漂流者
初めての投稿です。空想癖のある自分の頭の中を少しでも形にしたくて始めました。
物語を書くのも初めてなので、文章や表現など定まらない部分も多いかと思いますが、自身の楽しみとして続けていければと思います。どうぞよろしくお願いします。
「じゃあ、また月曜な。」
「おう。じゃあまた。」
そういって俺は、友人達に背を向け歩き始めた。
(今日は少し飲みすぎたかな。。でも友達の結婚の前祝いだ、今日は楽しい酒が飲めた。)
居酒屋が多く集まる道を、ネオンや呼び込みの声に照らされながら、頼りない足取りで地下鉄の駅へと向かう。
飲みすぎた日の電車の揺れは特に嫌いだ。
そんなことを思いながら電車に乗り込んだ。
4つの駅を通り過ぎた頃から気分が悪くなり、思わず口を強く押さえる。
次の駅で電車を下り、トイレへと駆け込む。
「ゴバッ!ゲホ!ゲホ!」
トイレの便器を抱えるようにうずくまる。
一息つくとリュックにしまってあったペットボトルを取り出し、一口飲んだ。
「あぁ、飲みすぎた。。もう酒なんて飲まない。。」
酒の後悔はいつもその場限りで、しばらくするとまた同じ後悔を味わうことになる。
ホームへ戻り次の電車に乗るが、また揺れに気分が悪くなり、次の駅で降りる。
トイレでぐったりしているとドアをノックする音が聞こえた。
ドンドン!ドンドン!!
「お客さん!!もう終業時間だから出てもらわないと困ります!」
「っ!すいません。。!すぐ出ます!!」
俺は顔を水で洗い、ただただ不機嫌な駅員に謝罪しながらトイレを出た。
ふらつく足で階段を登り、地上に出る。
(あー、ここどこだ?タクシーもないか。気持ち悪い。。とにかく大きな道まで歩いてタクシーを探そうか。)
そうして歩き始めたものの、酔いからくる気持ち悪さに勝てず、しばらく歩いた先にあった薄暗い明かりの灯る公園のベンチに腰掛けた。もうだめだ。少しだけ目を瞑ろう。少しだけ。。。
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「・・・い、・・・きろ・・・」
「おい、・・・ろ・・」
ん、あのまま眠ってしまったのか。まだ外は薄暗いが。
「おい!起きろ!」
誰かが背中を踏んで俺の体を揺らしているのに気づいた。
「あ・・・、すいません。。ちょっと寝てしまっていたみたいです。」
なんだこの臭い、くさい。ぼんやりとする目を開き、周りを見渡した次の瞬間、俺はハッと目が覚めた。
地面に突っ伏していた寝ていた俺の周りに見えるのはいくつも連なるゴミの山だ。
(あれ?ここはどこだ?公園のベンチで寝てしまったはずなのに。)
「やっと気づいたか!おい!」
声がする方を見上げると、数人の男達が倒れている俺を囲んでいた。何人かは返しのついた金属の武器のようなものを俺に向けている。
(っ!何だ!?ここはどこだ!?)
ぼろ着を纏ってはいるが、布が小さく、大きな腹を隠しきれていない髭もじゃの男が口を開いた。
「・・・こいつは漂流者だな。生きて流れてくるなんて珍しいこともあるもんだ。」
「こいつ、どうする?身につけてるもん引っぺがして殺すか?」
「生かしておくのも面倒だから殺すほうが早い」
若い男達が口々に自分の意見を言っている。
「すいません!殺さないでください!すいません、すいません!」
自分に向けられた明らかな殺意に、口からはこんな言葉しか出てこない。
「うるせぇ!黙れ!」
ドゴッ!二人の若い男が俺の腹と頭を何度も踏みつけた。
「グッ!ゲホ!ゲホ!」
俺は、痛みと恐怖で体を小さく丸める。腹を蹴られ吐きそうになるが、胃には何も残っていない。
「おい、やめろ。」
一人の男の声に、若い男達は動きを止めた。
「ドミニク、どうする?確かに今の俺らの状況じゃ生かしておくのも難しいが」
40代前半くらいに見える頬に傷のある男が、先ほどの髭もじゃの男に問いかけた。
「ううん。そうだな。。」
ドミニクと呼ばれた男は腹を掻きながら考え込んだ。
「まぁ殺すのは後でもできる。せっかく生きた漂流者が来たんだ。使い道が分からんもんがいくつかあったろう。こいつに聞いてみよう。」
「わかった。おい、そいつをしばれ。」
傷のある男の指示で、何人かの男達が腹を押さえてうずくまっている俺の腕を無理やり剥がし、後ろ手に縛り上げられる。鼻には血が詰まり、息をするのも辛い。
痛みで意識が朦朧としてきた。
一人の男に担がれ、歩く揺れの中で意識が遠のいていく。。
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「痛い。。」
蹴られて切れた唇の痛みで目が覚めた。
(・・・ここは・・・?)
ここは何かの部屋だろうか?周りを見渡すと、木を組んで作られている壁、何箇所も穴の開いた継ぎ接ぎだらけのボロ布でできた屋根の、暗い部屋に俺はいた。
唇に手を伸ばそうとする腕が動かない。後ろ手に縛られたまま気を失っていたようで、下になっていた肩がズキズキと痛む。
肩を見ようと視線を落とした時、着ていたものは全て剥ぎ取られ、裸であることに気づいた。その瞬間恐怖がよみがえる。
ここはどこだ。
なぜこんなとこにいる。
なぜ殺されそうになった。
次から次へと湧き出てくる、答えの出ない問いの中で、俺は体の震えを止めることもできなかった。
ただ小さく泣きながら、目の前に転がっている小虫の死骸のように、小さく体を丸めて夜を明かした。




