fortunate
気に入らないヤツは片っ端から轢き殺してしまえばいい。何でこんな簡単な事を気づかなかったんだろう。
「車なんか壊れたらまた貰えばいいし」
水村の乗る白いセダンは幾つかの路地を曲がり、途中二体目の感染者をドンと跳ね飛ばした。
コトン……コツン
血飛沫がガラスに飛び、彼はワイパーを動かしながら呟く。
「んだよ、汚ねえな」
相変わらず奴らは背骨が折れたぐらいでは奴らは動きを止めない。立てなくなると腕で這いずって来る。
水村は車を後退させ、背中から首にかけてをタイヤで踏みつけるようにハンドル切った。
グボボキキシャッ!ボキッ
一気に内臓が吹きだす音と篭った骨の折れる音が合わさる。窓を閉めている車内にもその凄惨な音は聞こえて来た。
「うあぁ、きめえ……」
潰した感染者を窓から覗くと、その口は未だ獲物を求め、歯を剥きだして顎を動かしている。
「こいつ、面白いからこのまま、放置」再びハンドルを切り前進した時だった。
コトン……ゴト
『さっきから何だ……あの音。後ろか』
後ろのシート、いや、後ろのトランク内でハンドルを切る度、何かが転がったような音がしている。
水村が今走っているのは、モールから出て海岸通りへ向かう裏道。ここは感染者の数が少なく車外へ出て確認するなら最適だろう。
『いざとなりゃ撃てばいいしな』
車を停めて右手を伸ばしトランクのレバーを探す。ボンとロックが外れた音を聞いてから車外へ出た。
『ちっ。こっからだと……』
トランクが開いて垂直に立っている。その為、ドアから出た水村の位置ではトランク内部は死角なってしまい見る事は出来ない。
『子供の感染者とか入ってたりするんだろ』
銃を向けながら息を止め、ゆっくりとトランクから距離を開けて回り込んだ。
「何だよっ!ざっけんな!ビビッて損した!」
口調は荒いがすぐに顔は綻んだ。
『でも、こりゃいい。奴らいいもん持ってたんだ』
トランク内には、非常食の段ボールと水、そして大きめのハンマーとバールがあった。
レトルト食品、缶詰、瓶詰、バランス栄養食、ジャーキー、水、全て三人分。チョコ菓子とグミ、炭酸ジュースは子供の為だろう。
『もっとコーラとか入れとけよ。ったくよ』
水村は段ボールを抱え車内へ無造作に放り投げた。そしてバールとハンマーを助手席へ置き、炭酸グレープジュースを手に取って一口飲む。
『炭酸は冷やしとけよ、バカかよ』
後ろの座席に散らばる食料を眺めながら更に悪態を付く。
『普通、リュックとかに入れるだろ。何だよダンボールって』
背負いカバンのような物が欲しいが、モールはもう戻れない。水村はある事を思い出す。
『そうだ!あそこならあるぞ』
海岸線の一角に最近サバゲー屋がオープンしたはずだ。チラシを配っていたキャンペーンガールが好みだったから良く覚えている。意気揚々と彼は車を走らせた。
『よし、ここで色々貰っておくか』
水村はサバイバルゲーム店舗裏口を塞ぐ形で車を横づけした。
徐にドアをバールでこじ開ける。セキュリティーが鳴りけたたましい警報が鳴り響く。
「ちっ。どこだ」
特に焦る様子もなく、つかつかと歩みを進めてレジ裏の小部屋にあるブレーカーをパチンと下げた。アラームはピタリと止まり、店内は静まり返る。
以前、小さな倉庫のアルバイトをした時に警報アラームが誤作動した事があった。その時は慌てたが同僚が対処していたのを見た事があった。
「余裕、余裕」
拳銃を持つ者の優越感なのだろうか。今の水村は恐いものがない。
『このプロテクターみたいの…と』
「あ、これもだな。おっ!これこれ」
空には既に陽が昇り、店内は薄っすらと陽が差し込み仄かに明るさがある。
水村はその薄暗い店内で時が経つのを忘れ、嬉々として商品を物色していた。
「……?」
微かに外で音が聞こえた気がした。エンジン音だと思う。
「何だ?」
窓から慎重に外の様子を伺う。
『略奪者だったらぶっ殺してやる。ここは俺が先に見つけたんだ』
この通りは感染者達の影が非常に少なく見通しも良い。
「おお!?」
視線の先に思わぬものを見つけ、水村はつい声を上げてしまった。
『何だよアレ!?最高じゃねえかよ……』




