ホワイト22
ラストです!!
「香苗さんを殺したのも、秦を殺そうとしたのも、晴を殺そうとしたのも、あんたがやったんでしょ。白神先生。」
「ちがう。ひ、人違いだよ。俺は白神先生なんかじゃない。」
男は棒を地面に置いた。それを確認した二音は後ろを振り返った。
「ほら。やっぱり白神先生だ。」
白神先生は中学2年生のときの担任だ。だから、あの事件の時の担任でもある。
「僕は白神先生じゃないと思っていたよ。秦が殺されたときにあれほど優しく慰めてくれた先生が嘘を吐いているとはとても思えなかった。信じていたのに・・・・な・・・。」
「違う! 俺は違う!」
「じゃあ誰なの!」
二音は思いっきり叫んだ。感情の入れ交じった声が男に刺さる。
「もう僕は何を信じればいいか分からなくなった。今までの僕じゃないんだよ!」
男は静かに深呼吸をした。
「お前を殺せば計画はすべてうまくいったのに・・・・・。救えたのに・・・・・。」
「救えた? 誰を。あんたはただ人を殺していった殺人鬼じゃないか」
「違う! 悪いのはあいつらなんだ。あいつらが悪いんだ。」
シャイン橋を通っていた車はなくなった。辺りが静かになり風の音さえ聞こえてくる。
「1つ教えてくれないか。あのメールの意味はなんだったんだ。」
白川は下を見る。靴元には棒が落ちている。
「あれは俺からのメッセージだ。お前、晴に送ったメールも知ってるんだろ?」
「ああ。『justiceで』。つまり正義だろ。」
「justiceは、確かに正義とも言うが、裁判も表す。俺は『未来の裁判でもう1度』ということを言いたかった。この意味を話すにはまずあの事件から語らなくてはだな。」
男は深く息を吸ってから事件のことを話し始めた。
―俺は今より約15年後の世界からタイムスリップしてきているんだ。お前も分かるだろ。
これから3年後に晴が殺される。そして、その犯人が俺の妻の結になるんだ。俺はそいつを信じていた。しかし、裁判では意味の分からない研修の裁判官に負け、結は刑務所送りとなってしまった。俺はその裁判に勝つために過去に戻ってその研修裁判官を殺した。そいつが香苗だ。
しかし、それでも未来では変わらず結が捕まっていた。このときの裁判でもまた、研修の裁判官が使われていた。しかもそいつは教え子の厳島秦だ。しょうがなく俺は晴を殺そうとした。しかしそれはあの変な女に邪魔されてできなかった。
俺は仕方なく教え子だった秦を殺そうとした。しかしそれもお前に邪魔されてできなかった。あの女に聞けば邪魔したのは全部お前のせいなんだってな。
「誤解しないでくれ。俺は結を救うためにやっているんだ。悪い正義だってあるんだ」
「救えてなんかいねぇよっ! これで救えたなんて思ったら大違いだ! そっちの方が誤解すんなよ。こんなことして誰が喜ぶんだよ。」
「俺は結を救うためだったら何でもするよ!」
「それで結さんが喜ぶとでも? 今頃牢獄で悲しんでいるよ。大体もっと結さんのことを信じろよ。信じられないから秦を殺そうとしたんだろ。」
「俺は信じてる!」
「信じられてなんかいない! 僕はこの数日、本気で信じるとは何か考えた!」
うわぁぁぁぁ!
男は胸元からナイフを取り出した。こっちに標準をあわせて狙ってくる。危ない!
暗闇に写った銀のナイフは月明かりに照らされキラリと光って見せた。それが幻想的で神秘的で恐怖感を感じさせなかった。
ぐさっ
血の気の匂いが漂い全てを察した。驚くべきことに痛みがしない。気合を入れて目を開いた。
目の前にはお母さんが倒れている。
男は警察に保護されている。お母さん、何で。
「おかあさん? また救ってくれたの? ねえ? おかあさん?」
「ぷはーっ。死ぬところだった。」
水をがぶがぶに飲んだ二音は呼吸困難を起こしていた。あそこでお母さんが助けてくれなければ二音は確実に死んでいた。
なぜお母さんが溺れていった僕を見つけたのかは分からない。ただ、僕を追いかけてきたというよりは川の向こうで溺れてくる僕を待っていたような気がした。あの速さで流れていったら、確実に僕を捕まえることはできないだろう。
「二音・・・・・・・幸せに・・・・・・なってね・・・・・・。」
「おかあさん! 僕はこれからどうすればいいの? もう一人ぼっちだよ? のんは秦が死なずに済んだから秦と一緒ににったか行っちゃったし、お父さんはあいつのせいで捕まっているし、このままお母さんまで死んじゃったら・・・・・・・。置いていかないでよ。ねぇ! 無視しないで! ちゃんと答えて!」
月明かりに照らされるシャイン橋の上、二音のお母さんは静かに息を引き取った。
暗闇の中、二音の声が辺りに響き渡った。暗黙に掻き消された思いは闇の中を漂う。
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ホワイト
高校一年 倉土 二音
僕は、今、とても大切な仲間がいます。それは暗闇に浮かぶ光のように美しく、きっと消し去るときは一瞬な存在なんでしょう。でも、僕の中にその光は必要不可欠で、永遠に明かりを絶やさないでくれているのでしょう。
この世の中には「必要」という不思議な言葉があります。
バトミントンにシャトルは必要なようにサッカーにサッカーボールは必要なように吹奏楽部に指揮者は必要なように・・・・・・・。
僕は誰に必要とされているのでしょう。
僕が必要だと感じている人たちは同じく僕を必要だと感じているのでしょうか。信じ合えるとはそういうことなのでしょうか。
きっと、この世の中の必要なものだけを取り除いたとき、僕達は今までそれにしか目が行っていなかったことに気づくのでしょう。
そしてその人の目には白だけが映るのだろう。
それと同時に、必要なものだけに色がつき、不必要なものには色なんか付かないのに気づくのです。きっとそれは赤ちゃんが言葉を覚えるように自然で、ボールが顔目掛けて飛んでくると目をつぶるように無意識なことで、その色をホワイトということに驚きを覚えるのです。
僕は全ての物に捧げます。
全てはホワイトのため。誰も見捨てない。どれも全部正解。
二音は駆け抜けた。当てもなく彷徨う姿は1年前の花火大会の時の泉、莉亜を探す晴、そしてのんの姿にそっくりだった。それらが大切なものを見つけたように・・・・・・・。
ご愛読、ありがとうございました❗
どうでしたか?デビュー作です。
もしよかったらコメントと評価をよろしくお願いします。
それでは、次の作品でお会いしましょう。さようなら
「ただいま、美しかろう地球を製作しております」




