ホワイト12
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今日はいろいろなことを聞かせてもらってありがとうございました。
そんなことを言ったのがすごく昔に感じる。いや、つい最近というかつい1、20分ほど前なだけなのだが。
僕たちは六木家を出てから莉亜と晴にも別れた。
この2人は迷惑だったかな?けれどもやっぱりこの2人がいたから出来た事もあった。例えば、あんを説得させるときなんかにも有効だっただろう。
今回は成功したといえるだろう。
少し久しぶりだが、成果を上げることには成功した。
あの手紙の事を聞き出せたのは大きいだろう。これでのんを助けられる確立もだいぶ増えただろう。
でもちょっと最近のんが極端に変化したと思う。
おとなしくなったし、何より前に比べて暗いオーラが出ている。隣にいるだけでも分かる、あの暗さは相当な変わりようだ。
つい3日ほど前までののんはどこに行ったのだろう。
あの予告での自殺はのんが自らの意思を持って自分で犯したことなのか。
いや、そんなことは冗談でも言ってはならないだろう。僕がこの世で一番信頼してるし、のんも僕のことを信頼してるだろう。
それに、あと少ししか生きられない身になったら暗くなるのかもしれない。僕もあと3日後くらいにそうなるのだろうか。
「次どこ行く?」
泉もテンションが抑えめだ。みんな低いなら僕も低くしようかな。
「喫茶とかどう?」
この前行った店に行ってみようかなと思った。莉亜に紹介されたあの店は非常に居心地がよかった。マスターも優しく、コーヒーも安いとはお世辞でも言えずまぁ、喫茶のコーヒーにしては普通の値段くらいだが、とてもおいしかった。
2日連続で行くのはかなり大きい失費だが、昨日は命を助けてあげた犬が払ったから、昨日の分はノーカウントだ。
「いいねえ。行こう行こう。」
泉は比較的喫茶が好きな方だ。たぶん、この町の喫茶はほとんど知っているだろう。
「ぼく、いい喫茶知っているの。付いてきてくれない。」
さんせーいと泉がにこやかに言う。それに続いてのんも作り笑顔みたいな顔で言う。ちょっと心が痛む。
「今年の花火は何色が上がるんだろうね。ねぇ、みんなで見に行かない?」
いずみぃーって言いたくなった。
何言っているんだ。今年の花火大会の日付、7月17日はのんの殺されるであろう日だ。とてもこの日くらいは家に閉じこもって、誰も来ないのを確認するだろう。
でも、今年は何色が上がるんだろう。確かに気になる。
1年前のあの花火は香苗が殺されてしまうことの暗示にも思えた。なにせ、あんの部屋や服にたくさん使用されてた情熱色だったんだから。
「いいよー今年の花火も見たいな。」
のんが言う。
マジか。自分が殺されるという大事な予告が流れているんだぞ。この状況で花火なんか絶対に行っちゃいけないだろ。
かと言ってのんだってたくさん考えた末に出た結論なんだ。
ここは、こっちも賛成するしかないだろう。
「うん。いいよ。泉ものんも行きたいって言うならば僕も行くよ。みんなで行った方がいいもんね。」
そんなの言い訳に過ぎない。
別に何の根拠もなくただただ、泉とのんを頼っているだけだ。
でものんが嬉しそうに頷いてくれた。
喫茶は遠くもないのでこんな会話をしているうちに着いた。昨日と変わらず木造のつくりだ。店の前には「グレート・リーフ」と書かれた看板が出ている。
「何ここ。行ったことない。」
あの喫茶通の泉が行ったことないだと。結構マニアックなのかな。いや、その割には昨日たくさん人がいた。
木造の扉を開けた。なんともいえない木の匂いが漂う。二音は好きだけど、このにおいが好きじゃない人もいるだろう。
「いらっしゃーい。あっ、昨日の子だね。じゃあ、昨日と同じく初めての子にはこの自家製プリンをプレゼントしちゃうね。いや、今日は特別にみんなにプレゼントしちゃうね。みんなで仲良く食べるんだよ。」
優しいマスターに言われてみんな同じようなプリンをもらう。一人、一人量と形がちょっと違うがこれも手作りならではなのだろう。
ひとまず席についてみんなでコーヒーを注文し、プリンを食べた。上に載っているホイップの味が昨日と違う味を出していて濃厚だ。本当に手作りだと言う証拠だ。
しばらくしてコーヒーが運ばれてきた。昨日の経験を忘れず、いつもよりもかなり量を多くミルクを入れた。これも頼めばマスターがもっと綺麗に入れてくれるらしい。
「最初はミルクを入れないで飲んでみるのが一般常識だよ。」
泉が自慢げに言った。のんはそれに従いミルクをいれずに飲んだ。案の定、熱かったらしい。すぐにコップを放してあっちと叫ぶ。
そもそもこんなことにいちいち一般常識なんて誰が考えたんだろう。確かに話のネタは増えるけど常識が多すぎるといちいち注意されていらつく。泉は昔から常識に厳しく、結構おせっかいだった。
その点に関しては今も変わってないな。
いいところは変わってどうでもいいところは変わらないものだな。
あと10年後も20年後も変わらないのかな。
10年後、20年後の泉やのんに会ってみたいな。ちょっぴり苦いコーヒーを飲みながら考えた。
「あと少しだね。その二音が言ってた『予告』とやらのタイムリミットまで。」
さっきまで一言も喋らなかったのんが話し始めた。
ちょっといきなり過ぎる。
さすがのこれには泉も絶句だ。
「僕と一緒にいて今まで楽しかった?今日まで楽しかった?」
「ああ、すんごく楽しかったし、これからも一緒にいようね。」
少し間が空いてから泉が答えた。
「僕、二音や泉にとっていい友達になれたかな。」
「何言ってるんだ。今までも、そしてこれからもずっとずーっとベストフレンドだろ。」
「そうだよ。これからもよろしくお願いします。」
二音に続いて泉も頭を下げる。のんはただ呆然とその光景を見ている。何を思っているのだろうか。
二音も泉も見落としていた。その満面に浮かびだされた笑顔に、透明な雫が垂れていることに。
「これからも僕のことをずっと覚えていてね・・・・・・・なんてね。嘘だよ、元気でいてね。」
独り言みたいに小さい言葉で呟いたその言葉は、二音の耳に流れ着くまでに消えてしまった。
ただ、唇の自然な動きだけで分かった。「嘘だよ、元気でね。」と確かに言っていたことを。
「なかなか怖い話していい?」
泉が切り出してきた。泉自身も話すことに少しためらいがあるように思えた。
その証拠にコーヒーを握っている手が震えている。
「どうぞ、ご勝手に。」
のんが真剣ににらんで言いつけるように言う。
しばらく沈黙が漂う。こんな重要なときに切り出したんだから重要な話だろう。二音も、膝を組みなおす。
「さっきさ、二音が香苗が殺される予告を見た人がいるはずって言ってたけど・・・」
泉が重たそうにため息をつく。それと同時に重たい空気が流れる。
多分俺が見たんだよね。香苗さんの予告。
予想以上に重い話だった。
確かに、今回二音が殺されると言う予告をみたのだから、以前も予告を見たことがあるのではないかと思ったけれど、それが香苗の予告だったとは。
それから泉はそのことについて詳しく教えてくれた。
予告はちょうど1年前で、夏祭りが行われた日だったと言うことからちょうどオレンジ色の花火が上がった時に殺されたと言うこと。
そして予告当日に気持ち悪くなり、駆け出して行ったらそこにはどこか見覚えのある姿の人が知らない家から出てきたこと。
そしてその家の庭で、土の中に埋まりかけた女性を見たこと。いや、正確には六木香苗だったと言うこと。
その後、泉が離れてからその現場を目撃したのが香苗の父、すなわちこの事件の犯人として捕まった人だということ。
とにかく全てを話してくれた。泉にとってはこの予告が人生初だったのだ。そのため何もすることができず、それには深く後悔しているようだった。
二音も、もうちょっと早く教えてくれたらなと思った。前回同じことを経験しているので少なからずいい活躍ができたはずだ。
「ごめんね。こんなこと言っても何にもならないよね。」
「いや、逆に相談してくれて嬉しいよ。これで新しい手がかりが掴めそうだ。」
この町は田舎なので防犯カメラなどはところどころにしか置かれてない。もしそこに防犯カメラがあったらとっくに警察方が検査しているだろう。防犯カメラを調べるという点はあまり使えそうにない。
「父が第一発見者なら、父は自宅にいたはずだろ。それならば、どうすれば妹の机から手紙なんかが見つかったんだ?母やあんに気づかれずに奥まで進んでいったのか。」
のんが首をひねりながら言う。確かに変だ。妹の部屋は姉、あんの部屋の隣にあった。父とあんはその香苗が殺された日には花火大会に行ってなかったらしい。
では果たして誰が香苗の机に手紙を入れたんだ?
いや、大事なことを見落としていた。
これはまさによく探偵物にありそうな結果になりそうだ。
「僕の推測なんだけど、香苗ちゃんの机に手紙を入れられる人って3人しかいないと思うんだ。1人は、香苗ちゃんの父。2人は、あんさん」
「おいおい、それじゃああの1家を疑っているのか。」
「いや、そうじゃなくて、あくまで推測だよ。」
二音は1呼吸した。そして続けた。
「3人目は警察だ。まず、香苗ちゃんが殺されたのに机を探らないのはおかしい。それに、2回も妹の部屋を探したんだろ。普通1回あれば十分じゃないか。」
そこは自分もあまり分からなかった。現場検証は2回という決まりがあったのかもしれないが、少なくともこの2人はそんなこと知らないだろう。
「確かにそれはありえる。意外と警察の格好とかしてると分からないもんね。僕も家の中に通しちゃうかもしれないな。」
「そうなるとこれから警察署に行ってみるか。」
以外にものんが提案を出してきた。
そう言われると僕たちは賛成以外言えない。簡単に決まってしまった。




