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ホワイト-white-  作者: サクラダファミリア
18/22

ホワイト18


はぁ、はぁ、

 あれからかれこれ1時間は走ったと思う。道をさ迷い、そしてこの公園を見つけた。

 もう体力も限界だ。ここはしばしばこの公園で休もうかと思う。

 僕は、公園の中へ駆けて行った。園児達が目いっぱいにはしゃぎ回っている。僕は体中の汗をぬぐいたくて水道を探した。無理もない。こんな真夏に炎天下の中で1時間も本気で走っていたら、汗でびしょびしょになってしまう。

 こういう公園の場合、水道は大抵トイレの近くなんかにある。僕は、トイレを探した。でも、そんなことをしていたら見つけてしまった。

 端のほうのベンチで1人本を読む莉亜を。

 僕は莉亜の方に駆け寄った。莉亜も驚いている。

「はぁ?何でこんなにびしょびしょなのよ。気持ち悪いからこっちに来ないで」

「水道が見つからなかったんだよ。しょうがないだろ。それよりその本なんだ?」

 あんたには関係ないと蹴られ、水道に連れて行かれた。僕はその本を見てしまった。とても莉亜の読みそうな本ではなかった。

「さっきはごめん。信じてあげられなくて」

「いいのよ。あの件はあの子達が自ら解決してくれたみたいだし。」

 莉亜は、濡れたくな~いと、2メートルくらい離れたところから語りかけてくる。水の音でその声は半分掻き消されている。

 その後、僕は莉亜と勉強をした。メインは僕の苦手な英語の長文読解だ。莉亜はこの参考書しか持って来ていないというのだ。僕も、英語の長文読解の参考書を持ってきていたので互いの参考書をやりあった。でも、莉亜の持っていた参考書のレベルが非常に高かったせいで僕は全く解けなかったのだが。

 気づけば話題は高校入試についてだった。

 僕達は両方とも日光中を受けた。日光中はこの辺で1番レベルの高い高校だ。莉亜は確実に受かると思っていた。僕はその線をちょうど跨いでいるような感じだった。運が悪いのか良いのか・・・。莉亜はこの日、中学校の頃の親友が急遽亡くなりそして、その葬式の日と被ってしまった。莉亜は迷ったらしい。親友の葬式と大事な高校受験。莉亜は天秤にかけた結果、親友の葬式を選んだみたいだ。

 僕にとっては莉亜と同じ高校に入れた。ラッキーくらいしか思っていなかった。

 ただ、もしあの時、その親友が死ななければ、あるいは高校入試の方を選んだならば、もし亡くなったのが僕ならば、莉亜はどっちを選んだのだろうか。どっちの高校に来たのだろうか。

 

 晴がこの公園に着てから2、3時間経った。

 気がつけば日は45度くらいに傾いていた。

 晴と勉強していると次第にも春手君のことが頭から離れていった。いいんだ。あれは二音たちが無事解決させてくれたことだろう。私はちゃんと成功させた。次は二音の番だぞ。

 この公園にはバス停がある。めったにバスは出ないが、それでも二音たちは通学にこのバスを使っているといっていた。二音たちの通っている紀伊高校まで繋がっているというから便利なバスだと思う。

 私達がここで勉強し始めてから30分に1本くらいの割合できていたバスがこの時間にもまた来ていた。私も晴も、なぜかそのバスが気になって勉強を1時中断し、休み絡めにそのバスを見ていた。

 信じられなかった。

 バスからはなんと春手君が一人で降りてきていたのだ。

 私は晴のことを追いて一目散に春手君を追いかけた。春手君はなんだか焦っているというよりかは、逆に落ち着いているように見えた。

 春手君は歩いていたので、私はすぐに春手君に追いつくことができた。しかし、私の姿を見たらいきなり慌てただしてそのまま走り始めた。

 私にはとても追いつけなかった。テニス部に入ってるし、それなりに足には自信があったのに、とても残念だった。

 春手君はどうやら自宅に向かっているようだ。その速さを一切落とすことなく自宅に飛び込んでいった。

 私のすることは二音たちにそのことを伝えることだけだ。私は二音のメールアドレスを知らなかったので泉に連絡した。すぐに泉から返信が来た。「家の中に入らないで」ってなぜだろう。

 携帯を見ながらぼんやりしていたらすぐに後ろから晴が追いかけてきた。

「あの子がまさか春手君?」

「うん。そうなんだけど、なんか様子がおかしいのよね。」

「一応、話は聞いておいた方がいいんじゃないか。二音は自殺している夢を見たんだろ。じゃあ、春手が本当に殺されたかなんて分かるわけないじゃないか。本当は自分で自殺したっていう可能性も防ぎきれないし・・・・」

 晴のいうことは的を得ているような気がした。だから私達は泉のメールを無視して春手君の家の中に入っていった。このときはまだ、泉から送られてきたメールの意味もそして、二音たちがこの事に気づいていたことも知らなかった。

 私達は春手君の家の中に入った。玄関には面倒なおばさんがいたけれども晴が無理やり説得して中に入れてもらえることになった。

 そして私達は2階の春手君の部屋の前にいた。

 私は丁寧にドアを開けた。

 

       *****

 ドアの中の状況は一瞬では理解できなかった。

 ただし、手遅れだったことは見ただけでよく分かった。

 二音は2回目の予告も失敗した。

 部屋の中心にはあの予告の通りにのんが亡くなっていた。

 予告と違うのは、莉亜と晴がいることだ。なぜここにいるのかは分からない。ただ、この光景を二人とも見てしまったようだ。

 莉亜は部屋の隅のほうで蹲っている。晴はその横で莉亜を慰めようとしている。

 ただ信じられなかった。

 この予告は誰かがのんのことを殺すのだろうとばかり思っていた。そればかり思っていたからこそこの光景が信じられなかった。のんに裏切られた感じがした。

 二音はのんのもとに駆け寄った。今すぐに縄を外してあげたかった。

 泉は手袋をしたその手でのんの体を持ち上げた。晴も駆け寄って、泉と同じくのんの体を支えた。

 僕は椅子を持ってきて、その上に乗り、天井から縄を外してあげた。

 泉と晴が静かにのんに体を降ろした。

 部屋が整頓されているのが悲しい。

 荒らしてでもあったら誰かのせいにできるのに。これは紛れもなく自分のせいだ。自分が悪いんだ。自分が救えなかったんだ・・・・・・・。

 二音は机の上に載っている白いノートを見つめた。

「お、お前がちゃんと守ってあげれなかったからだぞ」

 晴が明らかに二音に向かった言葉を投げつける。それが二音の胸に深く刺さる。

「ちがう! ちがうよ・・・・・・。守れなかったんじゃなくて信じていたんだよね。信じていたから春手君が自殺するなんて考えられなかったんだよね。でもね、、疑うことも、信じること、なんだよ・・・・・・。」

 莉亜が晴に反論する。僕はのんを信じたかったんだ。のんは僕のことを信じていた。なのに、僕は正しく信じられなかった。

 信じると言うのは、疑うことも含めて、それで信じるになるんだ。

 正しく信じればあの予告の通り、のんが自殺するということも考えられたのに。

「これ読んでみろよ。」

 泉が二音に机に置かれていた白いノートを渡す。白いノートには、小さい字で二音へと書かれていた。

 二音は早速ノートのページを捲った。


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