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永遠の愛を刻む  作者: 美雪


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本編 レティシア視点 ③

 私の視界に白いモノが映った。天国ではない。天井だ。


 私はベッドの中にいた。病室だ。そして、隣のベッドに横たわる人物を見た。


 ロディだ。眠っている。


 私は喉が渇いたため、水を飲もうと起き上がるが、めまいに襲われ、倒れた。


「レティ」


 後ろから声がした。


「大丈夫?」


 私は振り返った。そこには、心配そうな表情をするロディがいた。目が覚めたのだ。


 私は短く答えた。


「大丈夫よ」

「看護婦を呼んで。ベッドのそばにある紐を引けばいい」


 私はロディに言われた通り、ベッドのそばにある紐を引いた。すぐに看護婦が来て、水を飲ませてくれると同時に、医者を呼んで診察をしてくれた。


 私は崖を覗き込んだ際、丁度強風にあおられてしまい、海に落ちた。泳げずに意識を失ったが、すぐにロディが海に飛び込み、助けてくれた。


 私は心肺停止の状態だったが、人工呼吸で息を吹き返し、病院に搬送されたらしい。ロディも海に飛び込み、急激な体温の低下を招いたため、熱を出し、やや体調を崩した。そこで、同じ病室に入院することになったらしい。


 医者と看護婦がいなくなり、病室に二人だけになった。


「ロディ、これから、どうなるの?」


 私は聞いた。ロディのことを見ることができない。どんな返事が返されるか怖かった。


 大きなため息の後、ロディが言葉を発した。


「レギは去った。レティはレギを選ばなかったし、僕と生きることも選ばなかった。死ぬという選択をした。でも、レギはレティに生きていて欲しいらしい。生活に不自由することなく、静かに暮らせるように、僕に頼んできた。自分は邪魔にならないよう、遠くから見守るといっていたよ」


 ロディはもう一度大きなため息をついた。


「医者は僕が海に飛び込んで、レティを助けたといったよね。でも、事実は違う。レギが海に飛び込んで、レティを助けた」


 私はロディの言葉に体が震えた。


「ロディが助けてくれたわけじゃないの?」

「そうだよ。僕は泳げるけど、あまり得意じゃない。レティのドレスは水を吸うと凄く重くなって、身動きもしにくくなるから、一人で助けるのは無理だよ。レギがいなかったら、絶対に助けることはできなかった。僕も手伝ったけど、あんまり役には立たなかった。レギは今も君を心から愛している。でも、平民として生きていくのは大変だと知っている。だから、君を助けたのに、すぐ手放した。自分の気持ちよりも、君の気持ちを優先した」


 私の目に涙が溢れだした。レギの愛を感じたからだ。私はレギへの愛を見失い、別の男性を愛してしまった。なのに、レギはそれでも私を助けてくれたのだ。


 私はレギに心から謝罪した。言葉では言い表せない。一生許されることではないかもしれない。それでも、私にできることは、それしかないように思えた。


「レティ、君は生きている。となると、僕は妻が死んだということにはできない。離婚するか、それともこのまま夫婦として生活していくかだ。レティはどうしたい? 本当の気持ちを教えて欲しい」


 ロディの質問に私は答えた。


「私……離婚して修道院に入るわ。命を助けてくれた神に仕えたくなったとすれば、離婚しても、あまりおかしくないと思うの。私が子供を産めないということでもいいわ。そうすれば、ロディも困らないでしょう? 最後まで迷惑をかけてしまって申し訳ないけど、貴方にとって都合のよさそうな、遠く離れた場所にある修道院を探してくれないかしら?」


 ロディは大きなため息をまたついた。


「夫がいるのに、神に仕えるために修道院に入る女性は少ない。大抵は未亡人とか、未婚の女性だよ。いきなり信仰心に目覚める女性は少ない。裕福な女性であれば、尚更ね。それから、子供がいないっていうけど、結婚してから一年しか経っていない。諦めるのは早過ぎる。何か別の理由があると思われるよ」

「貴方の不貞でもいいのよ」


 私はやや意地悪な口調でそう言った。


「沢山の愛人を持つ夫に愛想をつかして、修道院に入ったの。それでどうかしら?」

「確かにその方がいいかもね。でも、僕には当てはまらないよ。不貞はしてないから」

「嘘よ!」


 私は思わず叫んだ。


「メレディスと口づけしていたわ! 私、見たのよ!」

「あれはメレディスが勝手にしてきただけだ!」


 私は眉をしかめた。図書室で見たのは、メレディスがロディに抱きついて口づけをしているところだった。ロディからしたのではないという主張はわからないでもないが、抵抗はしていなかった。


「受け入れているように見えたわ!」

「レティにメレディスと親しくしているのを見せて、嫉妬させる気だった。でも、口づけまでされるとは思っていなかった。あの後、メレディスと凄い喧嘩になったよ。メレディスは僕達が白い結婚で、唇への口づけが一回だけというのも知らない。だから、口づけがいかに重い意味を持つか、全くわかってなかった。絶交したよ。サイモンにも伝えた」


 私はロディの言い訳を受け入れなかった。他にも不貞している証拠があった。


「朝帰りや昼帰りもしていたわ! タバコと香水の匂いも凄かった!」

「男性同士の付き合いもある。女性を側に置いて、お酒を飲むような場所に行くこともあったのは認める」

「ディックが教えてくれたのよ。貴方が他の青騎士と一緒に高級娼館に行っていることをね! いつも娼婦を二人買っているって言っていたわ!」

「ディックのやつ!」


 ロディは舌打ちした。


「ごめん。謝るよ。嘘をついた。高級娼館には行った。でも、仕方がなかった。さすがに僕だけ何もしないわけにはいかない。王太子も一緒だった。誰か買えと言われれば、買うしかない」

「王太子が一緒だったの?」


 私は驚いた。


「そうだよ。王太子は時々、お忍びで出かける。でも、さすがに一人じゃ危ないから、誰かがついていく。いかにも護衛って感じの者を連れて行くと、素性がわかってしまいかねない。だから、青騎士とかも数人ついていく。それで、僕も一緒に同行することになった。前に、王太子を襲撃者から守ったから、それなりに心得があるって知られている。朝帰りも、王太子を置いて、帰るわけにはいかないからだよ。だから、朝どころか、昼まで帰れないこともあった。王太子は朝に弱い。なかなか起きない。起きても、帰りたくないと言い出すこともある。これは極秘にして欲しい。絶対にね。じゃないと、死罪になりかねない。物凄く不味い秘密だよ」


 死罪になるかもしれない秘密だと聞き、私は驚いた。しかし、王族が高級娼館に通っていることがわかってしまうのは、不味いに決まっている。


「でも、妻を愛する夫で知られているはずよ! だったら、妻を裏切れないって、断ることもできたはずよ!」

「勿論、そうしたよ。でも、王太子に言われた。妻と忠誠、どちらを優先するのか。後者じゃないと不味いのはわかるよね?」

「忠誠を取るから、娼婦を買ったというの?」

「そうだよ。神に誓う。僕は自分から娼婦を買ったわけじゃない。王太子に従い、忠誠心を見せろと言われたからだよ。でも、買っただけだ。何もしなかった。朝までベッドで寝ていたけど、一人だった。娼婦は別の部屋で寝て貰うため、もう一人買って、娼婦同士で寝て貰うことにした。それだけで大金は貰えないというから、朝になったら起こしてくれることと、王太子が起きた時も、教えてくれるように頼んだ。朝食も無料で用意してくれたよ。王太子が買った女性にもお金を払った。王太子が帰りたくないと言った時、早く帰るよう味方をして貰うためだ。王太子の部下になって給料は増えたけど、無駄な出費も増えて困った。他の青騎士達も、そのことで愚痴を言っている」


 私は呆れた。この国の王太子は凄く優秀だと聞いていた。だが、部下に娼婦を買うよう命令するような男性だったのだ。戦争好きの王と違い、尊敬できるかもしれないと思ったのは、間違いだった。


「私、王太子に抗議の手紙を送りたいわ!」

「駄目だよ! 秘密だって言ったよね?」

「そういう気分だってことよ。本当には送らないわ。でも、王太子が嫌いになったわ」

「レティ、それも絶対に言わないで。不敬罪で投獄されてしまうし、最悪、処刑されてしまうよ」

「言わないわよ。でも、凄くムカついたの。妻を大事にしている夫にわざわざ命令して、忠誠心を試すなんて、馬鹿げているわ!」

「ごめん。許して欲しいけど、許されないのもわかっている。僕はずっと嘘をついてきた。一つや二つじゃない。沢山の嘘を」


 ロディの言葉に、私は胸が苦しくなった。


「ずっと、愛されていると思っていたわ。でも、それが嘘だなんて思わなかった。今も信じられないわ」

「信じなくていいよ」


 ロディはそういった。


「僕がレティを愛しているのは、本当のことだから」


 ロディの言葉に私は耳を疑った。


「今、なんていったの?」

「君を愛しているって言った」

「嘘だっていったじゃないの!」

「ずっと一緒にいれば、愛着がわく。レティは優しい。僕に気を遣ってしまって、自分の幸せを犠牲にすることを選択するかもしれない。だから、レティが僕のことを気にしないで、レギと一緒に行けるようにした。夜遊びが酷い王太子のせいで、あまり苦労はしなかった。社交界でも、僕の周囲に女性が来ることをやっかむ者達が、好き放題に言っていたしね。妻を愛しているといいながら、女性関係が派手な男だと君が思うように仕向けた。本当はそんなことはしたくなかった。でも、僕の片思いは実らない。せめて、レティが何の負担もなく、僕の元を去って、レギと行けるようにすべきだと思った」

「ロディのことを優秀だと思っていたけど、本当は凄く馬鹿だったのね! 私の気持ちに気付かず、そんなことをわざわざするなんて!」

「……君がどんな墓地がいいかを僕に言った時、凄く動揺したよ。なぜ、愛してもいない僕に、愛の言葉を刻むよう求めるのか、わからなかった。自分に都合よく解釈してしまいそうだった。必死でそれを抑えようとしたのに、君は永遠にという言葉をつけるとも言った。あの時、僕がどれほど嬉しかったか。そして、あの後、レギに会わせ、手放さなければならないことに、どれほどの苦しみを感じたか、きっと君にはわからないと思う」

「わかりたくもないわ。何も教えてくれないなんて……レギの姿を見たとき、どれほど驚いたと思っているの?」

「教えられないことだったからだよ。レギが生きていることは、王太子の部下になって知った。それまでは僕も知らなかった。死んだと思っていた」


 私はロディがずっとレギが生きていることを隠していたのだと思ったが、そうではなかった。ロディも最初は知らなかったのだ。そして、この国で必死に努力し、認められ、王太子の部下になったからこそ、重要な秘密、王子であるレギが生きていることを知ったのだ。


「私のことで、約束したって言ったわ」

「王太子の許しを得て、幽閉されているレギに会いに行った。その時に約束した。レティを迎えに行くまで守るって。僕の妻にしたことを、すぐには言えなかった。打ち明けたのは二度目に会いに言った時だ。レギに思いっきり殴られた」

「もしかして、頬に凄いアザを作って帰って来た時?」

「うん。喧嘩した者達を止めようとしたって言ったけど、あれも嘘。レギに殴られた」


 私はため息をついた。


「嘘つき」

「ごめん」


 ロディはすぐに謝罪した。


「でも、もし、レティが……僕の妻でいてくれるというなら、一生をかけて、レティを守るよ。本当の夫婦になりたい。子供を作って、温かい家庭を築いて、幸せになりたいよ。嘘つきの夫なんか嫌だと思うかもしれないけど、経済的な不自由はさせないよ」

「私がお金に目がくらむような女だと思っているの? レギにも言ったわね。私が今の生活を捨てたくないから、一緒に行かないって」

「その方が、レギが諦めてくれるかなって思った。レギだって 相当の覚悟で迎えに来た。嫌だと言われて、すぐにわかったと言えるわけがない」

「また嘘を言ったのね」

「ごめん」


 嘘が沢山あった。私はどれが本当かわからなくなりそうに感じた。


「レティ、もう一度チャンスが欲しい。一緒にこの大きな試練を乗り越えて行こう」


 私はロディを見た。ロディは私を見ていた。ベッドに横たわったまま。辛そうな表情だ。


「ロディ、凄く大事な言葉を言っている割には、ベッドから出ないのね。寝たままだし」

「ごめん」

「どうして、そばに来て言わないの? 本当は抱きしめて欲しいのに」


 ロディは苦しそうに呻いた。もぞもぞしている。


「理由を言わないといけないよね?」

「当たり前でしょう?」

「凄くかっこ悪いけど、できるだけ嘘をつきたくないからいうよ。さっきから、足がつっている。動けない。凄く痛い。でも、こんな大事な話をしているのに、言えるわけない」

「馬鹿じゃないの! 私たちは夫婦よ! そんなことも言えないでどうするのよ!」

 

 私は起き上がると、もう一度紐を引っ張った。看護婦を呼ぶためだ。


 看護婦が来ると、私はロディの足がつったことを伝えた。看護婦はすぐにロディの足の状態を確認し、つった足を直すべく、手当をした。




 私達は病院を退院し、王都に戻った。また元の生活に戻ることになった。いや、違う。本当の夫婦になれるよう、やり直すことになった。


 いきなりすぐにというのは、色々あったために難しい。気持ちの整理もつかない。そこで、結婚式を挙げることにした。


 私とロディは非常に簡素な結婚式だった。証人の見守る中、夫婦としての誓いの言葉を述べ、婚姻誓約書にサインするだけ。ウェディングドレスも着ていない。結婚指輪でさえ、右の薬指にしていた指輪を、左の薬指に移しただけだ。その後、新しい指輪を買うこともなかった。


 私はレギから貰った指輪を海に投げ捨ててしまった。ロディが新しい結婚指輪を買ってくれることにもなった。




 青騎士団の宿舎に戻り、しばらくはぎこちない生活が続いた。なぜなのか、怪しまれた。目ざとい者は、私が指輪をしていないことにも気付いた。不仲、離婚危機と思われたかもしれないが、私もロディも何も言わないままでいた。


 そして、とある週末。ロディが突然、夕食に集まった者達が見守る中、私の前に跪き、プロポーズをした。


「僕達が結婚したのは、戦争が起こり、互いに不安だったこともある。愛情だけで決めたといいきれるかはわからない状況だった。今は戦争も終わり、生活に関する不安もない。もう一度気持ちを確かめ合うためにも、きちんとした結婚式を挙げたい、そして、僕は永遠の愛を神の前で誓いたい。君を一生愛し、守り続けると」


 ロディはポケットから大きな宝石のついた指輪を取り出し、私の薬指に嵌めた。


「レティシア、僕と結婚して下さい」


 私達はもう結婚している。なのに、もう一度結婚するのはおかしい。きちんとした結婚式を挙げようという方が、適切ではないかと思う。私はそう思ったが、そんなことを言えるわけがない。恥ずかしさの方が上だった。喜びはもっと上だ。


 私は顔を真っ赤にしているロディに、やっとの思いで言葉を口にすることしかできなかった。


「はい」


 ロディが私を抱きしめると、盛大な拍手が起こり、その後、夕食会は、私とロディを祝うための祝宴に変更となった。何度も乾杯すると共に、大量の酒が消費された。




 私とロディがきちんとした結婚式を挙げていないため、今更ではあるが、結婚式を挙げることにしたことを、王太子が聞きつけた。


「任せておけ」


 そう言ったらしい。私の王太子への評価はかなり下がっていた。任せていいのか不安だったが、相手は王太子だ。断れるわけもなく、任せることになった。


 その結果、王太子はロディが自分の部下にふさわしい結婚式を挙げるように手配しろと、他の部下に命じた。命じた部下は、様々に特別な手配をかけた。


 ロディは養子とはいえ、公爵家の者だ。しかも、王太子の部下、青騎士でもある。私とロディはかなり大規模な結婚式と披露宴を開くことになってしまった。費用が心配だとなったものの、ご祝儀で回収すればいいということだった。むしろ、ご祝儀を貰うために、大勢招待した方がいいらしい。


 お金のことはわからない。ロディに任せた。いや、王太子になるのだろうか。


私の身分も、きちんと整えた方がいいとなり、貴族の家に養女に行き、ロディとの身分が釣り合うようにという配慮までされた。さすがにそこまですることになるとは思わなかった。


 後で知ったのだが、王太子はロディに娼婦を買えと言ったことを後悔していた。試すようなことを言ったのは、忠誠心が本物か知りたかったからだ。王太子の命令は、娼婦を抱くことではない。その違いに気づき、うまく切り抜けたロディの評価は一層高まった。だからこそ、ロディを同行させる機会も増えてしまったようだ。


 王太子は愛妻にこのことが知られたら、離婚されてしまうかもしれないと嘆くロディに、いつか報いようと思っていたらしい。そこで、結婚式を自分が仕切ると言い出したのだ。


 私は王太子の評価を元に戻したわけではないが、良心があることは理解できた。高級娼館に頻繁に出入する問題児の上司ではあるが、部下想いでもある。私も王宮の侍女として働いていただけに、職場では色々あった。自分を評価し、大切にしてくれる上司は大事にしなければならない。王太子なら尚更だ。


 私は全部とはいわないが、王太子のしたことを許すことにした。王太子は私とロディとの結婚を祝福してくれているのだ。それが一番重要で、大事なことだった。




 王都で最も格式が高い大聖堂で、私とロディとの結婚式は執り行われた。招待客は約二千人。結婚式の後は王宮に行く。国王と王太子に謁見し、結婚式を挙げた報告をした後、国王と王太子が主催する昼食会に出席。約六百名の重臣や高位の貴族が招待されており、私は宰相と外務大臣に挟まれるという恐ろしい席で食事をした。


 精神的にぐったり疲れつつも、夜には王立歌劇場を貸し切りにした披露宴に出席した。花嫁が欠席するわけにはいかないと、友人達に叱咤激励された。披露宴への招待客は約五千人。数字を聞いただけで、私はめまいがしたが、この国の大貴族であれば、その位は当たり前らしい。


 私とロディは主役であるため、ファーストダンスを踊ることになった。これからダンスだという時、急に私とロディは青騎士達に囲まれた。何が起こったのかと思うと、王太子が登場。実はこっそり披露宴に来ていたのだ。そして、花嫁とファーストダンスをするのは自分だ、なぜなら、一番ここで偉いからだと主張。忠誠心を見せろと挑戦的に告げた。ロディは驚きつつも、大きく深いため息をつき、自分は王太子に忠誠を誓う青騎士だと述べ、私を王太子に差し出した。


 私はファーストダンスを王太子と踊ることになった。正直に言えば、ムカついた。しかし、前半部分だけだった。後半部分は顔を歪めていたロディの名前を王太子が呼び、交代した。


 私とロディはファーストダンスを無事踊り、拍手喝さいを受けた。驚くべき余興はこれだけではなかった。披露宴の演奏は全て王立歌劇場管弦楽団が演奏したのだが、非常に有名な歌手達が何人も呼ばれ、愛の歌を熱唱したり、王立バレエ団のトップダンサー達が、華やかな衣装の踊りを披露したり、様々な趣向が凝らされていた。


 はっきりいって、これは貴族の披露宴ではなく、王族の披露宴ではないのかと感じるほど、豪華絢爛、贅沢なものだった。こういった余興はロディも知らされていないものであり、費用も全部王太子持ちのため、安心するようにと、ディックやサイモンが笑いながら教えてくれた。王太子には散々にお金を使わされている。主に高級娼館のせいで。この位は負担して貰っても、バチは当たらないと私とロディは開き直った。


 二十四時になると、時間を告げる鐘が鳴った。私とロディは大勢の招待客に冷やかされつつ、結婚式後の初夜を過ごすために、最高級ホテルに向かった。青騎士団の宿舎は豪華であるものの、いつも生活している場所だ。そのため、初夜は別の場所でとなった。


 最高級ホテルでは、結婚式を挙げた者のために、様々なプランを用意している。最高級の初夜を過ごすための宿泊プランもあるらしく、それを利用することになったのだ。


 私とロディは本物の夫婦になった。これからは、互いの愛情を感じながら、一緒に生きていく。とても幸せなことだ。でも、この幸せが永遠に続くとは限らない。何もしないままでは続かない。努力が必要だ。試練を乗り越える強さも必要になる。心からの思いやりも。


 私とロディは互いの墓標に愛する夫、愛する妻という愛の言葉を刻むと誓ったが、それよりも前に、結婚指輪に永遠の愛の言葉を刻み、神の前で誓った。


 この永遠の愛の言葉が失われないように、私はこれからも必死に生きていく。


 愛するロディと共に。


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