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梨/
梨/
わたしの中に
はっきりと流れる
これは音のない旋律
始まりを知らず
終わりを知らない
日常の中で途切れ
再び詩に逢って響き
雑踏はホールの騒めきのように
既に流れている演奏との不協和音となり
或いは美しい和音の澄み渡る深さとなり
形の良いふくらみの音符が
ぽんぽんと階段を跳ね上がり
大通りへ踊り出た
てのひらほどの虹色の泡となり
ちょっと風に遊んで
ぱちん と消えた
秋がなくなる
飽きっぽいわたしにとっては
大事件だ
初めて食べた梨の甘さを覚えている
あの日の幸せとは甘さだった