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ホワイト-white-  作者: サクラダファミリア
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ホワイト2


「泉もその一人だったんだよ」

「え、泉が?」

 泉もあの予告を見てたのか。どうりで2年前にもすぐに俺が言った予告を信じたなと、二音は思った。

 じゃあ泉は誰の予告を見たんだ?

 そんな考えも次にのんの発した言葉でわかった。

「昨日泉から電話があって、今日こっちに来るって」

 やはり泉も同じくのんの予告を見たのか。

 そんなことを考えてたせいで次にのんが発した重要なことを聞き逃していた。

 そもそもなぜそんなことを泉はネットに書きそれをのんが二音に教えたのか。本当はそこまで考えるべきだった。1年も会ってない泉のことを。

 もしここで二音がのんの言葉を理解しその書かれていたホームページを見てれば今、泉が何を考えてたかが分かったのに。

「そうか、わかった。泉にもよく話を聞こう。そしてここから先はかなり危険になってくと思うよ。」

「そうだね。お互い頑張りましょう」

 のんも二音も付き合いは長いのにここでのんは丁寧な口調で「頑張りましょう」と言った。

 チャイムが鳴った。

 1時限目が始まったか?いや、1時限目はさっき始まってた。まさかこの少しの会話だけで40分以上も時間が進んでたのか。

 二音は、理科室の椅子に座った。理科室の椅子はクッション性がなく冷たくてかたい。おまけにがたがたする。いつも50分も椅子に座ってると痛くてしょうがないのに今日は全く何も感じない。

 のんは黒板の前にいた。何かを悩んでいるみたいだ。

「ねえ。ブルースカイの花言葉って知ってる?」

 ブルースカイは、前述したとおり二音が一番好きな花だ。

「しらない。あれにも花言葉があったんだ」

「うん。」

「普通に考えて綺麗とか、空とか?」

「いいや。『過去』なんだって」

 過去か。思いもしなかった。あの花と過去にはなんか繋がりがあるのか。

「普通に直訳すると青い空なのに過去なんて思いもしなかったでしょう。」

「うん、でも急にそんなこと言ってどうしたの」

「ブルースカイの花言葉は、それについて調べてたら出てきたんだ。今は関係ないけどすごく気に入ったから」

 すごく熱心に語るのん。いきなりどうしたと言わんばかりにすごい勢いだ。

「ブルースカイって過去に戻る奇跡の花なんだって。昔この花を食べた人がタイムスリップしたって噂があってね」

「フーン」

 今なんでこんな話をするんだろう。そんなことを思いながら聞いていた。 

 しかし、この話が後々効いてくるとは思いもしなかった。

 その後、無音の時間が続いた。しかし、その無音はすぐにのんが打ち破いた。 

「二音はさぁ、もし過去か未来に行けるならどっち行く?」

「えっ、急に!」

 こんな急に聞いてくるとは思わなかった。というか考えたこともなかった。でも、どっちかというと・・・

「まぁ未来かなあ。春手は?」

「僕は、過去。もう一度2年前に戻って秦を救いに行きたい」

 厳島秦とは、2年前の予告でターゲットになったのんや二音の親友だ。いや、泉の親友でもあった。その中でも特にのんと秦は仲が良く、のんも秦もお互いを世界1の友だと思ってたみたいだ。

「そうだね。秦とは仲良かったもんね。もう1度チャンスがあるなら次こそは絶対死なせたくない」

「そうだな。また戻れたらだけどね」

 もう一度チャンスがあればかぁ・・・。

 『過去』

 今は過ぎた時間

 戻れない時間

 戻れない時間が過去ならもう一度チャンスなんてないけど・・・

 でも、戻れたら変えられるのも過去なのかもしれない。

 よく過去は変えられるとか言うし。過去は変わるとか言うし。

 いや、もしかしたら過去はもう変わっているのかな。

「そろそろ動こうよ。学校にいるか家に戻るかどっちがいい?」

 ここであえて動こうという表現を使ったのには二音ながらの理由があった。戻ろうとか残ろうとか言うと強制してるような気がしたのだ。さっき死の予告をされた人にむかって強制はよくないとおもったからだ。しかも実際二音は、どちらでもよかった。何度も言ったようにこれは学校よりも重要だし、もしこれが学校の友達と会う最後の機会なら戻ったほうがいいようにも見えた。

 しかし答えは即答だった。

「学校に戻ろう。」

 学校の友達に会いたいとでも思ったのだろうか。

 それとも暇だから戻ろうとでも思ったのか。

 まぁ、のんがこっちを選んだのだから従うか。というか別に重要視してなかったし・・・

「うん。戻ろう」

 結局1時間以上理科室にいたみたいだ。

 帰った時には2時限目の国語が始まっていた。

「どこ行ってたの。こんな長い時間も」

「すいません」

 二音はちゃんと謝った。しかしのんは、何も言わずに席に座っていった。

 どうしたんだろう。と隣の人たちが話している。二音ものんも無表情だった。二音はたまにそうなってるから別に問題なかったけどのんにしてみれば珍しい。

 肩がトントンとたたかれる。クラスメイトの上根津也だった。

 津也は、1年4組の学級委員長でもある。そして人一倍悩みの相談に乗ってくれる。4組では1番優しい生徒だ。

「どうした。大丈夫か」

「あっ、うん。ありがと」

「何か悩んでんのなら相談に乗るぜ。」

「いや、大丈夫だよ。ほんとに心配かけてごめんね」

 おう、そうかと言いながら津也は首を前に戻した。

 この国語の時間は、自由作文の時間だった。今回は前々回位から作っている作文の発表だった。

 次は出席番号23番の、のんの発表だ。

 ちゃんと発表できるかなと思ったが、意外と返事は大きかった。

「のん君。じゃあ発表を始めてください。」

「もし世界が僕独りならなら」

 ん?世界が白なら?なんだその作文。

「もしも世界が僕独りなら

 それは、誰も信じられない世界だ。

 それは、誰も疑えない世界だ。

 それは、何もない世界だ。

 何もない世界とは何色だろうか。僕は白だと思う。白という色は、ワイシャツやバラなどに用いられるように潔白で綺麗という意味もある。しかし、それとは対照に悲しいという要素も含んでいると思う。もし、僕独りならば悲しくて、悲しくて何もできないと思う。

 誰かがいるというのは、自分じゃない誰かがいるのは、それはとても幸せなことなのだ。だって、信じられる人がいるのだもの。疑える人がいるのだもの。神様はこの星を作ったときにアダムとイヴ、2人を作った。それからはそこから人々が繁殖し、結局、世界の上が1人ぼっちになったことはなかったんだ。今ここは白くない世界だ。僕はそれだけで幸せなんだと思う。」

 3分に及ぶ発表が終わった。

 二音や周りの生徒は少し戸惑い気味の感じだった。

「のん・・・・・?急にどうした?」

「どうした春手。いつものお前と違う発表だったな。」

「違う!そういうことを伝えたかったんじゃない」

 本当にいつもと大違いなのんを見ながら二音は、この発表の意味を考えていた。

 悲しみだけの世界・・・・・・・。悲しみ・・・・・・。悲しみ・・・・・・・。

 白色・・・・・・・。

「二音行こう!」

「え?行こうってどこへ」

「ついてきてよ」

「わかった。春手の言うとおりにするよ」

 そういって、のんと二音は、教室のドアを開けて、廊下を走り抜けて、昇降口を駆け出し、学校外に走ってった。

「あっ!ちょっとどこ行くの!」

 学校内では国語の先生が、二音たちの後を追いかけてきた。

 そしてそれとは別に津也も二音たちの後を追っていた。

 数分後、二音達はよく子供のころに遊んでいた三ツ星公園にいた。

「ねぇ二音、さっきの発表どうだった?」

「う~んちょっといきなり過ぎたかな」

「そっか・・・・・・。」

「でも、僕にはよく伝わったよ。」

「まぁね。そりゃあ人の死を見た人にしかわからない悲しい話だったかな」

「・・・・・・・・・。」

 のんの言葉に妙に怖くなった

 のんが人の死から何を悟ったのかは知らないが、人の死から何かを学んだこと自体が怖かった。

 そして何より、僕の作文と内容が似ていた。

 もう12時頃だろうか。太陽が真上に昇っている。暖かくなってきた。

「お腹すかない?春手」

「この公園の近くに店あったっけ?」

 そういえば、この近くには泉が好きなパン屋があった。

「あのパン屋行かない?」

「パン屋かー、いいねぇ。行こう行こう!」

 と、いうわけでパン屋に行った。 

「久しぶりだね。ここの来るの」

「うん、相変わらずいい匂いだ。」

 このパン屋は、泉も好きだったけど元を言うと秦が紹介したんだ。だからのんが好きな理由もわかる。

「うん。懐かしい匂いだ」

 この匂いは、昔から好きな匂いだった。この匂いのもとは、このパン屋で一番人気な、カレーパンの匂いだ。泉ものんもカレーパンが好きだったんだよな。

「じゃあ今日もカレーパンにしようかな」

 トングでカレーパンをつかみながらのんがそういった。

「じゃあ俺もカレーパンで」

 のんの後を遅れてくる感じで二音が言った。

「了ー解!」

 相変わらずこのパン屋に来るとのんはテンションが上がるみたいだ。つられて二音も機嫌がよくなっていた。


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