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ホワイト-white-  作者: サクラダファミリア
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ホワイト5


「あなたは、桜田さんって言うんですか。改めて、僕は倉土二音といいます。よろしくお願いします。」

「なによ、なれなれしい。前まで『莉亜』って呼んでたじゃん」

 だから、なれなれしいのはそっちだ。

 それに、前までって1回も呼んだことがない。

 これはタイムスリップとかそういう問題じゃないんじゃないか。

 いや、もしかしたらタイムスリップが関係あるのかも。もしそれが本当なら2人はちがう時を進み、違う時空を越えて今がある。そして何らかの事情で僕たち2人は違う記憶を持ち、違う時空を持っている。

 ちょっと関心がある。このタイムスリップの話。

「今から暇だったらちょっと家まで付いてきてくれない?」

 僕は、『予告』と言う能力を持っている。その代わり「莉亜」は、タイムスリップと言う能力を持ってる。

 神様が僕達にくれたものには必ず理由がある。

 きっと「莉亜」も理由があってタイムスリップを授かったんだ。

「いいよ。行くところなかったし」

 夕立だったのかな。まだ昼だけど。もうすっかり雨は止んじゃった。

 この歩道橋の下で「莉亜」と会うこと。これも運命なのかもしれない。

 神様も応援しているんだ。

 きっと。

 頑張らなくちゃ

  

       *****

 今日も泉の家に集合だ。ちゃんとのんも来てるかな。

 泉の家の前には、毎年この季節になると、ポスターが貼られる。「夏祭り」のだ。この夏祭りが2年前、僕らの注意を吹き消した。

 2年前、夏祭りは7月17日に行われた。僕らは、いつものメンバーで行くことにした。秦を除いて。

 僕達は、いろんなところを回った。途中、わたがしを買って食べた。いつもこの夏祭りのときに売っているわたがしは、本当によくとろける。でも、そのせいで「花火に間に合わない」とか言って大勢の客の中を颯爽と走り抜けていくのだった。 

 一番初めに上がる花火の色を当てたりなんかもしたな。

 確か白があがった。

 あれは、確かに白だった。無色ではなく白。

 僕達は、やっと着いたーと言いながら花火がよく見えるスーパーの屋上で眺めた。

 白かー。地味だなー。

 わたがしを不意に落としてしまった。

 頭の中にあの予告が流れた。

 思い出した。守ってやれなかったことに。

 秦はその時ちょうど首を絞めて死んだのだった。 

 

       *****

 「こんにちは」

 みんな引いてる。

 急に知らん人を連れ込むからだ。のんの殺害予告の出されたぴりぴりしたときに知らない人を入れるのは間違いだった。

 でもこの人は関係あると思う。分からないけどそんな気がする。

「はじめまして。莉亜と申します」

「この子は、どうやら過去から来たみたいなんだ。ほら、よくある『タイムスリップ』とかでさぁ。」

 のんが震えた。

 それに続き泉も。

「どうしたの春手、泉」

 泉の口が開く。

「二音、来るの遅かったからさっきになんとなくタイムスリップについて調べてたんだ。そしたらね、タイムスリップというのは実際にあるらしいの。必要なときに必要な人だけがいけるの。」

 泉が深呼吸する。

「そして、タイムスリップする人には必ず『予告』能力がついてくるの。いや、『予告』を見た人の中からタイムスリップする人がいるの」

 ええーーっっ!

 驚愕とはこのことか。

 驚きすぎて顎が外れそうだ。

 タイムスリップが可能なんて聞いたことないぞ

「莉亜さんも『予告』を見たのかな」

 のんが話しかける。

「予告・・・・・・もっ、もしかして晴のことかな。冗談だと思うけどこのまえ、友達の晴が死んじゃう夢を見たの」

 この場が静まり返る。

 うそっ

 最初に口を開いたのは泉だ。声が裏返ってる。よほど驚いてるんだな。

「詳しく教えてくれない?そのこと」

 二音が聞く。すると莉亜は嫌そうな顔をしてから「いいよ」と言った。

「詳しくって言ってもあまり見てなかったんですけど車が晴に突っ込んでしまったみたいで車の下に晴がいて、どうも押し潰されていたようです。」

 言い終わって下を向く。嫌なことを思い出したと言わんばかりに。

 二音も泉も下を向く。のんはまっすぐ前を見てた。

「それってあのシャイン橋崩壊事件だよね」

 泉が言う。ちょっと目が泳いでる。

 シャイン橋崩壊事件、それは紀伊町で一番最悪な事件だった。

 紀伊町のシャイン橋で男子高校生のリュックの中に詰められていた時限爆弾が、爆発したのだ。辺り1面に焦げが残り突然の爆発でビックリしたドライバーさんたちが次々と衝突し、あたり一面から炎と煙が出た。その後男子高校生は富岡高校1年の田島晴さんという事が分かった。

 その田島晴の友達で、しかもその爆発よりも前からタイムスリップした人がここにいるのだ。この人がうまくしてくれたら、あの事故も、晴さんも救えるのだ。

 なるほど。だからタイムスリップしたわけね。

 よほどこの人は重要だ。

「明日にでも図書館に行かないか。このことのもっと重要な手がかりも知りたいし、予告とかと関係してる本はないか探してみようよ。」

「さーんせい」

 泉がいつもの遊び心交じる声で言った。

「さーんせい」

 まだ1時間も経ってないのに打ち解けたような顔をしてる莉亜が言った。この子も多分のんと同じくらい元気なんだろう。

 莉亜の目には瞳のほかに白い点々が浮かんでいた。

 この点々の事にもっと早く気づいていれれば、莉亜を救うことが出来たのに。

 莉亜はすでにこのときある事に気づいていた。


       *****

 莉亜に点々ができるのと同じくらいのころ紀伊町中央警察は2年前の事件のことで会議が行われていた。

 紀伊町で1番大きな事件、そんな未解決事件の犯人を探っていたのだ。

 シャイン橋の修復予算はおよそ4億円。短い橋とはいえ、車も通れるほどに広い橋だ。そう簡単に修復できない。

 しかも、この爆破は、5人もの死亡者を出した。そのご家庭が町に慰謝料を求めてくるのだ。シャイン橋の修復料はともかく慰謝料はなんとしてでも犯人に払わせたいところだ。とてもこの小さい町では払いきれない。

 慰謝料は予想されるだけでも4億円はくだらない。修復もあわせると8億円。

これには、町も警察に依頼するわけだ。

 さらに最近爆発物の破片が見つかったのだ。その破片に指紋が少しだけ付着してると言うので鑑定してもらうことにした。

 その鑑定結果が今日発表されるのだ。

 この結果は、町だけでなく県の偉い方までお見えになっている重大な会議だ。

「えー、この度は紀伊町のシャイン橋崩壊会議にご出席いただき誠にありがとうございます。」

 警察署長の挨拶だ。確か万里と言った気がする。40歳くらいだろうか声がつぶれている。

「では、鑑定品を用意させていただきますので少々お待ちください。」

 署長の合図で部下らしき人たちが部屋の外へと出て行った。

 しばらくして、中に入ってきた。誰も何も話さない。県長らしき人も顔に緊張の表情を浮かべている。

 今回の鑑定品、晴のかばんの中に入っていたとされる爆発物は、アスファルト見たいな灰色をしており、誰もが予想したより大きかった。これで1部らしいから本体はどんなに大きかったんだろう。

「続きまして鑑定結果です。」

 署長の司会で室内が暗くなる。

「こちらをご覧ください」

 そう言うやいなやスクリーンに鑑定結果表が映る。みんなそちらを見てる。

 確かに書いてある。その人物の名前が。

 この事件の犯人としてこれから捜査が始められるであろう名前が、顔が。

「意外だなぁ、こんな経歴の人が何でここに」県長がつぶやく。

「それでは、この人物に関しての情報発表に移ります。」

 2年間謎のままだった犯人がついに発表され、本格的に動き出した警察。

 しかし、爆発物はあまりに焦げてないし、指紋もきっかりすぎるくらいに残っていた。署長も心残りがあるようだがそれでも捜査が始まった。

  

       *****

 未来にタイムスリップしたとき未来の自分はどうなるのかは定かではないけど未来の自分の体に一時今の自分が入るだけなので何も変わることはないのだろう。しかし、今回は二音が泊めてあげることにした。

 二音の家は泉みたいに広くない。だから二音の部屋に敷布団を2つ引いてそこに寝ることにした。

 夕食の時は、二音の家族に状況を話した。母は分かってくれたが、父は夢じゃないかとずっと繰り返してただけであった。

 莉亜も母とは仲良くなれたみたいだ。そして母は泊めることに賛成した。父は理解してないし泊めさせてあげた。

 夕食の後、莉亜は上に行かせられ、二音と母だけになった。

「覚えてるかな。二音が2年前に言った言葉。」

 母は落ち着いた声で言った。

 2年前というとあの事しかない。

「私に秦君が死んじゃう夢を見たって言ってくれたの」

 暗くて見えない。母の表情。

「そしてその1週間後、秦君は亡くなったんだよね。」

 忘れるわけがない。今でも新鮮に覚えている。

「私はあれを、二音が予知したんだと思っている。」

 母は一呼吸置いた。ふと上を向いたとき見えた。母の表情が。

 微笑んでる。でも笑ってない。

「そして2年後。二音がこうして特殊な子を連れてくるのには訳があると思う


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