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ホワイト-white-  作者: サクラダファミリア
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ホワイト1


漆喰のにおいがほのかに香るこの店で漆黒に染まる「ブラック」のコーヒーを1口飲んでみる。まだ熱い。舌が火傷してしまいそうだ。

 テーブルの上に置かれている消しゴムは唯一の嘘でもあり、また信頼の象徴でもある。もう輝きを失ったあの消しゴムはどれだけ大切に保管されていたのだろう。

 私はこの事件も、この思いもあの消しゴムみたいに輝きを失った後も大切に保管しておきたいと思った。心の中に。

 私はあのことを忘れていない。みんな忘れたけれど、あの時みたいに私とあなただけはこの時間を覚えている。時間の流れに流されないってこういうことなのかな。意外と意識しなくてもいいようなものなのかな。

 私はまた1口コーヒーを飲んだ。

 ものの数分で私の口に合う温度まで冷めた。

 この1週間あなたは誰かを救えたのだろうか。それは救えたのじゃなくて自分と入れ替わっただけなのではないか。コーヒーの正反対をイメージしてしまう。

 

       *****

キイイィィィーーン

 すさまじい音と共に倉土二音の1日が始まった。

 めざましを手で押し、いつもの制服に着替えて、いつもと同じくらいのご飯を食べてバスに乗り学校に向かう。

「おはよう、二音」

 こいつはたまにバスで会う春手のんだ。のんは、二音の1番の友達である。身長は、のんの方が上だが、スポーツは、二音のが方が出来る。

「おはよ。春手」

 のんは、青色が好きなのかど派手な青のリュックを持ってくる。その青は、バスのシートの色や空の色そしてあのブルースカイという花の色に似ていた。二音は、むかしからブルースカイのことを知っており二音の一番好きな花でもあった。

プシュウウゥゥ

 バスのドアが開いた。二音とのんは、青と緑の同じメーカーのリュックを背負いバスを出た。学校の正門は、いつも緑の生き生きとした木と、その下に群がる高校生で、にぎわっていた。

「おはよう二音と春手」

「おはよ」

 のんは、クラスのムードメーカーで、友達も多く、いつも無邪気だ。そんなのんとは反対に、二音は、静かで休み時間は、本を読んでいることが多い。友達とは、あまり話さない方でもある。登校時、よく声をかけられるのはのん目当てがおおい。でものんは、どんな子が来てもいつも二音と話している。二音とのんは、両方とも音楽が好きで、いつも音楽の話をする。

 この学校は、3階建ての学校で、二音の教室は、2階の1年4組だ。一クラス25人だ。

「のん、今日ってテストだっけ?」

「ああ漢字テストのことか」

「そうそう」

「ああ、確か今日だったかな。」

 のんが、青空を見ながら言った。

「そういえば、あれから2年が経つんだね」

「速いなあ・・・泉は元気かなあ」

 2年前のあの経験と別れ2年経っても鮮明に覚えてた。まだ中学生だった僕らには、少し早かった経験かもしれない。 


 「絶対にお前は、僕が守る」


 漫画やドラマでよく出てきそうな定番のセリフだが、あの時は少し違って見えた。そして、この約束は未だ使われぬまま高校受験で鳥居屋泉とは分かれてしまった。

 今日は、あの日から2年目という記念日。何もかもがいつもどうりだけど、二音やのん、そして今は別れた泉だって心の中では少しの特別感と不安を持っていた。

 今日は何か起こるのではないかと心配だった。

「なんか怖いね」 

 二音は、苦笑いをしながらのんの肩に手を乗せながら言った

「うん。きっと泉もそう思っているのかな」

 のんもこっちを向き行き場の無かった二音の手を握った。

 その手はかすかに震えていた。

「次は僕の番かなあ」

「やめて。冗談でも言わないで」

「すまん」

 のんは、両手を合わせながら軽く僕に謝った。その姿を見るとやけに苦しくなる。

 あの予告は、僕たちにとって善なのかそれとも悪なのか自分でも分からなかった。

「でも、次が何でも僕らがいれば乗り越えられるさ」

 自分で言ってみたけれどあんまりこの言葉に信用できなかった。

 

学校が終わった。

 みんないつもと変わらない。

 いつものようにバス停は混み、いつものような見慣れた風景を見た。やや田舎の町だ。

「バイバイ春手」

「うんまたね。でも、何かあったらメールしてね」

「うん。わかった」

 二音は、少しくらい声で言った。のんにも十分伝わっただろう。

 それにしても、記念日のことも忘れさせるくらい。すごく普通だった。通常だった。まさに「いつもどうり」であった。


そんないつもどうりが、終わりを告げた


 いつもどうりが幸せなんて言葉をよく聞くけれど。それがまさにこれだった。今までが嘘のようにそれは始まった。

 予告だ。

 2年前もあったあの予告。

 救えるかどうか、自分に懸かっている。そうだ、自分だ!

 

        *****

 今回の予告それは、のんだった。

 次くるとしたらのんだと思った。予想どうりだ。

 そしてそれは、あと7日後の未来の予告だった。

 

 7日後6時53分24秒

 その時間にいきなりのんは自殺した。 

 これが予告内容だった。

 正確に言うと、その時間帯にじぶんの部屋で首を吊って自殺してた。部屋の中が特に荒らされていることも無く、いや、部屋は整頓されて死んでいた。まるで天に昇っていくように天に昇っていった。

 これも2年前と似ている。

 まるで同じ光景がリピートされたみたいに・・・ 

 この予告が流れる間二音は何もできない。まるで金縛りにでもあってるように動くことはできなかった。

 ただただ何もできず、時間の流れを感じていた。

もごもご・・・

 ん??何か呟いた??

 んん??

 あれ?何か置いてある。手紙かなあ?

 白いノートのようなものだな。

 

 

        *****

キイイィィィーーン

 目覚ましだ。

 あのいつも通りの目覚まし…

 んん??

 じゃあ夢なのかなぁ

 いや、これも前と同じく夢を見てる間に予告が流れたのか?

 ってことは、さっき見たのは本物の未来かなあ

ガタッ

「何してんの、15分もボーッとしていてーご飯だよ!!」

「ごめん。今すぐ行くよ」

 なかなか注意をしない母にも怒られた。

 結局今日は何も食べず学校に行った。

 学校に行くといつも緑の木の下に誰かいるのに、今日は誰もいない。遅刻だ。二音はまじめな性格なので、これが人生初めての遅刻でもあった。

 しかし今そんなのはどうでもいい一人の命が係ってんだ。

 二音は、教室のドアを開けるとともにのんを連れてきた。

「春手、重要なことがある」

「うん。分かってるよ。やはり今回もあると思った」

「そう。またあの予告を見たんだ。しかも今回の対象はお前だったよ」

 二音は、今にも死にそうな顔をしたのんの顔を見た。そこでのんはもう泣いていた。

「二音ちょっと来て」

 のんは二音の意見も聞かずに二音を強引に連れて行った。連れて行った先は理科室だ。もう朝の挨拶は終わったころだろうか。そろそろ1時限目が始まる頃なのに。

 先生は怒っているだろうか。それともいなくなったことに心配してるだろうか。

 案の定理科室は開いていた。理科室はなかなか使われることもないから人も来ないだろう。

「どうした、授業始まるよ」

 さっきまで学校どころではないとか言ってたのに今になって授業を気にするなんて少し違う気がすると思ったけど

「ごめん。少し気になったことがあってさ」

「なに?」

「昨日の夜、その予告について少し調べてみたんだよね。そしたら、他にもそれを見てる人がいたんだ」

「え?」

 こんなものを見る人がこの世にまだいるのか?そう考えてるうちにのんがさらに思いがけないことを言った。


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