事しやがりますか!この妖怪!」
セヒと、チョコは叫んだ!
すると、又べえがピカッと、光った!
如何にも強そうな精悍な、大きな、又べえが、現れた!
そして、驚く天津甕星をハサミで殴り!
バッチン!と右手を切り取り!腹をバックり
切り裂いた!
「うわあああ~~~!!!」
天津甕星が叫んだ!そして、驚く、セヒ、チョコを左手で
ワシッと掴んで走り去った!
「絶対に!逃がしすな!私の前に連れて来い!
腸引きずり出してやる!」
天津甕星の怒りの叫びが聞こえた!
そして、行く手を阻む強そうな妖怪達をいとも簡単に、
右手のハサミで薙ぎ払った!
普段の又べえには、考えられない強さである!
そのまま外に出て、手足を広げて、ムササビのように
飛び去った!
しばらく飛んで、いると、ヨタヨタし出し、急行落下
しだした。
「うわあああ~~~!!!」
「ぎゃ~~~!!」
セヒと、チョコは阿鼻叫喚である!
又べえは、落ちるように地上に降りた。
そして、クロちゃんをべ~っと吐いた。
「あ~ビックリした!」
クロちゃんは、呟いた。
「クロちゃん無事だったのか、良かった!」
「クロちゃん!大丈夫ですか!」
二人は、クロちゃんに抱きついた。
「ごめんよ、あいつは、ラスボス級だから、又べえみたい
な弱いへっぽこ妖怪じゃ、歯が立たない。
クロちゃんは、無限にヒットポイントと、マジックポイ
ントを吸い取れるから、力を借りた。
・・・これ以上腹に入れておくと、消化しちまうからな。
又べえは、あんな大技使ったんで、もう動けない。」
又べえは、ぐったりした。
そして、体がバラバラ崩れた。
「又べえ!又べえ!」
「おい!どうした!」
「またべえ!~~~!!」
三人は、阿鼻叫喚である!
すると、首がゴロっと動いた。
「頭しか維持できないんで、連れて逃げてくれ!
頼む。」
又べえが頼んだ。
三人は、吃驚したが、
「もちろんよ!今度は、クロちゃんが助けてあげる。」
クロちゃんが言った。
「良かった!ありがとよ!」
そう言って、又べえは、ぽ~んと飛んで、クロちゃん
の頭にペタリと付いた。
「悪いが、又べえの右ポケットあたりに、桜の大樹の
神様から貰った小箱がある。
拾って、クロちゃん持っててくれ。」
又べえが頼んだ。
「又べえ!どっちに逃げるの?」
クロちゃんが聞くと、
「あっちだ!あっちにみっちゃん達がいる!」
又べえが叫んだ!
クロちゃんは、小箱を拾って、兄ちゃん達と走りだ
した。
一生懸命走っていると、遠くに天津甕星が水獅子に
跨り、沢山の妖怪を引き連れているのが見えた!
「大変!急がないと!」
クロちゃん達は、一生懸命走ったが、段々追いつかれ
て来た。
そして、次々に妖怪や、魔物が襲ってきた!
クロちゃんは、必殺!桜吹雪をお見舞いした!
魔物達はまた次々と襲ってきた!
バッコン!バッコン!バッコン!バッコン!
クロちゃんは、叩きのめしたが、段々疲れてきた。
「もう、観念して喰われたらどうだ!それとも
私の道化師になるか?」
天津甕星は、言った。
「絶対に!嫌よ!」
クロちゃんは、叫んだ!そして、天津甕星に殴り
かかった!
バシッ!クロちゃんは、簡単に叩きのめされた!
無理、全然かなわない・・・。
「元気いいねえ~その元気な首を大黒天と、水神に
送りつけてあげるよ!」
天津甕星は、剣を振り上げた!
その時!鉄砲水が天津甕星を襲った!
「え、何でいきなり?」
頭上を見ると、たっちゃんが小さな口から鉄砲水で
攻撃していた!
凄い破壊力で、妖怪や、魔物をドンドン押し流した!
「たっちゃん!凄い!」
クロちゃん達は、驚いた!
「神同士の約定で、神は、お互いの領地には入れない
ように、なっていたはずだ!」
天津甕星は、叫んだ!
「たっちゃんは、クロちゃんのペットだ!関係ない!
ちなみに、大黒天に運も強くして貰ってるから、
攻撃は、なかなか当たんないぞ!」
たっちゃんは、言った。
「己!水神!大黒天!」
天津甕星は、叫んだ!が、鉄砲水10連発で、流れていった 。
「すげ~!たっちゃん!」
「やった!」
セヒと、チョコが叫んだ!
「助かった・・・もっと早く出てきてくれよ。」
又べえが言った。
「無理を言うな、たっちゃんは、生まれて3時間しか
たってない!まだ赤ん坊で、1日20時間以上寝ない
とダメなんだぞ!」
たっちゃんが言った。
「でも、又べえが致命傷をあたえたからな!今の攻撃で
腹の傷口ひらいと思うぞ。」
たっちゃんは、コロコロ笑った!
「あ!」
気が付くと、水が腰のあたりまできていた。
「早く逃げないと、おぼれるわ!」
クロちゃんが、言うと、
たっちゃんは、ぽん!と大きな龍になった!
「さあ!皆乗れ!」
たっちゃんは、言った。
皆たっちゃんに乗った、そして、たっちゃんは、そのまま
空高く舞い上がった!
空の上から地上を見ると、みっちゃん、親方、歳さん、
ゴンベエ、与作、パパ、カダの兄ちゃん、水神様の妖怪が
10匹が見えた。
「あ!パパ!みんな!」
クロちゃん達は叫んだ!、そして、地上に降り立った。
「セヒ!チョコ!クロちゃん!」
パパは、三人を抱きしめた!ガダ兄ちゃんも、その
上から抱きしめた!
「クロちゃん!水獅子倒した後、気配が消えて、
クロちゃん達が、解らなくなったんだ!
心配したよ!」
みっちゃんは、クロちゃんを抱きしめた。
「皆!水が来るから乗れ!早く!」
たっちゃんが皆をせかした!皆は慌てて、たっちゃんに
飛び乗った!そして、空高く舞い上がった。
「すごい!ネバーエンディングストーリーみたいだ!」
パパは、言った。
「どっちかというと、龍の子太郎だね!」
カダ兄ちゃんが言った。
風に揺られて!最高の気分だ!
しばらく飛ぶと、水神様の領地に入った。
水神様と、大黒のおっちゃんが手を振っていた。
地上に降りると、
「クロちゃん、頑張ったな!」
大黒のおっちゃんと、水神様が頭を撫でた。
「おい!又べえ!」
親方が怒鳴った!
「わ~っ!打たないで!ごめんよう!親方から
借りたハサミは、持って帰れなかった。」
又べえは、クロちゃんの頭から、ポ~ンと逃げた。
「又べえの割には、頑張ったじゃないか!」
親方は、そう言って、又べえの頭をポンポンと
軽く撫でた。
「初めて、親方に褒められた。」
そう言って、パタリと動かなくなった。
「え!又べえ!又べえ!ねえ!死んだの!?」
クロちゃんは、動かなくなった又べえを
ゆすった。
「こいつにしたら、エラク頑張ったからな。
元々タンポポだ、帰ったら日の当たる場所
に置いといたら、その内復活するさ。」
親方は、言った。
「良かった、又べえ、早く元気になってね。」
クロちゃんは、言った。
「あ、ハサミは重くて持てなかったの、ごめんなさ
い。」
クロちゃんが言うと、
「ああ、仕方がない、皆無事でなによりだ。
あの水神様から貰った業物でないと、天津甕星を
切る事は、出来なかっただろうからな。」
親方は、言った。
「ふぁ~!疲れた。たっちゃんも寝る。」
そう言って、たっちゃんも小さくなって、
クロちゃんの髪の中に入って行った。
「たっちゃん、ありがとう!
クロちゃん、2日おきに髪洗うから、その時は、
出てきてね。」
クロちゃんが、言うと、
「わかった!」
たっちゃんは、答えた。
ふと、気が付くと、皆クロちゃんをじーっと
見ている?
「クロちゃん、頭剥げてる。」
パパが頭を撫でた。
あ~又べえが、くっいてたトコ禿げてる!
クロちゃんは、頭を撫でた。
「カッパ禿になった。」
クロちゃんは、ガックリしゃがみ込んだ。
「クロちゃん!大丈夫?」
みっちゃんが、心配そうに見た。
「髪は、生えてくるわ・・・大丈夫。」
小さな声でクロちゃんは、言った。
翌日、水神様から沢山のお土産を貰って、クロちゃん
達は、家に帰った。
「大変だったのね。」
ママは、クロちゃん達を抱きしめた。そして・・・
「パパ!廊下で見守るんじゃなかったの!何の為に
ついて行ったの!子供の面倒ちゃんと見てない
からよ!」
ママの怒りは、頂点に達した!
パパは、ママにコッテリ絞られた。
・・・仕方ないわね。
それを横目に、クロちゃんは、頭を撫でた。
「あ~あ、カッパ禿どうしよう?宝珠の願いで
治そうかしら?もったいないかしら?」
悩めるクロちゃんだった。